第一弾が、「リノベーション・オブ・ザ・イヤー2015」の無差別級部門で最優秀賞を受賞!

「DIYリノベーションスクール at ATC」ATC1階、正面玄関の階段にて、完成後の集合写真「DIYリノベーションスクール at ATC」ATC1階、正面玄関の階段にて、完成後の集合写真

大阪で開催されている「DIYリノベーションスクール」がある。一般公募で受講者を募り、工具の使い方や木の裁断方法、ビスの打ち方などを指導しながら、空き家などをリノベーションしていくという画期的なスクールだ。運営は主に、「DIY FACTORY」を運営する株式会社大都、住宅のリノベーションをはじめ店舗設計など多岐にわたりデザインを手掛ける9株式会社が実施している。
第一弾として、2015年に同スクールと大阪府住宅供給公社との共同企画で、泉北ニュータウン・茶山台団地のリノベーションを手がけ、その活動が「リノベーション・オブ・ザ・イヤー2015」の無差別級部門で最優秀賞を受賞した。

第2弾として、大阪南港ATC(アジア太平洋トレードセンター)で、2015年7月〜10月の3ヶ月間「DIYリノベーションスクール at ATC」を開校。主催は大阪府地域産材活用フォーラム、大阪の住まい活性化フォーラム、おおさかATCグリーンエコプラザとなり、株式会社大都、9株式会社、株式会社ma plus designが、受講者へのDIYの仕方、工具の使い方といった指導やスクールの運営を行い、約3坪・2種類の小屋を完成させている。

今回のスクールの特徴をはじめ主催者、運営者、受講者、それぞれの視点から「DIYリノベーションスクール at ATC」について聞いてみる。

素人が3坪・2種類の小屋を建てる!

プロの大工さんの指導のもと、受講生が完成させた2種類の小屋プロの大工さんの指導のもと、受講生が完成させた2種類の小屋

「DIYリノベーションスクール at ATC」では、毎週土曜の朝から夕方までATCの1階・正面玄関(屋外)と11階に、それぞれ一つずつ約3坪の小屋をプロの大工職人の指導のもと、素人の受講者が最初からDIYで造る。第1弾の茶山台団地リノベーションのときもキャンセル待ちがでる人気ぶりだったが、今回も定員30名に対し倍の応募があり抽選になったといい、このスクールの注目度の高さが伺える。平均年齢30代前半くらい、意気揚々とした20代〜60代の男女が楽しそうに参加していた。中には、第1弾のときから参加している方もいて、受講者の熱心さが伝わってくる。

今回の特徴は、大阪産の木材を使い2種類の小屋を造ることだ。1階は屋外、11階は建物内に造るためそれぞれ仕様が異なる。1階の小屋は、高気密・高断熱仕様に、11階は消防法のからみで屋根が付けられないため、屋根の骨組みまでとし、壁は透明ガラスを施した。受講者にすれば、一度で2種類の小屋を建てる経験ができることになる。3坪とはいえ、柱や梁、壁、屋根といった構造は、一戸建ての木造住宅を建てるのとほとんど変わらない。自分の家や祖父母が住んでいた空き家など、自分たちで手直ししたいと考えている人にとっては、家の構造を知ることができる、またとないチャンスだろう。実際に作業をすることで、電動丸ノコやインパクトドライバーといった工具の使い方をはじめ作業の中で、やっていいこと、してはいけないことの分別がつき、自分でDIYをするときの知識と経験が得られるのだ。

「DIYリノベーションスクール at ATC」の開催風景
https://www.facebook.com/DIYRSCHOOL/timeline

日本に、DIYの文化を根付かせたい!

講習や実習を受けながら、熱心にメモを取る受講生講習や実習を受けながら、熱心にメモを取る受講生

このスクールを通じて、運営者の9株式会社・代表の久田氏は、どのようなことを伝えたいと思っているのか話を伺った。

「DIYリノベーションスクール」の活動について久田氏は、「DIYの文化を日本に根付かせたい」と語る。その理由について「今、日本には約820万戸の空き家があります。これからは、人口とともに世帯数も減少していくのは容易に想像できます。それに伴って空き家の数はますます増加していくでしょう。それでも、ハウスメーカーは新築を造り続けているんです。現状でさえ、住宅に空きがある状態なのにですよ。自分が生まれ育った家や、よく遊びに行ったおじいちゃんおばあちゃんの家を取り壊すのは忍びない。DIYで自分の好みにあった仕様に改修できれば、住まいも生まれ変わることができます。工務店などに依頼するのも手段のひとつですが、私は自分で出来るところは自分でやる方が楽しいし、家に対する愛着も増すと思うんです」と子どものように話す。
そして、「アメリカや外国では、自分で家を手直ししたり改修したりするんです。戦前の日本も、家を自分達や近所の人達と一緒に改修していたんですよ。でも、戦争で多くの家が焼けて大量の住宅が必要になり、一気にたくさんの住宅を建築するハウスメーカーが現れました。住宅を買ってもらうために『結婚したら、家を買おう!』という風潮ができたおかげで核家族化が進み、住宅をはじめDIYが親から子へ受け継がれることも減っていったんです。DIYができるようになれば、長くその家に住む事ができるし、誰かに貸すこともできるようになるんです」と現状にいたるまでの住宅事情への思いを語ってくれた。

学生から専業主婦まで、幅広い世代が参加した参加者の声

張り切る受講生!左から、宇佐美さん、加藤さん、熊田さん張り切る受講生!左から、宇佐美さん、加藤さん、熊田さん

「DIYリノベーションスクール at ATC」の参加者に感想を聞いてみた。

第1弾で全回参加し、今回も抽選で当選した宇佐美さん(男性・40代)は、「実家の農地に農作業用の小屋を建てたいんです。1回目のときは、何が何だか分からないまま参加したけど、今回は前回の経験もあるのでもう一度受ければ、一人でもできるようになるんじゃないかと思ったんです」と話す。「今回は、小屋のDIYなので丁度良かった!知り合いも面白そうだと言ってくれたので、一緒に農作業の小屋を造る予定なんです」と楽しそうだ。

家で、靴箱やテーブル、椅子などをDIYで造ったことがあるという加藤さん(男性・40代)は、家具は造ったことはあっても小屋を造ることはそうそうないので、面白そうだと思った」とワクワク気分を漂わせながら話してくれた。「ここでは、他で聞けないようなことが聞けるので、とても参考になります。それに、このスクールを通じて同じ趣味の仲間もできるので、これからの交流も楽しみです」と話していた。

団地でのリノベーションの際、1度だけ解体作業に参加したという熊田さん(女性・50代)は、「前回1回しか参加出来ず続けて申し込もうと思ったら、すでにキャンセル待ちになっていて。次があったら絶対、申し込もうと思ってたんです!」と凄い意気込みで話されていた。「私は、7回引っ越しをしていて7回も色んな家を見てきましたが、自分の家の壁や床を剥がしてみることはないでしょ。だから、すごく面白くて楽しかった!今回は、小屋を造るので家の構造が分かっていいなと思う。DIYの知識は全くないけれど、好奇心だけは人一倍あります!」とテンション高く語ってくれた。

他にも、「図面を引くことはあっても、現場を見たり作業することがないので、体験したいと思って参加しました」という建築関係の学校に通う学生さんがいたり、「ゲストハウスを造りたい」という方や「自分の家をDIYで、リノベーションしたいから」など、様々な目的を持って参加していた。

運営者の株式会社大都・代表の山田氏は「工具の使い方なんて、メーカーもホームセンターも教えてくれないし、どの工具を選べばいいのかアドバイスをくれることもほとんどないでしょ。DIYが日本の文化になっていない証拠なんです。このスクールを通じて、DIYを楽しんでくれる人達が増え、その人達が次の人に、そしてまたその次の人というようにどんどん広がってくれたらいいなと思います。3ヶ月もあれば、DIYを一緒に楽しめる素晴らしいチームができると思います」とスクールの受講生のこれからが楽しみな様子。

このスクールの開催で主催者は、何を伝えたかったのか

大阪府知事の松井氏も参加した「DIYリノベーションスクール at ATC」の餅まきイベント大阪府知事の松井氏も参加した「DIYリノベーションスクール at ATC」の餅まきイベント

「DIYリノベーションスクール at ATC」の開催について、主催者に話を聞いてみた。

「今回のスクールでは、大阪産の木材が使用されています。今、日本では輸入木材で建築することが多いのですが国産材でしかも大阪産の木材を使うことで、木はもちろん日本の林業についても身近に感じてもらえたらと思いました」そう語ってくれたのは、大阪府地域産材活用フォーラムに加盟している大阪府木材連合会の専務理事・三宅英隆氏だ。
そして「日本の住宅市場は空き家に対する課題を抱えています。そこで今後、リフォームやリノベーションといった動きが活発になってくるのは、当然な流れだと思っています。関西で木材といえば、奈良の吉野杉や京都の北山杉が知られていますが、大阪にも杉の林業があることを知って欲しいと前々から思っていました。今回は、その大阪産の杉をメインに使ってもらっているんですが、杉には調湿効果や空気の清浄化、免疫力アップ、脳の活性化といった特長があり、それを実際に手で触れて体感して欲しいと思ったんです。空き家対策の一助として活動するこのDIYリノベーションスクールの考えと、私たちの思いがマッチしました」と、付け加えてくれた。

大阪の住まい活性化フォーラムの会長である近藤良一氏(一般社団法人 関西住宅産業協会 副理事長)から話を伺うことができた。「大阪府の空き家率は、約14.8%で全国平均の13.5%を上回っています。先ほど、三宅氏からお話があったように、DIYができるようになることで、受講した方々が各地域に戻り興味を持つ人が増えれば、DIYの普及で空き家率が少しでも解消できるのではないかと考えました。また、DIYを通じて同じ趣味を持つ仲間が増えることも、この企画の魅力だと思います」と話す。「同じ目的をもつ受講者が輪になって説明を聞いていたり、集まって作業しているのを見ると楽しそうでいいなと思いました」とスクールの開催風景について話してくれた。

また、ATCの公共サービス事業部・エコプラザ課長 エイジレスセンター課長の安田夏実氏は「木の良さを知って欲しいという思いがあって、今回ATCの玄関口である階段の所に、DIYリノベーションスクールの実施場所を設置しました。人通りの多い場所なので、どんな風に見えるのかなと思っていましたが、木の香りがして建築中の小屋の様子が見られるのは、とても良かったと思います。ATCでは、2015年4月に親子3世代が安心して安全に楽しんでもらえる『ママのフォレストパーク』を開設しています。建物の中なのに森の中のように感じてもらえたらと、床や本棚などの家具類は国産材を使用し、裸足で木の床の上を歩き、手で木に触れられるようになっています。近年、子どもに自然を感じさせたい、親しませたいと考える両親が増えていて、いつも多くの家族連れで賑わっています。その状況から、説明を聞いて木について知ることも大切ですが、まずは木に触れて感じることが大切だと思うようになりました。このスクールの取り組みが良い連鎖を生んでくれると期待しています」と語ってくれた。

空き家率への解決策のひとつとして、また大阪産の木材に触れて感じてもらいたい、といった主催者の思いは様々だが、DIYリノベーションスクールを通じて多くの人に住宅や木材に関心を持ってもらいたいという気持ちは共通しているようだ。

<取材協力>
主催者
大阪府地域産材活用フォーラム:http://www.mokuzai.or.jp/forum/
大阪の住まい活性化フォーラム:http://osaka-sumai-refo.com/
おおさかATCグリーンエコプラザ:http://www.ecoplaza.gr.jp/

運営会社
株式会社大都:http://www.daitotools.com/
9株式会社:http://www.ninedesign.jp/
株式会社ma plus design:http://ma-pd.com/

2016年 03月18日 11時10分