“補助金ありき”からの脱却

「中之条ビエンナーレ」は制作期間中の作家の宿泊支援も行っている。写真は旧中学校を利用した「伊参(いさま)スタジオ」内の教室に置かれたベッドと布団「中之条ビエンナーレ」は制作期間中の作家の宿泊支援も行っている。写真は旧中学校を利用した「伊参(いさま)スタジオ」内の教室に置かれたベッドと布団

前回は中之条ビエンナーレの概要をみてきた。最終回の今回は、町民と足並みを揃えたイベント運営をみていく。

まず中之条ビエンナーレの集客規模だが、第1回の参加作家数が58人・のべ来場者数48,000人だったのが、2013年開催の第4回では、113組・338,000人と急激に規模を拡大している。経済面も同様に、2007年開催時は補助金320万円で運営を賄っていたが、2013年に初めて入場料を設け、補助金624万円を含めた33,044,573円の事業費となり大きな経済活動になっている。

2013年から入場料を設けた理由は何か?
「まずは、継続性を見据えての決断です。2011年まではグッズ販売と補助金が主な収入源でした。ただ、“補助金があるから開催できる”という芸術祭にはしたくないという思いがあり、2013年から入場料をいただいています。また、中之条町では県外から訪れる作家さんの移動補助や宿泊場所の支援をしています。参加作家さんが増えたぶん活動支援に必要な費用も増えました」と、中之条町企画政策課の安原克規さん。

入場料による歳入で補助金負担を減らし、そのぶんの補助金を町の行政につかう方が、町民も納得感が大きいだろう。

大きくなりすぎた芸術祭

「中之条ビエンナーレ」継続のカギは“人”にある「中之条ビエンナーレ」継続のカギは“人”にある

「来場者数が増えるのは嬉しいのですが、その反面で自分たちでは運営しきれない規模になってきたと思うことがあります」と安原さん。
全国の多くの事例と同様に、中之条ビエンナーレもまた、運営方法について考える時期に来ているようだ。

「今は地区ごとに、会場の貸出しとボランティアのお願いにまわっていますが、今後も町の温泉協会・観光協会・商工会など、より多くの人に協力していただける団体や人へ働きかけをして、巻き込んでいきたいです」

持続可能な芸術祭になるために

四万温泉街の情緒ある路地裏。中之条町の地域資源の魅力は、作家の目から見たら至るところにあるだろう四万温泉街の情緒ある路地裏。中之条町の地域資源の魅力は、作家の目から見たら至るところにあるだろう

町内各地を巡りながらアート観賞をする中之条ビエンナーレは、市街地・温泉観光地・山間部それぞれの生活圏をもつ町のメリットを最大にいかし、地域資源の魅力の再発見と地場産業の復興のきっかけをつくる優秀なコンテンツだ。
さらに、中之条ビエンナーレに関するテレビや雑誌などのメディア露出の影響も大きい。“アートの町”としてのブランディングのほかに、そこに暮らしている町民意識の向上にも効果が見込める。これは、現在は一部の町民に留まっているボランティア参加が増える起爆剤になるかもしれない。

「町民は入場料を無料にして、アートに触れる機会を増やしています。2013年は来場者の4分の1が町民でした。農作業姿のおばあちゃんが、パンフレット片手に会場を見てまわるという微笑ましい姿も見られました。2010年にはアート活動の拠点として『ふるさと交流センター つむじ』を開設しました。作家さんの作品に触発されて自分も作品をつくっている町民が、ここで作品の展示・販売をしています。また、維持が難しいことと資金面から、まだ実現はしていませんが、作品を撤去せず1年中鑑賞できるようにする案もあります。さらに実行委員会では、若手作家を育成しアートの質を底上げする目的で、会期後も年間を通して参加作家さんの活動をPR面で支援しています」

町民が作品を観賞したり、創作に参加すること、また1年中集まれるアートの拠点がある意味は大きい。アートに興味を持つ住人が増えるほど、中之条ビエンナーレは持続可能なイベントになっていくだろう。
また、前編で挙げた“アートで町おこし”の成功事例のひとつ「直島アートプロジェクト」では、町でつくられた作品は永久保存するという手法をとって、質の高い作品を維持しながら1年中観光客を呼ぶ材料にしている。中之条ビエンナーレも“1年展示”が実現できたら、観光産業の底上げがはかれるかもしれない。

中之条町には、27の太々神楽(だいだいかぐら)と獅子舞がある。この小さな町でこれほどの規模が残っているのは珍しい。この伝統行事を集落単位で代々守り続けてきた歴史は、町民が自立してイベントを運営していける素地になるかもしれない。
中之条ビエンナーレという優秀なコンテンツをどう運営していくのか、中之条町の町民が選ぶ道に注目だ。


2015年 03月01日 11時15分