賃料が割安な物件に共通してみられる特徴を深掘り

前回の分析結果では、理論賃料に比べて募集賃料が割安な物件が多い地域として、古くから人気の高い住宅地を内包するエリア:目黒区・世田谷区・渋谷区と、東京駅などの都心部への交通利便性が高く近年人気が高まっているエリア:荒川区・足立区の2グループが選定された前回の分析結果では、理論賃料に比べて募集賃料が割安な物件が多い地域として、古くから人気の高い住宅地を内包するエリア:目黒区・世田谷区・渋谷区と、東京駅などの都心部への交通利便性が高く近年人気が高まっているエリア:荒川区・足立区の2グループが選定された

前回の記事、エリア分析では、RR (理論賃料÷募集賃料)が高い、すなわち理論賃料に比べて募集賃料が割安な物件が多い地域をデータから導き出した。

それにより、古くから人気の高い住宅地を内包するエリア:目黒区・世田谷区・渋谷区(グループ①)と、東京駅などの都心部への交通利便性が高く近年人気が高まっているエリア:荒川区・足立区(グループ②)の2グループが選定されている。

そこで、今回の物件属性分析では、2グループにおいて賃料が割安な物件に共通してみられる特徴を深掘りすることとする。

賃料の割高・割安度合いを立地・構造・築年数などで説明する統計モデルを活用

今回は、各物件について、割高・割安度合いを示すRRを、その属性(立地、構造、築年数など)で説明する統計モデルを構築し、モデルの推計パラメータおよびその統計量をもとに、賃料の割高・割安度合いに与える影響の大きさを把握することを試みた。
具体的には、被説明変数をRR、説明変数を理論賃料の推計に用いたものと同じ属性値とする線形回帰分析を行った。部屋タイプや物件種別に関する対象範囲等の条件も前編/エリア分析と同様である。

【分析に用いたデータ区分】
●分析期間・対象エリア/2017年・東京23区全体
●物件種別/マンション(鉄骨造、RC造、SRC造)
●部屋タイプ/単身者向け住戸(1R、1K、1DK)

データ期間は2017年の1年間であり、サンプル数はグループ①で66万3,474物件、グループ②で17万1,915物件である。

LIFULL HOME'Sが保有するこれらの膨大な募集賃料データを用いて、グループ①・グループ②の地域に立地する物件の賃料が割安になりがちな要因を分析によって洗い出した。

グループ①(目黒区・世田谷区・渋谷区)~駅遠・築古物件が割安な傾向

グループ①(目黒区・世田谷区・渋谷区)の地域に立地する各物件について回帰分析を行った結果が図表1である。説明変数(物件属性)が統計的に有意であるかどうかを示すt値を確認すると、ほとんどがRRに有意に影響している。

中でも、物件属性として分かりやすい「専有面積」「(最寄駅からの)徒歩距離」「築年数」の係数の符号(プラス/マイナス)を見ると、

●専有面積が小さい(部屋が狭い)
●徒歩距離が長い(駅から遠い)
●築年数が大きい(築古)
ほどRRが大きい(賃料が割安)である傾向が読み取れる。

もちろん、部屋が狭い・駅から遠い・築古、といった条件は賃料水準そのものを押し下げる要素であるが、今回の分析結果が示唆していることは、単純に賃料が安いということではない。
グループ①(目黒区・世田谷区・渋谷区)の地域内で賃貸マンションを探そうとしている読者にとって、『駅から遠くて築古』な物件は、単に駅近で築浅の物件より安いという以上に、理論賃料に比べて“割安”な賃料設定となっている可能性が高いということだ。

出所)LIFULL HOME'Sのデータを用いて三井住友トラスト基礎研究所が作成出所)LIFULL HOME'Sのデータを用いて三井住友トラスト基礎研究所が作成

グループ②(荒川区・足立区)~面積の広い部屋が割安な傾向

次にグループ②(荒川区・足立区)の地域に立地する各物件について回帰分析を行った結果が図表2である。

「専有面積」「(最寄駅からの)徒歩距離」「築年数」の係数の符号を見ると、グループ①と異なり、
●専有面積が大きい(部屋が広い)
ほどRRが大きい(賃料が割安)傾向が出ている点が特徴的である。
統計的に有意であるかどうかを示すt値も非常に大きい。

ここで注意が必要なのは、「部屋が広い物件は狭い物件に比べて賃料が安い」ということではなく、賃料水準そのものは部屋が狭い物件よりも高いが、面積が大きくなることに対する賃料の上昇度合いが小さいという点だ。1ルーム(あるいは1K、1DK)でも比較的広い部屋を東京23区内で探しているという読者は、グループ②(荒川区・足立区)の地域に割安な物件が見つかるかもしれない。

出所)LIFULL HOME'Sのデータを用いて三井住友トラスト基礎研究所が作成出所)LIFULL HOME'Sのデータを用いて三井住友トラスト基礎研究所が作成

東京23区内で割安な賃貸マンションを探すなら

以上の分析により、東京23区で割安な賃貸マンションは、目黒区・世田谷区・渋谷区(グループ①)、荒川区・足立区(グループ②)に比較的多い傾向にあり、中でも、グループ①の地域では駅から遠くて築古な物件、グループ②の場合は専有面積の広い物件の賃料が理論賃料に比べて割安になりやすいことが示された。

なお、分析結果はあくまで2017年の1年間に募集された賃貸マンションの賃料事例に基づいたものであり、また、理論賃料の値は使用する統計モデルの構造によって変わり得ることから、常にこのような傾向が出ているとは限らない点には留意を要する。

とはいうものの、東京23区内で部屋探しをする際の参考情報の一つになれば幸いである。

調査データ:https://www.smtri.jp/report_column/report/2018_04_13_4096.html

◎執筆担当:三井住友トラスト基礎研究所 菅田修、竹本遼太
 分析担当:LIFULL HOME'Sデータ分析チーム

2018年 04月30日 11時00分