住まいと子育ての密接な関係

IKEA新三郷。取材時は平日の午前中だったが、小さい子供連れのお母さんが多かった。子供が遊べるスペースがあったり、広いレストランでお喋りをするお母さんたちがいたりと、ファミリーも嬉しいつくりとなっているIKEA新三郷。取材時は平日の午前中だったが、小さい子供連れのお母さんが多かった。子供が遊べるスペースがあったり、広いレストランでお喋りをするお母さんたちがいたりと、ファミリーも嬉しいつくりとなっている

住まいの購入のきっかけに「子供の就学」が多く挙げられたり、最近、子供の教育に良い機能や設備を採用した商品を住宅メーカーが展開したりと、住まいと教育の関係が密接だと考える親は多い。

住まう環境が子育てに影響することについては、古くはこんな有名な言い伝えもある。
儒教の祖である孔子の一家が墓地の近くに住んだところ、孔子が葬式の真似をするようになった。すると孔子の母は「この環境は良くない」と別の場所に引越したという。学校の近くに引越すと、孔子が勉強をするようになったので孔子の母はその場に長く住むことを決めた、というものだ。

日本の子供部屋は、戦後の民主主義教育の中で、個室の勉強部屋を与えることで健全な子供が育つといった考えから始まったと言われている。東京ガスの都市生活研究所の調査(2013年)によると、小学校低学年の子供の5割以上(兄弟姉妹と共有の部屋も含む)、高校生では9割以上が「自分の部屋を持っている」と回答しており、子供に専用の部屋を与えるという文化は根強い。最近では住まいや暮らしから子供の心を養うといった意味の「住育」という言葉も登場し、住まいと教育の関係はこれからますます注目されていくだろう。

勉強する場、遊ぶ場という役割を持ち、「子供が育つ場所」である子供部屋は、ただ子供らしいインテリアにすれば良いというわけではなさそうだ。子供らしいかわいらしさと、成長にも良い影響を与える部屋にしたいというのは多くの親の望みだろう。
そこで、子供部屋に関する商品を数多く展開するイケア・ジャパン株式会社に、子供部屋のつくりかたのポイントを聞いてきた。

“お友達を呼びたくなる”楽しい部屋に

今回取材したIKEA新三郷には、子供部屋のショールームが5つあり、「7歳のサッカー好きな男の子」などのコンセプトに沿ったコーディネートがされている。キッズコーナーの販売担当スタッフの江藤真紀さんに、子供部屋のインテリアのポイントを聞いてみた。

「“子供の好きなこと”をポイントに、まずは好きな物や楽しめる物を置くと良いです。例えばスポーツが好きならスポーツの玩具、絵を描くことが好きなら壁に布を張って自由に絵が描けるようにしてあげるなど、楽しめて、遊べる空間を作ってあげると良いですね。

また、梯子で登るタイプのベッドの下を遊ぶスペースにしたり、ベッドなどにカーテンをかけたり簡単な屋根を設置できるグッズで「基地」のようにすると、子供が自然にワクワクする仕組みになりますよ」

まずは子供の好きなもののテーマを決めて、それに合うグッズを揃えるだけで部屋の統一感も出そうだ。ショールームでは、壁掛けフックに玩具やカラフルな収納カゴを吊るしていたりと、「見せる」収納をすることでも子供らしい部屋を演出する工夫もされていた。子供用のグッズはカラフルな物が多いので、飾るだけで部屋が楽しい雰囲気にもなり、気軽に真似できそうだ。

「キーワードは“お友達を呼びたくなる部屋”です」と牧さんが話される通り、まずは何より子供が楽しく、”好きになる部屋”づくりがポイントのようだ。部屋が好きになれば物も大切に使うし、お友達が集まって遊ぶことで、自分のおもちゃを貸してあげるなど、子供の社会性も養われるといった効果もありそうだ。

(左上、右下)好みに合った壁紙にしたり、ベッド下のスペースや葉っぱの屋根で</br>「基地」のような感じを出すなど、子供が楽しめるインテリアのショールームが展示されている</br>(右上)壁掛けのフックにカラフルなカゴや玩具をかけて「見せる収納」に</br>(左下)日照時間が短い北欧発のイケアでは、照明を取り入れるインテリアも得意だそう。</br>キッズ向けの照明は、全て電球に直接手が触れない設計となっている(左上、右下)好みに合った壁紙にしたり、ベッド下のスペースや葉っぱの屋根で
「基地」のような感じを出すなど、子供が楽しめるインテリアのショールームが展示されている
(右上)壁掛けのフックにカラフルなカゴや玩具をかけて「見せる収納」に
(左下)日照時間が短い北欧発のイケアでは、照明を取り入れるインテリアも得意だそう。
キッズ向けの照明は、全て電球に直接手が触れない設計となっている

ゲーム感覚でできる仕組みで”お片づけ”の習慣も

好きな物で楽しく遊んだ後、親としてはそれだけでなく「お片付け」も教えたいところ。片付けの方法について江藤さんに質問すると、「それも遊びに取り入れて」という答えだ。

「しまうものの名前や絵を描いたり、色分けをしたボックスなどを使って、“そこに正しくお片付けできるかな?”といった風に、ゲーム感覚で楽しく片付けられるような収納がオススメです」
遊びの延長でできる仕組みにすることで、自然に片付けを習慣づけようということだ。イケアでは、引き出しや扉の色を変えられる収納棚も提案している。

「“成長できる家具”をキーワードに、棚の高さやレイアウト、引き出しの色を変えられる収納を用意しています。成長や好みの変化によって子供用グッズはすぐに使わなくなってしまうこともありますが、手を挟まない設計を採用したり、使い方やデザインの変更を可能にすることで、就学前から大人になるまで、長く使える家具として開発しました」
よく見ると、イケアの子供部屋ショールームにはそれぞれに同じ収納棚が置かれているが、引き出しの色が変わっているだけで年齢や性別の設定が違う部屋でもそれぞれにマッチしていた。

成長や興味の変化によって、子供用のグッズを使う期間はそれぞれ意外に短いものかもしれない。その点、こうした長く使える家具や安いものは100円台など安価で様々な種類があるイケアのキッズ向け商品は、取り入れやすいだろう。安心して使い倒せたり、季節によってインテリアを変えて楽しむこともできそうだ。

(左上)緑のボックスには画用紙やクレヨンを、赤いボックスにはサッカーボールを、など</br>見た目も楽しくゲーム感覚で片付けられるように。</br>また、段差になっている棚は実は子供が腰掛けても壊れない耐久性まで考えられているそう。</br>(右)「成長する家具」として開発された収納棚。扉や引き出しの色、収納棚の高さなどを</br>使い方に合わせて編集できるようになっている</br>(左下)右の写真の棚と同じものが利用されている部屋だが、色と配置の工夫で</br>「12歳の男の子」というコンセプトの部屋にもマッチしている(左上)緑のボックスには画用紙やクレヨンを、赤いボックスにはサッカーボールを、など
見た目も楽しくゲーム感覚で片付けられるように。
また、段差になっている棚は実は子供が腰掛けても壊れない耐久性まで考えられているそう。
(右)「成長する家具」として開発された収納棚。扉や引き出しの色、収納棚の高さなどを
使い方に合わせて編集できるようになっている
(左下)右の写真の棚と同じものが利用されている部屋だが、色と配置の工夫で
「12歳の男の子」というコンセプトの部屋にもマッチしている

家族のコミュニケーションと自立心。
子供が専用スペースを持つことの意義は?

今回お話を伺った、IKEA新三郷 インテリアデザイナーの長岡枝里さん今回お話を伺った、IKEA新三郷 インテリアデザイナーの長岡枝里さん

そうした商品で飾るイケアの子供部屋は、3つの理念に基づいてつくられているという。

① Activity(アクティビティー)
「勉強する」「寝る」「遊ぶ」など、その部屋で何をするか、目的を考える。子供らしいかわいらしさだけでなく、目的に合った機能性も大切に。
② Safety(セーフティー)
商品そのものと、配置の安全性を確保する。棚の上に乗る、玩具を口に入れるなど、大人が予想できない、そのものの目的と違う動きや使い方をしても安全な形状にする。
③ Fun(ファン)
楽しく過ごせる部屋にする。色やデザインなど、その子の好みに合ったものを取り入れる。また、想像力を刺激するような仕掛けも取り入れる。

キッズ向け商品の開発には通常よりもリサーチやテストを入念に行い、一つの商品を数年かけて開発することもあるのだとか。子供部屋に対するイケアの思いの強さを伺わせる。しかし、そこが楽しいばかりに部屋に篭ってしまっては本末転倒だ。

「子供部屋“だけ”が楽しい場所にならないよう、リビングにも子供が好む飾りや収納を取り入れて、家族のコミュニケーションもきちんと取れるような工夫が必要です」(長岡さん)
最近ではリビングで勉強をする方針の家庭も多いので、机はリビングに置いても良いかもしれない。都市型の住宅やマンションなど、子供に個室を与えるのが設計上難しい住宅では、リビングのこうしたスペースを子供専用としてあげるのも良さそうだ。

子供が専用のスペースを持つことの意義について、長岡さんはこう話す。
「自分専用の場所を持つことで、自立心を養うことができます。例えば、朝は一人で起きる、遊んだ後は片付ける、といった生活習慣を早いうちから身につける助けになります。ただし初めは自分でできない事も多いもの。それは親が道しるべとなって教えてあげたり危険を排除したりしてあげることで、楽しんで成長する場所であってほしいですね」

単なる個室という役割でなく、子供が成長する重要な場所である子供部屋。ただインテリアを楽しむだけでなく、大人が使う部屋以上に、意味や機能を考える必要がありそうだ。楽しさ、安全性、機能性をポイントに、それぞれの子供に合った部屋づくりを楽しみたい。

■取材協力
IKEA新三郷:http://www.ikea.com/jp/ja/store/shinmisato

2015年 04月24日 11時06分