京町家の特徴とは?

由緒ある史跡が多いだけでなく、古くからの町家が残り、そのまち並みも外国人観光客人気の古都、京都。
近年では、昔ながらの町家を利用した飲食店なども増えており、歴史を感じられるのもうれしい。町家ブームの中でも、京都の町家は特に「京町家」と呼ばれ人気だ。

京都市内に古い家屋が多いのは、太平洋戦争において爆撃地域が限定されていたため。わずかではあるものの江戸時代の家屋も残っており、江戸時代半ばには、現代でいう京町家と似た構造になっていたと推測できる。しかし、京町家とは具体的にどんな家屋を指すのだろうか。その定義はどういうものなのか、確認してみたい。

京町家の特徴としてよく挙げられるのが、間口は三間程度と狭くて奥行きが深く、いわゆる「鰻の寝床」と呼ばれる町家が多い。しかし、敷地が狭くても庭はあり、敷地の一番奥の往来から離れてくつろげる場所に造られてされているのが一般的だ。商家なら、くぐり戸を抜けると商売を営む「店の間」があり、その奥に玄関庭が作られることもある。玄関から裏庭までつながる土間を「通り庭」と呼び、その途中に坪庭(前栽)と呼ばれる小さな庭があることもある。客をもてなす座敷は建物のもっとも奥側にあり、簡素でも床の間が造られている。

また、往来に面して格子が設置されていることも特徴のひとつ。屋外からは家の中が見えづらいが、室内から外はよく見えるため、プライバシーを守ると同時に、来客への対応がスムーズなのだ。外壁に「揚見世(ばったん床几)」と呼ばれる折りたたみ式のベンチが設置された家もある。

虫籠(むしこ)窓と呼ばれる塗籠式の、目の細い窓も京町家らしい意匠。虫籠窓は低い二階や屋根裏につけられており、「虫籠」と表記するものの、酒屋や麹屋で使う「蒸しこ」に似ているからこの名がつけられたとする説もあるようだ。竹や木をゆるやかにカーブさせた「犬矢来(いぬやらい)」と呼ばれる垣根も目を引く。犬矢来は、往来する馬のはねる泥や、犬や猫の放尿から板塀を守るものだが、装飾性が高く、見た目にも美しい。
次に、それぞれの特徴について、詳しく見てみたい。

「京都らしい風景」というと京町家のまち並みが浮かぶ。写真は花見小路「京都らしい風景」というと京町家のまち並みが浮かぶ。写真は花見小路

往来に面している京町家の格子

京町家の格子京町家の格子

格子の形状は、時代によって変化してきたようだ。
どのように発生し、発展したかは屏風絵などから推測するしかないが、もっとも古いと思われるのは縦横均等に格子子(こうしこ)を組んだ単純な格子である。江戸時代になると、竪子を見附八分(2.8センチ)前後に規則正しく並べた、繊細な「千本格子」が作られるようになり、「京格子」と呼ばれた。外壁面と一直線に作られるものを「平格子」と呼び、張り出したものを「出格子」と呼ぶ。木地のままで荒格子組みの米屋格子、彩色された荒格子組みの酒屋格子、二つ割りにした丸太を用いた木格子といった素材や構造による分類のほか、花街に用いる吉原格子や塀などに用いる高格子などの用途による分類もあり、格子が京町家に欠かせないものだったとわかる。

商家でよく見かけるのは糸屋格子。太い親竪子の間に1本~3本の細い子竪子が入り、一本子持ち、二本子持ち、三本子持ちなどと呼ばれる。京町家の格子は紅殻(べんがら)が塗られており、「紅殻格子」と呼ばれることも。紅殻は酸化鉄を原料とする紅い顔料で、防腐剤や防虫剤の役目も果たしている。

格子と並ぶようにして、庇の下の外壁に設置された揚げ見世は、商いの場にもなったほか、祭りの時には桟敷ともなった。京町家における庇部分は外でもあり内でもあり、通りと家の結界でもあったのだ。

奥庭と通り庭

坪庭は日当たりがよくないことが多いので、棕櫚竹や千両など、日陰でもよく育つ植物が植えられていることが多い坪庭は日当たりがよくないことが多いので、棕櫚竹や千両など、日陰でもよく育つ植物が植えられていることが多い

京町家の魅力のひとつは、四季折々に表情を変える庭だろう。
メインとなる奥の庭には植え込みや石が配置され、常緑樹のほかにもみじや椿、馬酔木などの季節を感じさせる木が植えられている。座敷から降りたところに沓脱石(くつぬぎいし)と呼ばれる大きめの石が置かれ、さまざまな形の飛び石が庭の中に延びている。つくばいは手を洗うだけではなく、浮き世の塵を払う意味があり、茶室の前に設けられることが多い。

通り庭はなるべく太陽のあたる方角……東西向きの町家なら南側寄り、南北向きの町家なら東側寄りに設けられた土間空間のことで、表の通りから敷地の奥まで通じている。通り庭に作られる坪庭は日当たりがよくないことが多いので、棕櫚竹や千両など、日陰でもよく育つ植物が植えられていることが多い。

建物内部に客人を招き入れる通路で、おくどさん(かまど)や井戸、流し、水屋、置き戸棚などを設置した「はしり」もここにある。はしりは炊事が行われる場所で、夏には入り口の引き戸を開放し、風が通り抜ける道にした。はしりは土壁に囲まれた吹き抜けになっており、屋根には天窓がある。天窓から縄が釣り下がっていて、居住空間から板戸の開け閉めが可能。

天窓は炊事の煙を出すためのものでもあるが、火が出た場合でも火勢が上に抜け、延焼しにくくする利点がある。町家が密集する京都において、防火はとても重要である。

京町家の座敷

そして庭を眺められる部屋が座敷。一番奥にあってもっとも格式が高く、客室にもなる。意匠を凝らした床柱があり、鴨居の上部には「落とし掛け」が渡されている。「床框」に花を活け、「本床」と呼ばれる壁には掛け軸などを掛けて、客をもてなすのだ。冬の間襖や障子が設置されていた開口部は、夏になれば簾や簾戸に取り替えられる。

もちろん、施主によってさまざまな工夫があるから、京町家を一概に定義はできないが、畳は3.15尺(約96センチ)×6.30尺(約192センチ)の京間寸法が一般的であり、鴨居までの内法寸法も5.7尺(約173センチ)と決められている。そのおかげで、建具や欄間飾りなどの譲り渡しが可能で、古い調度品が残されてきたのだろう。

「京町家」という呼称が生まれたのは、そう古い時代ではない。高度経済成長期に建て替えが盛んになり、建築基準法が改められた昭和25年以前に建造された古い木造住宅を「京町家」と呼ぶようになったと言われている。

近年、京町家は古い時代を偲ばせ、観光資源としても注目されている。京都には、京町家を利用したカフェやゲストハウスも多いから、訪れた際に京町家の造りの特徴も見てみてはいかがだろうか。

■参考資料
株式会社河原書店『京の町家』 中村昌生著 平成6年6月30日初版発行
株式会社文英堂『京町家の春夏秋冬-祇園祭山鉾町に暮らして-』 小島富佐江著 平成10年9月10日初版発行

庭を眺められる部屋が座敷。一番奥にあってもっとも格式が高く、客室として利用される庭を眺められる部屋が座敷。一番奥にあってもっとも格式が高く、客室として利用される

2018年 04月28日 11時00分