公開空地とはどのような存在なのだろうか

高層ビルやタワーマンションの足元に、たくさんの樹木が植えられたオープンスペースが設けられているのを見たことのある人は多いだろう。隣接するタワーマンションの間の敷地が、広い通路として整備されていることもある。このようなオープンスペースのうち、自由に通行したり利用したりできるよう、一般に開放された場所を「公開空地」という。

公開空地の先駆けとされるのが、1970年代に日本初の超高層ビル街として東京・西新宿エリアで建設されたそれぞれのビルに取り入れられたものだ。1974年に竣工した地上55階建ての「新宿三井ビルディング」には「55HIROBA(55広場)」と名付けられた空間があり、普段はテーブルやベンチが置かれているほか、定期的にコンサートや地域の催しなどが開かれている。

公開空地はその後、全国の主要都市などでも多く見られるようになったが、その背景にはどのような制度や目的があるのだろうか、また現状ではどのような問題点があるのか、今回は公開空地について考えてみることにしたい。

新宿三井ビルディングの「55HIROBA」。国内で最もよく知られた公開空地のひとつかもしれない新宿三井ビルディングの「55HIROBA」。国内で最もよく知られた公開空地のひとつかもしれない

公開空地の根拠となる「総合設計制度」

公開空地の根拠となっているのが「建築基準法第59条の2(敷地内に広い空地を有する建築物の容積率等の特例)」に基づく、いわゆる「総合設計制度」だ。敷地内に公開空地を設けることなどによって「市街地の環境の整備改善に資する」と認められる場合に、容積率制限や各種の高さ制限(道路斜線、隣地斜線、北側斜線、絶対高さ)を緩和する規定である。総合設計制度が導入されたのは1970年だが、国土交通省のまとめによれば2013年3月末現在の許可実績は3,328件にのぼるという。

公開空地を設けることによって受けられる容積率の割増しは、原則として基準容積率の1.5倍かつ200%増以内とされているが、その後に導入された「市街地住宅総合設計制度(1983年)」「都心居住型総合設計制度(1995年)」「敷地規模型総合設計制度(1997年)」などにより、最大で「基準容積率の2.0倍かつ400%増以内」まで認められるようになっている。都心エリアにおけるタワーマンションの供給増に、これらの規定が大きく影響したといえるだろう。

また、2014年12月24日に施行された「改正マンション建替え法」においても、総合設計制度を用いた容積率制限の緩和規定(マンション建替型総合設計)が設けられている。

総合設計制度に基づいて容積率や高さ制限を緩和する際には、建築審査会の同意を得たうえで特定行政庁が許可をすることになっており、許可基準や緩和の範囲などについてはそれぞれの自治体で「総合設計許可要綱」などを制定している。そのため、自治体ごとの実情に応じてさまざまな種類・名称の総合設計許可要綱が用いられているケースがあることにも留意しておきたい。

なお、公開空地には都市計画法第8条に基づく「特定街区」によって設けられるものもある。前述の東京・西新宿エリアにおける公開空地は特定街区によるものだが、指定が広範囲になるため全国での事例はそれほど多くないようだ。街区単位で適用されるのが「特定街区」、敷地単位で適用されるのが「総合設計制度」だと考えればよいだろう。

「公開空地=公園」ではない

国内における都市公園の整備水準は諸外国に比べてかなり低いとされ、「一人当たり都市公園等面積」は約10.2平方メートル(2014年度末:国土交通省調べ)にすぎない。年々改善は進んでいるものの、防災面や環境面での対応を考えれば更なる整備が望まれる。

だが、国や自治体が積極的に土地を取得して公園を整備することは困難であり、それを補完することも公開空地の役割として求められているのだ。とはいえ、公開空地は必ずしも植栽を施した公園のようなものとは限らない。

歩道状の空地や貫通通路、水辺沿いの空地、広場状の空地のほか、商業ビルやオフィスビルにおける屋内の通路、アトリウム(大きな吹き抜け空間:内部公開空地)の場合もある。建物の所有者や入居者に限定することなく、一般の人が通行、利用できるスペースであれば、とくに決まった形状はないのである。

ただし、自治体が定めた「総合設計許可要綱」などによって、それぞれの形状における最低の幅や面積、アトリウムであれば天井までの高さの基準などが細かく規定されているため、敷地の余った部分を開放すればそれでよいというわけではないのだ。

一体開発されたタワーマンションの間に通路状の公開空地が設けられることもある一体開発されたタワーマンションの間に通路状の公開空地が設けられることもある

公開空地と提供公園はどう違う?

公開空地に似たものとして「提供公園」が挙げられる。これは自治体の開発指導要綱などに基づき、一定面積以上の宅地開発などをする際に敷地の一部を公園として整備し、公園部分の敷地そのものを自治体へ無償譲渡するものだ。大規模マンションに隣接して、あるいは大規模開発分譲地の一角に提供公園が設けられているケースが多いだろう。自治体から強制される土地提供だともいえるが、提供公園部分の維持管理は自治体が行うことになる。

それに対して公開空地は、「敷地の一部を近隣住民などに開放するから、その代わりに容積率の割増しや高さ制限の緩和を認めてくれ」という交換条件である。したがって、公開空地は私有地のままであり、マンションの場合であれば区分所有者が共有する敷地に含まれる。そのため、一般に開放しながらも公開空地の維持管理は区分所有者全員(管理組合)が責任をもって行わなければならない。

また、公開空地部分の敷地について国税庁は「建物を建てるために必要な敷地を構成するものであり(中略)一般の建物の敷地と何ら異ならない」として、評価のうえでとくに斟酌しない方針を示している。つまり、公開空地部分についても通常の敷地部分と同じ評価による固定資産税などが課税されるということだ。

公開空地があることによって居住環境が向上したり、物件の価値が高まったりする側面もあるが、マンションの居住者から見れば自分たちのお金で維持をして税金も負担したうえで他人の使用を認めることについて、理不尽に感じる場合もあるだろう。

マンションの公開空地は区分所有者全員の共有敷地となるマンションの公開空地は区分所有者全員の共有敷地となる

公開に消極的な公開空地もある

そのため、公開空地でありながら第三者が入りづらいような閉鎖的なアプローチにしたり、関係者以外の立入りを禁じるような看板を掲げたりしている事例もあるようだ。また、特段の環境整備がされていない行き止まり空間であれば第三者がわざわざ立入ることもなく、地域のオープンスペースとしての役割を果たしていないことになる。

さらに、公開空地の設置そのものが単に容積率などの緩和を受けるためだけの手段として使われ、公開への配慮がされていない事例や、周辺地域で統一感のある整備がされずに、個々の敷地でバラバラに公開空地が設けられているなどの弊害も指摘されているようだ。公開空地を地域の資産としてどう生かしていくのかは、これからのまちづくりにおいても大きな課題だろう。

その一方で、公開空地を利用する側の人は「本来は私有地である」ことを念頭におき、しっかりとマナーを守ることが必要だ。マンションの公開空地でゴミやタバコのポイ捨て、ペットの糞の放置などなどをすれば、迷惑を被るのはマンションの住民である。

マンションの管理組合やビル所有者が定めたルール(野球やサッカーなどのボール遊び禁止、スケートボード禁止など)が掲示してあればそれに従うべきである。公開されているからといって、好き勝手に使ってよいわけではない。ベンチが置いてあるような場合でも、あまり長時間にわたり滞留することは避けるべきだ。

地域の資産として公開空地をうまく活用していくためには、それを所有・管理する側も、利用する側も、お互いの立場を思いやることが欠かせないのである。

庭園のように整備されたマンションの公開空地もあるが、近隣にはあまり知られていないケースも少なくない庭園のように整備されたマンションの公開空地もあるが、近隣にはあまり知られていないケースも少なくない

2016年 11月15日 11時05分