殺菌、除菌、抗菌という言葉を見たら要注意

新型コロナウイルス対策(以下コロナ対策あるいはコロナ)として多種の情報、商品が登場しているが、まず気をつけてほしいのがその情報の真贋。少し前に医療情報のまとめサイトがとんでもない情報を流布して問題になったことがあったが、今、コロナ対策でも同様のことが起きている。悪意なく、正しい知識のない人が勘違いをそのままに書いていることがあり、それを鵜呑みにしてしまうと危険な目にあう可能性があるのだ。

情報の真贋を見極める最初の一歩となるのが言葉の使い方。現在、私たち人類が闘っているのはウイルスであり、菌ではない。細菌は細胞を持ち、栄養を摂取してそこからエネルギーを生産、細胞分裂を繰り返すことで生存、増殖を行っていることから生物とされるが、ウイルスに関しては意見が分かれる。細胞がなく、栄養を摂取したり、エネルギーを生産することはなく、自力で動くことも、単体で増殖することもできないため、生物とは言い切れないという説があるのだ。

だとすると、そもそも除菌、殺菌、抗菌などという言葉は使えない。菌ではないし、生物でないとしたら殺すことはできない。それを理解せずに書かれている記事、商品紹介に関しては分からない、知らないで書いていることを疑ってみてもよいのではなかろうか。

では、ウイルスに対してはどのような言葉が妥当か。無難な表現としては消毒があり、もっと的確な言葉としては感染力を失わせる、ウイルスの構造を破壊するという意味で不活化がある。間違っても「殺す」ではないので、その辺りを目安にしよう。

また、これはコロナ対策だけではないが、情報の真贋では一次情報を元に、あるいは信頼できる情報源があって書かれているかどうかを確認すること。今の状況でいえば抑えておくべきは厚生労働省の情報であり、それ以外では大学や一定の信頼がおける研究機関、業界団体などであろうか。

■「滅菌」「殺菌」「除菌」「抗菌」などの用語の違いについて(日本石鹸洗剤工業会)
https://jsda.org/w/03_shiki/a_yougo_1.html?fbclid=IwAR08gWblK-P3MTV0kKtsMrbICpHd5DqTJNlxuEQ7H5lFuZiuE_FrlakQY28

■新型コロナウイルス感染症について(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html

厚生労働省 3つのお願い 参照<br>
お願い1:外出はできるだけひかえてください。<br>
お願い2:「三密」(密集、密室、密接)を避けましょう。<br>
お願い3:咳エチケット(咳やくしゃみをする際、マスクやティッシュ、ハンカチ、袖、肘の内側などを使って、口や鼻をおさえること)や手洗いをお願いします<br>
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html厚生労働省 3つのお願い 参照
お願い1:外出はできるだけひかえてください。
お願い2:「三密」(密集、密室、密接)を避けましょう。
お願い3:咳エチケット(咳やくしゃみをする際、マスクやティッシュ、ハンカチ、袖、肘の内側などを使って、口や鼻をおさえること)や手洗いをお願いします
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html

同じアルコールでもメチル使用はダメ、絶対!

メチルアルコールは引火性が高く危険メチルアルコールは引火性が高く危険

さて、ウイルスには大きく2種類がある。分かりやすさを優先して、非常に簡単に言ってしまうとエンベロープタイプ、ノンエンベロープタイプで、エンベロープとは封筒のこと。イメージしやすく言うと封筒に入ったウイルスと入っていないウイルスがあるわけで、封筒に入っていないほうが強力。代表的なものがエボラやノロなどだ。今回のコロナは幸いなことに封筒に入ったタイプで、封筒=「脂質などからなる膜」を破壊すれば不活化できる。そのために役立つ物質がいくつかあり、よく知られているのがエタノール(エチルアルコール)である。

具体的な商品としては手指の消毒用のジェル、スプレー類やキッチンの除菌剤(商品本来の目的は菌対策であるため、一般的には除菌剤と称されている)があるが、最近はいずれも手に入りにくくなっている。そこで同じアルコールならと「メチルアルコール」を買って空中消毒とばかりにスプレーで噴霧する人が出ていると聞くが、これは絶対にやってはいけない。

メチルとエチル、非常に紛らわしい名称だが、この2つは全く別物。しかも、メチルアルコールは引火性が強く、噴霧したところに引火したら大惨事になりかねない。量などにもよるが、摂取すると吐き気やめまい、昏睡などの意識障害を起こす危険があり、さらに症状が進むと失明、落命の恐れすらある。

メチルアルコールは「燃料アルコール」として消毒用エタノール、無水エタノールと並べてドラッグストアなどで売られていることが多い。比較的安価なこともあり、「アルコール」という文字に惹かれて購入したくなる気持ちは分からないではないが、「目散る」アルコールと覚え、決して手を出さないようにしよう。

なお、東京消防庁では消毒用アルコールの取扱いについて、火災などを引き起こす可能性があるとして注意を促す告知を4月17日に発表している。

消毒用アルコールの取扱いにご注意ください!!
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/hp-kouhouka/pdf/020417-2.pdf

普通の住居用洗剤、ハンドソープなどで不活化は可能

公共の場所から帰ったとき、咳やくしゃみ、鼻をかんだとき、食事の前後、病気の人のケアをしたとき、外にあるものを触ったときなどこまめな手洗いを心がけよう(厚生労働省 「手洗いの、5つのタイミング」参照)公共の場所から帰ったとき、咳やくしゃみ、鼻をかんだとき、食事の前後、病気の人のケアをしたとき、外にあるものを触ったときなどこまめな手洗いを心がけよう(厚生労働省 「手洗いの、5つのタイミング」参照)

有効と言われてもエチルアルコールは入手できないと不安に思っている人もいようが、心配することはない。うちにある普通の住居用洗剤、ハンドソープ類などにも不活化効果があることが分かっている。

では、どんな商品なら使えるのか。これについては北里大学大村智記念研究所ウイルス感染制御学研究室I 片山和彦教授らの研究グループが2020年4月17日に非常に参考になる発表を行っている。市販の洗剤等の商品のうち、どれに新型コロナウイルス不活化効果があるかを探るため、試験管内でのウイルス不活化評価を実施したというのである。

それによるとかなりの洗剤類、ハンドソープ類に効果があり、きちんと使い方などを守って使えばアルコールがなくても十分に役立つことが分かっている。住宅内のそれぞれの部位に応じた洗剤を使い、定期的に清掃する、手を洗うことを忘れなければよいだけである。研究結果では特定のメーカーの商品が挙げられているが、他社の商品でも同様の効果がある商品は多数あるだろうと考えられる。とりあえず、わが家に適当な商品があるかどうかを確認してみよう。

ひとつ、注意したいのは希釈する必要がある商品を使用する際、濃いほうが効き目があると
考えて濃いままで使う人がいるが、残念ながら効果が高いということは同時に毒性もまた高いということは多々ある。商品記載の使い方をよく読み、自分流の使い方はしないようにしたい。

■医薬部外品および雑貨の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)不活化効果について(北里大学、北里大学大村智記念研究所)

塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウムを主成分とした台所用漂白剤)噴霧は危険

スプレータイプの台所用漂白剤の注意書き。注意して使わないと危険があることを教えてくれるスプレータイプの台所用漂白剤の注意書き。注意して使わないと危険があることを教えてくれる

住居内で比較的よく使われている商品のひとつに次亜塩素酸ナトリウムを主成分とした台所用漂白剤(塩素系漂白剤)があるが、これについては誤解もあるので指摘しておきたい。

「厚生労働省のサイトに家族に感染が疑われる場合に家庭内で注意したいことについての解説があり、そこに手で触れる共用部を消毒しましょうという項目があります。具体的なやり方のひとつに『共用部分(ドアの取っ手、ノブ、ベッド柵など)は、薄めた市販の家庭用塩素系漂白剤で拭いた後、水拭きしましょう』とあるため、次亜塩素酸ナトリウムを主成分とした漂白剤に過度な期待を持っている人がいらっしゃるようなのです」と家庭用洗剤に詳しい、住生活ジャーナリストの藤原千秋氏。

このところ、これを加湿器に入れて空間を消毒しようとしたり、マスクに噴霧して使用するなど本来の使い方と全く異なる使い方をしている人が出ているのである。だが、これは絶対にやってはいけない。

たとえば次亜塩素酸ナトリウムが主成分の塩素系漂白剤を加湿器に入れるなどして噴霧、口に入ったり、目に入ったりしたとしよう。どうなるか。

公益財団法人日本中毒情報センターの塩素系漂白剤の項によると「飲み込んだ場合は、口の中、のどから胃のあたりまでただれて痛くなり、ついには物を飲み込めなくなる恐れがあります。吐き気や嘔吐も起こします。原液や濃厚なものが眼に入ると、ひどい場合は失明する危険もあります」

信じられないと思うのであれば自宅にある次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする台所用漂白剤の説明を見てほしい。目に入らないように、飲み込んだら、皮膚についたらとさまざまな注意書きがあり、換気の良い場所で使うようになどと細かく注意が書かれているはずで、日常的な品ながら使い方を間違えると身体に重篤な影響を及ぼすこともある薬品なのである。

最近は消臭剤を利用、室内への化学製品の噴霧に慣れている人もいるが、安易に噴霧して空気が消毒できるとは思わないこと。いつもの慣れたスプレー式の洗剤、漂白剤などを使う時にも注意書きを思い出し、適正な使用を心がけよう。

■中毒事故の問い合わせが多い家庭内の化学製品(公益財団法人日本中毒情報センター)
khttps://www.j-poison-ic.jp/general-public/response-to-a-poisoning-accident/chemical-products/#i-22

次亜塩素酸水の有効性検証はこれから

次亜塩素酸ナトリウムと混同されているものに次亜塩素酸水がある。これは塩酸又は食塩水を電解することにより得られる、次亜塩素酸を主成分とする水溶液で、2002年から食品添加物として認可されたもの。身近なところでいえば野菜類等の殺菌に使われている。

食品添加物としての評価では菌の種類にもよるが、次亜塩素酸ナトリウムと同等、優秀などとなっており、ウイルスにも有効ではないかという期待は当然だ。これまでも消臭、除菌などに使われてきた例もある。

だが、コロナに対しては2020年4月15日の時点で独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)が有効性評価を行うと発表したところで、有効性について詳細が分かってくるのはこれから。

また、有効性が分かったとしても前述の通り、食品添加物として使う想定となっているため、噴霧する商品として考えた場合、現状では商品としての基準などが明確ではない。当然、商品によって内容のばらつきが出ることは十分考えられる。

また、そもそも次亜塩素酸水は紫外線や温度に弱く、長期に保存するのが難しいとされている。期待はしたいが、奇跡のように効くとまでは考えられない。不安の中にいる時には誰しも魔法のようにそれを消してくれるものを夢見るが、現実にはそんなことはなかなか起きない。地道に今手に入る品で手洗い、消毒、うがいをし、そして外出を自粛。みんなで耐え抜こう。

■次亜塩素酸水(厚労省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002wy32-att/2r9852000002wybg.pdf

■NITEが行う新型コロナウイルスに対する消毒方法の有効性評価に関する情報公開
https://www.nite.go.jp/information/koronataisaku20200522.html

■独立行政法人製品評価技術基盤機構
有効な界面活性剤が含まれる製品リスト(5月22日版)
https://www.nite.go.jp/data/000109226.pdf

2020年 04月27日 11時05分