名古屋における高級賃貸マンションの需要

栄タワーヒルズ。地下鉄矢場町駅から徒歩10分。100m道路とも呼ばれる幹線道路・若宮大通に面し、名古屋市科学館と名古屋市美術館がある白川公園もすぐ近くにある (写真提供:東建コーポレーション株式会社)栄タワーヒルズ。地下鉄矢場町駅から徒歩10分。100m道路とも呼ばれる幹線道路・若宮大通に面し、名古屋市科学館と名古屋市美術館がある白川公園もすぐ近くにある (写真提供:東建コーポレーション株式会社)

名古屋の陸の玄関口となる名古屋駅エリアとともに、名古屋をけん引する中心地として栄えてきた栄エリア。ここに、2019年2月、ホテル型高級賃貸マンション「栄タワーヒルズ」が完成した。建設したのは、1974年に愛知県刈谷市で創業した東建コーポレーション株式会社だ。

最高家賃は月164万1,000円。なぜいま地域最高額の家賃のマンションなのか―。
東建コーポレーション 仲介管理局の中野佑一さんにお話を伺った。

同社が手掛けた高級賃貸マンションは、これで2棟目。栄タワーヒルズのある中区と隣接する千種区に2007年に「千種タワーヒルズ」が完成している。

「最上階の家賃が100万円を超える千種タワーヒルズは、竣工してから10年以上経ちますが、下の階よりも家賃の高い上の階のほうが、入居が安定しています。そこから家賃が100万円を超える物件の需要があるのではないかと考えました」。

栄タワーヒルズの場所は、映画館の跡地。同社は2006年にすでに土地を取得していたが、リーマンショックの影響などがあり、この土地を活用する事業を一時的に見合わせていたという。その間に、北側にあった約300坪の駐車場跡地の購入話が舞い込み、2015年に取得。併せて約1,000坪という設計規模に決まった。

意外ともいうべきか、名古屋市内で高級賃貸マンションはそれほど多くない。そんな中で誕生した栄タワーヒルズは、2019年4月中旬時点で全156戸のうち129戸が成約済み。高級賃貸マンションの需要をキャッチした同社の読みは当たり、80%を超える入居率で順調なスタートをきった。

5つのグレードの部屋を用意

地上28階で高さ100.8mという栄タワーヒルズの最初の設計デザインを担当したのは、故・黒川紀章氏。東建コーポレーションでは1975年ごろより黒川氏を建築技術顧問に迎え、本社ビルや千種タワーヒルズも黒川氏が設計している。2007年に黒川氏が逝去され、栄タワーヒルズの構想もストップしていたが、再開にあたって黒川氏の完成イメージを元に造られた。

1階は住居エントランス、ラウンジの入口とは別に、同社が新たに立ち上げた高級賃貸物件取扱専門店「ホームメイトONE」と旅行代理店の「東通トラベル」が入り、2階に店舗、3・4階はオフィスフロアとして同社のweb部門などが入る。

内装は中世ヨーロッパをイメージ。高級ホテルのような豪華な雰囲気を醸し出している。部屋は、1LDK~2LDKのコンフォートとデラックス、2LDK~3LDKのハイデラックスとプレミアム、3LDK+パーティールームのスイートプレミアムと5タイプ。最高家賃は先に書いた通り164万1,000円だが、9万5,000円から設定し、単身からファミリーまで幅広く対応できるようにした。

当初は、外資系企業の役員や、東京から名古屋に転勤になった会社員などの入居を想定していたそうだが、実際は名古屋在住者の住み替えが多かったという。

「ホームメイトONE」の店長 工藤栄子さんは、入居者の声について「入居の決め手として多かったのは、マンション全体の雰囲気を気に入っていただけたこと。ほかに似たようなグレードの物件がないこともあり、引越す予定がなかったけれども、ここに住んでみたいと入居を決めてくださったお客様もいらっしゃいます。会社に近いなどの理由でセカンドハウスとしての需要もありました」と話す。

また、全156室のうち、65室が家具・家電付きで、55室が成約済み。「家具・家電付きの便利さや、部屋全体でコーディネートされているところが選ばれているのではないか」と中野さんは推測する。

最上階となるスイートプレミアムの部屋。家具・家電付きで、家具はイタリア製や、国内の大手家具メーカー・カリモクのものを採用。<BR>左上/ LDKは42畳。大きな窓からは名古屋の街並みを一望。<BR>左下/28.3畳のパーティールーム。この部屋に通じる専用玄関もある。<BR>右上/キッチンは、グループ企業のナスラックの製品のほか、食器洗浄機、オーブンはドイツのプレミアム家電ブランド・ミーレのものを導入しているのも喜ばれているという。<BR>右下/16.4畳の主寝室最上階となるスイートプレミアムの部屋。家具・家電付きで、家具はイタリア製や、国内の大手家具メーカー・カリモクのものを採用。
左上/ LDKは42畳。大きな窓からは名古屋の街並みを一望。
左下/28.3畳のパーティールーム。この部屋に通じる専用玄関もある。
右上/キッチンは、グループ企業のナスラックの製品のほか、食器洗浄機、オーブンはドイツのプレミアム家電ブランド・ミーレのものを導入しているのも喜ばれているという。
右下/16.4畳の主寝室

ホテルのようなコンシェルジュサービス

ホテル型高級賃貸マンションと謳うのは、豪華な居住空間だけではない。1階のエントランスには、午前7時30分~午後8時までコンシェルジュが常駐。来訪者の受付から、クリーニングや宅配便などの取次ぎ、医療施設やペットホテルといった提携する会社の紹介など、多彩なサービスを提供してくれる。別途、ガードマンが24時間常駐しているのも安心だ。

そのほか、共用スペースとして、24時間利用可能な入居者専用フィットネスジム、屋外庭園、屋上展望デッキを備えている。

左上/コンシェルジュデスク。<BR>左下/各部屋のタッチパネルからは、コンシェルジュへの連絡や、駐車場の出庫呼び出しができる。<BR>右上/入居者専用のフィットネスジム。ここから屋外庭園に出られる。<BR>右下/ 屋上の展望デッキには、大型望遠鏡が設置されている左上/コンシェルジュデスク。
左下/各部屋のタッチパネルからは、コンシェルジュへの連絡や、駐車場の出庫呼び出しができる。
右上/入居者専用のフィットネスジム。ここから屋外庭園に出られる。
右下/ 屋上の展望デッキには、大型望遠鏡が設置されている

2020年6月に刀剣博物館「名古屋刀剣ワールド」がオープン予定

栄タワーヒルズのエントランスに飾られている徳川家康の甲冑レプリカ栄タワーヒルズのエントランスに飾られている徳川家康の甲冑レプリカ

そして、もう一つ、注目を集めているのが常時200振り以上の日本刀展示を予定する刀剣博物館「名古屋刀剣ワールド」の誕生だ。

栄タワーヒルズの住居エントランスには、甲冑が飾られている。名古屋にゆかりがある、三英傑と呼ばれる織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の甲冑のレプリカだ。中世ヨーロッパの内装の中に不思議なほど溶け込んでいるが、同社の社長いわく「異文化の共生を狙った」とのこと。

日本刀や甲冑は、本社や系列ホテルにも一部が展示され、訪れる人を楽しませているという。そんな中、日本刀や甲冑を多数公開する刀剣博物館を栄タワーヒルズの北側の土地に現在建築中で、2020年6月に開館予定。地上7階建てで、日本最大級の展示数を誇る日本刀のほか、約50領の甲冑、浮世絵、書画などの美術品も展示予定だ。

この刀剣博物館誕生の報道がされるや、大きな注目を集めた。大ブームになっている日本の刀剣ファンのみならず、開館する2020年はインバウンド需要も期待できる。名古屋の新たな観光スポットの一つとなることは間違いないだろう。

現在はウェブサイトでバーチャル刀剣博物館「刀剣ワールド」を開設し、展示予定の日本刀の紹介や、日本刀の豆知識などを公開している。

郊外から都心へ。今後は東名阪での高級賃貸マンション事業を展開

東建コーポレーション 仲介管理局の中野佑一さんと、「ホームメイトONE」店長の工藤栄子さん東建コーポレーション 仲介管理局の中野佑一さんと、「ホームメイトONE」店長の工藤栄子さん

東建コーポレーションは全国に支店を展開しているが、都心部の物件はそれほど多くない。あらためて、都心への展開について中野さんに聞いた。「弊社が事業を始めたころは、都心から郊外に人の流れが広がっていった時代です。ロードサイドビジネスからスタートをして、例えば2階建ての3戸並び、4戸並びといった賃貸アパートを郊外に建てて、成長してきました。ところがいまはまったく逆で、郊外から都心に人が流れる逆戻りの時代になってきています。人が減る地域でアパートを建てて赤字になるようではいけません。今後、都心部に力を入れていくためにも、この栄タワーヒルズはランドマークとしての意味合いを持っています」。

東名阪と3つの都市圏での展開を目指し、まずはおひざ元である名古屋に布石を打った。栄タワーヒルズに入店する「ホームメイトONE」も、都心部での扱いが多い高級賃貸マンション専用にして、都心の中で戦っていくために立ち上げたブランドとなる。

「原点回帰とはまた違うんですけれども、郊外から都心部へという、東建コーポレーションの新たなチャレンジを目指します」と中野さん。

時代に合わせた今後の展開に注目していきたい。


取材協力:
東建コーポレーション https://www.token.co.jp/
栄タワーヒルズ https://www.tower-hills.com/sakae/

2019年 06月09日 11時00分