情報化社会においても割安な物件を探すのが難しい賃貸マンション市場

近年、良好な雇用環境に下支えされ、東京23区の賃貸マンションは需給バランスが改善し、賃料相場が緩やかに上昇している。

ただし、一般的な賃貸需要者の所得環境は明確な改善へと結びついているとは言いがたく、賃料負担力は大きく変化していない。そうなると、生活コストに占める住宅賃料の割合が上昇する傾向にあり、需要者は出来るだけ割安な賃貸物件を探索するはずである。

アプリなどのインターネットを通じた物件検索が一般化してきたことで、以前に比べると賃貸物件や相場についての情報は増加している。しかし、賃貸需要者にとっては、引っ越しを伴う物件検索の機会は限られており、不動産は個別性が強くエリアの相場観を認識できても割安な物件であるかを判断する指標が乏しい状況下にある。

そこで、LIFULL HOME'Sのデータを元に,どのようなエリアや物件が割安にミスプライシングされやすいかを東京23区で分析を行い、狙い目なエリアや物件属性を明らかにしてみたい。

今回は、分析データからみた東京23区の割安賃貸マンションのエリアをお伝えする。

東京23区全体で賃料を被説明変数とするモデルを構築し、物件ごとの理論賃料を算出

割安な物件を明らかにするには、ミスプライシングを定義する必要がある。

この記事におけるミスプライシングとは、LIFULLが保有する賃貸マンションのデータを活用して、東京23区全体で(募集)賃料を被説明変数として構築したモデルから算出される物件ごとの理論賃料と分析に用いた募集賃料の乖離幅が大きいことを指す。

そのためには、理論賃料を算出する必要がある。そこで、下記のデータ区分に該当するデータを用いて分析を行い、(図表1)のように説明力の高いモデルによって、各物件の理論賃料を算出した。

【分析に用いたデータ区分】

●分析期間・対象エリア/2017年・東京23区全体
●物件種別/マンション(鉄骨造、RC造、SRC造)
●部屋タイプ/単身者向け住戸(1R、1K、1DK)

出所)LIFULL HOME'Sのデータを用いて三井住友トラスト基礎研究所が作成出所)LIFULL HOME'Sのデータを用いて三井住友トラスト基礎研究所が作成

RRが1.1以上の比率が高い区を抽出することで割安な物件が多いエリアを選定

物件ごとに算出した理論賃料とそれぞれの募集賃料から、以下に定義するRRを算出してみた
RRが1.0から大きく乖離しているとミスプライシングが生じていることを示している。

●RR=理論賃料÷募集賃料
●RR > 1の物件は割安であると言え、RR <1の物件は割高であると言える。

RRを算出した結果、多くの物件は0.9以上1.1未満のレンジに納まっている。
しかし、区別でみると、このレンジ外の物件比率が高い行政区がいくつか存在している。

この記事では、割安な物件を探索する条件を明らかにしたいので、(図表2)の黄色セルのエリア(RRが1.1以上の比率が23区の中で上位5区)に注目する。

出所)LIFULL HOME'Sのデータを用いて三井住友トラスト基礎研究所が作成</br>注)0.9%未満の赤いセル、1.1%以上の黄色いセルは、比率の高さが23区の中で上位5区を示す出所)LIFULL HOME'Sのデータを用いて三井住友トラスト基礎研究所が作成
注)0.9%未満の赤いセル、1.1%以上の黄色いセルは、比率の高さが23区の中で上位5区を示す

古くから人気の高い城南エリアと近年評価が上がっている城東エリアの割安物件比率が高い

RRを算出した結果を見てみると、理論賃料に比べて募集賃料が割安な物件が多いエリアとして、目黒区・世田谷区・渋谷区・荒川区・足立区が上位に上がった。

これらは立地的な観点から、以下の2つに分類できる。

グループ①:古くから人気の高い住宅地を内包するエリア:目黒区・世田谷区・渋谷区
グループ②:東京駅などの都心部への交通利便性が高く近年人気が高まっているエリア:荒川区・足立区

グループ①は、住宅地として人気が高いことから、強気なプライシングがされていそうな印象をもたれがちである。もちろん、そういった割高物件の比率も高いが、物件によっては割安なものも多く、賃貸マンションを探す際には狙い目なエリアと言える。
また、グループ②は、近年の住みたい街ランキングで上位にランクインすることも増えた北千住が所在することにも代表されるように、住宅地としての評価が高まってきているエリアと言える。
こういったエリアも賃料が緩やかに上昇しているものの、割安な物件の割合が高く狙い目なエリアと言える。ただし、これらのエリアは、割高物件の比率も高いことから、エリアだけでなく、他にも割安物件の条件を探す必要がある。

次回は、物件属性を見ながら、グループ①および②において、どういった物件が割安となる傾向が強いかを検証してみたい。

調査データ:https://www.smtri.jp/report_column/report/2018_04_13_4095.html

◎執筆担当:三井住友トラスト基礎研究所 菅田修、竹本遼太
 分析担当:LIFULL HOME'Sデータ分析チーム

東京駅などの都心部への交通利便性が高く近年人気が高まっているエリア:荒川区・足立区。近年の住みたい街ランキングで上位にランクインすることも増えた北千住が所在することにも代表される東京駅などの都心部への交通利便性が高く近年人気が高まっているエリア:荒川区・足立区。近年の住みたい街ランキングで上位にランクインすることも増えた北千住が所在することにも代表される

2018年 04月16日 11時06分