増加する”引越しトラブル”

独立行政法人国民生活相談センターによると、引越しに関するトラブルの相談件数は2008
年の2,133件から2013年度では2,725件と増加している。その内容は、「家具に傷がついたから補修してほしい」という「補修」に関するものが最も多く、「苦情に対する業者の対応に納得できない」というクレーム処理に関する相談や、見積りに関するものも多く寄せられている。

最近は電話やメールなどのやりとりで簡単に見積りから契約まで可能になり、引越しに関する手続きが便利になった。しかしその一方で、消費者と引越し業者側のやりとりがおろそかになることで正式な見積書の発行や、契約の重要な事項が示されないことによるトラブルが増加しているという。

新生活への入り口であり、大切な家財道具を運んでもらうサービスである引越し。新居での生活を気持ちよく始めるためにも、トラブルは避けたいものだ。

PIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)に寄せられた相談件数の推移(2015年2月28日現在)PIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)に寄せられた相談件数の推移(2015年2月28日現在)

良い引越し会社の判断基準となる「引越安心マーク」とは?

そうした中、公益社団法人全日本トラック協会は、消費者が良い引越し業者を選ぶ判断材料として、平成26年に「引越安心マーク」制度を創設した。全日本トラック協会が「安心で安全な引越しサービスを提供する」と認めた引越し事業者を、引越し優良事業者として認定するものだ。制度の目的・概要として、以下の3つが柱として掲げられている。

① 安全・安心な事業者の見える化
事業者の責任を明確化し、消費者が安心して引越を委託することができる事業者を選択しやすい環境をつくる。

② 引越業界全体のコンプライアンスの向上
貨物自動車運送事業法や標準引越運送約款、消費者関係法令等の遵守を誓約し、その体制が整っている事業者を認定することにより、引越業界全体のコンプライアンスの向上を目指す。

③ 引越における苦情やトラブルの防止
苦情やトラブルを未然に防ぐための社内教育や責任ある対応ができる体制等が整っている事業者を認定することにより、引越における苦情やトラブルの防止を目指す。
(公益社団法人 全日本トラック協会ホームページより抜粋)

法令遵守を徹底して業界全体のコンプライアンスを向上させるほか、トラブルを未然に防ぐ社内教育、トラブルが発生した場合には適切に対応させることもポイントだ。

平成26年に認定事業者が決定し、全国の301事業者、1,739事業所が認定された。認定されると、事業者には優良事業者の証として、下の「引越安心マーク」が交付される。事業者はこのマークを、事業所やトラック、名刺に付けてよい。業界からの「お墨付き」というわけで、このマークの有無を、引越し業者を選ぶ際の目安にすると良いだろう。

優良と認定された引越し業者が、事業所やトラックに表示して良い「引越安心マーク」。</br>公募で選ばれたデザインだという優良と認定された引越し業者が、事業所やトラックに表示して良い「引越安心マーク」。
公募で選ばれたデザインだという

サービスを受ける側として心得ておきたい”7つのポイント”

引越し会社を選ぶときから引越し終了後まで、利用する側としても心得ておきたいポイントは多い。それらを心得て、より満足できる引越しにしよう引越し会社を選ぶときから引越し終了後まで、利用する側としても心得ておきたいポイントは多い。それらを心得て、より満足できる引越しにしよう

引越しに関するトラブルでは、引越し業者側の問題だけではなく、消費者の知識不足が要因の一つとなっているケースも多い。サービスを利用する側として、トラブルを回避するために知識をつけておくことも必要だ。
国民生活相談センターでは消費者へのアドバイスとして、次のような引越しサービスを利用する際の注意点を挙げている。


① 引越しサービスを行うことができるのは、一般貨物自動車運送事業の経営の許可を得た事業者もしくは貨物軽自動車運送事業の経営の届出を行った事業者である。きちんと営業の許可を得た事業者かどうかを確認したい。見積書に許可番号の記載があるので、それを確認しよう。

② 複数の事業者から見積りをとり、十分に比較検討しよう。また見積りについては価格だけでなく、荷物を運搬する体制といったサービス内容についても確認しておきたい。

③ 見積り時に受け取った梱包用段ボールについては、契約しない場合にその返送や代金をめぐってトラブルになることがある。契約先を決めていないときはダンボールを受け取らないようにしたい。

④ 見積書と約款は契約内容を示す大切なものなので、きちんと確認しておきたい。標準引越運送約款3条6項では、事業者は見積り時に約款を提示することになっている。必ず見積り時に確認し、気になる点は明らかにしておきたい。
標準引越運送約款以外の約款を使用する場合は、国土交通大臣の認可が必要となる。事業者が独自の約款を使用していると思われる場合は、念のために認可の有無についても確認しておこう。また、口頭で打ち合わせた内容も必ず見積書に記載しておくこと。

⑤ わからない事があれば、積極的に事業者に確認しよう。念のため、トラブルが発生した際の対応についても予め確認しておきたい。

⑥ 引越し作業中に運搬物に傷がついた場合などは、その場で事業者に申し出るようにしたい。引越し完了後にはすぐに、荷物の数や状態を確認しておこう。
万が一、引っ越し後に荷物の紛失、破損に気がついた場合はすぐに事業者に連絡すること。標準引越運送約款では、荷物の紛失や破損について消費者は荷物を引き渡された日から3カ月以内に連絡をしないと事業者の責任は消滅することになっているので、注意したい。

⑦ 事業者に苦情を申し出たにも関わらず対応されない、対応に納得がいかない場合には、消費生活センターに相談しよう。

正しい知識をもち、注意点を心得ておくのは消費者側に必要な姿勢だ。それによって、適切なサービスを提供する事業者を見極めることもできるだろう。良い事業者を選び、満足のいく引越しにしたい。