建替えできるマンションの条件

どのようなマンションにもいつかは寿命が来て、建替えを検討する時がやってくる。

しかし現実には、マンションの建替えをしようと思っても様々な障壁があるため思いのほか事例は少なく、これまでに行われたマンションの建替えは2013年4月1日時点で実施準備中のものまで含めて218例に過ぎない。

マンションの建替えを実現するためには当然、解体費や建設費などを捻出しなければならないが、所有者全員が足並みをそろえて費用を出すというのはなかなか容易ではない。

建替え事例の多くは“等価交換方式”に基づくもの。等価交換方式とは、居住者が所有している土地を出資し、その土地にマンションデベロッパーが建物を建設、建物完成後に、居住者と不動産会社それぞれの出資比率に応じた割合で土地建物を取得するといった手法だ。この等価交換といった手法は、建替えをしたら今より建物が大きくなるのが前提で、その余剰分を販売することによって、所有者の建替え資金を捻出できるというメリットがある。

マンション建替えの実施状況(平成25年4月1日現在)/国土交通省マンション建替えの実施状況(平成25年4月1日現在)/国土交通省

阻害となる要因

つまりこれまでに建てえが可能だったマンションは、容積率が余っていたために以前より大きな建物を建てることができ、それを売却することによって資金を捻出できたから建替えができたというわけだ。むろん、マンションデベロッパーがリスクをとって事業を行えるという前提があって初めて成立する手法でもあるゆえ、例えば立地的に販売が難しいとデベロッパーが判断すれば実現しない。

さらには、世の中には多くの“既存不適格マンション”が存在する。既存不適格マンションとは簡単にいえば“建設当時は適法だったが、後の法改正で不適格となったもの”を指す。具体的には“建設時には容積率200パーセントだったものが、現在は100パーセントになっている”など。建替えすることで建物の大きさが小さくなってしまうのでは実現は到底不可能だ。

マンションの建替えには、他にも様々な阻害要因がある。区分所有法では、5分の4が賛成すればマンションの建替え決議は可能だということになっている。反対する人の権利を買い取る(売り渡し請求)こともできる。しかし現実問題として、実際の現場では、買い取り価格を吊り上げられてしまったり、「ここで一生を終える」とおっしゃる高齢の方や、建替え費用が捻出できない方がいたり、建物の老朽化を賃貸契約解消の正当事由としない借地借家法が立ちはだかり賃貸人がなかなか出ていかない、などの様々な理由からマンションの建替えがうまく進まないのだ。

このような状況を受けて、安倍政権の規制改革会議(議長=岡素之・住友商事相談役)がまとめた答申の最終案に、老朽化したマンションの建替えを促すための施策の検討などが盛り込まれているが、結論を言えば、これでも円滑なマンション建替えは不可能だろう。これは具体的には「建替えの決議用件をさらに緩和する法整備をしよう」「建替え費用が捻出できるよう、容積率を緩和しよう」ということのようだが、実際には法務省の強い反対があり、思惑どおりには進まなかった。

マンションの“建替え問題”を前提とすること、つまり、建替えしか選択肢がないかのような論の立て方に疑問を感じる向きも少なくない。そもそも、容積率をUPさせるなどのボーナスを与えて、全てのマンションが建替えられることになったら、人口・世帯数減少がはっきりしている我が国において、いったいどれだけの住宅が余ってしまうのか。日本の住宅数はすでに飽和に達し、都市部においてすらむしろ空き家対策に本腰を入れなければならない局面にこれから差し掛かるというのに建替えを促進したらどうなるのか、というわけだ。

これはもっともな意見だといえる。いったんマンションが建った場所に、永遠にマンションが建替えられ続ける必要もなく、別の用途に転換される可能性を残すほうがむしろ自然だ。だから“マンションの建替え問題”などと表現をして、いかにもそれしか選択肢がないかのような前提をやめ、別の選択肢もつくればいいのだ。

建替えのみを前提とするから話が難しくなる。必ずしもすべてのマンションが建替える必要などない。

建替えじゃない選択肢

アメリカ・イギリスは、特別決議による「区分所有権の解消制度」がある。フランス・ドイツは、建て替えはもちろん、 区分所有解消を多数決で行うという概念そのものがない。

他国の状況を踏まえ日本では、区分所有法にある“建て替え決議要件”のほかに“区分所有をまとめて売却する要件”を設けるのが良い。建て替え決議同様、一定の賛成があれば全員が区分所有権をまとめて売却するという選択肢をつけておくことは、日本の住宅市場の現状と未来を見越せば、むしろバランスの取れた状況を生み出すのではないか。

現実的には、空き家対策、コンパクトシティ政策とセットで、駅に近いなど一部のマンションのみに容積率のボーナスが与えられ建替えが可能となり、その他のマンションは前述したようにマンション管理組合を“解散”することによって決着を着けることになると筆者は予想している。

“老朽化マンション対策会議”(椎名武雄会長=日本アイ・ビー・エム名誉相談役)は「区分所有権の解消制度創設」を提言している。これは簡単にいえば「建物解体して、土地を売り、お金を山分けして解散」。行政処分の範疇で行うため“違法性があるか”だけが焦点となり、ゴネることが無意味に。わずかなお金を渡されて終わり、となるケースも出そうだ。

2013年 11月22日 10時09分