京都市初、京町家の専門部署が発足!

京町家の中庭は、眺めという視覚的効果はもちろん、住戸内の通風にも配慮されている。(写真:岡田大次郎)京町家の中庭は、眺めという視覚的効果はもちろん、住戸内の通風にも配慮されている。(写真:岡田大次郎)

古都・京都の景観といえば、京町家は欠かせない存在だ。しかし、その所有者でさえ京町家だという認識がなく、ただの古い家だと思っている人も少なくないという。

京都市では、2000年から京町家の保全・再生・活用について様々な取り組みを行っていたが、京町家に関する専門の部署はなく、京町家についても景観のこと、都市政策に関すること、建築に関すること、文化財に関すること、というように縦割りで各部署が担当していた。そこで、円滑に進められるよう横断的にまとめる部署として2015年4月に、京町家保全活用担当という部署が創設。そして、その京町家保全活用担当が、京町家の魅力や価値を再認識してもらうキッカケになればと「京町家魅力発信コンテスト 〜ムービーからムーブメントへ〜」を企画・開催している。

京都市が取り組む、京町家の保全・再生活動には、どのような背景と思いがあるのか話を伺った。

京町家魅力発信コンテスト 〜ムービーからムーブメントへ〜
http://www.kyo-machiya2015.com

多くの方々が「京町家」の価値に気付くキッカケにしたい!

京都の風情と景観を守る京町家京都の風情と景観を守る京町家

平成20年、21年に、京都市と公益財団法人京都市景観・まちづくりセンター、そして立命館大学が合同で実施した調査では、約48,000件の京町家が確認されている。ただ、1年間に1.5〜2%の京町家が減少しており、京町家だという認識がないために、ただの古い中古物件として安く売買され、取り壊される物件もあるという。「20年前に比べれば状況は改善しつつあるが、それでもまだ町家に対する価値に気付いていない方が多い」と京町家保全活用担当の担当者。

「京都府内はもちろん、日本中の人々に、そして海外の方々にも、京町家の価値と魅力を知ってもらいたい!その活動の一環として、『京町家魅力発信コンテスト 〜ムービーからムーブメントへ〜』を企画・開催しました」と、にこやかに語る。この企画は、京町家にまつわる15秒〜200秒の映像を広く募集している。日本人をはじめ海外の方、プロ・アマ問わず参加でき、スマホで撮影した動画でも応募可能だ。数年前に撮影した内容を、春夏秋冬ごとに編集しまとめた映像や、京町家での生活風景、または京町家で営業しているカフェや工房といった店舗の映像でも構わない。昔ながらのものから現代的なものまで、京町家をどう感じ、どう捉えるのか、京町家に対する視点や抱く思いは人それぞれだ。同担当としては、この企画の予算でプロに動画の撮影を依頼し制作することもできたが、それでは人々の目は京町家に向きにくいのではないか、色んな人の感性で京町家を捉えて欲しい、そして身近に感じ、知ってもらうためには、一般公募が最良なのではないかと考えたという。

海外から注がれる京町家への熱い視線

伝統的な構法で造られた京町家の玄関(写真:岡田大次郎)伝統的な構法で造られた京町家の玄関(写真:岡田大次郎)

京都といえば、言わずと知れた観光都市だ。年々、海外からの観光客も増えつつある。近年では、京町家の賃貸物件を探していたり、投資目的で購入を検討する海外の方からの問合せも増えつつあるという。日本人でさえ、修繕費や維持費などの懸念や相続などで手放すことが多い京町家を、なぜ海外の方が賃貸や購入を検討するのか。それには、ある団体の活動が影響しているようだ。

この担当と目的を同じくし、連携して活動している団体に、公益財団法人京都市景観・まちづくりセンターがある。この団体が「ワールド・モニュメント財団」のウォッチ・リストに京町家の掲載を依頼したという。このウォッチ・リストは、2年に1度作成され、2010年と2012年の2回、京町家が掲載された。「ワールド・モニュメント財団」とは、ニューヨークを拠点に、歴史的建造物や文化遺産の保存に取り組んでいる非営利団体だ。世界の危機的状態にあるモニュメントの擁護および保護を目的とし、それらを救済するために行動している地域社会や政府と共同で活動している。ウォッチ・リストに掲載され、選ばれた歴史的建造物や文化遺産は、寄附によって修繕・改修などが行われる。京町家での事例は2件だ。こういった取り組みが、価値ある建造物に興味を示す世界の人々の視線を集めるキッカケとなり、海外の人々の間でも伝統的な京町家の価値が認識されることとなった。

日本国内で認知が低かったものが、海外からの逆輸入で火がつくということもよくある話しだ。今回の「京町家魅力発信コンテスト 〜ムービーからムーブメントへ〜」が海外の方も対象にしているのは、その一役も担ってのことだろう。

ムービーに込めたムーブメントへの思い!

四季折々の風景を楽しませてくれる坪庭四季折々の風景を楽しませてくれる坪庭

京町家を賃貸に出したり、売買する際は当然ながら不動産会社が物件を査定し、その所有者と契約をする。が、しかしその不動産会社でも、京町家かどうかを把握する術を持たない会社もあるというのだ。その場合、京町家なのにただの古い中古物件として扱われ、安く査定されることもあるようだ。「京町家と判断されれば、普通の中古より査定額があがる可能性があるのに、所有者をはじめ不動産会社でさえ、その価値に気付かず取り壊してしまっている」と、京町家保全活用担当の担当者はいう。

「京町家は、京都の景観を保全することはもちろん、建築物としても貴重な建物です。この企画を通して、その価値に気付いて欲しい」と、静かにそして力強く話していた。このコンテストで受賞した映像作品は、これから京都で開催される様々なイベントや、海外で行われる京都や観光に関する催し物で上映されるという。「映像は見てすぐ分かるので、言葉が通じない海外でも大いに役立ち、訴求性は高いと思います!」と担当者の意気込みは高い。まもなく、この企画で受賞した映像を目にする日がやってくるだろう。撮影者の視点や意識の変化はあったのか、またその映像を目にした人々が京町家に対してどう感じるのか、これからの変化が楽しみだ。

取材協力:京都市 都市計画局まち再生・創造推進室 京町家保全活用担当
http://www.city.kyoto.lg.jp/tokei/page/0000186044.html

2015年 11月02日 11時05分