2018年末の税制改正大綱は消費増税を睨んだ対策が目白押し

2018年12月14日、自民党と公明党で組織される与党税務調査会(税調)から2019年度の税制改正大綱が公表された。与党税調の大綱は与党としての希望であり、今後政府税調で改めて検討され、例年20日頃を目処に最終決定が為される。

消費増税の根本的な考え方としては、「今こそ少子高齢化という構造的な課題への対処に踏み出していく必要」があり、「全世代型社会保障制度へと大きく転換するとともに、財政健全化も確実に進めていく」ための対策であるとの方針である。

今回の焦点は言うまでもなく消費増税対策としての減税措置がどの程度講じられるのかという点だ。安倍政権はこれまで2度の消費税率引き上げを見送ってきた経緯から、3度目は何が何でも実現させなければという強い意思を持って消費増税に取り組んでおり、最大の懸念事項である消費増税後の消費の落ち込みによるデフレの加速を防ぐべく、様々な施策を講じるとしている。
消費増税によって国庫に入る財源のうち、当面の間(対策によって異なるが概ね2~3年程度)生活者に還元できる制度を導入するという。

消費増税に合わせて導入を検討している制度・方針は大きく分けて4点に集約される。まず、消費税率2%の引上げによる税収(約5兆円と想定されている)のうち半分を国民に還元することを公言し、消費税を10%に引き上げる予定の2019年10月1日から、認可・無認可合わせて幼児教育を無償化する。また、軽減税率を導入し、家計消費の約1/4を占めるとされる飲食料品については消費税を8%のまま据え置く。導入については現場の混乱が言われて久しいが、2019年10月までに対策を講じるとの公式見解が出ている。さらに、引上げ前後の消費を平準化するため、一定期間に限り中小小売業に対し、ポイント還元などの支援を実施する。

最後に、住宅や自動車など耐久消費財の購入について2019年10月1日以降も消費意欲が減退しないよう税制・予算措置を講じるとしている。

2019年10月1日から消費税は10%となる2019年10月1日から消費税は10%となる

住宅ローンは減税(控除)期間を3年延長し13年に

消費税率が2%上がることによる負担増を10年目以降も軽くすることを目的とした対策も。減税(控除)期間を3年延長し13年とした消費税率が2%上がることによる負担増を10年目以降も軽くすることを目的とした対策も。減税(控除)期間を3年延長し13年とした

上記の消費増税をほぼ前提とした住宅ローン減税については、毎年末の住宅ローン残高の1%を確定申告によって控除してもらう制度で、現制度での控除期間は住宅購入の翌年の確定申告(申告期間は例年2月中旬から3月にかけて)から10年間、住宅ローン残高の控除上限は現行4000万円(長期優良住宅は5000万円)だから最大で400万円(同500万円)の還付が受けられることになる。それが13年に引き延ばされたとしたら、単純計算で最大500万円程度(実際にこれだけの控除を受けるには相当の金額の住宅ローンを組む必要があるが)が戻ってくることになる。

500万円程度としたのは、10年目まではローン残高の1%が控除される方式に変わりはないが、11年目から13年目までは建物購入価格(土地は消費税対象外なので含まれないことに注意)の2%分を3等分した金額と、年末の住宅ローン残高の1%分の金額とを比較し、少ない方を所得税や住民税から控除する方式になるからだ。これは消費税率が2%上がることによる負担増を10年目以降も軽くすることを目的としている。

消費増税後に上物が3,000万円の住宅を購入し、11年目の住宅ローン残高が1,000万円だった場合、建物購入価格の2%分(60万円)を3等分すると20万円だが住宅ローン残高の1%は10万円なので、少ない方の10万円分が所得税や住民税が減税されることになる。

しかもこの減税延長は、2019年10月1日から2020年12月31日に住宅購入した場合に限られる時限措置であることにも留意したい。ハードルは低くしますがいつまでも低くありませんよと政府は公言しているのである。

消費増税で軽減される居住コストは購入した物件に限られる

2014年4月に消費税が5%から8%に引き上げられた際、住宅ローン減税の控除額も200万円(長期優良住宅は300万円)から400万円(同:500万円)に一気に2倍程度に引き上げられて注目されたが、当初から住宅を購入できる一定以上の所得者層だけを優遇する不公平な政策だとか、同じ居住コストなのに住宅ローンは補助しても賃貸物件の家賃はなぜ補助しないのか、などの議論がこれまでに幾度か繰り返されている。

その住宅ローン減税の控除期間をさらに延長することは、さらに不公平感を助長する政策なのではないかとの指摘も早速でているが、報道があった途端に一部の大手住宅メーカーの株価が上昇し、投資家からは当該政策が好感されたことがわかる。

ただでさえ、都市圏の市街地近郊や地方圏でも政令市や中核市などの各中心部の住宅地価はここ数年概ね上昇しており、利用価値のある土地は値上がっても人気のない土地は値下がるという地域格差の拡大が続いている。人口の移動による社会増減も地域ごとに明暗がはっきりしてきており、全国一律の住宅政策&社会保障が年々難しくなってきている中(唐突だが「ふるさと納税」は税の配分権を地方が工夫によって取り戻す手段であり、社会保障を拡充し地域活性化に資する機能を有しているので地域格差を縮めるものとして有効活用すべきである)、住宅を購入できる所得者層に対してはローン減税を拡充するという政府の方針について今後異論が出ることも予想される。

居住コストである住宅ローン返済と家賃には課税面で大きな隔たりがある

そもそも住宅ローン減税は、住宅購入で何かと物入りになった世帯の消費拡大が経済に与える影響を考慮して始まったものだ、つまりお金を使ってくれるなら使いやすいように、もしくは金利負担分の軽減を通じてサポートしましょうという制度なので、あくまで住宅ローンを組んだ購入者(世帯)が対象になる。

住宅購入者には、住宅の取得時に建物の消費税、不動産取得税などが発生するだけでなく、毎年固定資産税および都市計画税(市街化区域に所在する建物のみが対象)などいくつもの「買った家に住み続けるための税金」が発生するので、これら多くの税金負担を僅かながら軽減することで住宅購入を促進することを目的としている。
言葉を換えれば、住宅を購入してもらうために若干の優遇措置を設けることで将来&長期間に渡って税金を徴収することが可能になるため、国は積極的に住宅購入政策を推し進めているという言い方もできる。

一方、賃貸の場合に現行消費税は非課税(※)であるし、所有(購入)していないので不動産取得税も発生せず、固定資産税と都市計画税についても課税対象となるのは所有者であるから、賃借人は納税する必要がなく、そもそも税金を控除する必要もない。
つまり国の政策として住宅ローン減税はあるのに家賃控除がないのはなぜかと言えば、それは偏に国や地方自治体に納める税金負担分の多寡によると言うことになる。

ただし、住宅家賃については企業単位で補助を実施していたり、社宅や寮など福利厚生の一部として活用されるケース、自治体単位で所得などの制限を設けて補助(引越しの一時金を補助する制度を有する自治体もある)を行ったりしているように、こちらも全く対応していないというわけではないので、賃貸住宅を借りる際にどのような家賃補助制度があるのか、活用できるのかについて事前に調べておくことで居住コストを削減できる可能性がでてくる。

居住に関しては課税負担が軽い賃貸と対照的に様々な税金が課せられる購入では、税金にかなり大きな違いがあることを知れば、住宅購入者だけ住宅ローン減税が受けられて羨ましいなどとは思わなくなるだろう。
つまりそれだけ住宅購入者の税金負担は重いということだ。住宅ローン返済額と家賃を単純比較して、ローン返済額のほうが少ないから購入を決めるという話をよく聞くが、実は住宅ローン返済額と家賃に各々発生するだろう税金を加えて比較すれば、少なくとも経済的な負担額としては購入も賃貸も差がないどころか、むしろ購入の負担が重くなるケースが増えることは確実だ。

つまり、居住するにあたって購入か賃貸かという命題は頻繁に聞く話なのだが、一義的にはトータルのコストで比較検討しなければそもそも意味がないし、さらに住宅のクオリティや機能、自分がどのように生活していきたいかという人生観・生活観が反映されたものとして検討しないことには結論は出ないということなのである。

住宅購入は頻繁に繰り返すようなものではないし極めて高額な買物だから、経済合理性はもちろん大切だが、それがすべてではない。要は、幸せに、安全に、そして楽しく暮らせる「器」に支払うコストとしてどのようにどれくらい負担するのが自分にとって正解なのか、を考えることから始めるのが大切なのではないか。
その上で賃貸住宅を選択することも視野に入れて検討を進めるべきだろう。

※1989年の消費税導入当時は住宅家賃も事務所家賃と同じく課税対象だったが、3年後の1991年以降は社会政策上人間が生存・生活するのに不可欠なものには税をかけないとの配慮から非課税となったとされている。

住まいに対して購入か賃貸かということは良く聞くが、トータルのコストや人生観・生活観で比較検討しなければ意味がない住まいに対して購入か賃貸かということは良く聞くが、トータルのコストや人生観・生活観で比較検討しなければ意味がない

2019年 01月13日 11時00分