賃貸マンションと比較して、分析が少ない賃貸アパート

近年、個人によるオーナー業向けの貸出(アパート・マンションローン)増加やアパートの施工不良問題等で、賃貸アパートがたびたび世間の話題にのぼったことは記憶に新しい。
ところで、賃貸アパートへの投資は個人によるものが多いと考えられており、機関投資家の投資対象となる賃貸マンションと比較して、賃貸アパートの規模や特性について、分析したレポートは少ない。

そこで、LIFULL HOME'S と三井住友トラスト基礎研究所は、東京23区の賃貸アパートと賃貸マンションにフォーカスし、LIFULL HOME'Sが蓄積しているデータを基に、賃貸アパートと賃貸マンションのスペックや経年劣化による賃料決定構造の影響度の違いなどについて共同研究・分析を行うことにした。

今後、数本のレポートとして掲載する予定。なお、今回の記事における住居種別は、図表1のように分類されている。

図表1)主世帯が居住する住居種別の分類</br>※出所:三井住友トラスト基礎研究所図表1)主世帯が居住する住居種別の分類
※出所:三井住友トラスト基礎研究所

マンション居住が進む中、賃貸アパート居住世帯は約10%の割合を維持

まずは、全体規模の把握のため、国勢調査における主世帯数から、賃貸アパートの規模の把握と比較をしてみた。

初めに、全国の主世帯数から、人々がどういった種別の住宅に居住しているかを、時系列推移で確認した(図表2)。主世帯数で見ると、その他(公営借家・給与住宅等)を除く4タイプ(※一戸建て・長屋建(持家)、分譲マンション(持家)・賃貸アパート・賃貸マンション)で増加している。

構成比で見ると、一戸建・長屋建と分譲マンションを合わせた持家比率はおおよそ60%で変化ないが、持家においては分譲マンション、借家においては賃貸マンションの構成比が増加し、マンションへの居住が進んでいることがわかる。

このように、分譲マンション、賃貸マンションの構成比が増加し、一戸建・長屋建、その他の構成比が減少する中でも、実は賃貸アパートは全世帯の約10%の一定割合を維持し続けている。

図表2)全国の主世帯の居住状況の推移(主世帯数/構成比)</br>※出所:総務省統計局「国勢調査」(昭和60年~平成27年)をもとに三井住友トラスト基礎研究所作成図表2)全国の主世帯の居住状況の推移(主世帯数/構成比)
※出所:総務省統計局「国勢調査」(昭和60年~平成27年)をもとに三井住友トラスト基礎研究所作成

主要都市では借家の割合が全国比で高い。特に大阪市と福岡市は賃貸マンション比率が37%と高水準

次に、2015年の主世帯数から、人々がどの都市のどういった種別の住居に居住しているかを、全国上位10位の市区町村(以下、主要都市と表記)について、住居種別ごとの主世帯数と構成比を比較した(図表3)。

主世帯数で見ると、東京23区が突出して多くなっており、次点の横浜市の約3倍の規模を誇っている。
構成比で見ると、一戸建・長屋建と分譲マンションを合わせた持家比率は、主要都市平均で50%と、全国の63%を下回る。商業地の集積する都市部ほど地価水準が高くなることも影響し、借家居住の割合が増すことが分かる。

とはいえ、都市ごとの特徴は異なり、横浜市やさいたま市は持家比率が60%を超え、東京都心へのベッドタウンとしての側面がみえる。また、大阪市と福岡市の賃貸マンション比率は37%と、これら主要都市の中でも特に高水準となっている。

なお、賃貸アパートは、主要都市平均でも全国と同じように全世帯に占める割合は10%程度となっている。

図表3)主世帯数主要都市の居住状況(主世帯数/構成比)</br>※出所:総務省統計局「平成27年国勢調査」をもとに三井住友トラスト基礎研究所作成図表3)主世帯数主要都市の居住状況(主世帯数/構成比)
※出所:総務省統計局「平成27年国勢調査」をもとに三井住友トラスト基礎研究所作成

東京23区の賃貸アパートは、大阪市の賃貸マンションを主世帯数で上回る市場規模

それぞれの住居種別の構成比の観点で主要都市の比較を行ったが、賃貸アパートと賃貸マンションに絞って比較すると、また違った様相が見えてくる。

規模で見ると東京23区の賃貸アパート世帯数は、大阪市の賃貸マンション世帯数よりも多いことがわかる(図表4)。ちなみに大阪は賃貸マンション世帯数が東京23区についで多い。

また、福岡市も賃貸マンション世帯比率が大阪市と同じくらい高水準ではあるが、主世帯数でみると福岡市と同水準規模が横浜市、名古屋市、札幌市となっている。

賃貸住宅市場において、東京23区の賃貸アパートは東京23区の賃貸マンションに次ぐ2番目の規模なのだ。

次回は、一般的にいわれる賃貸アパートのイメージ(※安く、狭く、古く、駅から遠い…など)と、実際のデータによる類似点、相違点を確認していきたい。

LIFULL HOME'S×SMTRI
https://www.smtri.jp/market/lifell_homes/

レポート「大阪の賃貸マンションを上回る、東京の賃貸アパートの市場規模」
https://www.smtri.jp/report_column/report/2019_09_26_4486.html


◎分析  :三井住友トラスト基礎研究所 菅田 修、 髙林 一樹
     :株式会社 LIFULL 遠藤 圭介

参考:東京23区の賃貸マンション(LIFULL HOME'S)
   東京23区の賃貸アパート(LIFULL HOME'S)

図表4)主世帯数上位10都市の賃貸マンション・賃貸アパートの居住状況(主世帯数)</br>※出所:総務省統計局「平成27年国勢調査」をもとに三井住友トラスト基礎研究所作成図表4)主世帯数上位10都市の賃貸マンション・賃貸アパートの居住状況(主世帯数)
※出所:総務省統計局「平成27年国勢調査」をもとに三井住友トラスト基礎研究所作成

2019年 09月26日 11時00分