“欠陥住宅をつくらせない”ための参考冊子が完成

欠陥住宅被害東海ネットが作製した「これから家を建てるみなさまへ~欠陥住宅をつくらせないために~」。家づくりの基礎知識にはじまり、土地探し、設計、契約、施工中、完成後の注意点がQ&A形式で書かれている欠陥住宅被害東海ネットが作製した「これから家を建てるみなさまへ~欠陥住宅をつくらせないために~」。家づくりの基礎知識にはじまり、土地探し、設計、契約、施工中、完成後の注意点がQ&A形式で書かれている

非常に残念なことであるが、欠陥住宅のトラブルに関するニュースを耳にする機会は少なくない。そんな中、欠陥住宅問題に取り組む団体「欠陥住宅被害東海ネット」は、被害に遭わないための注意点をまとめた冊子「これから家を建てるみなさまへ~欠陥住宅をつくらせないために~」を作製。2019年4月より希望者に無料で配布している。

1999年11月設立の欠陥住宅被害東海ネットは、1995年の阪神・淡路大震災を契機に結成された「欠陥住宅被害全国連絡協議会(略称:欠陥住宅全国ネット)」の地域ネットワークのひとつ。弁護士、建築士らで構成され、愛知、岐阜、三重、静岡を対象に活動している。

冊子作製について、欠陥住宅被害東海ネットの事務局長で弁護士の水谷大太郎さんに聞いた。

「我々は、欠陥住宅被害の予防および回復、住まいに関する市民の権利の確保、実現を目的として結成した団体です。20年の活動を通じ、被害回復という点では、具体的な事件について、弁護士と建築士が一緒になって対応する方法を確立し、一定の成果を上げてきました。しかし、被害はなかなかなくならない。予防という観点から、家づくりの前にトラブルを防止できないか、これまで受けた欠陥住宅などの相談をもとに、思うことを当ネットの会員でまとめました」

夢のマイホームを欠陥住宅にしないためには、予防すること。ということは、建てる側=建築主もある程度の知識が必要になるのではないだろうか。

「それは大切だと思いますね。知識量には当然限界がありますが、みなさん、建築会社などを信用しすぎな点が感じられますので、しっかり勉強していただく必要があるかと思います」と、水谷さんは語る。

建築士の役割を知ること

家の安全性に対し、建築主の側にたって親身になってくれる建築士に依頼するのが欠陥住宅にしないための第一歩に家の安全性に対し、建築主の側にたって親身になってくれる建築士に依頼するのが欠陥住宅にしないための第一歩に

家づくりを決めたとき、依頼先は大きく分けてハウスメーカー、工務店、建築設計事務所とある。「どこに頼むとしても、家を建てるときに一番重要なこととして、建築士の役割について知っておくべきだと思う」と水谷さん。

国家資格である建築士は、取扱うことのできる建築物の規模などにより、一級、二級、木造とある。一般的な木造2階建てであれば、すべての建築士が設計できる。一般に建築士の仕事は設計だけだと思われがちだが、法律では、建築士が「設計どおりに行われているか」を、施工途中にチェックしなければならないと定めている。この業務を監理といい、監理を行う建築士を工事監理者という。

「技術的な部分というのは、どうしても建築主には分からないことなので、そんなときに建築主の側に立って安全性を確認してくれる人が工事監理者なんです。その役割はあまり世間では知られていないんです。

例えば、大手ハウスメーカーでも欠陥のご相談は少なくありません。そして、その欠陥は、監理がしっかりしていれば防げたのではないかというものが珍しくないのです。一般的に大手ハウスメーカーでは、工事監理者が現場に行くことが少なく、工事のチェックは現場監督にお任せになるといわれています。しかも、その現場監督もいくつかの現場を掛け持ちしていることがあるようです。このようなシステムが、欠陥住宅がつくられてしまう一因となっていると考えています。

専門知識を持った建築士が、建築主の立場に立ってしっかりと安全性をチェックしてくれるようなシステムになっているか、この点を考えることが重要です」

また、ハウスメーカーや工務店では社員の立場である建築士が自社の工事の監理を行うことになる。仮に問題を発見したとしても、これを指摘できるのかという疑問もある。

そう考えると、建築設計事務所に依頼すれば、十分な監理が行われるかというと、そこでも欠陥は生じている。多くは、建築士の安全性に対する知識不足が原因で、デザインを重視しすぎるあまり安全性がおろそかになってしまうこともあるそうだ。

かっこいい、自分好みのマイホーム。だが、それだけでなく、快適に長く住むためには、安全性が必要だ。

建築士の大切な役割のひとつ、監理についても勉強しておく

建築主として建設中の現場をたびたび訪れても、施工がきちんと行われているのかを確認することは難しい。安全面をしっかり考慮してくれる建築士との信頼関係が築ければ安心だ建築主として建設中の現場をたびたび訪れても、施工がきちんと行われているのかを確認することは難しい。安全面をしっかり考慮してくれる建築士との信頼関係が築ければ安心だ

建築士を見極めることは難しいことだが、「これから家を建てるみなさまへ~欠陥住宅をつくらせないために~」では、建築士がどのような考え方を持っているかを知るために、建築士に対して行う質問例がつづられている。特別にいくつか紹介させていただく。

●希望すれば、より詳細な構造計算にも対応してくれるか
●メンテナンスを考慮した設備や材料選びをしてくれるか
●工事中の監理について、現場に行くタイミングや回数を教えてくれるか?もしくは適切か?
●建築賠償保険に加入しているか

こういった安全に対する質問に真摯に答えてもらえるかを、最初の心構えとしてぜひ覚えておきたいもの。

また、監理に関しては、国土交通省のホームページに、監理業務として工程ごとにチェックすべき内容を記した「工事監理ガイドライン」が公開されているので、そちらも参照するのがおすすめだ。

水谷さんいわく「設計はもちろん大切ですけれど、同じくらいの割合で監理も大切だということ。そのため、代金の支払いについても、設計が終わった段階でほとんど払ってしまうのはリスクがあります。例えば、設計終了時点で9割支払い、完成したら残り1割とすると、監理の料金が1割分となってしまいます。少なくとも6:4くらいで監理が占める業務割合があると考えておいた方がいいと思います。ハウスメーカーの場合は工事請負代金に設計監理料が含まれているので、設計監理料の支払い時期を動かすことは難しいでしょうが、建築設計事務所に依頼する場合は、設計監理料の支払い時期についても話し合うとよいと思います」とのこと。

打ち合わせ議事録の大切さ

設計段階の打ち合わせは議事録を作成しておくことでトラブル回避に役立つ設計段階の打ち合わせは議事録を作成しておくことでトラブル回避に役立つ

建築士を選んであとはまかせっきりではなく、「キャッチボールをしながら家づくりをしていくこと、そのキャッチボールの中で、間取りやデザインだけでなく、安全性についても話題にしていくことが大切」だと水谷さん。マイホームが完成するまで建築主として共に歩んでいくことで施工ミスをなくせるのではないだろうか。

打ち合わせの際は「打ち合わせ議事録の作成」をしておくことも重要だ。家づくりでは、何かを加えたり、デザインを変えたり、図面変更もしていくだろう。話したことがきちんと伝わっているかが確認でき、のちのち “言った、言わない”と争いになることを避けられる。もし欠陥住宅になってしまった場合のためにもなる。

一般的に建築士のほかハウスメーカーなども依頼すれば議事録を作成してもらえるが、作成してもらえない場合は自分で作り、あとで署名をしてもらえばいいそうだ。

それでも不具合が見つかってしまったら…

欠陥住宅被害東海ネット 事務局長の水谷さん欠陥住宅被害東海ネット 事務局長の水谷さん

民法には「瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)」という規定があり、建物に欠陥などが見つかった場合、建築主に対して施工業者が補修や損害賠償を行わなければならない。「裁判で欠陥(瑕疵)があると認められるか否かは、一般的に、欠陥の原因となっている部分が、①契約に違反しているか②建築基準法やその施行令・告示等の法律に違反しているか③標準的な技術基準に違反しているか、という3つの基準で判断されています」と水谷さん。

この点、2020年4月に施行される民法改正で「瑕疵担保責任」は廃止され、「契約不適合責任」と変わる。「これからの事例の積み重ねにはなりますが、民法改正後も、3つの判断基準で考えるという枠組みが大きく変わることはなく、契約違反については、より認められやすくなるのではと考えています」

裁判で問題となるのは、目に見えている欠陥の現象ではなく、その原因なので、実際に欠陥かどうかを立証するには、詳細な調査が必要となる。「例えば、床が傾いているというご相談でも、その原因が地盤の沈下によるものなのか、床の下地に不具合があるのかで、問題はまったく変わってきます。欠陥住宅被害東海ネットでは、弁護士による電話相談・面談相談を初回30分無料で受け付けており、このような法的観点からのアドバイスは無料で行うことができます。

さらに、そのうえで、実際に責任追及をお考えの場合は、建築士の現地調査が必要不可欠です。もっとも、欠陥の原因はすぐに分かるとは限りません。当ネットでは、最初の調査(初動調査)として、目に見える欠陥現象の原因にどのようなものが考えられるか、その原因を突き止めるために、今後どのような調査が必要になるか、という観点から目視で行う調査を、5万円(税別)で行っています」

欠陥住宅になってしまったら、心理的なダメージは計り知れない。欠陥住宅被害東海ネットでは2ヶ月に1度、建築士と弁護士がペアになって対応する欠陥住宅無料相談会を開催しているが、最近では毎回20件近い相談があり、無料の電話相談は2018年度で合計93件あったそうだ。欠陥住宅被害東海ネットの欠陥住宅無料相談会では予防の観点での相談も受け付けているとのことなので、家づくりを検討している人は利用してはいかがだろうか。

取材の最後、水谷さんの言葉がとても印象的だった。「“一生に一度の買い物”とよく言われますが、ある建築士がその言葉を聞くと怒るんです。家は買い物じゃない、一緒につくるんだ、“一生に一度の家づくり”だと。そういう意識を建築主も持った方がいいなと思います」

取材協力:欠陥住宅被害東海ネット http://www.tokainet.com/

2019年 11月19日 11時05分