デザイン性を高めたシステムキッチンが増えてきている

家づくりを進める中で、キッチンをどのようなプランとするかは大きなポイントのひとつ。最近では、キッチンメーカーからは豊富な商品バリエーションが揃い、間取りやライフスタイルに合わせて好みのキッチンを実現することも可能となっている。

新築やリフォームの際に、多くの方が取り入れているシステムキッチンの最近の傾向をみてみると、掃除のしやすさや収納の充実、ビルトイン機器類を中心とした機能性、操作性の向上などに加え、インテリア性やデザイン性の高さが挙げられる。

キャビネットやカウンターだけでなく、換気扇や加熱機器、水栓金具などの機器類にもデザインにこだわったタイプが多くみられる。また、キャビネット扉のバリエーションの豊富さ、食器棚、家電収納など周辺キャビネットの充実など、キッチンだけでなくダイニングやリビングなどを含めてコーディネートしやすい商品も増えてきている。

これらの商品が充実する背景のひとつには、物理的にも精神的にもキッチンが住まいや暮らしの中心となっていることが考えられる。人気の対面キッチンやアイランドキッチンを中心としてダイニングやリビング空間がつながる、LDKがひとつの空間となるプランが多くみられること、家族はもちろん来客も含め、一緒に料理をしたり片づけを行うことが日常のひとつシーンとなっていることなど、キッチンは作業場だけではない空間となってきているようだ。

ダイニングテーブルとキッチンを融合させた新商品「HIROMA」。キッチン部分にはシンクを設け、調理をする時にはダイニングテーブルに卓上IHコンロをセッティングする。 クリナップ/飛騨産業ダイニングテーブルとキッチンを融合させた新商品「HIROMA」。キッチン部分にはシンクを設け、調理をする時にはダイニングテーブルに卓上IHコンロをセッティングする。 クリナップ/飛騨産業

家具のようなキッチンが注目される理由

ダイニングやリビングなどを含めコーディネートしやすいシステムキッチンには、ここ数年、機器というよりも家具のような雰囲気を持つタイプも多くみられるようになってきた。しかし、あくまでもシステムキッチンに家具調の意匠を持たせた、という印象が否めなかったように思う。

そのような中、最近になってシステムキッチンという機器というよりも、より家具に近いキッチンが発表された。キッチンメーカーと家具メーカーとのコラボレーションによる商品だ。

それらの商品の開発背景として、新商品を発表したキッチンメーカーのひとつ、クリナップリテール事業企画部事業企画課 主任の石田悦子さんは、「ワンルームとなったLDK空間の影響もあると思います。限られた空間の中に設置するキッチンに、インテリア性や家具との調和を求める方が増えてきているのではないでしょうか」と話す。

間取りプランを進める中では、スペースを有効利用するためLDK空間をひとつとするケースも多い。家具を置くと窮屈になりがちなため、家具と調和し、サイズ的にもコンパクトなキッチンが求められている、ということなのだろう。

また、シングルでも夫婦でも、仕事が忙しい世代は家事の省力化に積極的であり、時短調理も注目されている。調理家電の進化、充実の影響も考えられる。調理にこだわりフルスペックのキッチンを求める層とは異なり、キッチンの機能、要素を極力シンプルとしたい、という要望もあるようだ。

このような環境の中、家具メーカーとのコラボレーションによって昨年発表されたふたつのキッチン商品を見てみる。

ダイニングテーブルとシンプルなキッチンを融合/クリナップ+飛騨産業

キッチンメーカーであるクリナップと木製家具メーカーである飛騨産業がコラボレーションし生まれたのがキッチンテーブル「HIROMA」。キッチンの要素をシンプルにしダイニングテーブルと融合させた商品だ。

「HIROMA」は、シンクを組み込んだキッチン部分とダイニングテーブルを自由に並べてプランニングするもの。調理時は、卓上IHコンロをダイニングテーブルに置いて作業する。「テーブルやプレートを設置したシンクの上を作業台として活用できるのが特徴です。通常のキッチンの大きさでダイニングを兼ねることができるため、ゆとりある空間を実現できるのではないでしょうか」と石田さん。料理をしない時にはIHを収納しておくことで、食事だけでなくPC作業をするなどテーブルを自由に使用することができる。

また、毎日加熱調理をする方向けには、IHコンロ付きのタイプも用意されている。調理スタイルに合わせてプランニングすることができるだろう。その他、シンク下部にはIHコンロや鍋、ボールなど必要最低限の調理道具類が収納できるワゴンも用意、IHコンロ付きのタイプであれば食器洗浄機を組み込むことも可能だ。

ダイニングテーブルは、天然木(ホワイトオーク)を使用しており、サイズやカラーを選ぶことができる。「キッチンとのつながりを考慮して、シンプルなデザインとしているので、どんな空間にも合わせやすいと思います。好みのチェアを取り入れることで、個性的にも演出できますし、もちろん収納家具などのコーディネートも可能です」と話すのは、飛騨産業 デザイン室 課長の坂井雄大さん。

「キッチンとテーブルの距離感も魅力のひとつではないかと思います。子供も安心して見守れますし、手伝いもしやすいのではないでしょうか。昨年『DESIGNART TOKYO 2019』や『IFFT/インテリアライフスタイルリビング』などにも出展し、多くの方に興味を持っていただけました」(坂井さん)

(右上) クリナップの石田悦子さん、飛騨産業の坂井雄大さん (左上) IHコンロ付きタイプ。食器洗浄乾燥機を組み込むことも。 (右下) マットなブラックのワークトップに清潔感のあるシンク。シンク内にはマルチプレートを用意(マルチプレートやシンク上で使用できるカッティングボードはオプション) (左下) 可動式のワゴンは作業に合わせて効率的に使ことができる。
「HIROMA」 キッチン部基本セット(シンクのみプランW900、シングルレバー水栓、ワゴン1台) 525,000円/ダイニング部基本セット(ダイニングテーブルW1350、ダイニングチェア4脚) 406,000円(税別) 
※現在は先行販売期間のため、配送(販売エリア)は1都3県(東京・神奈川・埼玉・千葉)
(右上) クリナップの石田悦子さん、飛騨産業の坂井雄大さん (左上) IHコンロ付きタイプ。食器洗浄乾燥機を組み込むことも。 (右下) マットなブラックのワークトップに清潔感のあるシンク。シンク内にはマルチプレートを用意(マルチプレートやシンク上で使用できるカッティングボードはオプション) (左下) 可動式のワゴンは作業に合わせて効率的に使ことができる。 「HIROMA」 キッチン部基本セット(シンクのみプランW900、シングルレバー水栓、ワゴン1台) 525,000円/ダイニング部基本セット(ダイニングテーブルW1350、ダイニングチェア4脚) 406,000円(税別)  ※現在は先行販売期間のため、配送(販売エリア)は1都3県(東京・神奈川・埼玉・千葉)

機能的なキッチンユニットとシェルフ/サンワカンパニー+カリモク家具

住宅設備機器と建築資材を販売するサンワカンパニーと木製家具メーカーであるカリモク家具とのコラボレーションで生まれたキッチンが「KNSコンパクトキッチン」だ。サンワカンパニーの担当者は開発の経緯を「設備メーカーと家具メーカーが共に商品開発することで、それぞれのユーザー双方へ影響を与えることが出来るのではないか」と話す。

「KNSコンパクトキッチン」は、イタリア・ミラノで行われた「MilanDesignWeek2019(ミラノサローネ)」へ出展するにあたって開発、コンセプトは「機能的なキッチンユニットと木製サイドボードのハイブリッド」という。デザインは、インダストリアルデザイナーであるクリスチャン・ハース氏。モダニズム建築に見られるグリッド構造から着想を得たキッチンは、リビングに置くサイドボードを思わせ、国産のナラ材とシャープなステンレス天板のコンビネーションも魅力。シェルフを組み合わせることで、より温もりを感じるインテリアが実現できる。

「昨今のトレンドでもあるモダンビンテージテイストのインテリアにも合わせやすく、自然素材志向のユーザーをターゲットとしています。木の持つ優しさや温かみ、癒しなどを感じていただけると思います」(開発担当者)

(左上)チェストのようなデザインのキッチン。壁面に設けたシェルフも用意。 (右上) 薄くモダンな印象の天板。ヘアライン仕上げ、ランダムに磨きをかけたバイブレーション仕上げも。 (左下) グリッドの一番上の段は固定部分、2・3段目が静音レール付きの引出し収納。内部はお手入れしやすい素材を採用。 (右下) スクエアなデザインが特徴のシンク。[KNSコンパクトキッチン]  345,000円(税込)/台~ 
(左上)チェストのようなデザインのキッチン。壁面に設けたシェルフも用意。 (右上) 薄くモダンな印象の天板。ヘアライン仕上げ、ランダムに磨きをかけたバイブレーション仕上げも。 (左下) グリッドの一番上の段は固定部分、2・3段目が静音レール付きの引出し収納。内部はお手入れしやすい素材を採用。 (右下) スクエアなデザインが特徴のシンク。[KNSコンパクトキッチン]  345,000円(税込)/台~

週末住宅や賃貸住宅、オフィスや店舗などにも適するか?

システムキッチンは進化し続けている。プランバリエーションはもとより、キャビネット収納の充実、シンクや換気扇の清掃性など、性能や使い勝手は高まり、充実した機能を持つキッチンへのニーズも多い。

しかし、せっかくの高機能もライフスタイルや家族構成によっては、使いこなせないケースもある。「食」への意識の違いもあるかもしれない。家では簡単な調理しかしない、食事は短時間に済ませたい、などであれば、機能満載のフルスペックのキッチンは必要ない場合も。もちろん間取りの問題からコンパクトなキッチンが必要なケースもあるだろう。

このようなコンパクトで家具のようなキッチンは、シングルやディンクスだけでなく、シニア世代の住まい、週末住宅などでも取り入れやすいかもしれない。また、ワンルームの賃貸住宅、オフィスや店舗などに設置することも考えられる。

いずれにしてもキッチンをプランニングする際には、暮らし方、調理や食事の仕方をイメージし、求める機能の優先順位を明確にすることが重要だ。今の暮らしだけでなく、将来的なライフスタイルの変化を考慮して検討することが大切なのは言うまでもない。

シンプルなキッチンとはいえ、取り入れる際には、換気扇などとも関わるので設計者に確認を。また、商品にもよるが、家具のような仕上げのキッチンの場合、水が掛かるようであれば使用後は必ず拭き取るなどお手入れが必要になる。清掃性に関しても事前に確認しておきたい。


取材協力 
クリナップ/飛騨産業/サンワカンパニー

2020年 01月30日 11時05分