日本の家電はインテリアと相性が悪い? 人気は家電を隠せるキッチン収納

「日本の家電は、性能は素晴らしいがデザインがダサい」よく聞く声である。仕事柄、筆者が特に気になるのがキッチン家電だ。キッチンリフォームの際、キッチンに置いてある多くの家電をどうレイアウトするか悩む施主は少なくない。

ひと昔前の閉鎖的なキッチンであれば、見た目より機能優先で問題はなかった。しかし今やキッチンは開放的になり、インテリア性も重要視される場所である。現在住宅で人気のインテリアは、ムダな装飾をそぎ落としたクールで軽やかなシンプルモダンや、そこに自然素材を加えたナチュラルモダンである。そんな中でパネルそのものが取扱説明書のようになっていたり、エッジを何重にも縁取っていたり、いわゆる家電カラーでツートンになっていたりするデザインはどうしても悪目立ちしやすい。

そこでリフォームの現場で最近人気になっているのが、キッチン家電をまるごと隠せる大型の壁面収納である。すべて扉で覆ってしまえば、どんなデザインであろうが問題はない。

しかしあえて出しておきたい、見せたい家電も存在する。住宅展示場のモデルハウスやマンション販売のモデルルーム、おしゃれなカフェなどで見かけたことがある人も多いのではないだろうか。イタリアのデロンギやアメリカのクイジナート、イギリスのダイソン、ドイツのミーレ、スウェーデンのエレクトロラックスといった海外のブランド家電である。

なぜ日本の家電はダサいのだろうか。メーカー側はどう思っているのだろうか。そのあたりの疑問を、日本の家電メーカーの雄であるパナソニック株式会社に直接聞いてみた。パナソニックはご存じのとおり、国内はもとより世界的な電機メーカーであり、現在は国内唯一の総合家電メーカーである。実は筆者は家電に疎い。しかしいくらそうであってもこんな失礼な質問をして大丈夫だろうか、と不安になりつつ聞いたのだが、本当に快くていねいにお答えをいただいた。まずは心より感謝申し上げたい。

キッチンはより開放的になり、家電を隠すことができる収納を望む人が少なくない。そこで人気になっているのが、すべてを隠せる大型の壁面収納だ(パナソニックキッチンラクシーナ)キッチンはより開放的になり、家電を隠すことができる収納を望む人が少なくない。そこで人気になっているのが、すべてを隠せる大型の壁面収納だ(パナソニックキッチンラクシーナ)

海外のブランド家電一辺倒だったモデルルームに、日本の家電が並び始めた

このような取材をしようと考えたキッカケは、これまで海外のブランド家電一辺倒であったインテリアの現場で、日本の家電を見かけるようになってきたことにある。

これまでモデルルームだけでなく、インテリアの撮影現場においてもディスプレイ用に海外のブランド家電をレンタルしてきて並べることが少なくなかった。デザイン性の高い海外のブランド家電は、一気に空間をセンスアップさせ、憧れの暮らしをイメージさせてくれるパワーを持っている。

以前、マンション販売のモデルルームにカラフルな海外製の冷蔵庫をコーディネートしたところ、その冷蔵庫をいたく気に入り、冷蔵庫ごとその物件が即売したという話がある。もちろん冷蔵庫で決めたわけではないし、カラフルな冷蔵庫を日本でつくったところでほとんど需要はないだろう。日本人はもともと「飽きのこないもの」というキーワードのもと、床は茶色、壁は白といったベーシックなものを好む傾向が強い。しかしその物件では、冷蔵庫が住空間の魅力を一気に押し上げる重要な要素であったことは間違いない。

そんな舶来物全盛ともいえるインテリアの現場で、最近は国産の家電を見ることが増えてきた。バルミューダやブルーノといったブランドである。斬新でありながらどこかレトロな雰囲気を持つデザインは、インテリア雑誌でも特集が組まれるほど人気になっている。

実は筆者が初めてこれらの家電を見た時、どこの国の製品だろうと思った。従来の国産家電とは異なるテイストで、最新の人気インテリアの中に置いてもすんなりなじむ。コンセプトも面白い。例えばバルミューダのスチームトースターは、値段は少々高いが驚くほどおいしくパンが焼けることに特化し、パン好きならどうしても欲しくなる家電になっている。

これら最近話題のおしゃれ家電の共通点は、比較的小規模なメーカーの製品であることだ。このような斬新なデザインや新しいコンセプトを生み出せるのは、小回りが利く会社だからこそできることなのだろうか。大企業は基本的に大量生産でコストを下げて競争力とする。そのためにはマーケティングによる多数派のニーズを押さえる必要があり、最大公約数の枠内から出ることができないのではないか。

家電業界の門外漢の発想ではあるが、このようなことをもんもんと考えている時に、ちょうどパナソニック株式会社の新しいデザイン戦略についてのセミナーが開催されることを知り、まずはそこに参加してみた。

住宅展示場のモデルハウスのキッチン収納内部。ぱっと目につくのは海外のブランド家電。しかし最近では国産の家電が置かれるケースをよく目にするようになってきた(撮影:一級建築士事務所 OfficeYuu)住宅展示場のモデルハウスのキッチン収納内部。ぱっと目につくのは海外のブランド家電。しかし最近では国産の家電が置かれるケースをよく目にするようになってきた(撮影:一級建築士事務所 OfficeYuu)

「より良い炊飯器をつくる」という発想ではイノベーションは生まれない

パナソニックは2019年4月、経営とデザインの一体化運営に注力するための新しいデザイン本部を立ち上げた。これまでパナソニックは、常に「前より良い物をつくろう」という技術主導での進化を遂げてきた。まさに高品質をうたう日本のものづくりの会社ならではだ。しかしこのような進化方法はあくまでも既存の延長線上にしか存在せず、新しい発想が生まれにくい状況でもあった。

デザイン本部長の臼井重雄氏によると、イノベーションを起こすデザインプロセスは4段階で、1段階目は「気づく」、次に「考える」、3段階目が「つくる」、そして4段階目が「伝える」であり、これまでは3段階目の「つくる」が占める要素が圧倒的に多く、多くの人員と時間が割かれていたという。

デザインといっても単純な色や形のことだけを指すのではない。顧客の潜在ニーズを発見し、コトバにならないモノをカタチにし、素早く世に問いフィードバックする、つまり考察、計画、表現を含めたすべての計画手法を指している。

今回の戦略の肝は、「つくる」以前の段階を重要視するところにある。「より良い炊飯器をつくる」というモノ目線の発想から、そもそも「誰のために何をつくるのか」というヒト目線での発想をすることですべての製品の存在意義を問い直し、イノベーションを起こそうというわけだ。そのためにまずは、既存製品の見直しから始めるという。

このようなイノベーションを実現させるためには、デザイナーとエンジニアの間の壁を取り払うなどの社内改革も必要になる。これまで、新しい発想が生まれても、デザインチームから経営陣に届くまでのルートが長く、時間がかかったり途中で消えてしまったりしたものもあったそうだ。現在はデザイナーと社長が膝を突き合わせてミーティングをする機会もあるという。

この話を聞いて思い出したのが、海外での仕事が多い友人のインテリアデザイナーの話だ。欧州の展示会などに出展している日本のブースはやたら文字が多く、モノ目線での性能の解説が長々と書かれていることが多いとのことだった。そしてそれを読む人は少ないとも言っていた。海外の人気ブースはというと、解説は少なめで、イメージで人の思いが伝わるように工夫されているとのこと。いかにも日本らしいエピソードだ。

パナソニック株式会社デザイン本部本部長の臼井重雄氏。デザイン本部はイノベーション推進部門の中にあり、経営戦略の最上流から関わる存在である。デザイナーが社長と直接懇談する機会もあるというパナソニック株式会社デザイン本部本部長の臼井重雄氏。デザイン本部はイノベーション推進部門の中にあり、経営戦略の最上流から関わる存在である。デザイナーが社長と直接懇談する機会もあるという

インテリアや生活、価値観に合わせて進化し続けている家電、白物は黒く、黒物は白く

さて日本の家電はなぜダサいのか、思いきってパナソニックに聞いてみた。正直かなりの勇気を要した。そしてその答えは、本当にダサいかどうか実物をじっくり見にきてほしい、それから話しましょうとのことだった。そこで2019年7月に改装、再オープンした家電製品のプレスルーム「くらしの中の家電」に見学に行ってきた。

そのプレスルームは、リビング、キッチン、サニタリーなど住空間を模したスペースに最新家電、約100点が展示してあり、さながらモデルルームのようなつくりになっている。コンセプトは「好きなものと暮らす。」こと。家具も雑貨も家電も毎日過ごす場所にある物だからこそ、暮らしの中の大切な要素として位置づけるという考え方だ。

そこに入った瞬間、筆者は日本の家電の変化、いや進化に驚かされた。従来の日本の家電のイメージとは全然違っていた。すごくカッコいいと思わず声を上げてしまったほどだ。余計なものはそぎ落とされたモダンでスタイリッシュなデザインは、いまどきのインテリアにすっとなじみ、さらにそのインテリアを引き立てる存在になっていた。

家電のデザインは、日本のインテリアのトレンドを強く意識しているのはもちろん、日本人の生活や価値観の変化に合わせて常に進化し続けているという。だから本当は日本の家には日本の家電が似合うという言葉には、深い納得があった。

また最近では多様化する消費者ニーズに合わせ、最高峰の機能を持つものや、デザイン重視のものなど、さまざまなラインナップを揃えているとのこと。

例えばパナソニックの最高峰の洗濯機は、除菌消臭などを行うナノイーXを搭載、液体洗剤や柔軟剤を自動投入してくれる機能を持った、ななめドラム式洗濯乾燥機「VXシリーズ」だ。自動投入とは、最初に洗剤や柔軟剤をまとめて1本分を入れておけば後は洗濯のたびに自動で計測、投入してくれるというもので、1回使うと便利で手放せないと言う人が多いそうだ。

デザイン重視の洗濯機は「キューブル」だ。容量はコンパクトながら、モダンなデザインが売りになっている。エッジの効いたフォルムとステンレスのクールな素材感は現在主流のインテリアのテイストにぴったりで、プレスルームでもまず目についた。

最近の家電デザインの傾向としては、白物家電と呼ばれる炊飯器などの生活家電は黒色の製品が増え、黒物家電と呼ばれるテレビやレコーダーは白色が増えているとのことだった。これも昨今のインテリアのトレンドや現在の消費者ニーズに合わせた変化だという。黒色の炊飯器は高級感があり、インテリアにすっとなじんで、これはいいぞと独りごちたのである。

しかしこんなに日本の家電は変わっているのに、なぜ筆者を含め、世間にも日本の家電はダサいという思い込みがあるのだろうか。

品川にあるパナソニックの家電製品のプレスルーム「くらしの中の家電」の様子。「好きなものとくらす。」がコンセプト。今後、セミナーやイベント、取材や撮影などに活用予定。量販店のような展示ではなく、家電のある暮らしがイメージしやすいようスタイリングの工夫がされている品川にあるパナソニックの家電製品のプレスルーム「くらしの中の家電」の様子。「好きなものとくらす。」がコンセプト。今後、セミナーやイベント、取材や撮影などに活用予定。量販店のような展示ではなく、家電のある暮らしがイメージしやすいようスタイリングの工夫がされている

家電を住空間の中で選ぶことができれば、日本の家電の美しさを改めて認識できる

実は今回の取材の後、家電量販店に改めて行ってみた。ずらりと並んだ製品のデザインはまさに多種多様。うーんと思うようなデザインもあれば、カッコいいおしゃれな製品も少なくない。前出の黒色の炊飯器も見つけたが、プレスルームで見たような感動はなかった。

今回プレスルームで感じたことは、日本の家電は住空間の中で見ると、そのデザインの価値を改めて認識できるということだ。海外のブランド家電は単体で目立つ存在である。存在そのものが主役となり輝きを放つ。日本の家電は日本の家に溶け込む美しさがある。決して突出した存在ではないが、周囲とスムーズに調和し、優秀なインテリアの要素として空間を引き立てる。まさに日本らしいデザインと言えるのではないだろうか。

しかしたくさんの製品が陳列棚に一列に並べられているだけでは、性能や価格の比較はしやすくても、インテリアの中でどんな存在になるかを想像するのは難しい。家づくりで壁紙や建具のサンプルブックを渡されて、さあ選べと言われても途方に暮れてしまうのと同じだ。

量販店で見ているだけでは、黒い色もなめらかなフォルムも、ちょっと珍しい色と形の炊飯器としか感じられないのではないか。この炊飯器のインテリアの要素としての素晴らしさは理解され難いのではないかと感じた。

前述のバルミューダやブルーノといったおしゃれ家電は、量販店だけでなくファッション雑貨やインテリアショップでも見ることができ、私がブルーノのホットプレートを初めて見たのは家具ショップだった。グレージュのモダンデザインなテーブルの上に、おしゃれな食器と一緒に家電がテーブルコーディネートされていて、わくわくするような暮らしのシーンや、インテリアのイメージがすぐに浮かんだ。

パナソニックには、各地に旧松下電工の流れを汲む「パナソニックリビングショウルーム」がある。キッチンやバス、フローリング、収納などの設備建材を展示しているショールームだ。そこには暮らし方に合わせてさまざまなテイストの住空間が展示されていて、自分の暮らしに合った設備建材が選べるように工夫されている。

そこに家電も展示してあれば、家づくりの際に家電も一緒にコーディネートができ、インテリアの完成度はさらに上がり、キッチン家電を隠す必要がなくなり、日本の家電デザインがもっと見直されるのではないだろうか。そんな思いが湧き上がった。パナソニックセンター大阪 リビングフロアでは比較的家電の展示が多いとのことなので、お近くの方はぜひ住空間の中での家電の存在感を確かめていただきたいと思う。

今回の取材を通し、筆者は家電デザインの価値について改めて考える機会を持つことができた。パナソニックの新しいデザイン戦略がこれから日本の家電にどんな未来を見せてくれるのか楽しみだ。

取材協力:パナソニック株式会社
https://panasonic.jp/

左上は黒い白物家電の炊飯器「Wおどり炊き」、右上はプレスルームで目をひいたパナソニックの洗濯機「キューブル」、ともにインテリアの優秀な構成要素として日本の住宅にすっとなじんでくれるデザインである。<BR>
左下は白い黒物家電のブルーレイレコーダー「ディーガ」、優しいホワイトボディが女性に好評とのこと。幅もコンパクトでインテリアにもフィットする。右下は浴室や寝室などにモニター部を持ち運んで、テレビ番組やネット動画を楽しめる「プライベート・ビエラ」、こちらもホワイトボディ左上は黒い白物家電の炊飯器「Wおどり炊き」、右上はプレスルームで目をひいたパナソニックの洗濯機「キューブル」、ともにインテリアの優秀な構成要素として日本の住宅にすっとなじんでくれるデザインである。
左下は白い黒物家電のブルーレイレコーダー「ディーガ」、優しいホワイトボディが女性に好評とのこと。幅もコンパクトでインテリアにもフィットする。右下は浴室や寝室などにモニター部を持ち運んで、テレビ番組やネット動画を楽しめる「プライベート・ビエラ」、こちらもホワイトボディ

2019年 10月25日 11時05分