景気後退はボーナスに影響
新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、かつてない規模の経済対策が組まれることとなった。経済活動の基礎となるヒト・モノ・カネの流れが世界規模で滞っている今、企業の売上げは激減。「経費削減のためには、給与調整や雇用調整もやむ無し」と判断する経営者もいるだろう。一方で、「半年前までの人手不足を考えれば貴重な人材を失いたくはない。雇用継続は維持するが、今期のボーナスは勘弁してほしい」と考えている経営者だっているはずだ。働く側はどうするのか。「ボーナスがカットされるならば転職する」とたんかを切って辞められる状況ではなさそうだ。この厳しい局面もまずは自分で対応することを考えねばなるまい。
今回のコロナショック以前にも、バブル景気の崩壊、リーマンショックなど、いくつもの景気後退、雇用不安を経験してきた。そしてその度に、住宅ローン返済におけるボーナス払いへの偏重が見直されてきている。給与調整がなされる際、真っ先に影響を受けるのがボーナスだからだ。毎月の家計の赤字をボーナスで穴埋めすることは比較的ラクだが、ボーナスの赤字を毎月の収支で補うのはハードルが高い。経験者も多いことだろう。ファイナンシャル・プランナーである筆者へ住宅ローン相談に来られる方のほぼ9割は、毎月払いのみ返済を希望される。「ボーナスは予測できないからボーナス払いは不安」ということだ。
うまく使おう、住宅ローンのボーナス返済
住宅ローンの返済プランには、毎月返済のみとボーナス併用返済があるが、ボーナス併用は悪の根源かというと、決してそうではない。頼り過ぎはいけないが、適切に利用すると毎月返済の負担が減って家計がラクになる。表の借入額4,000万円を35年・元利均等返済の場合の試算例で確認してみよう。
ボーナス併用無しのプランだと、毎月返済額は118,592円だ。借入額の40%にあたる1,600万円をボーナス払いすれば毎月返済額は71,155円まで減額できる。だが、ボーナス時には285,230円が加算される。少し負担であろうか。700万円だけボーナス返済に設定するプランにすれば、毎月返済額が97,839円と10万円を下回り、ボーナス時の加算額を124,788円に抑えることも可能だ。万が一、ボーナスが激減しても支払える金額でまずは試算してほしい。ちなみに、利息総額は下表のとおりボーナス払いが少ないほど低額になる。半年分の元本をまとめて返済するため、ボーナス払いまでの利息が加算される仕組みだ。
なお、借入総額に対するボーナスの割合は、住宅ローンごとに上限が決められている。民間金融機関では、50%以内というところもあるが、住宅金融支援機構と民間金融機関が提供する全期間固定金利【フラット35】は、借入額の40%以内(1万円単位)だ。随分前には、住宅金融支援機構も50%以内というルールだったが、ボーナス偏重の見直しにより、現在の割合となっている。
ボーナス減少の可能性があれば、ボーナス月までに対応を
そもそも、ボーナスという報酬体系ではない、ボーナス払いをしていない、ということであれば、住宅ローンのボーナス払いの見直しは不要だ。だが、ボーナス払いに頼った返済プランだと、ボーナスの減少は非常につらい。住宅ローン以外にもボーナス払いを設定しているならばなおさらだ。ボーナス減少の可能性があるならば、まずは、ボーナス払いの費目と金額をすべて把握しよう。費目や支払先が異なれば、対応策も異なる。当コラムでは、住宅ローン返済についてみていく。
自分で決めて自分で行動できる返済プランの見直しは、主に3つだ。
●ボーナス払いの停止。
●ボーナス返済割合の見直し。
●ボーナス月の変更。
いずれも、返済先の金融機関へ届け出をして対応できる。金融機関や契約内容によって、ホームページ上で手続きが完了したり、電話対応だったり、来店が必要だったりするため、手数料の有無とともに確認しよう。効果の検証等も相談可能だ。なお、住宅ローン返済プランの見直しは、家計支出の見直しが大前提であることを述べておく。
【ボーナス払いの停止】
ボーナス払いをやめれば、ボーナス月も通常月と同額の返済となる。だが、ボーナス払いの元本が毎月返済に上乗せされるため、毎月返済が増額される。日々の家計負担が重くなるため、事前の試算と覚悟が必要だ。上の表を確認してほしい。毎月返済のみとボーナス元本を1,600万円にしたプランでは、毎月返済の差額は47,437円にもなる。返済中住宅ローンの残元本、残期間をもとに見直しプランを試算し、毎月返済の増額による家計負担を確認しよう。実行はそれからだ。
【ボーナス返済割合の見直し】
これは、ボーナス返済を停止するのではなく、減額する方法だ。4万円も5万円も毎月返済が増額すると耐えられないが、2万円までの増額ならば家計支出の見直しで捻出できる可能性がある。など、増額可能な金額からボーナス返済割合を逆算していく。家計の見直し、家計収支の把握、ボーナスの見込み額などがポイントだ。収入と支出のバランスを最適化しよう。
【ボーナス月の変更】
給与体系の変更や転職により、ボーナスの振込月が変更になって返済に不具合が生じる場合は、ボーナス返済月の変更を考えたい。
以上は、返済中の金融機関を窓口とする返済条件の見直しだが、この際、「借換え」という選択肢もある。
【住宅ローンの借換え】
住宅ローンを借り換える場合は、現在の住宅ローンを解約して新規の契約を締結することになるため、手数料等の支出が発生する。借換えによって支出以上のメリット(返済額の軽減)が得られないと意味がない。メリットの多寡や有無は、現在の返済金利と新金利、残元本、残期間によって異なる。借換先の適切な選択と試算が重要だ。借換えによって金利が下がり、返済方法を毎月返済のみに見直せば、先に述べたボーナス返済の見直しよりも毎月分の増額が少なくて済むかもしれないし、同額程度に抑えることができるかもしれない。そうなれば手数料等を支払う価値は十分にある。重要となる試算は、金融機関のホームページで自分できる。また、モーゲージプランナーや住宅ローンに精通したファイナンシャル・プランナー等、専門家に依頼することも可能だ。
自分だけではできない、その他の対応について
新型コロナウイルス感染症が拡大する現在は、外出自粛、緊急経済対策など国家をあげての緊急事態だ。ボーナス返済だけでなく、毎月の住宅ローン返済にも困難が生じよう。しかも、トンネルの出口が見えないことへの不安は極まりない。ここまで、自分で行動できることを中心にお伝えしてきたが、住宅ローン返済に不安を感じたら、早期に返済先の金融機関へ相談したい。「返済猶予」を受けられるかもしれない。金融機関との合意が必要なため、届け出さえすれば完了するものではないが、返済期間を延長して返済額を軽減したり、元本を据え置いて利息の支払いのみとしたり、方法はいくつか考えられる。各金融機関では、今回の新型コロナウイルス感染症拡大の対応策としての相談窓口を設けている(下記参照)。相談は返済できなくなってからでは遅い。選択肢が少なくなってしまうのだ。早期の相談を心掛けたい。
休業、失業、契約解除などによる収入の激減に対しては、安倍首相が国会で何度も発言していた社会福祉協議会を窓口とする生活福祉資金貸付制度の緊急小口資金や総合支援資金なども検討したい。この制度は低所得者などを対象とした制度で、新型コロナウイルス感染症の対策として拡充された。最大20万円を無利子で借りられて、大変ありがたい。だが、あくまでも「緊急小口資金」だ。住宅ローンは残念ながら継続する。留意したい。
まずは、緊急に必要な資金と、継続的資金を区別すること。前述の通り住宅ローン以外のボーナス払いの費目と金額を把握。支払日、支払金額、継続性を見える化し、支払いの優先順位を確認しよう。情報源や頼る先にも注意したい。社会福祉協議会をはじめ、厚生労働省、財務省、首相官邸、内閣官房など、各省で特設ページが立ち上がっている。また、雇用保険、失業保険、健康保険等の社会保険、会社の休業手当なども調べておきたい。けっして安易に金利の高いカードローン等に頼らないこと。国をあげての経済対策が行われている、まずは、給付を優先。そして、無利子の貸付、と低コストのものを優先したい。この時期さらに注意したいのが詐欺だ。確かな情報源の役立つ情報を活用したい。我々には選択の自由があるが、すべて自己責任となる。
※記事は2020年4月4日時点での情報です。
(参照)住宅金融支援機構/新型コロナウイルス感染症の影響により機構の住宅ローンのご返済にお困りの方へのお知らせ
https://www.jhf.go.jp/topics/topics_20200323_im.html
(参照)全国銀行協会/新型コロナウイルスに関する全銀協会員行(正会員)の対応について
https://www.zenginkyo.or.jp/topic/covid19-jbamembers/
(参照)社会福祉法人全国社会福祉協議会
https://www.shakyo.or.jp/index.htm
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