マンションのリビングに“小屋”が登場!?

「箱の間」の使用イメージ。およそ1畳サイズながら多様な使い方ができそうだ(写真上)。三菱地所レジデンスのザ・パークハウス 東戸塚レジデンス マンションギャラリーに設置された「箱の間」(写真下)
「箱の間」の使用イメージ。およそ1畳サイズながら多様な使い方ができそうだ(写真上)。三菱地所レジデンスのザ・パークハウス 東戸塚レジデンス マンションギャラリーに設置された「箱の間」(写真下)

近頃のマンション購入時にはリビング部分の広さをメニュープランで選べることが多い。3LDKを2LDKにするなど広々としたリビングを選ぶ人も多いのだが、この時少し気にかかるのがライフスタイルの変化にどう対応していくかだ。子供が何人も生まれたら個室が足りなくなるのでは? フルオープンではなく仕切りが欲しくなったら? などなど。

そんなライフスタイルや家族構成の経年変化に対応する空間づくりのアイテムとして、三菱地所グループがおもしろい商品を発表した。その名も「箱の間」だ。これは部屋の中の「小屋」をイメージしたもので、“家具よりも大きく、部屋よりも小さい”木の小部屋で柔軟な空間づくりを実現しようというものだ。

しかも、この「箱の間」の素材には山梨県産の杉が利用され、「林業」「製材」「家具制作」を一貫してつなげる商品でもある。

最近では、戸建になると内装にも木材を活かし、木の温かみを前面に打ち出すことも多くなってきた。しかしマンションとなると話は別だ。まだまだ内装に木が使われることは珍しい。そんな中で、国産材を使用した部屋の中の小屋という「箱の間」は、マンションライフの空間づくりにどのような変化をもたらしてくれるのだろうか?

「箱の間」の実物をみることができるというので、さっそく取材をしてきた。

わずか“数ミリ”を妥協せず、使い勝手のよいサイズを追求

「子どもの頃、押入れにお気に入りのものを持ち込んで自分の基地にした」そんな経験をした人は、多いのではないだろうか。マンションギャラリーに設置された「箱の間」を目の前にすると、ついつい子どもの頃のそんな経験が思い出される。

「箱の間」の基本の形は、高さ1m60cm、幅1m73.5cm、奥行が75.5cmの木のボックス部屋というシンプルなもの。そこに可動式のテーブルや収納スペース、前面板などをアレンジしながら暮らしに合わせた3つのバリエーションタイプが用意されている。今回見学したのは、小さな子どものいるファミリーを想定したAタイプ。箱の側面のブックスタンドと可動式のテーブルが付属され、ベンチの下が収納スペースになるタイプだ。

一見、小屋としてはコンパクトすぎるのではないか? と思ったが、ベンチスペースに腰を下ろしてみると、いやいやちょうどよい空間だ。閉塞感を感じさせることなく、ほどよいお篭り感覚が心地良い。

三菱地所レジデンス株式会社 商品企画部の岡崎新太郎氏によると、箱の間のサイズは徹底的に吟味を重ねたものだという。

「マンションの柱や梁と『箱の間』の関係を想定しながら、圧迫感が出ないよう意識的に高さを抑えたいと考えました。かといってあまり低くすると、今度は大人が座るときに頭がぶつかりそうになります。心地良いサイズを数ミリ単位で吟味した結果が、現状の高さ1m60cmのサイズでした。

奥行にももちろんこだわりがあり、ベンチスペースであぐらをかいても足が落ちないサイズを意識しています。幅に関しては、試作段階では全体の幅を1m80cmで作ってみたのですが、部屋に置いた時に圧迫感が出ないよう、外から見たボリューム感と中で過ごす心地良さのバランスをとって、当初より6.5cmコンパクトな1m73.5cmに落ち着きました」

なるほど、ベンチに腰をかけた時に感じた心地良さというのは、試作を重ねて計算されたものだったのだ。Aタイプには可動式のテーブルが付属しているが、このサイズももちろん試行錯誤の結果だそうだ。子どもが宿題をしたり、大人が書類仕事をするにもノートやPCを広げてみても十分に作業できるスペースが確保されている。かといって大きすぎることもなく、テーブルを真ん中に移動させれば家族4人が十分に座れるスペースがとれる。ちょっとした食事やお茶を楽しむのにも良いだろう。

テーブルが可動式なのはとても使い勝手がよさそうだ。子どもが宿題をする際はテーブルを端に寄せて勉強机に。ほどよく周囲が囲まれ集中力もアップしそうだ。子供が小さいうちは、すぐに家族に聞けるダイニングテーブルが勉強机という家庭も多いことだろう。「箱の間」であれば、みんなのいるスペースに集中できる空間が作り出せるというわけだ。

1日の中でも「箱の間」は様々な使い方ができそうだ。例えば午前中は、ママの家事や趣味のスペースに。子どもが学校から帰ってきたら勉強机に早変わり。夕食のあとはベンチに座って絵本を読んだり、カフェ気分でお茶を飲む家族のコミュニケーションスペースに。夜にはパパの書斎になることも……。

ちなみに、Bタイプはデスクが固定式で、小屋に前面板がついて完全に個室となるタイプ。大人の趣味部屋、書斎にするならこちらのタイプもおすすめだ。Cタイプでは可動式のテーブルがあるのはAタイプと同じで、収納スペースに引き出しがついている。小窓も空いているので、また違ったライフシーンが想像できる。

ファミリー向けのAタイプ(写真左上)、Bタイプは前面板が塗装されている。内部には6段の造りつけの棚もあり、コレクションルームとしても使いやすい(写真右上)。Cタイプは収納スペースが引出しになっているのが大きなポイント。内面が白い化粧板のためスッキリとした雰囲気(写真右下)。3タイプともにボックスの大きさは同じファミリー向けのAタイプ(写真左上)、Bタイプは前面板が塗装されている。内部には6段の造りつけの棚もあり、コレクションルームとしても使いやすい(写真右上)。Cタイプは収納スペースが引出しになっているのが大きなポイント。内面が白い化粧板のためスッキリとした雰囲気(写真右下)。3タイプともにボックスの大きさは同じ

「俺の城」に「茶室がわり」に、「オフィス」にも!?使い方は千差万別

黒板塗料をペイントすればメッセージボードにも。カラフルな黒板塗料を選べば、室内全体のアクセントにもなりそうだ黒板塗料をペイントすればメッセージボードにも。カラフルな黒板塗料を選べば、室内全体のアクセントにもなりそうだ

「箱の間」はおよそ1畳程度のスペースなのだが、“小屋”という体裁になっただけで、使い道は広がり、人をときめかせてくれるから不思議だ。実際に、商品発表のイベントで参加者に「箱の間」の使い方を聞いところ、多様な意見が集まったそうだ。

「“プラモデルの間”に“音楽リスニングコーナー”、“茶室がわり”といった意見のほか、“上司と2人で個室は緊張するので、オフィスに『箱の間』が欲しい”というものまで。特に男性の方は、箱の間に入られると“俺の基地だ”と嬉々とされていらっしゃいました」(三菱地所レジデンス株式会社 澤野由佳氏)

確かに今は、家の中に“父の居場所”がなくなったと言われている。昔は必ず存在した書斎を持つ家庭も少ないようだ。最近では子どもが巣立ってからやっと父が部屋を持てるという。「箱の間」で“父の部屋”を実現すれば、世のお父さんたちに喜ばれるのではないだろうか。

「他にも『箱の間』はライフステージにあわせて、気軽に間取りをアレンジできるのが魅力です。例えば子どもが小さいうちは、リビングに置いて家族の気配を感じながらの子どもの居場所。兄弟ができて子どもが大きくなったら子供部屋の間切りに。子供が巣立っていったら大人が使う趣味空間に。孫が生まれたら、またリビングに戻ってきて孫の遊び場に。家族構成の変化にも対応しやすい空間デザインができるのです」(岡崎氏)

しかも木製である「箱の間」は、DIYもしやすく、カンタンに自分好みのスタイルに変えていくこともできる。今回「箱の間」のパートナー企業となる日本ペイントホールディングス株式会社では、「箱の間」のために“塗るだけで黒板になるペイント”を新たに提供する。カラーはブラックなどの通常の黒板色だけでなく、「ROOMBLOOM」ブランドの全144色に対応するという。

「現状、塗るだけで黒板になるペイントのカラーバリエーションは、個別販売は行わず『箱の間』ユーザーの方への限定提供になります。“暮らしを楽しむ”という私たちのコンセプトと『箱の間』のコンセプトはまさに同じでした。『箱の間』は既成品というよりも、どんどん自分らしさを追加し楽しむものだと思いますので、ペイントという部分で私たちもお手伝いしたいと思っています」(日本ペイントホールディングス株式会社 柳谷典子氏)

実際に見学した「箱の間」Aタイプでは、背面が黒板塗料をつかったメッセージボードになっていたり、飛行機の機内をイメージした窓がペイントされていた。また側面には、身長を測れるメジャーのペイントも施されていた。子どもはなぜか身長をよく計りたがるのだが、昔のように家の柱に印をつけるには勇気がいる。「箱の間」であれば、背比べの印も残しておけそうだ。

日本の森も元気に!「箱の間」が目指すもの

空と土プロジェクトでは、三菱地所グループ社員を対象に間伐体験と国産材の活用を考えるワークショップを開催。今度も、森林をテーマに新たなつながりを生み出し、国産材使用の社会要請と住まいに居心地の良い木質空間の提供を両立していくという空と土プロジェクトでは、三菱地所グループ社員を対象に間伐体験と国産材の活用を考えるワークショップを開催。今度も、森林をテーマに新たなつながりを生み出し、国産材使用の社会要請と住まいに居心地の良い木質空間の提供を両立していくという

さまざまな空間づくりをカンタンにできそうな「箱の間」。それだけでも魅力的なのだが、実はこの商品には「森とまちと人をつなぐ」プロジェクトであるのも興味深い。

三菱地所グループでは、CSR(企業の社会的責任)活動の一貫として“都市と農村がお互いに元気になる社会”をめざし、山梨県と2008年より「空と土プロジェクト」を行っているという。山梨県産材の利用拡大の協定を結んだり、分譲マンションでは初のFSC部分プロジェクト認証(※)の申請を行い、受理された。

「今回『箱の間』は、山梨県産材の杉を使用しています。杉は軽く、柔らかいので、触り心地がいい。『箱の間』に触れることで温かみや、木の優しい手触りを感じてもらいたいです。そして時間とともにつく傷や色も含め楽しんでもらえたらと思います。その他の素材は、可動式のテーブルは傷がつきにくいクリを。デスクには、ヒノキを使用しています」(岡崎氏)

山梨の森とまちをつなぐ商品を……。その想いを持ったメンバーで始めたプロジェクトは、少しずつ、その想いに共感する仲間が増えていったという。森とまちをつなぐNPO法人「FOREST LINK」、製材の「古屋製材所」、家具制作の「ジオ・パラダイス」というキーマンたちが集ってきた。ここに、家具デザイナーの小泉誠氏、生活者のQuality of lifeに寄り添い家具なども手がける「KOKUYO」、ペイントで空間づくりの提案をする「日本ペイント ROOMBLOOM」が加わり、知恵を出し合って「箱の間」が完成する。

「商品を企画してから各ステークホルダーの方々に相談するのではなく、はじめから林業、製材、制作といったものづくりの方々と相談しながら『箱の間』をつくりあげています。山から商品になるまで一貫したチーム体制を取っており、商品的な都合ばかりではなく、森を守ることも念頭に置いています」(岡崎氏)

例えば「箱の間」となる木材は、ピッチはきちんと決めるが、ある程度「ふし」があってもOKとしているそうだ。逆にそれが味わいとなるデザインを心がけているという。木を無駄にせず、そして林業やものづくりに携わる人々への負担を軽減する生産体制だ。


(※)FSC認証とは、NPOであるFSC(Forest Stewardship Council、森林管理協議会)が運営する、国際的な森林認証制度。生物多様性、水資源・土壌などへの影響という環境面のほか、社会的・経済的観点も含めた森林の持続的な維持管理の推進が目的。

「箱の間」は一生もの

左から三菱地所レジデンスの岡崎氏、日本ペイントホールディングスの柳谷氏、三菱地所レジデンスの澤野氏。楽しみながらの商品開発で、これからもまだまだアイデアを募っていくという左から三菱地所レジデンスの岡崎氏、日本ペイントホールディングスの柳谷氏、三菱地所レジデンスの澤野氏。楽しみながらの商品開発で、これからもまだまだアイデアを募っていくという

「箱の間」は現在製品発表段階で、2016年度中に販売が予定されている。岡崎氏に聞いてみると「今後、お客様の声なども反映しながら、販路についても考えていきたい」とのことだ。

マンションの一室に木の小部屋がある。しかも、自分好みのテイストに変えながら、自分なりの空間の使い方ができる、ワクワクする商品だ。しかも岡崎氏は「一生ものとして使ってもらえたら」という。

「『箱の間』で使われる木材は、おおむね50年ものだそうです。木というのは育った年月の分だけ、伐採してからも保つと聞きます。50年育った木で作られたものなら、50年は保つはず。長く大切に使っていただけるように考えられたのが『箱の間』です。一生ものとして、この『箱の間』で楽しんでいただけたらと思います」(岡崎氏)

さあ、あなたなら「箱の間」があったら、どんな使い方をするだろうか?

2016年 06月06日 11時06分