商業地が活況だった大阪・京都、話題に乏しかった神戸

2018年2月9日、平昌五輪が開幕した。しかし不動産市場での注目は東京五輪。数年前から「不動産市場の好況は2020年の東京五輪まで続く」などと言われているが、今年は2018年。平昌は開幕したが東京は再来年だ。なんとなく不動産が好況なのは感じるが、五輪需要があまり体感できない関西において、2018年はどのような年になるのであろうか?
2018年の話をする前に、まずは2017年を振り返ってみたい。

2017年、関西の不動産市況は概ね堅調に推移した。ワンフレーズで振り返ると、「タワーマンション人気が継続した大阪」「高額分譲マンションが減った京都」「あまり目立たなかった神戸」という印象だろうか。

大阪市は、2016年に「ザ・パークハウス 中之島タワー」が注目されたが、2017年は超話題というほどの物件はなかった。これは京都市内も同様である。「ザ・パークハウス 京都鴨川御所東」の"7億円超物件"が話題になったのは2015年。2016年は市内中心部の高額マンションが減り、市内中心部以外のエリアに分譲マンションが増加。市内中心部の分譲マンション計画の多くがホテル事業へと計画変更した。一方、神戸市は、西宮市から一連のエリアとなる阪神間エリアの高級住宅街の需要は堅調だったものの、大阪や京都の市場と比較すると話題性に乏しかったといえる。

筆者の感覚と近しい数値だったのが「平成29年都道府県地価調査」の結果だ。京都市、大阪市、神戸市それぞれの都市の対前年平均変動率は、住宅地・商業地共に増加したものの、その増加の仕方には異なっている。
住宅地については、京都市1.0%(平成28年0.6%)、大阪市0.5%(0.5%)、神戸市0.5%(0.5%)と前年に続く微増傾向であり、三都市の差はほとんど見られない。一方、商業地は、京都市10.3%(平成28年6.5%)、大阪市8.0%(8.0%)、神戸市4.2%(3.6%)と神戸市が水をあけられた格好となっている。特に京都市の商業地の上昇率は、全国のトップ10位中5地点がランクイン、京都市伏見区は商業地で全国1位の上昇率29.6%と突出した伸びを見せた。伏見区以外でも下京区(JR京都駅周辺」)が25.3%の上昇率。リゾート地のような元々の価格が低かったエリアなら兎も角、京都市のような大都市の市街地でこのような伸びをみせるのはすごいの一言だ。
10%超と凄まじい高騰を見せた京都市と、2%程度の差しかなかった大阪市。この両市と神戸市の差として考えられるのが外国人観光客によるインバウンド需要の有無だ。

各都市とも住宅地には大きな差は見られないが、京都市の前年比10%超をはじめ、商業地には大きな差が見られる<BR>参照:平成29年度都道府県地価調査結果を元に作成各都市とも住宅地には大きな差は見られないが、京都市の前年比10%超をはじめ、商業地には大きな差が見られる
参照:平成29年度都道府県地価調査結果を元に作成

観光地として比べた場合の大阪、京都、神戸

京都大阪の商業地価格の上昇は、この観光客の数をみれば腑に落ちる。三菱総合研究所の調べ(「関西インバウンドマーケティング基礎調査(2017)」によると2016年の主要な観光地・エリアへの訪問数(年間推計値)は、大阪は、難波、心斎橋が702万人、梅田・大阪駅周辺が551万人、大阪城が443万人、日本橋が420万人。京都は東山が480万人、京都駅周辺が371万人、金閣寺周辺が274万人。両エリアとも100万人を超える方も車があった場所が大阪はUSJ、あべの・天王寺、海遊館・天保山、京都は河原町・烏丸・四条、伏見、嵐山・嵯峨野、等他にも複数あった。

それに対して兵庫(神戸)は最高が神戸・三宮の74万人。残念ながら観光地としての神戸は大阪、京都と比べて格段に集客力が落ちる。観光地として多くの人が流入してくることと飲食や物販などの商業施設がその恩恵にを受けることができ、土地や建物を購入したり借りたりし商業施設、店舗運営したいというニーズが増え建物賃料、不動産価格が上昇に向かう。もちろん住宅地より商業地のほうがその傾向が大きい。ここが京都市10.3%、大阪市8.0%、神戸市4.2%の差となっている。

観光地・エリア別の訪問者数推計値 参照:株式会社三菱総合研究所「関西インバウンドマーケティング基礎調査(2017)」観光地・エリア別の訪問者数推計値 参照:株式会社三菱総合研究所「関西インバウンドマーケティング基礎調査(2017)」

京都・大阪に比べインバウンド需要の恩恵が少なかった神戸

続いて2016年度の旅館業営業許可数を見てみよう。海外観光客が増えると、宿泊業も潤う。国土交通省 観光庁発表の「宿泊旅行統計調査」によると昨年( 平成27年1月~12月分)のホテル等稼働率は大阪府、京都府、兵庫県、ともにシティホテル、ビジネスホテル両カテゴリーの稼働率が80%を超えている。当然「新たに投資をして宿泊業を始めよう」という事業者も増える。

国土交通省の発表によると、2016年度に旅館業を許可を得た件数は、京都市838件、大阪市206件、神戸市16件。ホテル等の稼働率には大きな差はないのに、許可件数は圧倒的な差だ。この数値だけを見ると、神戸市の新規許可件数が極端に少ないように見えるがそうではない。政令指定都市間で比べると、京都市1位、大阪市2位で、3位は福岡市の32件。以下、札幌市30件、広島市25件、名古屋市19件の順であり、京都市と大阪市の件数が異常値なのがわかる。神戸市の16件というのは全国20の政令指定都市中の7位であり、むしろ上位である。

自身の保有マンションで宿泊施設運営を行う事業者もあるが、新規に旅館業取得する事業者の多くは既存の建物を賃貸で借りる、もしくは購入するまたは建築するという行為を行っている。旅館業の許可が取得されたということは、それだけ不動産が動いたという訳だ。また旅館業の開業は、住宅地よりも商業地の方が多いのは言うまでもない。

2018年度の関西圏の不動産市場は?

現在も開発が進む大阪駅、梅田駅エリア。写真は先行開発区域「グランフロント大阪」現在も開発が進む大阪駅、梅田駅エリア。写真は先行開発区域「グランフロント大阪」

ではこの2018年度の関西圏の不動産市場はどうなるのか?マンション市場を中心に予測してみたい。

大阪は、緩やかな成長が続くと踏んでいる。新築マンション市場においては、話題となる物件は少なかったものの、まだタワーマンションは売れている。中津、北浜等の都心部にごく近い駅近タワーは注目度も高い。また、東京の分譲単価の高値警戒感から、割安感のある大阪の物件に興味を示し始めた首都圏の投資家も多く、それを見越してか、三井不動産レジデンシャルは投資家向け商品の都市型コンパクト分譲マンション「パークリュクス」ブランドの分譲を2018年から関西でも販売を始める。2018年2月現在、Webサイトで確認したところ予定は2物件あり、どちらも大阪市内だ。

大阪の成長が続くと考える理由として、将来性が見込める複数の開発計画があることもあげられる。JR大阪駅近接の広大な緑地を含む梅田北ヤード2期工事(2024年街開き予定)やカジノを含む統合型リゾートと一体で考えられ2025年開催に向けて誘致している大阪万博、2031年開業予定のキタとミナミをつなぎ、関日空港〜大阪駅〜新大阪駅間の移動をスムーズにする「なにわ筋線」計画などだ。観光客によるインバウンド需要以外にも追い風があることは大きい。新築中古共に大きな値崩れは考え難い。

京都は、調整局面と考えられる。分譲マンションのメイン市場はすでに中心部から周辺部に移行している。先述の通り宿泊施設の需要が好調のためホテル開発用地としての需要が大きく、一昨年頃からマンション開発業者はマンション用地の手当をできない状況が続いている。中心部のマンション需要についても、大阪のそれが居住用であれ投資用であれ実需の下支えがあるのに対し、京都のそれはセカンドハウス・別荘として購入している人が多い。このような需要は大変読みにくい。海外を含めまだまだ需要があるともいえるし、頭打ちと考えることもできる。そのあたりの先行き不透明感による様子見が出るのが2018年ではないか。

ただ、大阪市と同様に京都市も話題は多い。JR京都駅周辺他そこかしこでホテル開発計画があり、2021年度には文化庁の移転も決まっている。国内外からの観光客のは一過性のブームではなく、定着した感もある。仮に来街者が多少減少したとしても、ホテルの稼働率は落ちるであろうが住宅需要にはあまり関係はない。調整局面といっても、ここ数年高騰を続けてきた不動産価格が「このまま上がるのか?」という意味合いであり、一部ホテル向け用地を除けば大きな下落は考えにくい。

神戸躍進の鍵は「キャッチフレーズ」

最後は神戸だが、大阪・京都と比べて話題が少ない。三宮駅前で神戸阪急ビル東館(29階建)が建て替わる等の開発があるが、駅前開発としてはそれほどスケールの大きいものとは言えない。
また、住宅地の視点から京都市、大阪市、神戸市の平成28年新設着工数を比べてみると、大阪市が平成27年比1.9%増(31,631戸)、京都市が0.5%減(10,462戸)なのに対し、神戸市は15.4%減(8,294戸)と、京阪神の中でも着工数減が目立っている。また、兵庫県内でも高級住宅街が並ぶことで知られる阪急神戸線沿線を見てみると、岡本駅のある神戸エリアは9.2%減(8,876戸)、芦屋川駅・夙川駅のある阪神南エリアは11.2%減(6,883戸)である。

関西でも「住みたい沿線」として人気を誇る阪急神戸線沿線をはじめ、神戸は住宅地としてのポテンシャルが高い。しかし、不動産市場としては大阪=タワーマンション、京都=ホテル、のような「神戸を牽引するのはコレ」といったキャッチフレーズ的な要素がなく盛り上がりに欠ける。神戸が注目を浴びるようなわかりやすい何か特徴的なコト、モノが広く認知されなければ、大阪、京都との格差が埋まらないであろう。

2018年 02月16日 11時05分