名古屋・栄エリアの1/400サイズ都市模型が誕生

株式会社 日建設計 名古屋オフィス代表の山本秀樹さん。福岡県出身。東京スカイツリーなどのプロジェクトも手掛けた。2003年から3年間、名古屋駅前の超高層ビル・ミッドランドスクエアの都市計画を担当して名古屋に通い、その後、2010年から名古屋に転勤。「名古屋の最初の印象は、道路が広いと思いましたね」株式会社 日建設計 名古屋オフィス代表の山本秀樹さん。福岡県出身。東京スカイツリーなどのプロジェクトも手掛けた。2003年から3年間、名古屋駅前の超高層ビル・ミッドランドスクエアの都市計画を担当して名古屋に通い、その後、2010年から名古屋に転勤。「名古屋の最初の印象は、道路が広いと思いましたね」

東京に本社を構える建築設計事務所、株式会社 日建設計。その名古屋オフィスが、2017年9月に模型サロン「Sakae-BA400」を完成させた。名古屋オフィスのある名古屋市栄エリアのまち並みを1/400サイズで再現している。

「私どもの会社は、名古屋では一番規模の大きな設計事務所で、都市開発のプロジェクトも多く手掛けています。その中で、名古屋駅前地区が現在、次々と新しいビルが建てられていることと比べて、栄地区の元気がないということをよくお聞きします。当社は、約80年前から名古屋に支店があり、栄の元気がなくなっていく様子を肌身に感じてもいます。そこで何かできないかとずっと考えてきまして、昨年、技術発表会のようなイベントを企画した際、名古屋の街について考えるテーマを作りたい、栄について何かやりたいと、社内で議論して決めました。」と名古屋オフィス代表の山本秀樹さん。

イベントは2017年6月に同社のクライアントや行政などのまちづくり関係者を呼んで行われ、そのメインの企画として「みんなで栄のまちを俯瞰してみよう」と模型が作られた。参加者の多くが興味を持ってくれたので、せっかくならと、常設できる模型サロンを整備することになった。

断熱材を利用した模型作り

かつて模型は、住宅地図と航空写真をなぞって作られ、ビルやマンションの階数については実際に現地に出向いて確認をしていた。それが、技術の進歩により航空測量で細かいところまで分かるようになり、「画期的」と山本さんは語る。「Sakae-BA400」では、比較的目印などになるビルに紙で窓の形を再現して貼り付けてある。写真上は、実際の高さが分かる定規を中央のビル横に置いてみたところ。写真下は、土地の高低差を調整する台座かつて模型は、住宅地図と航空写真をなぞって作られ、ビルやマンションの階数については実際に現地に出向いて確認をしていた。それが、技術の進歩により航空測量で細かいところまで分かるようになり、「画期的」と山本さんは語る。「Sakae-BA400」では、比較的目印などになるビルに紙で窓の形を再現して貼り付けてある。写真上は、実際の高さが分かる定規を中央のビル横に置いてみたところ。写真下は、土地の高低差を調整する台座

「Sakae-BA400」の模型の作り方は、「基本的には私が大学で建築を勉強していた頃と同じ、とても古典的な方法なんです」と山本さん。

「材料は建物用の断熱材で、それをビルなどの寸法に合わせて電熱線を使ってカットします。丸みを帯びた部分などは工夫が必要ですが、基本はこのスタイル。作業は、もともと社内で建築の模型を作るアルバイトをしていた学生さんにお願いしました。ただ、毎日同じ方が来てくれるわけではないので、比較的システマティックに簡単に作る方法を、模型制作を担当する部署の社員が生み出しました」。

ただし、模型を作るために必要な建物の形のデータは最新技術が使われている航空測量のデータを利用。レーザー光を活用した測量で、建物の形や高さはもちろん、土地の高低差も知ることができる。土地の高低差は模型の台座部分で表現されている。栄の街のシンボルでもあるテレビ塔や観覧車など複雑な造りのものについては、3Dプリンターで再現してリアルさを出した。

「縮尺については、何度も実験をしました。測量データから地面の高さもある程度分かるなかで、ビルがただの四角ではなく、どこのビルかが分かるような大きさにしたいと思い、1/400に落ち着きました。1/400は建築設計の図面の縮尺としては少し中途半端ですが、この模型にはちょうどいいかなと決めました」。

建物の色や窓まで完全再現されているわけではない中で、模型にリアルさが出たのには、道路の白線の存在もあるという。白線については地図などで情報の記載がなかったため、航空写真をなぞって書き加えた。「白線が何車線あって、矢印がどこにあるかというデータは流通していないんですね」と山本さん。

道路に目線を合わせてみれば、ビルの形が精巧で、自分が歩いたり車で移動したりしている時のことを思い出し、どのあたりかよく分かる。俯瞰で見れば、普段通っているだけでは知ることができなかったビル上部の出入り口の形やエレベーターの機械室などまで見ることができ、とても興味深かった。

模型を作ることで見えた栄のまちの特徴

「栄は、江戸時代のはじめに名古屋城が誕生し、まちができてから骨格がほとんど変わっていないと言われています。戦後に久屋大通のような100mほどの幅がある大きな道路ができたりという変化はありましたが、縦横の町割りは道幅が広くなっただけで昔から残っている部分もあります。栄は、平べったくて自転車だらけとも言われますが、意外と街中でも高低差があります。そういったまちの特徴を知っているつもりでしたが、実際にこの模型を作り、あらためて見ると、我々も栄を含めて名古屋の都心の事を勉強していると感じました」。

当初、模型は栄エリアのみに絞る予定だったが、山本さんの希望で栄の北に位置する名古屋城とその周辺の官庁街まで延長した。そのため城下町として、その後は名古屋市の中心地として発展したまちの様子がよくわかる。

また、名古屋城エリアまで延長したことには山本さんが注目するところも。
「官庁街は、こんなに広くて立派な敷地があるのに、土日は人があまり歩いていないんですね。現在はお城を整備したり、城に隣接する商業施設を作ったりして人を呼び込んでいますが…。休日には栄を訪れる人も多くなってきていると思いますが、栄とお城の間に官庁街があることで人の流れが途切れてしまっているんですね」。

まちの変化として、山本さんは、かつて東京のオフィス街・丸の内も休日は人が少なかったが、近年の再開発で変化したことを挙げ、「街は変われる」と言う。確かに、栄から賑わいがつながれば、名古屋市としてより活性化するのではないだろうか。

(左上)「Sakae-BA400」では資料として古地図も展示されており、模型と見比べるのも楽しい(右上)栄の南側から北を見た風景。写真奥が名古屋城エリア(左下)名古屋城と愛知県庁、名古屋市役所などがある官庁街(右下)栄は名古屋城の城下町として発展。地下鉄で栄駅から、名古屋城最寄りの市役所駅までは約3分、車では10分ほどの距離(左上)「Sakae-BA400」では資料として古地図も展示されており、模型と見比べるのも楽しい(右上)栄の南側から北を見た風景。写真奥が名古屋城エリア(左下)名古屋城と愛知県庁、名古屋市役所などがある官庁街(右下)栄は名古屋城の城下町として発展。地下鉄で栄駅から、名古屋城最寄りの市役所駅までは約3分、車では10分ほどの距離

最近は名古屋駅エリアの発展に押されつつあると言われる栄だが…

最初の項で山本さんの言葉にもあった通り、今の名古屋は交通の玄関口となる名古屋駅周辺の活気があると言われている。2027年にはリニア中央新幹線の開業を控え、再開発が進められている。名古屋市は昔から名古屋の中心であった栄を2027年までに活性化させる計画を進行中だ。

2つのエリアについて山本さんは以下のように語る。「名古屋の特徴ある姿は、栄や、名古屋駅と栄の間に位置する伏見エリアに残っているとおっしゃる方もいます。それは当然お城ができた時の地域なので。便利な名古屋駅と元々の姿と文化の薫りがする栄の両方があってこそ、名古屋というまちだと思うんです。そのためには、何とか栄も引き続き元気でいて欲しいなという思いがあります」。

明治時代に鉄道が開通した際、鉄道は元々発展していたまちから少し離れたところに通り、その駅も造られる傾向があった。
「玄関口となる大きな駅周辺のまちと昔からあるまちという構図は、福岡や札幌も同じだと思います。どうしてもどちらかが元気になると、どちらかが寂れてしまい、同時によくなるということはあまりないですよね。どちらかが賑わって話題になるとそちらに人が移動する。それが行ったり来たりする間に負けちゃいられないということで、頑張ると徐々に元気になるんじゃないかなと思っています。だから今度は栄の逆襲が始まるのではと期待しています」。

「Sakae-BA400」では、名古屋駅を代表する高層ビル、JRセントラルタワーズとミッドランドスクエアの模型も同じスケールで制作。並べてみると栄地区のビル群との大きさの違いがはっきり分かる。「栄エリアではこのビルを置ける場所がもうないんです。名古屋駅エリアとは、まちの大きさ、敷地の大きさが全然違いますから」と山本さん。「Sakae-BA400」では、名古屋駅を代表する高層ビル、JRセントラルタワーズとミッドランドスクエアの模型も同じスケールで制作。並べてみると栄地区のビル群との大きさの違いがはっきり分かる。「栄エリアではこのビルを置ける場所がもうないんです。名古屋駅エリアとは、まちの大きさ、敷地の大きさが全然違いますから」と山本さん。

模型がまちを考えるきっかけに

「Sakae-BA400」には、オープンからこれまでに1,000人以上が訪れている。社のクライアントなどを招待するほか、月に2回一般公開日も設けている。

「これは今の街の姿。これをどう変えたらいいかということに、今後トライしたいなと思っています。実際、プレゼンテーションにも模型でビフォーアフターを作ったりして、使い始めたところです」。

模型はすべてが一体でつながっているわけではなく、区画などで取り外しができるので、プレゼンの場に持ち運ぶことができるそうだ。会社としても、また一般で見学された人にも、まちを考えるきっかけとして活用されることを望む。

「この模型を見た方には、ぜひいろいろ感じて、まちづくりのアイデアを出していただきたいですね。もう一つ考えているのは、名古屋市の関係の方や大学の先生などに来ていただけるような場になればと。テーブルも置いて会議ができるようにもしています」。

模型を見ていると、こんな風になっていたのかという気づきだけでなく、こうなったらいいなと自然に考えが浮かんできた。まちを考えるきっかけとして、立体的に見られる模型の利点を感じた。サロンの壁には、社員が栄の将来の姿を考えたアイデア案もいくつか貼り出されており、そちらもとても興味深かった。子どもたちが好きな建物の形の模型を作れるイベントも開催したことがあるそうだ。ぜひ今後も、栄地区のまちを考える入口として活用されていって欲しいと思う。一般公開日については、月ごとに決まり次第、公式サイトのニュースで告知されるのでぜひチェックをしてほしい。

取材協力:株式会社 日建設計 名古屋 http://www.nikken.jp/ja/

細かな作りを見ているだけでワクワクし、時間が過ぎるのが早く感じるほど。親しみのあるまち並みにも新たな発見が多い。</BR>建て替え中や新登場したビルも随時更新されていく細かな作りを見ているだけでワクワクし、時間が過ぎるのが早く感じるほど。親しみのあるまち並みにも新たな発見が多い。
建て替え中や新登場したビルも随時更新されていく

2018年 09月18日 11時05分