まちじゅうに招き猫! 巨大招き猫が見下ろす「とこなめ招き猫通り」

ドーンとそびえる左手を挙げた巨大な招き猫。「あ!“とこにゃん”いた!」と、訪れた観光客が声を上げ、カメラや携帯で写真を撮る。

ここは常滑焼で有名な愛知県常滑市。名古屋駅から約40分、名鉄常滑駅からやきもの散歩道の出発点を結ぶ「とこなめ招き猫通り」の擁壁上から手招きしているのが、巨大な見守り招き猫”とこにゃん”だ。その大きさは高さ3.8、幅6.3メートルと圧巻!
実は、招き猫の生産日本一の常滑市。「とこなめ招き猫通り」には地元ゆかりの作家が作った陶器の猫が39体も並び、道ゆく人の目を楽しませてくれる。”とこにゃん”と合わせた見どころのひとつとして観光客の人気を集めているのだ。

市のマスコットキャラクター“トコタン”も招き猫。観光ガイドブックや、市のホームページを見ても招き猫、まちなかの郵便ポストの上やトイレの表示にも招き猫! とにかく常滑市は招き猫推しなのである。

「とこなめ招き猫通り」にある39体の陶器の猫(写真下)の壁の上にドーンと構えているのが“とこにゃん”(写真上)だ。“とこにゃん”の周りで顔をしげしげと眺めるリアルな猫11体も合わせて50体の猫のボスが“とこにゃん”なのだ!「とこなめ招き猫通り」にある39体の陶器の猫(写真下)の壁の上にドーンと構えているのが“とこにゃん”(写真上)だ。“とこにゃん”の周りで顔をしげしげと眺めるリアルな猫11体も合わせて50体の猫のボスが“とこにゃん”なのだ!

縁起物として“常滑系”招き猫が人気に

お話を聞かせてくれた常滑市役所の鈴木さん。抱いているのは常滑公式キャラクター・トコタン。鈴木さんはトコタンのマネージャーという肩書ももち、イベントなど忙しく飛び回っているのだそうお話を聞かせてくれた常滑市役所の鈴木さん。抱いているのは常滑公式キャラクター・トコタン。鈴木さんはトコタンのマネージャーという肩書ももち、イベントなど忙しく飛び回っているのだそう

「常滑市のゆるキャラ“トコタン”は、もともと市役所の隣にある競艇場『ボートレースとこなめ』のマスコットで、市政60周年を記念して2014年から常滑市の公式のキャラクターとなりました。
『とこなめ招き猫通り』の見守り猫“とこにゃん”は2006年、まちにシンボルが必要だということで作られたものです。キャッチーですし、猫ブームもあって“とこにゃん”目当てに訪れる観光客は増えています。
先日も中国人の方が『ビッグキャットが見たい』といって訪れていました。SNSの効果で中国や台湾などでも“とこにゃん”は人気があるようです」

と話してくれたのは、常滑市環境経済部商工観光課主任・鈴木將弘さん。
招き猫自体の由来については諸説あるようだが

「彦根藩主井伊直孝にまつわる話があります。“井伊の行列が世田谷にある豪徳寺の門前を通りかかったとき、猫が手招きして寺に導いたことで、激しい雷雨から逃れることができた” この出来事によって猫が縁起のいい動物として可愛がられ、招き猫の置物が作られるようになったという説があるようですね」
と教えてくれた。

今からさかのぼること150年ほど前に作られ始めた招き猫。全国各地でそれぞれいわれのある招き猫があるなかで、常滑市はなぜ日本一の生産地となったのか。

「常滑市で招き猫が作られるようになったのは、そんなに昔の話ではないようです。当時、常滑と同じく焼きものの産地だった愛知県瀬戸市ではすでに招き猫が作られていて、その技術を伝授してもらう形で常滑でも作られるようになりました。市の資料によると、1950年(昭和25年)市内の職人さんたちがふっくらとかわいいフォルムの招き猫を完成させ、これが“常滑系”として流通していったとされています」と鈴木さん。

また、常滑系招き猫を作り続け、海外輸出もしている老舗焼きもの店・冨本人形園によると、常滑市の招き猫の全国シェアは約80%を誇るという。さらに「うちが創業したのが昭和20年。そのころから招き猫を作っていましたし、うちにある古い本に昭和14年(1939年)に作られた招き猫の写真が載っていますので、常滑の招き猫作りは少なくとも80年ほど前には始まっていたといえます」と教えてくれた。

可愛らしいデザインへと進化し、鋳型を造り量産できるシステムを作り上げたこと、さらには高度経済成長の波にのって“縁起物の贈答品として全国に贈られたことで、“常滑系”招き猫は一躍有名になっていったのだ。

市内の商業施設もこぞって招き猫推し!

“常滑系”招き猫の特徴はというと
〇大きな耳 〇まあるい顔 〇大きな(垂れた)目 〇金色の爪 〇三毛の模様 〇がっつりつかんだ大きな小判 〇二頭身のフォルム
の7つが挙げられる。

右手を挙げた猫は「銭を招く」、左手を挙げた猫は「お客を招く」というのはよく知られている話だが、招き猫の色にも意味がある。

白は「福を招く」、黒は「病を防ぐ」、金は「金運を招く」。最近では、長寿を願う銀、恋愛成就を願うピンク、交通安全は青、魔除けの赤と、カラーバリエーションも増えているようだ。

常滑市に拠点を置く企業もこぞって招き猫をモチーフにしたキャラクターを押し出している。
例えば、イオンモール常滑には世界最大級の招き猫「おたふく」が、高さ6.5メートルのビッグサイズで買い物客を驚かせている。
ジャンボえびフライで有名な「まるは食堂」りんくう常滑店の屋上には、超特大のえびフライを抱えた招き猫がお客を手招きしているし、オリジナルの招き猫を作る老舗焼きもの店のヤマタネにも小判を持った高さ3メートルの招き猫が看板猫として出迎えてくれる。

まちじゅうを招き猫が見守っているおかげなのだろうか。
常滑市は、2005年中部国際空港セントレアの開港をきっかけに、中部地区最大級のイオンモール常滑やコストコ中部空港倉庫店など、大型商業施設が次々とオープンしたことで、のきなみにぎやかなまちとなっていった。

写真左:訪れた人に多くの福を招くようにとの願いを込めて『おたふく(お多福)』と名付けられたイオンモール常滑の招き猫。<br>写真右:まるは食堂りんくう店のエビフライを抱えた招き猫のほか、場内に入らないと見ることはできないが、ボートレース常滑にも巨大な招き猫が飾られている写真左:訪れた人に多くの福を招くようにとの願いを込めて『おたふく(お多福)』と名付けられたイオンモール常滑の招き猫。
写真右:まるは食堂りんくう店のエビフライを抱えた招き猫のほか、場内に入らないと見ることはできないが、ボートレース常滑にも巨大な招き猫が飾られている

『LOVETOKO』『CHITA CAT』プロジェクトで常滑や知多半島をプロモーション

招き猫頼みだけでなく、市でも地域の"魅力創造「常滑ブランドづくり」戦略的PR事業"として、『LOVETOKO』と銘打ったシティプロモーションを実行。「人を招く。福を招く。みんなでまねき猫になろう!」をコンセプトに、常滑を活性化するための取り組みを行っている。

推進するのは3つのプロジェクト。
① 空き家を活用して住む人、仕事の拠点とする人を集める
② 土管坂休憩所のリニューアルで散策の拠点を整備
③ 『LOVETOKO』カードを発行し、やきもの散歩道とりんくうエリアを楽しみながら巡るシステムづくり

①の空き家活用に関しては、2階建ての空き工場を改装して共同工房とする計画が進んでいる。
「空き家のオーナーさんは、知り合いとか知り合いの紹介とかでないとなかなか貸してはくれないんですが、『LOVETOKO』が仲介役となって、今後空き家の活用にも積極的に動いていく予定でいます。」(鈴木さん)

②のプロジェクトは、ほぼ完了に近づいているそう。
やきもの散歩道に訪れた人が必ずといっていいほど写真に撮るのが土管坂。この坂の途中に作られたのが、空き家を改装した土管坂休憩所だ。常設のカフェや土産物店のほか、今後『LOVETOKO』の拠点としてまちの情報収集・発信の基地としても機能させていく予定だという。

また、休憩所の敷地にある蔵を改装したトイレにはTOTO、LIXIL、Janisと市内3メーカーのトイレを設置。トイレの個室内では常滑の魅力がプロジェクターで流れるという、常滑愛に満ちたアイデアが施されている。蔵の2階には女性用にパウダールームが整備され、ラグジュアリーな雰囲気のなかゆったりと化粧直しができるという嬉しい造りにもなっている。

③は買い物金額に応じてスタンプを押印してもらい、スタンプ10個で招き猫ノベルティグッズと交換できるというもの。市街地とりんくうエリアを楽しみながら周遊してもらおうという試みだ。

また、2015年からスタートしたプロジェクトもある。

「セントレア(Centrair)、イオンモール(AEONMALL)、常滑(TOKONAME)の頭文字をとってCAT。知多半島エリア一帯となった魅力あるまちづくりを進める目的で”CHITA CAT”プロジェクトが始まりました。
イオンモール常滑からセントレアまでの無料シャトルバスを走らせたり、「猫フェスタ」や「常滑お笑いEXPO」を開催して、より多くの人に知多の魅力を知ってもらおうと動いています」。(鈴木さん)

写真左上/空き家を改築して作られた「土管坂休憩所」。昭和レトロな雰囲気を残した喫茶スペースが作られ、散策途中の休憩スポットとして生まれ変わった。左下の写真は休憩所の蔵を改装して作られた女子トイレの2階<br>
右上/今後入居者を募る予定の空き工房。写真提供/常滑市<br>
右下/空いていた倉庫を活用して作られたカフェ『TSUNE ZUNE(常々)』のイベントスペース。常滑内外のおもしろい活動をしている人を招いて語り合う「トコナメハブトーク」を不定期で開催しているという。常滑の外から来た人の移住を募るだけでなく地元の人たちによる活用も少しずつ進んでいる写真左上/空き家を改築して作られた「土管坂休憩所」。昭和レトロな雰囲気を残した喫茶スペースが作られ、散策途中の休憩スポットとして生まれ変わった。左下の写真は休憩所の蔵を改装して作られた女子トイレの2階
右上/今後入居者を募る予定の空き工房。写真提供/常滑市
右下/空いていた倉庫を活用して作られたカフェ『TSUNE ZUNE(常々)』のイベントスペース。常滑内外のおもしろい活動をしている人を招いて語り合う「トコナメハブトーク」を不定期で開催しているという。常滑の外から来た人の移住を募るだけでなく地元の人たちによる活用も少しずつ進んでいる

新施設も続々誕生予定。猫好き・旅好き・焼きもの好きが住んでみたいまちを目指して

今年の夏にはセントレアに新しい施設「FLIGHT OF DREAMS(フライト・オブ・ドリームズ)」がオープン。ボーイング787飛行試験機の展示をメインに体験型コンテンツや、食事やショッピングを楽しめる施設になる予定。格安航空機LCCの新ターミナルもできる。
さらに、2019年秋には愛知県国際展示場がオープンするほか、港湾交流ゾーンには東横イン、フォーポイントバイシェラトン名古屋といったホテルもオープンする予定だ。

「飛行機が見える人工海浜『りんくうビーチ』や、古今和歌集にも載っている世界最古の海水浴場『大野海水浴場』もありますし、市の南側の地域には醸造文化が根付いています。セントレアラインに隣接する住宅地として飛香(あすか)台エリアの整備も進んでいます。
セントレアという大きな施設を軸に人の流れを作って、招き猫や焼きもの文化、さらにディープな常滑の魅力を知ってもらい、“猫好き・旅好き・焼きもの好きが住んでみたいまち”を目指していきたい」と話す鈴木さん。

現在の常滑市の人口は5万9,027人(2018年4月末)。2005年のセントレア開港前の5万1,632人からみると微増ではあるものの、市が想定した人口推移よりも早いスピードで増えているという。

「新しい施設ができることによって、関連企業の進出があったりそれに伴って移住者が増えると予測されます。常滑に住むなら今が狙い目かもしれませんね(笑)」と鈴木さん。


日本六古窯に数えられ千年の歴史をもつ窯業のまち。海と山に囲まれ、古いものと新しいものが融合した常滑市。
“猫好き・旅好き・焼きもの好き”という人もそうでない人も、一度訪れてみてはいかがだろう。まち歩きをしながら、福を呼ぶ招き猫に見守られる暮らしを想像してみるのもきっと楽しい。

【取材協力】
常滑市
http://www.city.tokoname.aichi.jp/
『LOVETOKO』
https://lovetoko.com/about/

写真左/かつて日本一の土管の生産地だった常滑市。やきもの散歩道に今も残る明治期の土管と昭和初期の焼酎瓶が壁に埋め込まれた「土管坂」は、やきもの散歩道を代表する風景のひとつ。<br>
写真右上下/セントレア対岸のりんくう地区に作られた人工海浜「りんくうビーチ」からは飛行機が見える。常滑市は新しい施設と歴史あるものが融合した面白味のあるまちだ。写真提供/常滑市写真左/かつて日本一の土管の生産地だった常滑市。やきもの散歩道に今も残る明治期の土管と昭和初期の焼酎瓶が壁に埋め込まれた「土管坂」は、やきもの散歩道を代表する風景のひとつ。
写真右上下/セントレア対岸のりんくう地区に作られた人工海浜「りんくうビーチ」からは飛行機が見える。常滑市は新しい施設と歴史あるものが融合した面白味のあるまちだ。写真提供/常滑市

2018年 06月28日 11時05分