夫婦で住宅を購入する場合の資金計画は様々

「ペアローン」を安易な契約にしないための注意点とは「ペアローン」を安易な契約にしないための注意点とは

新築マンションは高額化。夫婦共働きでの住宅ローン返済を前提とするかのような価格だ。とは言え、資金計画相談を受けていると夫婦のプランニングは様々である。頭金と住宅ローンを夫が負担するケース、妻が頭金を負担して夫名義で住宅ローンを借入れするケース。そして近頃は、妻が頭金と住宅ローンのすべてを負担するケースも少なくない。いずれにせよ夫婦の働き方や家計に最適な資金計画が望ましい。最適なプランニングのためには検証が必要であることは言うまでもない。

共働き夫婦が販売担当者に勧められがちな「ペアローン」について、安易な契約とならないための5つの注意点を紹介する。

住宅ペアローンとそのメリット

夫と妻それぞれが住宅ローンを契約する「ペアローン」。単独で借り入れるよりも借入額を増額することができる夫と妻それぞれが住宅ローンを契約する「ペアローン」。単独で借り入れるよりも借入額を増額することができる

共働き夫婦の住宅ローンプランは、契約を1本にするか2本にするか、と考えるとわかりやすい。「ペアローン」では、夫と妻がそれぞれで住宅ローンを契約する。よってこの場合、住宅ローン契約は2本以上となる。メリットは単独で借り入れるよりも借入額を増額できること。そして、個々の契約となるため、所得税等が控除される住宅ローン控除も各々が受けられる。さらに、契約が複数となることで、返済方法にバリエーションができるのだ。ちなみに、住宅ローン契約を夫婦で1本とするには、収入合算という方法もある。このケースも単独で借り入れる場合より借入額を増額できる。

住宅ローンには年収制限がある。基準年収に満たなければ希望額を借入れることができない。しかし、単独の年収では無理でも夫婦が個々で借入れすれば、世帯合計で希望額を借入れることができる。買い手にも売り手にも都合が良いというわけだ。返済方法のバリエーションとは、契約が2本になることで、金利タイプ、返済方法、返済期間などをそれぞれでチョイスできることを意味する。例えば、夫は30年固定の住宅ローンでボーナス時返済あり。妻は変動金利型で返済期間15年のボーナス時払い無し、などだ。個々の働き方や考え方に応じた借入額、借入条件を選択できる意味は大きい。

要件を満たせば、住宅ローン控除の特例もそれぞれに適用される。同特例では、消費税が課税される住宅を購入する場合、住宅ローンの年末残高4,000万円の1%、40万円を上限に所得税と住民税が控除されるが、収入額と借入額によってはペアローンの方が単独ローンよりも控除額が多い。実にメリットのあるペアローンだが、世帯年収を前提に借入額を増額することは、返済義務もリスクも背負うこととなる。

『ペアローンの落とし穴』にはまらないための5つの注意点は以下のとおり。順番にみていく。

『ペアローン』5つの注意点
No.1 複数契約によるコスト増
No.2 共有名義と持分比率
No.3 返済の持続性
No.4 死別の場合
No.5 離婚の場合


契約諸費用のチェックを忘れずに。贈与税額にも注意

【No.1 複数契約によるコスト増】
住宅ローン選びの基準は、トータルコスト。「金利は低いが諸費用が高い」という住宅ローンは少なくないため、諸費用チェックが欠かせない。金利の低さだけに魅了されてはならないのだ。住宅購入や住宅ローン契約に伴う諸費用は、契約が2本になったり、登記が2本になったりすると単純に増額となるものがある。事務手数料や登記手数料などだ。一方、保証料や手数料の中には、「借入額×何%」というタイプがある。借入額が基準であれば、4,000万円×1本の住宅ローンも2,000万円×2本の住宅ローンも必要コストは同額だ。諸費用は、金融機関によって名称も計算方法も異なるため、個々に試算しよう。手数料や保険料の中には、借入額だけでなく金利水準を加味するものもある。ペアローンの場合とそうでない場合など複数パターンで試算し、トータルコストの少ない選択を心掛けたい。

【No.2 共有名義の持分比率】
先日の住宅相談会でのこと。Aさんは、夫が頭金を拠出し、住宅ローンも夫名義で借入れるというプランであった。この場合、住宅の所有権、つまり名義は100%夫とすることが通常。だが、妻が「半分は私のものにしたい」と言う。これは可能である。50%ずつの共有名義とすれば良い。だが、頭金も住宅ローンも負担しない妻が所有権を持つとなると、税法上は夫から妻への贈与とみなされ、贈与税が発生する。贈与税を回避するには、相応分の頭金を拠出するか、住宅ローンを負担すれば良い。所有権の持分比率は、よほどの理由がない限り拠出割合で按分し、贈与税というコストを避けたい。

例えば、4,000万円のマンションを頭金1,000万円、住宅ローン借入3,000万円で購入するとしよう。1,000万円の頭金は夫が拠出し、3,000万円の住宅ローンは、夫が2,000万円、妻が1,000万円とペアローンでそれぞれが借入れた。この場合、贈与とならない共有名義の持分は、夫3/4・妻1/4となる。妻は、住宅に対して住宅ローン負担に相応する1/4の所有権を持つこととなり、その分の住宅ローン控除も受けられる。万が一、離婚となった場合も共有資産である住宅を夫は勝手に売却することができない。逆に妻も自由に処分することはできなくなる。所有権は強いのだ。

返済継続可能か?万が一の死別の場合も考えておきたい

【No.3 返済の持続性】
住宅ローンは「借りられるか」、よりも「返せるか」が大切である。さらに言えば、「返済継続可能か」という持続性がポイントとなる。「共働き」という二馬力の家計は、長期視点を見誤ることも多いので注意したい。ペアローンは、夫婦で借りるからこそ多額の住宅ローンを借りられるわけだが、20年後、30年後の完済時期まで夫婦共働きであることが前提となる。キャリアプラン&ライフプランが重要だ。「子どもが生まれたら仕事を辞める」、「数年後に起業する予定で準備中」という状況で共働きの世帯年収を根拠にめいっぱい借入れてしまうことは非常にリスキーだ。夫婦一方の収入が減ったり、ゼロとなったりすれば、貯蓄という裏付けが十分でない限り家計破綻を招くだろう。

筆者は住宅購入相談の際、相談者のライフ&キャリアプランを確認する。中長期視点を持つことで、どのような住宅が適しているかが明確になり、家計負担の少ない返済可能な借入額を試算することもできる。ペアローンのメリットとして伝えた住宅ローン控除も、働き方を考えておかなければ、単独ローンの方がよかった、ということになり兼ねない。例えば、夫の所得税が15万円、妻の所得税が10万円で、1,600万円ずつ計3,200万円のペアローンを契約した場合を考えてみよう。

初年度は住宅ローン控除により夫婦の所得税は全額控除される。だが、購入翌年に妻が退職し、妻の所得税がゼロとなると、所得税の控除は夫のみとなる。妻の控除枠は夫に付け替えることはできない。しかも住宅ローン残高は返済とともに減っていくため控除額も徐々に減る。妻の退職が予想できたならば、夫の借入比率をアップしても良かったかもしれないし、さらに夫の収入が増額見込みであるならば、夫の単独ローンという選択も検討できたかもしれない。ライフスタイルや働き方、住宅に対する考え方、子どものことなど、夫婦で購入前に話し合っておくことは多い。中長期視点で人生を考えるライフプランニングは、住宅購入のうえで必須と言える。

【No.4 死別の場合】
万が一の場合も考えておきたい。ペアローンの場合、特に意識したいのが団体信用生命保険である。団体信用生命保険(団信)は、住宅ローンの契約者が死亡するなどの場合に保険金によって住宅ローンの残高が完済される。夫または妻が単独で契約した住宅ローンは契約者の死亡によって消滅し、住宅は残る。残される家族のための保険だ。ペアローンの場合、契約者はそれぞれである。夫が亡くなれば夫の住宅ローンが無くなり、妻は自分の住宅ローンを返済していくこととなる。妻が亡くなった場合も同様だ。契約者の死亡により全額が償還される単独住宅ローンとの違いには注意しておきたい。

家族に不幸が起こると生活のリズムが壊れる。働き方も変わるかもしれないし、子どもがいる家庭ではなおさらケアが必要だ。どちらかが亡くなる場合も想定し、個々の返済負担を十分に吟味して、家計に負担の少ない返済比率をプランニングしておこう。頭金に貯金を充当し過ぎず生活費の6ヶ月分ほどをフリーキャッシュとして確保しておきたい。
なお、ペアローンを提供するのは民間金融機関だが、ほとんどの住宅ローンでは団信への加入が借入要件となっている。病歴があるなどを理由に団信に加入できなければ住宅ローンは契約できず、ペアローンは成り立たない。その場合は夫婦一方の単独ローンとするか、[フラット35]など団信加入を条件としない住宅ローンを利用することとなる。

離婚の場合はどうなる?

万が一、離婚するに至ってしまった場合の方法を把握しておきたい万が一、離婚するに至ってしまった場合の方法を把握しておきたい

【No.5 離婚の場合】
死別ではなく離婚の場合はどうだろうか。共有資産である住宅は財産分与の対象だが、売却か、所有か。所有の場合は誰の所有で誰が居住するのか。住宅ローンの返済はどうするのか。離婚ともなれば、まさしく想定外のことであろうが、死別のケースとともに考えておきたい。

■住宅を売却する
夫婦同意のもとで住宅を売却する場合、売却収入で住宅ローンの残債を清算できるかがポイントだ。完済できなければ手元のお金で清算するか、住宅ローン返済を継続する。清算してなお売却収入に余裕があれば夫婦で分ければ良い。

■所有を継続する
売却しない場合は、誰が所有し、誰が居住し、誰が住宅ローンを返済するのかを考える。夫が出ていき妻が住む。妻が出ていき夫が住む。子どもがいて教育環境を維持したいという場合は、どちらか一方が所有し、賃貸するという方法もあろう。利用方法は所有者の自由だ。

例えば、夫が家を出て、妻がそのまま居住するケースで考えてみる。ペアローンで残債があり、それぞれが他方の住宅ローンの連帯債務者になっているとする。所有権を100%妻名義とするには、夫の持分を妻へ譲渡する必要がある。妻は夫の持分を譲り受ける代わりに夫の住宅ローンの残債を引き受ける。プラス資産とマイナス資産(借金)を相殺すると考えればわかりやすいだろうか。実際の財産分与は、住宅の現在価値、個々の経済状況、離婚の原因、夫婦の意向を考慮して行われるのだが、当コラムのテーマは住宅ローンである。

夫の住宅ローンは、夫と金融機関との契約だ。金融機関の抵当権は共有資産である住宅に設定されている。共有資産の名義を変更するには金融機関の同意が必要だが、簡単ではない。住宅ローンの名義(契約者)を変更することもハードルが高い。夫の住宅ローンは、現金で完済するか、別の金融機関での借換えにチャレンジするかとなるが、現金で完済するには資力が必要だし、借換える場合も返済能力が問われる。妻には大きな負担だ。

そのまま夫が払い続けるという選択もあるが、住まない家のための住宅ローン返済はモチベーションが上がらない。さらに住替え先の住居費が加わるとなると夫にとっても経済的負担は重い。そうして夫の返済が滞ると、遅かれ早かれ連帯債務者である妻へ返済請求が来るだろう。なお、夫の住宅ローンを妻名義で借り換えることは、[フラット35]ではできない。住宅ローン選びも至難だ。さらにややこしいことを付け加えると、夫婦間で持分を譲渡する場合、離婚前の譲渡は夫婦間の譲渡となり、離婚後の譲渡は他人間の譲渡となる。適用される税制が異なる場合もあるため留意しよう。

面倒なことを多々述べたが、離婚は新しい人生への門出だ。現在の住居の所有にこだわり過ぎず、何が最善であるかを冷静に考えて欲しい。

【まとめ】
働き方、暮らし方がひとそれぞれであるように、共働き夫婦の資金計画・住宅ローンプランニングも様々だ。人の真似をするものではないし、売り手や貸し手の言う通りが自分たちにとって最善であるとは言い切れない。正確で役立つ情報と知識を基に比較検討しよう。そして、何よりも自分たちで考えることが大切だ。どう暮らしたいか、どう働きたいか、どのような人生を送りたいか。住居は、夫婦の豊かな暮らしを育む大切な空間である。

2018年 10月03日 11時05分