住民主体か、企業主体か対応方法は2種類

マンションや一戸建てなど住民同士の交流が希薄な現代において、コミュニティ形成のファシリテーターとして、多様な考えをまとめつつ円滑な交流をサポートし、住民同士のコミュニティデザインに取り組む株式会社シー・ブラッド。その同社が行っているコミュニティデザインには、2通りの対応方法がある。1つは、ゆくゆくは住民に引き継ぐことを前提に、一緒に作業を行う住民主体のもの、もう1つはシー・ブラッド単体もしくは共同事業として事業主とともに、継続的に行っていく企業主体のものだ。

住民主体のものには、対応期間が定められており、その大半は1年半〜2年程度で長くて4年程だという。期間終了後は住民がその運営を引き継ぎ、自主的に開催していくというもの。この期間を同社では育成期間と呼んでおり、コミュニティ運営の方法が分からない住民に対してイベントやサークル、交流会などの運営を一緒に行いどのように進めればいいのか、スムーズに対応できるようサポートを行う。もちろん引き継いだ後も住民の方が困らないようマニュアルを作成し譲渡する。企業主体については、期間の定めが無く運営は住民サポーターの方々と一緒に行う。企業主体の対応物件のほとんどは、大規模開発に伴う数百戸クラスの物件やニュータウンが多いという。

住民主体、企業主体それぞれの事例として、分譲マンション・一戸建てを含む地域開発を行っている「彩都」をはじめ、分譲マンションの「ビッグカーサ 堺しらさぎ駅前」「MUSEたかつき」「ミリカ・ヒルズ」、団地の建替え事業となる「新千里西町団地」などがある。

その中から、企業主体・住民主体それぞれの具体的な事例をみてみよう。

反響の大きさで実感したリアル体験イベントの必要性 そのキッカケとなった「彩都」

人気が高い田植えと稲刈り体験、フリーマーケット、餅つき大会人気が高い田植えと稲刈り体験、フリーマーケット、餅つき大会

箕面市と茨木市にまたがる北大阪に「彩都」の愛称で知られる「国際文化公園都市」がある。大阪府や都市再生機構(公共)などに加え、阪急電鉄(民間)などが協力して開発が進められている新都市建設プロジェクトだ。

2004年「彩都」の街開きと同時に、開発事業者が入居後のコミュニティづくりをサポートする会員組織「彩都スタイルクラブ」を立ち上げた。その4年後には、阪急電鉄株式会社・阪急不動産株式会社・独立行政法人都市再生機構そしてシー・ブラッドの4社の共同事業として「一般社団法人コミュニティ彩都」が設立。一部彩都スタイルクラブの業務委託を請け負い、コミュニティ育成をサポートしている。

この9年間で実施されたイベントには、子育て世代に人気の「子育て交流会」・子育てを卒業した世代に喜ばれる「大人の交流会」など各世代のニーズに沿ったものから、どの世帯にも支持される「料理サークル」「フリーマーケット」「農業体験イベント」「餅つき大会」などを実施。中でも評価が高いのは、住民自ら立ち上げた実行委員が主催する「夏祭り」だ。現在の彩都での人口は約1万人、その約6割となる6000人が参加するというから凄い。販売当初から“コミュニティの街”というコンセプトが盛り込まれていたこともあり、入居者のコミュニティに関する意識は高く何事にも積極的に取り組んでいるという。その精力的な活動が、毎年の恒例イベントの盛り上がりを支えている。

そこで、ふと考えてみた。もしコミュニティに関するコンセプトが盛り込まれていなかったら、どうなっていただろう。最初からコミュニティ形成が定義されている物件とそうでない物件では、入居者のマインドに違いがでるのではないだろうか。コミュニティの盛り上がりを考えたとき、物件を検討する上でコミュニケーションに関する事項の有無が、1つのチェックポイントになるかもしれない。

省エネとコミュニケーションがコラボ「ゆりの木倶楽部」

約7割の住人が参加した「ゆりの木倶楽部」発足記念パーティー約7割の住人が参加した「ゆりの木倶楽部」発足記念パーティー

総240区画の大規模共同分譲地「スマートプロジェクト 240 三田ゆりのき台」というニュータウンがある。当街区内の住宅には共通仕様として、HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント、通称:ヘムズ)が搭載されており、家全体および家電機器の電力使用量データの収集、見える化が可能になっている。国土交通省主管「省CO2先導事業プロジェクト」として採択されているこの物件では、これらのエネルギー使用量に関するデータを、5年間にわたり国土交通省に対し報告する必要があるという。

この物件が同社の行う住民主体の事業に新たに加わり、居住者コミュニティ形成を促す会員組織「ゆりの木倶楽部」が発足した。コミュニティ形成の源となる居住者の交流会はもちろん、省CO2への意識向上を目指す。

スペックの高い設備が宝の持ち腐れにならないよう、今これだけの電力を使っているので、こうすればあとこれだけ電気代を安くすることができるといったアドバイスの実戦により、HEMSを使いこなすための細かいサポートや街並みの美化・環境保全などに取り組む予定だ。

2013年10月に開催された、発足記念パーティーでは住民の約7割が出席するという高い参加率からも、コミュニケーションやエネルギー問題への関心の高さが伺える。この街が取り組む、省エネやコミュニティ形成が今後どのような形で現れてくるのか楽しみだ。

コミュニティ育成で得られる効果は?

コミュニティを育む「住民交流会」の開催風景コミュニティを育む「住民交流会」の開催風景

では、これらのコミュニティ育成がもたらした効果とは、どのようなものなのか。

同社では、新居への引越しを終え新しい生活の始まりとともに、住民同士の交流会を開催するという。早い段階で交流を深めることで、どの号室もしくはどの区画の誰なのか、顔と名前が一致するようになる。そうすれば、相手に対する親しみが生まれ普段の会話が増え、多くの情報が入ってきやすくなるという。例えば、どこそこのスーパーは新鮮で品揃えが良いとか、こうすると掃除がしやすくなるとか、美味しい料理のレシピといった具合だ。それ以外にも、顔見知りが増えると地域の防犯効果も期待できる。見慣れない人を見かけると声を掛けるといった行為は、犯罪の抑止効果を生むことでも知られている。また、年配の方や体の不自由な方がいる世帯についても、地域の住民同士で気を配ることが可能だ。

「お互いの理解が深まれば、色んなことを解決するにあたってやりやすくなる。そのおかげで、マンション内や一戸建ての街区内、ひいては地域全体が良くなっていくのではないか」と中澤氏は話す。

また、コミュニティイベントを開催する際は、その物件がある周辺地域の店舗や施設に協力を依頼するという。例えば、ヨガサークルや料理教室、農業体験を開催しようとすれば、地域内にあるヨガ教室・料理教室のインストラクターや農業家の方を起用する。また、クリスマスパーティーを開催するなら、必要となるサンタの衣裳やクリスマスツリーといったパーティーグッズ、みんなで楽しく食べる料理やケーキといった食事類やドリンク類も、もちろん近くの店舗で購入する。そうすることで、住民と各店舗、各教室などの交流が生まれ地域の活性化にもつながっていくという。

コミュニティ育成にかかる費用は?

さて、ここで気になることがある。それは、コミュニティデザインに取り組む上で必要となる費用だ。運営費などは、どのようになっているのだろうか?

企業主体のものについては、運営費・企画費・コーディネーション費は事業主が負担している。また、住民主体のものについても定められた育成期間内においては、企業主体と同様に事業主の負担となっている。住民が負担するのは、飲食代・講師代・衣裳代といったイベントを行うための実費費用だけとなる。この費用は、その物件の規模や開催するイベントのプラン、運営内容などによって異なるが、戸当たり月々300円〜500円というケースが一般的だという。わずか数百円で、これだけのことができるのら、やってみたいと思うに違いない。

また、住民主体についてはサポート期間終了後、住民からの要望があれば継続することが可能だという。通常、コミュニティデザインに関する契約はシー・ブラッドと事業主間で締結されている。その契約先が管理組合もしくは自治会へと変更になり、事業主が負担していた費用を管理組合・自治会が支払うことになる。それでは、住民の負担が大きくなるためイベント内容のスペックはそのままに、同社が対応していた役割を組合などに変更することで費用を見直すこともあるという。

とはいえ、住人の金銭的な負担が増えることに変わりはない。一体、どれだけの物件がサポートの継続を望んだのか?それについて中澤氏に質問してみると「今のところ、関西圏で継続しなかった物件はありません」という答えが返ってきた。どの物件も入居者同士のコミュニケーションは続けたいということなのだろう。この結果は、それだけ住民の満足度が高いということではないだろうか。


取材協力:株式会社シー・ブラッド
http://www.c-blood.com/

2013年 12月11日 10時08分