住宅金融支援機構のホームページがリニューアル

長期固定金利型住宅ローンでお馴染みの[フラット35]は、住宅金融支援機構と民間金融機関がタイアップして提供する住宅ローン商品だ。2017年10月1日以降の申込み受付分からは、これまで別払いであった団体信用生命保険の特約料が返済金に含まれる「団信付き」の[フラット35]が新登場するなど、今年度は[フラット35]に関するトピックが目白押しだ。2017年6月28日には、住宅金融支援機構のホームページが全面リニューアル。商品や目的別に検索できたり、条件を指定して検索できたりと大変便利になっている。「商品ラインナップ」を見ると商品の多さに驚く。

条件指定で検索をすると、希望の商品に最速でたどりつくことができて便利だ。その一方で、全体メニューを知らないと「もっと適した選択があった」と後悔する可能性もある。例えば、「カレーうどんが食べたい」とうどん屋に入るや否や注文する。注文後、店内メニューや壁の掲示を見たり、客の注文を聞いたりしていると、どうやらこのうどん屋の人気メニューはカツカレーで、超絶品らしいということが判明。だったらカツカレーにすればよかったと少し悔しい思いをするのに似ている。カレーうどんが食べたかったのだから、選択は間違ってはいない。だが、選択肢が多かったならば更なるベストチョイスも可能だったはずだ。必要情報を一覧できる環境を作ることが重要なのだ。

住宅金融支援機構と言えば、8月にはLINE@に公式アカウントを設定した。世の中のあらゆるものがインターネットで繋がるIoTとフィンテックという金融サービスの可能性は広がる一方だ。これからの住宅金融支援機構の新サービスに注目したい。

「アシューマブルローン」とは

さて、今回お伝えしたい商品は「アシューマブルローン」だ。読者の多くは耳馴染みがないかもしれない。「債務承継型ローン」と言われるもので、[フラット35]の「アシューマブルローン」は、長期優良住宅の認定を受けた住宅について、住宅売却時に購入者へ債務(返済中の[フラット35])を引き継ぐことができる住宅ローンのことを言う。

借入対象となる住宅は、長期優良住宅の認定を受けた住宅でなければならない。認定長期優良住宅は[フラット35]Sを利用できるため当初10年間▲0.3%の金利優遇を受けることができる。なお、[フラット35]Sの金利優遇は、2017年10月1日以降の申込受付分から▲0.25%と優遇幅が縮小していることにも留意しておきたい。

「アシューマブルローン」を取り扱っている金融機関は限定的で、2017年8月1日時点では22金融機関とまだまだ少ない。当ローンは、将来に住宅を売却して債務を引き継ぐ仕組みだが、承継時には住宅購入者の同意と住宅金融支援機構の審査があるため、承継できない場合もある。引き継ぎしないとなった場合は、「アシューマブルローン」の利用者(売主)が[フラット35]の残債を弁済して売却する必要がある。

「アシューマブルローン」の債務継承において、別途手数料が必要というわけではない(金融機関によっては事務手続きにおいて実費相談額を負担する場合あり)。だがわざわざ「アシューマブルローン」を利用するメリットはあるのだろうか。次項で考察する。

【参照】
[フラット35](アシューマブルローン)のご案内/住宅金融支援機構
http://www.flat35.com/loan/flat35assumable/index.html

■[フラット35]アシューマブルローン<br>
「アシューマブルローン」を利用すると、借入対象となる住宅を売却する際に、[フラット35](アシューマブルローン)の返済を住宅購入者へ引き継ぐことができる(引継ぎは1回限り)<br>※[フラット35](アシューマブルローン)住宅金融支援機構ホームページの説明図より■[フラット35]アシューマブルローン
「アシューマブルローン」を利用すると、借入対象となる住宅を売却する際に、[フラット35](アシューマブルローン)の返済を住宅購入者へ引き継ぐことができる(引継ぎは1回限り)
※[フラット35](アシューマブルローン)住宅金融支援機構ホームページの説明図より

「アシューマブルローン」利用のメリット

金利上昇が継続した場合、新規に住宅ローンを借りるよりも低い金利で返済を引き継ぐことが出来る可能性がある金利上昇が継続した場合、新規に住宅ローンを借りるよりも低い金利で返済を引き継ぐことが出来る可能性がある

「アシューマブルローン」を利用するメリットを一言でいうと、付加価値だ。それは「将来における住宅の売り易さ」となろう。ご存じの通り現在は超低金利である。2017年9月時点の[フラット35]金利は、返済期間21年以上35年以下、購入価額の90%以下の融資率の場合で年1.08%~年1.66%。[フラット35]Sならば、同条件における優遇期間の金利は年0.78%~1.36%(申込受付2017年9月30日分まで)である。

「アシューマブルローン」は、この低い金利をそのまま未来の購入者に引き継ぐことができる。[フラット35]Sの金利優遇期間の売却ならば、優遇金利のまま引継ぎが可能だ。将来、景気が回復し、日銀のプラン通りに物価が上昇し、市中金利が上昇して住宅ローン金利も上昇傾向という状況を想定するならば、超低金利の住宅ローンを引き継ぐことができるのは、購入者にとっては非常に魅力的だ。しかも住宅は、認定長期優良住宅である。住宅の魅力を高め、市場競争力を増すことができる、まさしく住宅の付加価値を上げるローンと言える。

もちろん、住宅を売却する予定は一切無い。と購入時に断言できるならば、「アシューマブルローン」を選択する意味はない。だが、「終の棲家だと思って購入したけれど」と購入時に予期しなかった理由での住替え相談は多い。「これしかない」という結論ではなく、中長期視点で多くの選択肢の中から結論を最適化してはどうだろうか。人生は一度きりだ。住宅も住宅ローンも大きな買い物である。うどん屋の鰹出汁の効いたカツカレーのように「また来よう」と簡単に再注文には行けないのだ。

「アシューマブルローン」承継時の留意点

「アシューマブルローン」のメリットは低金利のまま引き継げることだとお伝えした。注意したいのは、引き継ぐのは金利だけではない、ということだ。そして引き継げないものもある。引き継ぐ側の立場でみていこう。

■返済期間の「残期間」を引き継ぐ
仮に売却時点での返済期間が20年だったとすれば、返済期間20年の住宅ローンを引き継ぐこととなる。返済期間の延長はできない。短縮したい場合は承継後に繰上返済や条件変更などによって、承継者が行うこととなる。

■「住宅ローン控除」は引き継げない
売却時点で売主の住宅ローン控除の適用期間が残っている場合であっても、住宅ローン控除を引き継ぐことはできない。また、引き継ぐ住宅ローンにおいては、新規借入のように新たに住宅ローン控除を利用することはできない。住宅購入者は、住宅ローン控除の▲1.0%と「アシューマブルローン」の金利を比較する必要があるだろう。「住宅ローン控除」の特例は時限措置であるため、承継時点での諸条件を考慮して判断する必要があるが、「アシューマブルローン」は住宅ローン控除の利用を前提としないケースにおいて、より魅力が発揮されるものと考えられる。

■「団体信用生命保険」は同条件のものを引き継げる
住宅購入者は、「アシューマブルローン」の利用者(売主)と同じ保障内容の団体信用生命保険に限り加入が可能だ。なお、売主が団体信用生命保険に未加入の場合、購入者は団体信用生命保険には加入できない。保障が必要な場合は別途、現金や保険等で備える必要がある。

債務残高と売却価格と債務承継

最後に例をあげて確認しておこう。事例は、売却時点で[フラット35]が2000万円残っているケースだ。売却価格の設定は、①債務と同額、②債務より低額、③債務より高額の3パターンが考えられる。引き継ぎのイメージは下図の通りだが、売却価格を債務残高より低く設定する場合、差額は売主が弁済する必要がある。売却価格を債務残高より高く設定するケースで購入者が住宅ローンの利用を希望する場合は、新たに[フラット35]を申し込むことも可能だ(審査有り)。その際、新規の[フラット35]については、その時の要件を満たせば住宅ローン控除の利用も団体信用生命保険への加入もできる。

「アシューマブルローン」について見てきたが、いかがだろう。将来、売却予定があって、住宅の要件と金融機関選びの条件が合致するならば、超低金利のメリットを返済中だけでなく売却時にも利用できる「アシューマブルローン」の利用を検討材料の一つに加えるのも一考だ。

「アシューマブルローン」引き継ぎのイメージ図「アシューマブルローン」引き継ぎのイメージ図

2017年 09月25日 11時05分