住宅を取り巻く環境の変化から求められる施策とは

2019年10月に予定されている消費税率引上げの影響が大きい住宅購入。買い控えなどが起こると、不動産業界全体にも影響が及び、景気の減退につながる可能性もある。そこで、政府は消費税引き上げ後の住宅購入について、さまざまな支援策を用意している。
また、耐震性やバリアフリー性能の低い住宅ストックや空き家の問題、そして温室効果ガス削減に向けた取組みが必要とされてきており、既存住宅のリフォームを支援する制度なども整えられている。

こうした良質な住宅・建築物の取得・改修に関する支援制度や、消費税率引上げに伴う住宅取得支援策などに関する説明会が、2月1日から全国各地で実施されている。ここでは、2月22日に埼玉県さいたま市で行われた国土交通省主催の説明会から、主な施策や支援制度の概要を紹介しよう。

日本の住宅ストックの現状を表す図。増税による影響だけでなく、現在進行形で続くこちらの問題も深刻だ(記事内の画像は配布資料より)日本の住宅ストックの現状を表す図。増税による影響だけでなく、現在進行形で続くこちらの問題も深刻だ(記事内の画像は配布資料より)

良質な住宅ストックによる新たな循環システムの構築について

説明会の講師を務めた国土交通省住宅局の担当者は、現在の住宅ストックの状況について、「耐震性のない住宅が全国で約900万戸、バリアフリーと省エネのいずれの基準も満たさない住宅が約2,200万戸、活用されていない空き家が約320万戸に達しているなど、課題が多い」と指摘。また、欧米に比べて既存住宅の流通量が低いことや、温暖化対策の国際ルールとして2015年に採択されたパリ協定を踏まえ、建築物の省エネ性能の抜本的強化が求められていることから、新たな住宅循環システムの構築や、建て替えやリフォームによる安全で質の高い住宅ストックへの更新などが必要となっていると話した。

こうした住宅ストックの現況や住生活基本計画を踏まえ、国では「良質な住宅ストックによる新たな循環システムの構築」を目指し、さまざまな取組みを行っているという。主なものを紹介しよう。


■長期優良住宅認定制度
長期優良住宅に認定された住宅は、税制や融資の優遇措置や補助を受けることが可能になるという制度。新築には「地域型住宅グリーン化事業」の補助金があり、増改築は「長期優良住宅化リフォーム推進事業」の補助金を受けることができる。また、新築には所得税、登録免許税、不動産取得税、固定資産税、増改築には所得税、固定資産税の特例措置がある。融資については新築、増改築ともに「フラット35」などの利用が可能だ。

■長期優良住宅化リフォーム推進事業
既存住宅の長寿命化や三世代同居などの実現に資するリフォームを推進することを目的とした事業で、下記の要件を満たせば補助金が受けられる。

●要件
① リフォーム工事前にインスペクションを行うとともに、維持保全計画およびリフォームの履歴を作成すること。
② リフォーム工事後に次のa及びbの性能基準を満たすこと。
 a. 劣化対策及び耐震性(新耐震基準適合等)の基準
 b. 省エネルギー性、維持管理・更新の容易性、高齢者等対策(共同住宅)、可変性(共同住宅)のいずれかの基準
 ※ただし、若者が既存住宅の購入に伴ってリフォーム工事を実施する場合、要件bは適用しない。
③ ②a、bの性能項目のいずれかの性能向上に資するリフォーム工事、三世代同居対応改修工事、良好なマンション管理に対応する性能向上工事のいずれかを行うこと。

このうち、要件③の「良好なマンション管理に対応する性能向上工事」は、2019年度の事業から追加されたものだ。

●事業タイプや申請について
事業タイプは、リフォーム工事後の住宅の性能に応じて評価基準型、認定長期優良住宅型、高度省エネルギー型、提案型の4つに分類されている。事業の申請は、評価基準型、認定長期優良住宅型、高度省エネルギー型が通年申請、提案型は公募・事前採択となっている。また、2019年度からは良好なマンション管理に対応する先導的な取り組みを実施するものも、公募・事前採択の対象になった。

■住宅のリフォームに係る税の特例措置
所得税については投資型減税とローン型減税があり、前者は耐震やバリアフリー、省エネ、三世代同居などの工事の標準的な費用額の10%を所得税から控除することになっている。後者も同様の工事のローン残高の一定割合を所得税から控除する。また、改修工事を行った住宅の固定資産税も、改修の内容に応じて一定割合が減額される。

■住宅の新築に係る税の特例措置
所得税、登録免許税、不動産取得税、固定資産税の減税、軽減措置があり、控除額や軽減割合などは、一般住宅、認定長期優良住宅、認定低炭素住宅で異なる。

2019年度から、良好なマンション管理に対応する性能向上工事の費用も補助対象になった(上)<br>評価基準型、認定長期優良住宅型の補助額算出方法なども変更されている(下)2019年度から、良好なマンション管理に対応する性能向上工事の費用も補助対象になった(上)
評価基準型、認定長期優良住宅型の補助額算出方法なども変更されている(下)

建築物の省エネ化の推進と木造住宅の振興にあたって

建築物のエネルギー消費性能の向上を図る建築物省エネ法では、延床面積2,000m2以上の特定建築物は、新築時に建築物のエネルギー消費性能基準(省エネ基準)への適合義務が設けられているほか、エネルギー消費性能向上計画の認定制度などが創設された。
また、住宅・建築物の省エネ化の推進に向けては、2019年度も「サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)」「省エネ街区形成事業」「建築物の改修工事」「ZEH(ゼロエネルギー住宅)等の推進」などの事業も進められることになっている。

サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)は、先導性の高い住宅・建築物の省エネ・省CO2プロジェクトを民間から募って支援する。2014年度からの5年間で採択されたプロジェクトは、200件以上になる。
省エネ街区形成事業は、エネルギー供給を最適化するエネルギー・マネジメント・システム(EMS)などを用いた複数の建築物のエネルギー利用プロジェクトを、民間から募って支援する。EMSの普及などに寄与することが期待されている。
建築物の改修工事は、既存建築物省エネ化推進事業の一環として行われるもので、民間などが行う省エネ改修工事に対して、改修後の省エネ性能を表示することなどを要件に、費用の一部を支援する。
ZEH(ゼロエネルギー住宅)等の推進は、経済産業省、国土交通省、環境省が連携して進めるもので、2020年までにハウスメーカーなどが新築する注文一戸建て住宅の半数以上をZEHにすることなどを目指している。
木造住宅・建築物の振興については、良質な木造住宅・建築物の供給促進に向けた「地域型住宅グリーン化事業」「サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)」「サステナブル建築物等先導事業(気候風土適応型)」などの事業が進められている。

2019年2月には、建築物省エネ法を改正する法案が閣議決定され、2021年度からは延床面積300m2以上の中規模建築物についても省エネ基準への適合が義務化される予定だ。

省エネ基準への適合は、床面積2,000m2を超える大規模建築の場合は適合義務、300m2以上、2,000m2以下の中規模建築物では基準に適合しない場合、届出義務がある省エネ基準への適合は、床面積2,000m2を超える大規模建築の場合は適合義務、300m2以上、2,000m2以下の中規模建築物では基準に適合しない場合、届出義務がある

消費税率引上げに伴う3つの住宅取得支援策について

2019年10月1日から実施予定の消費税率引上げについて、住宅などの大型耐久消費財は消費税負担が大きく感じられることから、2018年10月15日の臨時閣議で安倍晋三首相は「来年10月1日以降の購入についてメリットが出るよう施策を準備します」と発言。住宅の購入者に対する税制・予算措置が講じられることになった。具体的な支援策としては、既に報道もされている通り、「住宅ローン減税の拡充」「すまい給付金の拡充」「次世代住宅ポイント制度の創設」が予定されている。

住宅ローン減税の拡充は、控除期間を現行の10年間から3年延長し、その中で増税負担分の範囲内で税額控除する仕組みになっている。
すまい給付金は、住宅を取得する場合に、収入に応じて現金を給付する制度。その拡充によって、対象となる所得階層が広がるとともに、給付額も現行の最大30万円から50万円に引き上げられることが予定されている。
次世代住宅ポイント制度は、一定の性能を有する住宅の取得者に対して、さまざまな商品と交換できるポイントを発行するもの。住宅の新築時には1戸当たり上限で35万ポイントが発行される。また、断熱やバリアフリーなどのリフォーム工事の箇所や、ビルトイン食洗機などの家事負担軽減設備ごとにポイント数が設定されている。

国土交通省をはじめ関係省庁では、こうした支援策によって、消費税率引上げ前後の需要の平準化を図る予定だ。同時に、引上げ前の駆け込み需要をあおるような行為に目を光らせるとしている。消費者にも落ち着いた行動が求められそうだ。

次世代住宅ポイント制度の対象となるものは幅広い。リフォームの際にはよく確認してみよう次世代住宅ポイント制度の対象となるものは幅広い。リフォームの際にはよく確認してみよう

2019年 04月03日 11時05分