建替えのタイミングを最適にすることはできる

前回は、物理的な寿命以前に建築物が何故取り壊されてしまうのか?ということを経済的な視点と資産価値の観点から述べてみた。

今回は、ここでさらに都市の構造変化が起こることで、土地利用転換が求められるケースを考えよう。
何等かの経済状況の変化によって、6期末に、ホテルやコンベンション施設などへの最有効利用の転換が起こったものとしよう。ホテルやコンベンション施設としての賃料は、5期までは0の賃料しか得られなかったものが、6期以降にはオフィスの収益以上の250の賃料が得られるようになる。
オフィスのまま建替えを、各期に行った場合の初期資産と、ホテル・コンベンションへの建て替えを行った場合の期初資産を計算したものが、以下のグラフである。

つまり、不動産所有者は、土地利用転換のイベントが起こった、6期にホテル・コンベンション施設への建て替えを実施する。ここでは、6期に土地利用転換のイベントが起こったものとしているため、オフィスのまま建替えを行うタイミングと、ホテル・コンベンション施設としての建て替えのタイミングが一致している。しかし土地利用転換イベントの発生時期を3期や4期にすることで、もっと最適な建替えのタイミングを早めることはいくらでもできる。

都市の構造変化があった場合の建て替えの時期別の資産価値(縦軸:資産価値、横軸:期)都市の構造変化があった場合の建て替えの時期別の資産価値(縦軸:資産価値、横軸:期)

市場プレイヤーと建築技術者という、二つの立場のコミュニケーション

このように建替えのタイミングは、建築物の物理的な耐用年数や劣化の速度だけでは定まらない。
不動産所有者にとっては資産であるため、金融資産や、他の不動産資産とした場合の収益率との相対的な関係で決まってくる。

これが、建築技術者の方々が感じる違和感の源泉ではないだろうか。
議論になったとき「建築を行う段階で耐用年数とは別に、最適な建替えが決まっているならば、なぜそう言ってくれないのか」という質問が出た。私はそれに対して、「土地利用転換イベントの発生がビルを建てた後に起こるなど、不確実性があるから」と答えたが、そうではないかもしれない。

市場のプレイヤーである不動産所有者と、建築技術者の間の初期に交わされるコミュニケーションというのは、どういったものなのだろうか。今結果として起こっているのは、過大なスペックでの投資である。また、市場のプレイヤーや市場そのものに対する、建築技術者の不信感をもたらしているかもしれない。

市場プレイヤーと建築技術者という、二つの立場のコミュニケーションを活発にすることにより、あるいは歩み寄りによりこのような状態は改善できるかもしれない。しかし、それでも東京では、耐用年数前の建築物の建て替えは今後非常に多くなるだろう。

五輪が契機で起こる、都市の性格転換

都市はポスト産業社会時代の戦略として、消費志向の開発を採用することが多くなっている。

レジャーを含む消費に関する上質なサービスは、企業本社、ハイテク産業などが求めるものに合致するからだ。このような消費者都市の典型として、ニューヨークとサンフランシスコが挙げられるだろう。

これらの都市にはコンベンションセンター、スポーツ施設、博物館、ショッピングモール、娯楽・ギャンブルコンプレックスが装備されている。これらのタイプの開発は観光客の需要を満たすものでもある。
このような都市の性格自体の転換を、五輪というメガイベントの誘致を契機に行ったものとして、アトランタなどの都市を挙げることができる。

東京は五輪の誘致だけでなく、カジノの解禁など消費者都市としての様相を強めつつある。
この場合、都市構造は大きく変わり、それにともなって、「使える超高層が壊されるのはなぜ?」という思いを抱く建築技術者も増大するかもしれない。

アトランタ 五輪で使用されたスタジアム跡地アトランタ 五輪で使用されたスタジアム跡地

2014年 12月10日 11時21分