『魅力のない都市』ワースト1、本当に“名古屋は魅力がない街”なのか?!

名古屋市観光文化交流局が、平成28(2016)年6月に札幌・東京23区・横浜・名古屋・京都・大阪・神戸・福岡の全国8地域で実施した『都市ブランドイメージ調査』によると、“自分の街を他の地域の人にオススメできるか?”という『推奨度調査』で名古屋は最下位になった。

加えて、他地域の人にたずねた“買い物や遊びに行きたい街だと思うか?”という『訪問意向調査』では、“名古屋へ行ってみたい”と答えた人がわずか1.4ポイントと最下位となり、自他共に『魅力のない街』であることを認識しているというやや自虐的な調査結果が発表された。

現・名古屋市民である筆者としては大変残念な結果だったが、実際に名古屋人に「名古屋のオススメスポットはどこですか?」と質問すると、「う~ん…名古屋には何もないので…」と遠慮がちに答える人が多い。しかし、本当は“名古屋には何でも揃っている”ということに、当の名古屋人が気付いていないだけなのかもしれない。

徳川家康の命によって慶長17(1612)年に完成した名古屋城は、『城郭としての国宝第一号』という誇るべき称号を持つ名古屋の宝だし、昨シーズンの成績は散々だったものの中日ドラゴンズや名古屋グランパスなど地元スポーツ団も有している。また、トヨタをはじめとする多くのグローバル企業が名古屋の経済を支えているのも事実だ。

こうした地元の魅力に“気付かないまま”名古屋人が過ごしていることを危惧し、名古屋人のシビックプライド(都市に対する誇りや愛着)を育もうと、平成29(2017)年からあるプロジェクトが動き始める。

それが、名古屋城の門前で計画が進められている名古屋『金シャチ横丁』構想だ。

▲「名古屋城は誰が建てたか?」という質問に対して、ちゃんと答えられる名古屋人は意外に少ない。<br />かの徳川家康が天下統一の最後の布石として築いた『名古屋城』は史上最大の延床面積を誇り<br />昭和5(1930)年に旧・国宝の第一号として指定されたが<br />第二次世界大戦中、昭和20(1945)年5月の空襲で焼失したため国宝指定は解除された。<br />(恥ずかしながら名古屋人である筆者も国宝第一号であった事実を今回の取材で初めて知った)<br />現在は国の特別史跡。築城当時の建材・工法を用いて総工費約150億円をかけ復元工事を行っている本丸御殿は<br />平成30(2018)年に完成予定だ▲「名古屋城は誰が建てたか?」という質問に対して、ちゃんと答えられる名古屋人は意外に少ない。
かの徳川家康が天下統一の最後の布石として築いた『名古屋城』は史上最大の延床面積を誇り
昭和5(1930)年に旧・国宝の第一号として指定されたが
第二次世界大戦中、昭和20(1945)年5月の空襲で焼失したため国宝指定は解除された。
(恥ずかしながら名古屋人である筆者も国宝第一号であった事実を今回の取材で初めて知った)
現在は国の特別史跡。築城当時の建材・工法を用いて総工費約150億円をかけ復元工事を行っている本丸御殿は
平成30(2018)年に完成予定だ

名古屋の魅力を発信するきっかけ作りの第一歩、『金シャチ横丁』構想

▲名古屋城総合事務所整備室の渡邉剛さん。「僕は愛知県のお隣の岐阜・美濃加茂の出身ですが、昔から“名古屋の人はなんでも地元で完結させてしまうことが多いなぁ”と感じていました。ようは外部へのPRや発信をすることが苦手なんです。これは名古屋開府400年来、ずっと培われてきた地域特性なんでしょうかね。自分も含めてですがなかなか変えられません(笑)」と渡邉さん▲名古屋城総合事務所整備室の渡邉剛さん。「僕は愛知県のお隣の岐阜・美濃加茂の出身ですが、昔から“名古屋の人はなんでも地元で完結させてしまうことが多いなぁ”と感じていました。ようは外部へのPRや発信をすることが苦手なんです。これは名古屋開府400年来、ずっと培われてきた地域特性なんでしょうかね。自分も含めてですがなかなか変えられません(笑)」と渡邉さん

「僕もそもそも市役所に入るまで“名古屋城が城郭としての国宝第一号だったこと”を知りませんでしたから(笑)、実は名古屋人は案外地元のことをちゃんと知らないのではないでしょうか。

知らないというより『知る機会が少ない』というのが正しい表現かもしれません。

そのため、“地元の歴史や地元の誇るべき魅力を、まずは地元の人たちにちゃんと知ってもらわなくては…”という使命感を名古屋市職員として強く感じています」

名古屋市観光文化交流局は平成28(2016)年度から新しく創設された部署だ。中でも、名古屋随一の観光名所である『名古屋城』のPRや、始動した『金シャチ横丁』プロジェクトの企画推進を担っているのが名古屋城総合事務所。今回取材に応じてくださった渡邉剛さんは、その整備室に所属する市の担当者だ。

「名古屋城内には、『本丸表二之門』や『隅櫓』など大変貴重な重要文化財も多く存在しているのですが、そうした情報の発信が不足していたせいか、観光客の城内滞在時間が極端に短いことが以前から課題でした。また、滞在時間が短くなるのはもうひとつ、城内に飲食店や土産物店などの便益施設が少ないことも原因と考えられます。

しかし、『名古屋城』は国の特別史跡であり文化財を保護するという観点から、文化庁の指導に基づいた整備しか行うことができません。勝手にレストランや休憩所をオープンさせることはできないのです。

そういったなか、名古屋市議会からの“名古屋城周辺に名古屋版おかげ横丁をつくったらどうか?”との提案をきっかけに『金シャチ横丁』構想がスタートしました。理想形としては伊勢のおかげ横丁のようなイメージですね」(渡邉さん談)。

尾張名古屋は城で持つ…だからこそ、まずは名古屋城を盛り上げる!

“尾張名古屋は城で持つ”というのは有名な伊勢音頭のフレーズだ。「尾張には立派なお城ができたから、これから栄えるに違いない」という当時の世評を唄ったものだそうだが、まさにその『名古屋城』を盛り上げることが名古屋の街全体の活性化につながるとして、河村市長を筆頭に『金シャチ横丁』プロジェクトが動き始めた。

「構想が出来上がったのは、今から4年ほど前(平成24年度)のことでしたが、実際には場所選びに苦労しました。名古屋城周辺は官庁街なのでとにかく空いている土地が無いのです。

そこで、国の協力を求めながら“やれるところからやっていこう”という形で、段階的に『金シャチ横丁』第一期整備事業がスタートすることになりました」(渡邉さん談)。

▲『金シャチ横丁』の第一期整備事業として平成29(2017)年2月に商業施設建設着工予定となっているのが、<br />名古屋城の2つの主要出入り口となる正門前(マップ内1)と東門前(マップ内2)。<br />正門は主に観光バスやタクシーなど車を利用して訪れる人、東門は地下鉄『市役所』駅を利用して訪れる人の動線入口となる。<br />この2つの門の前に名古屋名物の食事処や土産物店が集まるテナント施設をつくることによって<br />名古屋城への集客や地域の賑わいを新たに創出する狙いだ。<br />上図内に記載されているように、今後は観光地『名古屋城』を中心とした周辺エリアへの回遊性や連動性、<br />名古屋駅からの交通手段の整備など、7つの柱の基本構想を掲げている▲『金シャチ横丁』の第一期整備事業として平成29(2017)年2月に商業施設建設着工予定となっているのが、
名古屋城の2つの主要出入り口となる正門前(マップ内1)と東門前(マップ内2)。
正門は主に観光バスやタクシーなど車を利用して訪れる人、東門は地下鉄『市役所』駅を利用して訪れる人の動線入口となる。
この2つの門の前に名古屋名物の食事処や土産物店が集まるテナント施設をつくることによって
名古屋城への集客や地域の賑わいを新たに創出する狙いだ。
上図内に記載されているように、今後は観光地『名古屋城』を中心とした周辺エリアへの回遊性や連動性、
名古屋駅からの交通手段の整備など、7つの柱の基本構想を掲げている

初代藩主『義直』と、派手好き殿様『宗春』をテーマにした2つのゾーン

『金シャチ横丁』の第一期整備事業となる2つの商業施設にはテーマが掲げられている。

正門前は尾張藩の初代藩主である徳川義直にちなんで『義直ゾーン』と名づけられ、伝統を重んじた純和風の街並みとし、ひつまぶし・きしめん・みそかつなど、お馴染みの名古屋めしや名古屋土産の店舗誘致を予定。一方、東門前は尾張徳川家きっての派手好きとして知られる7代藩主・徳川宗春にちなんだ『宗春ゾーン』で、宗春のイメージを連想させるモダンデザインの近代建築を取り入れ、『義直ゾーン』とのコンセプトを明確に分ける予定だ。

「この商業施設については民設民営。つまり、民間で造ってもらい民間で運営してもらうため、事業者を公募し、地元の広告代理店である新東通信を中心としたグループに建設・運営をしていただくことになりました。わかりやすく言うと、名古屋市としては土地を貸与するだけです。

今後は芝居小屋をイメージした多目的交流スペースや展示ホールなど、名古屋市が新たな空間施設の建設も検討していますが、まずは長期的視点で取り組みを検討し、少しずつ『金シャチ横丁』を広げていきたいと考えています」(渡邉さん談)。

▲左上:名古屋城正門前の『義直ゾーン』は名古屋の生活文化や食文化を楽しむ横丁で、<br />第一期整備事業では8店舗がオープン予定となっている。<br />右下:名古屋城東門前の『宗春ゾーン』は第一期7店舗のオープンを予定。<br />地下鉄駅にも近いことから、観光客だけでなく一般市民もターゲットに含めた利便施設として計画されている▲左上:名古屋城正門前の『義直ゾーン』は名古屋の生活文化や食文化を楽しむ横丁で、
第一期整備事業では8店舗がオープン予定となっている。
右下:名古屋城東門前の『宗春ゾーン』は第一期7店舗のオープンを予定。
地下鉄駅にも近いことから、観光客だけでなく一般市民もターゲットに含めた利便施設として計画されている

地元の人が“魅力がない”と言ったら誰も来たがらない、まずは意識改革から

「名古屋の人たちが、“名古屋には魅力が無いので…”と自虐的に話すのはデフォルトであって、名古屋人特有の美徳なのだと思います。でも、“うちには魅力が何もありません”と言ってしまったら、やっぱりそんな場所には誰も来たがらないでしょう。名古屋市としても、『金シャチ横丁』を起爆剤として、地元の人たちに向けて名古屋の魅力を発信し、地元に誇りを持てるような街づくりを継続的に行うことを目標に掲げています。

この『金シャチ横丁』第一期整備事業の店舗は平成30(2018)年3月にオープン予定です。“金シャチ横丁があるから名古屋城へ行ってみたら?”と、他の地域の方に地元をオススメできるような賑わいのある街にしたいですね」(渡邉さん談)。

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SNSをはじめクチコミメディアが大きな影響力を持ついまの時代、名古屋市民・230万人各自が地元の魅力を認識し地元に誇りを持つことができたら、強力な“名古屋PR隊”となるはずだ。

『金シャチ横丁』オープンまであと約15ヶ月。筆者も名古屋人として、これからの“名古屋の街と人の変化”を楽しみにしたいと思う。

■取材協力/名古屋市
http://www.city.nagoya.jp/
■名古屋市・世界の金シャチ横丁(仮称)基本構想(PDF)
http://www.nagoyajo.city.nagoya.jp/17_topics/260115/pdf/201401kihonkoso.pdf

▲平成29(2017)年2月から着工予定の名古屋城正門前『義直ゾーン』の現在の風景。<br />お堀の桜並木にも近接しているため、春には満開の桜と横丁の賑わいが名古屋城を活気づけてくれそうだ。<br />「最近はインバウンド効果もあって名古屋城を訪れる外国人が増えていますが、<br />残念なことに名古屋を訪れる外国人観光客の多くは『京都』や『高山』へ行く前に途中で立ち寄る人が多いのです。<br />時間はかかると思いますが、名古屋が『通過地点』ではなく『ディスティネーション=目的地』となるよう、<br />名古屋市を挙げて取り組んでいきたいと思います」と渡邉さん▲平成29(2017)年2月から着工予定の名古屋城正門前『義直ゾーン』の現在の風景。
お堀の桜並木にも近接しているため、春には満開の桜と横丁の賑わいが名古屋城を活気づけてくれそうだ。
「最近はインバウンド効果もあって名古屋城を訪れる外国人が増えていますが、
残念なことに名古屋を訪れる外国人観光客の多くは『京都』や『高山』へ行く前に途中で立ち寄る人が多いのです。
時間はかかると思いますが、名古屋が『通過地点』ではなく『ディスティネーション=目的地』となるよう、
名古屋市を挙げて取り組んでいきたいと思います」と渡邉さん

2017年 01月24日 11時05分