大和ハウス工業株式会社 大友浩嗣 社長インタビュー

創業72年目をむかえた大和ハウス工業株式会社(以降、大和ハウス工業)は、1955年の創業以来、戸建住宅だけでなく賃貸住宅、分譲マンション、商業施設、事業施設、環境エネルギー、都市開発まで幅広い分野に展開。単に建物を供給するのではなく、“社会や地域に必要とされる価値をどう生み出すか”を軸に事業を進化させている。住宅メーカーの枠を超え「人・街・暮らしの価値共創グループ」として、幅広く事業領域を拡げる企業である。

特に近年は、脱炭素や地域活性化への対応など、社会課題解決型の取り組みを強化。再生可能エネルギー事業や物流インフラ開発、複合開発によるまちづくりなどにも積極的に挑戦。また、海外にも事業を展開し、事業の幅を拡げている。

大和ハウス工業株式会社 大阪本社ビル大和ハウス工業株式会社 大阪本社ビル

2025年に就任した大和ハウス工業の大友浩嗣 社長が受け継ぐのは、「儲かるからではなく、世の中の役に立つからやる」という創業者精神だ。さらに自身のマネジメント観として「喜びはみんなで分かち合え、苦労は一人で背負え」という創業者の言葉を大切にしている。巨大企業となった現在も、「創業72年目のベンチャー企業」という表現に象徴されるように、大和ハウス工業には新たな市場や社会価値を切り拓く挑戦をする企業文化が流れている。

今回、変革を続ける大和ハウス工業の取組みについて2026年4月21日 株式会社LIFULLの半蔵門本社で行われたリーダーズアイセミナーで大友浩嗣 社長のインタビューを行った。インタビュアーを務めるのは株式会社 LIFULLの伊東祐司 社長である。

大和ハウス工業株式会社 大阪本社ビル大友社長(写真左)と伊東祐司社長(写真右)。2026年4月21日 株式会社LIFULLの半蔵門本社にて大和ハウス工業株式会社大友浩嗣 社長のインタビューを行った。インタビュアーを務めるのは株式会社 LIFULLの伊東祐司 社長

大和ハウス工業の「稼ぐ力」を強化する組織改革

<b>大友 浩嗣氏:</b>大和ハウス工業株式会社 代表取締役社長。1984年大和ハウス工業株式会社 入社。経営戦略本部長や海外本部長を経て2024年取締役専務執行役員、2025年 代表取締役社長 最高執行責任者に就任。座右の銘は「一隅を照らす」


大友 浩嗣氏:大和ハウス工業株式会社 代表取締役社長。1984年大和ハウス工業株式会社 入社。経営戦略本部長や海外本部長を経て2024年取締役専務執行役員、2025年 代表取締役社長 最高執行責任者に就任。座右の銘は「一隅を照らす」

伊東:今回、大和ハウス工業の取組みついて大友社長に直接お話をうかがえるのを楽しみにしておりました。よろしくお願いいたします。さっそくですが、社長就任からちょうど1年となりました。どんな1年だったでしょうか?

大友社長:大和ハウス工業の創業者精神である「儲かるからやるのではなく、世の中のためになるから我々は事業を進めている」という考え方をベースにやっています。中東の問題なども含め、今は1年どころか1、2ヶ月で世の中が大きく変わっていく時代です。事業は考えた通りにはいかないことが多々あります。ただ、計画を立てて公表している数字に対しては、株主様や社会への責任があり、その数字の責任を考えながら、同時に社内改革や新たな事業の芽をつくるなどに取組みました。あっという間の1年間でした。

伊東:そういった中、大友社長が社内変革として取組んだ組織づくりについてお聞かせください。

大友社長:我々は常に変化・進化しなければならず、創業72年目のベンチャー企業だと思っています。これまで企業規模が大きくなる中でガバナンス強化が求められ、新たな組織を作った結果、本社や本部に人財が偏りがちになっていました。また、組織が縦割りになり、お客様の情報が各事業部内に留まってしまうといった弊害も一部出てきました。そこで、本社・本部の人員をより現場に近い部門への再配置(リバランス)し、本部の組織についても「ハウジング・ソリューション本部」と「ビジネス・ソリューション本部」の2大本部に再編して、人財・技術・顧客情報を共有しています。特にリバランスについては、より現場に近いところで動いてもらい、稼ぐ力を持たせるための改革です。デジタル化を進めることで本社機能は集約でき、営業のサポートチームなど適材適所をつくっていくことで「稼ぐ力」のための筋肉質な組織にしていきます。

伊東:人財育成や評価制度についても見直しをされていると伺いました。

大友社長:現在は財務指標(財務ROI)だけでなく、給与や研修といった「人的資本投資」に対するリターン(人的資本ROI)を意識する必要があると考えます。それに合わせて、人事評価制度を大きく変えました。評価される側だけでなく、評価する側の上司の教育も重要だと伝えています。

<b>大友 浩嗣氏:</b>大和ハウス工業株式会社 代表取締役社長。1984年大和ハウス工業株式会社 入社。経営戦略本部長や海外本部長を経て2024年取締役専務執行役員、2025年 代表取締役社長 最高執行責任者に就任。座右の銘は「一隅を照らす」


2大本部制による組織機能強化

2055年「10兆円企業」に向けた未来の展望

伊東:御社は創業100周年にあたる2055年に「10兆円企業」という目標を掲げていらっしゃいます。そこへ向けての展望を教えてください。

大友社長:現在、大和ハウスグループは2025年3月期の売上高が約5兆4千億円で、ハウジング・ソリューションとビジネス・ソリューションが約2兆7千億円ずつと半々になっています。大和ハウスは「価値を共創する街づくり」が1丁目1番地であり、世界でも類を見ない企業体です。現在も社会の課題を解決する大規模なプロジェクトを進めています。例えば、千葉県印西市の「DPDC(ディープロジェクト・データセンター)印西パーク」の大型データセンター開発や商業施設の再生(広島市の複合商業施設「アルパーク」)、半導体関連工場の建設などです。また、地方創生としてPFI(プライベイト・ファイナンス・イニシアティブ:公共施設等の設計、建設、維持管理及び運営に、公共サービスの提供を民間主導で行い効率的かつ効果的な公共サービスの提供を図る)を活用し、富山市や川崎市で50年以上変わっていなかった公設卸売市場の再構築にも携わっています。

伊東:スクラップアンドビルドをするのではなく、御社は既存の建物や街を活用する「リブネス事業」「ビズリブネス事業」も手掛けていらっしゃり、大きく伸びていますね。

大友社長:お客様のライフスタイルの変化に合わせて、再度既存の価値を見直し提供していく事業です。建築費が高騰する中、かつての倉庫やオフィスに環境価値(断熱施工など)を付加してリノベーション・コンバージョンし、もう一度社会に貢献していく「ビズリブネス」も法人のニーズが高く伸びています。このビジネスモデルを、2030年代には1兆円規模にしていきたいと思っています。また、カーボンニュートラルの観点から、鉄骨やRCと木造のハイブリッドなど「木質建築」も推進しており、医療・介護関連施設、保育所、さらには中層のオフィスビルでもニーズが高まっています。

2026年4月に行われた大和ハウス工業の大友浩嗣社長へのインタビュー。創業72年目を迎えても自ら「ベンチャー企業」と位置づけ、2055年の売上10兆円に向けた挑戦を語ります。稼ぐ力を強化する組織改革、既存建物を活かすリブネス事業、米国などでの海外展開のほか、BIMやAIを用いた最新のDX戦略や、挑戦を後押しする企業文化について語っていただきました。社会・環境課題解決事業/リブネス

米国をはじめとする海外住宅事業の拡大戦略

伊東:大友社長が以前から取組んでおられた海外事業ですが、米国での戸建住宅事業も好調だとお聞きしております。

大友社長:2017年から米国の現地で住宅会社をM&Aし、2026年3月期の米国戸建住宅セグメントの売上高は7600億円を計画、2025年1~12月において受注戸数は7800戸に達しました。引き続き、さらなる成長を目指しています。

伊東:米国では、住宅販売も含め業務の分業制が進んでいて非常に合理的だと伺いました。

大友社長:はい、アメリカでは住宅販売の営業担当が完全に契約に特化しており、月に多数の受注を獲得する社員もいます。契約書の説明などは別の専任担当者が行います。そこに我々が持つ日本の「オフサイト化(プレハブ化)」の技術や「集中購買」のノウハウを融合させることで、現地のスピードをさらに上げています。またヨーロッパでは、2021年にオランダのモジュラー建築会社を買収しました。これを活用してホテルや学生寮に加え、ウクライナを含む避難民向けの住宅として約1400世帯分を提供しています。現在は海外に57拠点を構え、事業を拡大しています。

大和ハウスグループのの海外展開大和ハウスグループのの海外展開

大和ハウス工業のDX戦略:BIMとAIの活用

伊東:御社のDX戦略について伺いたいと思います。御社では、業界でもBIM(※BIM:コンピューター上に作成した3次元の建物のデジタルモデルに、コストや仕上げ、管理情報などの属性データを追加した建築物のデータベースを、建築の設計、施工から維持管理までのあらゆる工程で情報活用を行うためのソリューション)へ早々に取組まれているとお聞きしました。

大友社長:はい、すでに意匠、構造、設備などの図面から見積もりに至るまで、BIMを活用しています。これによって、設計段階で配管などの干渉があっても、BIMを使えばすぐに分かるんです。現在はBIMの基盤構築を進めている段階で、その先には施工現場での導入や活用、さらには最終的なアフターサービスに至るまでBIMを活用できると考えています。情報の一元化をしっかり進めていくことは、今後も含め絶対に必要ですね。

伊東:今後の展望として、どこまで自動化やAI化を進めたいとお考えですか?

大友社長:実は、BIMについては弊社では、海外のほうが進んでいるんです。我々が海外の現場に行くと、すでに普通にBIMを活用して施工を行っています。今後、すべての見積もりから発注に至るまでBIMで統一できれば、業務がより効率化し、ミスも少なくなります。将来的にはこれを全事業で進めていきたいと考えています。
また、2025年から導入した「AIプランコンシェルジュ」という住宅設計のAIシステムがあるのですが、お客様の要望だけでなく、前面道路や北側斜線といった敷地情報をしっかり入力すると、自動的に約20の設計プランを作成してくれます。過去に蓄積された何万というデータの中から、条件に応じてAIがピックアップし、お客様にレコメンドします。 設計担当者だけでなく、営業段階でも一定レベルの情報を入力(プロンプト)するだけで、複数の提案がスピーディにできるのが特徴です。さらに、「このプランにはこういうアプローチの仕方(良さ)があります」といったレコメンド内容も提示されるため、設計の効率化を図りながら、できるだけ早くお客様に提案できるようになります。

BIMの活用BIMの活用

伊東:それはすごいですね。これから現場でどんどん使っていく段階ですか?

大友社長:今年からすでに現場に導入して活用しています。これによって、従来は設計にかかっていた時間を大幅に短縮できます。お客様のニーズに応じてAIが20プランほど提示してくれるので、営業や設計担当者がその中から最適なものを3〜4つピックアップしてお客様に提案します。

伊東:営業担当者もこれを使いこなせるようになると、スピードが圧倒的に違いますね。また、過去に実際に建築した事例の中から提案を出してくるんですよね。

大友社長: はい、過去の実績データに基づいているので、ずれたプランは出てきません。効率化とスピードアップのためには、こうした生成AIを活用する部分が必要不可欠になっています。

伊東:これは営業スタイルも大きく変わってきますね。

大友社長:そうですね。お客様と打ち合わせをしながら、もうその場でプランが出てしまうということも可能になります。

BIMの活用「効率化とスピードアップのためには、こうした生成AIを活用する部分が必要不可欠となる」

「三識」の教えと挑戦する企業文化

伊東:現場の声を直接吸い上げるために、全国を回られているとも伺いました。

大友社長:この1年間で事業所を28箇所、工場を3箇所回りました。対話を通じてメッセージを伝え、若手社員の思いや悩みも直接聞いています。その中でリーダーシップの根幹として、思想家の安岡正博氏が説いた「三識」の教えを伝えています。まずはベースとなる「知識」をつけること。それを繰り返し活用して、より正しい判断ができるようになる「見識」を高める。そして一番大切なのが、判断した上で課題を実行して乗り越えていく「胆識(たんしき)」です。ビジネスリーダーには、思考の三原則である「長期的に見る、多面的に見る、根本的原因は何か」という視点から課題を見つけ、約束を果たして実行するこの力が不可欠です。

「リーダーシップの根幹として、思想家の安岡正博氏が説いた三識の教えを伝えています」「リーダーシップの根幹として、思想家の安岡正博氏が説いた三識の教えを伝えています」

伊東:現場のモチベーションを高め、成果を出していくためには、どのようなことが大切でしょうか?

大友社長:最澄の言葉である「一隅を照らす」という考え方を伝えています。一人ひとりが自分の今のフィールドで努力し、輝くことが大切ですが、人は自分一人では生きていけません。自分がそこで頑張っている姿を、ちゃんと見てあげる人がいなきゃいけないんです。社員一人ひとりが活躍しようとする姿勢と、それを見てあげる上司や組織のあり方の両面が必要だと話しています。

伊東:社内起業制度も盛り上がっているというお話も伺いました。

大友社長:総額300億円を用意し、社員の起業を促す制度を始め、2年間で約2000件の応募がありました。最終通過は数件ですが、全部が成功するとは思っていません。0から会社をつくる大変さを学ぶ最高の教育であり、失敗してもいいから新しいことに挑戦しつづけるという企業文化をつくりたいと思っています。

伊東:本日は貴重なお話をありがとうございました。

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大和ハウス工業の大友社長の言葉からは、創業者の精神を深く受け継ぎながらも、創業72年目にしてなお「ベンチャー企業」と位置付け挑戦をやめない確固たる姿勢が窺えた。
圧倒的な実績を出している裏側には、「現場第一主義」に基づく徹底した対話と組織改革、最新のDX・AI技術を活用した生産性向上の追求があり、何より、社員の「三識」を育み、「一隅を照らす」存在を称賛し、失敗を恐れず挑戦を後押しする企業文化の土壌が同社の強さの源泉だということがわかる。

大和ハウス工業の社会の課題に真摯に向き合いビジネスをスケールさせていくその軌跡は、変化の激しい時代において“いかにして企業が持続的な成長と社会貢献を両立させるべきか”という問いに対し、力強い道標を示してくれたインタビューだった。


■取材協力
大和ハウス工業株式会社 https://www.daiwahouse.co.jp/

「リーダーシップの根幹として、思想家の安岡正博氏が説いた三識の教えを伝えています」「モチベーションを高めて成果を出すには、社員一人ひとりが現場で活躍しようとする姿勢と、それを見てあげる上司や組織のあり方の両面が必要だ」という大友社長