名古屋駅と並ぶ名古屋市の中心地、栄地区

名古屋・栄地区のまちなみ。奥の高層ビル群が名古屋駅地区名古屋・栄地区のまちなみ。奥の高層ビル群が名古屋駅地区

名古屋市は、交通の玄関口となる名古屋駅周辺の地区と、そこから地下鉄で5分ほどのところに位置する栄地区が二大エリアとして知られる。

名古屋駅は、2027年に開業が予定されているリニア中央新幹線の駅の工事が進む。それに伴って周辺も再開発に沸き、ビジネス面でも商業の面でも、ますます発展することが見込まれる。

一方の栄地区は、名古屋城の城下町として発展してきた歴史を持ちつつ、デパートやファッションビル、飲食店が立ち並ぶが、ここ数年、名古屋駅地区に押され気味というイメージがあった。

しかし、栄地区も再開発が進められており、2020年9月にシンボルともいえる名古屋テレビ塔がそびえたつ久屋大通公園がリニューアルしたニュースは、コロナ禍にあっても大きな関心が寄せられた。

今回、当サイトでもたびたび紹介させてもらっている大ナゴヤツアーズ(東海エリアのまちの魅力を楽しめる体験プログラムを実施)にて、栄のまちをめぐるツアーが開催されると聞き、参加してきた。

緑と水辺のある都市公園、久屋大通公園

ツアー内容の前に、まずはツアー開催のきっかけのひとつでもあった久屋大通公園について触れておきたい。

先の項で栄地区も再開発が進められていると述べたが、名古屋市では2013年6月に「栄地区グランドビジョン~さかえ魅力向上方針~」を策定。この内容については、当サイトで過去に取材させてもらっているので、ご参照を(2027年には名古屋の栄が生まれ変わる?「栄地区グランドビジョン」とは!)。

その栄地区グランドビジョンの取り組みのひとつが、久屋大通公園の魅力向上だった。久屋大通公園は、栄を南北に走り、幅が100mある道路「久屋大通」の中央帯を利用した都市公園だ。

名古屋市のホームページで公開されている方針は下記のとおり
https://www.city.nagoya.jp/jutakutoshi/page/0000047604.html
・久屋大通公園の魅力向上に向けて、都心のシンボル空間として、名古屋を訪れた多くの人々や市民が集まり、憩い、ふれあう、栄地区を象徴する公共空間にふさわしい整備を行います。
・久屋大通公園と沿道とがより一体化するような空間形成を図ります。
・久屋大通公園が北から南まで一体的に活用できるような空間形成を図ります。
・広域避難場所としての防災機能強化を図ります。
・民間の経営感覚を活かして、効率的で質の高い公園整備・管理運営をすすめます。

2020年9月のリニューアルでは、全長約2kmのうち、名古屋テレビ塔周辺のテレビ塔エリアと、その北側の北エリアが「Hisaya-odori Park」としてオープン。都市公園法に基づくPark-PFI(公募設置管理制度)により、公園内に民間事業者による商業施設が誕生し、にぎわいを創出する。名古屋テレビ塔も1954年の開業以来初となる全体改修工事を実施し、久屋大通公園のリニューアルと同じく、2020年9月にグランドオープンした。

残りの南エリアも今後リニューアルが予定されている。

左/リニューアルした久屋大通公園の名古屋テレビ塔付近。右上が名古屋テレビ塔からの南側風景、右下が北側。リニューアル前も緑豊かで噴水などがあり、都会のオアシス的存在だったが、人の訪れが少ないエリアもあった。今回の再整備では大型の芝生広場も擁しながら、カフェやファッションブランドなどの店舗が点在し、魅力を増している左/リニューアルした久屋大通公園の名古屋テレビ塔付近。右上が名古屋テレビ塔からの南側風景、右下が北側。リニューアル前も緑豊かで噴水などがあり、都会のオアシス的存在だったが、人の訪れが少ないエリアもあった。今回の再整備では大型の芝生広場も擁しながら、カフェやファッションブランドなどの店舗が点在し、魅力を増している

防災面から見る建築物とまちの今昔

建築基準法では、建物の高さ31m以下の部分にある3階以上の階に非常用進入口を設置する建築基準法では、建物の高さ31m以下の部分にある3階以上の階に非常用進入口を設置する

さて、「故(ふる)きをたずねて新しきを知る!『建築』から見る都市考察ツアー~栄の都市公園からまちの閑所、都市建築から未来の街まで~」と題されたツアー。まちを歴史と技術を考えながら散策する楽しみを味わってほしいというガイド担当者による案内のもと、久屋大通公園の北エリア、テレビ塔エリアの周囲を2時間にわたってぐるっと巡るルート。名古屋のまちをさまざまな観点から見ることで、より深く知ることができるように組まれている。そのなかから、ピックアップしてご紹介する。

スタート地点となったのは、名古屋市の中区役所前。まちの中心部ということもあり、住宅はなく、ビルが立ち並ぶ。そこは名古屋駅からつながるメインストリートのひとつ、広小路通に面している。

広小路(ひろこうじ)は、江戸時代の1657(明暦3)年にあった明暦の大火といわれる江戸で発生した大火事をきっかけにできた火よけのための幅の広い街路。そこから全国各地で設置され、いまも道路や地区の名前で残っているところが多数ある。

「昔は広小路のようなところをつくって火災の延焼を防ぎ、まちを守っていました。今はというと、まちを見渡してみるとビルなどに赤い三角のマークがついています。これは、消防署の指導を受けて付けられたもので、非常用進入口です。火災がおきたら、消防士の方々がそのビルの図面を持ってきて、どのように入ることができるかがすべて分かるようになっています。散策しながら、現代のわれわれがどのようにまちを守っているかを見ていただければと思います」とガイド担当者。

さらに詳しい説明が続いた。「設計の際に建築家が『われわれは安全をこう考えているがどうですか』と、消防署と協議をするんです。窓にハンドルが付けられていたり、バルコニーが設置されていたりと、建築に携わる人たちのいろいろな工夫の集まりにもなっています。“このビルの非常用進入口はハンドルなどが付けられていないからガラスを割って入るのかな”といった視点で見ると、まちが安全なつくりになっているということが分かると思います」

非常用進入口の存在は知っていたが、これまで注視することはなかった。あらためて今回のツアーでさまざまなビルを見てみると、安全対策がなされ、かつ外観のデザイン性に考慮したと思われるものもあり、工夫を知ることができて興味深かった。

名古屋ならではの建築

移動して向かったのは、NHK名古屋放送センタービルの前。ビルの形が平面ではなく、波形になっている。「東京の新宿や丸の内と、栄など名古屋のまちなみを比べてみると、ビルが丸かったり、カーブを描いていたりします。これは名古屋テレビ塔の影響があったんです。まっすぐな建物をつくると、電波がそのまま反射してしまい、近隣地域に電波障害が起きてしまうんです」

日本初の集約電波鉄塔として建設された名古屋テレビ塔。現在はその役目を終えたが、デジタル化前までに近隣に建てられたビルは、電波障害の影響が考えられる箇所がデザインで工夫されており、それが名古屋のまちなみの特徴にもなっていたのだ。

もうひとつ、名古屋の歴史を感じるものとして、地下鉄の駅に通じる地下街へ降りる階段の壁の紹介があった。「名古屋の周囲には、瀬戸、多治見、土岐、常滑など焼き物のまちがあります。そのため、あちらこちらにタイルの壁が使われています。小さなタイルは全国に運びやすいですが、大きいものになると昔は運搬費用がかかったので、産地のそばだったら使いやすかったのです。だから、これだけ焼き物の壁があるのは、実は名古屋らしいんです」

ふだんなにげなく通り過ぎていた壁だったが、実は土地柄に深く縁があったのだ。

栄地下街に残るモザイクタイルの壁。ツアーでは、450万年~200万年前に東海湖があったことで良質の粘土が堆積し、焼き物が盛んになったという歴史も語られた栄地下街に残るモザイクタイルの壁。ツアーでは、450万年~200万年前に東海湖があったことで良質の粘土が堆積し、焼き物が盛んになったという歴史も語られた

未来の栄、まちに期待すること

GISのイメージ。最新テクノロジーでまちも変化していくGISのイメージ。最新テクノロジーでまちも変化していく

ツアー最後に訪れた久屋大通公園では、ICTを活用したまちづくりの話があった。

「監視カメラが設置されていることが嫌だという人もいますが、誰かをカメラでずっと追っているのではなく、通常とは異なる行動だけを探知していると思います。例えば、人が転んだ動きを感知し、それをスマートフォンの位置情報と合わせながら、安全にまちが機能しているかの検証がされています。

カメラが異常を感知したことで、そこがどういう場所なのかを地図上で照らし合わせ、死角があって危ないなどと分かると、電気を付けようとか、視界をよくしようとか考えられます。そういったことで“まちの最適化”がされていくと思います。

GIS(ジオグラフィック インフォメーション システム)=地理情報システムというのがあります。スマートフォンなどでマップアプリを使われると思いますが、それは地図情報だけじゃないんですよね。そこからお店の予約もできますし、混雑具合も分かります。どんどん地図は進化していて、データを重ねるといままで見えなかったものが見えるようになるんです」

これから再開発される久屋大通公園の南エリアについても「時代が変わってきているので、みんなで考えながらつくっていければいいなと期待しています」とガイドの方は結んだ。

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久屋大通公園は、緑の風景が繁華街に癒しをもたらし、イベント開催時には人のにぎわいを生んできた。今回、商業施設ができるなど再整備され、リニューアルしたばかりということもあるが、かなりの人出がある。それはあらたな人の流れとなり、まちのにぎわいにつながっていくことが期待できるだろう。今回のツアーで建築の観点からまちをめぐり、過去からいまへの変化を知ることができた。ガイド担当者がおっしゃっていたように、最先端の技術も加わって「まちの最適化」がされ、暮らしよくなっていくなっていくことを願う。

取材協力:大ナゴヤツアーズ https://dai-nagoyatours.jp/

2021年 01月04日 11時00分