「『共助除雪で地域づくり』を考えるフォーラム」が東京で開催された

フォーラム会場には全国の雪に取り組む団体など関係者が集まり、ほぼ満席に。前半では、長岡技術科学大学の上村靖司教授による基調講演が行われた。上村教授は防災・減災、復興などの分野にも関わり、日本自然災害学会評議員、減災・復興支援機構理事などをつとめるフォーラム会場には全国の雪に取り組む団体など関係者が集まり、ほぼ満席に。前半では、長岡技術科学大学の上村靖司教授による基調講演が行われた。上村教授は防災・減災、復興などの分野にも関わり、日本自然災害学会評議員、減災・復興支援機構理事などをつとめる

11月下旬に各地で初雪が見られ、本格的な冬の到来を迎えた。降雪の状況は、暮らしに影響を与えることは言うまでもないが、とりわけ豪雪地帯に住む人にとっては日常生活を左右するものだ。雪が降り積もれば道路の雪かきや、屋根の雪下ろしといった除雪作業に追われ、大雪となればその負担は大きくなる。

そうした除雪作業中の事故が近年、社会問題になっている。消防庁のとりまとめによると、昨冬期(2017年11月~2018年3月)に除雪作業中に亡くなった人の数は102人。その背景には、高齢化の進行、人口減少が挙げられる。この死者102人の内訳をみても、65歳以上が86人。かつては家族や親族で除雪を担っていたのが、核家族化が進んだ今は、担い手の多くが高齢者となっている。除雪作業の担い手をどう確保するか? 豪雪地帯が抱えるこの課題に対し、家族、地域住民、市民団体、社会福祉協議会、行政、地域外からのボランティアなどが互いに助け合う「共助」での除雪が求められている。

そんな「共助除雪」をテーマにしたフォーラムが、2018年8月27日に東京で開催された(国土交通省主催)。全国から雪の課題に取り組む団体、行政、公的機関、民間企業のCSR担当者などが集まり、豪雪地帯の冬の課題解決に共助除雪がどんな効果をもたらすのか、さらには地域活性につながる可能性など、事例を交えて話し合われた。筆者も新潟県の雪深い地域の出身で、興味をもって参加した。豪雪地帯のみならず、雪があまり降らない地域のまちづくりにも通じる視点が得られたことを最初にお伝えしておきたい。

除雪ボランティアを養成する「越後雪かき道場」

上村教授による基調講演では、雪国の除雪の今昔(写真上)や、必要とされている要援護者支援の構造などの解説があった

上村教授による基調講演では、雪国の除雪の今昔(写真上)や、必要とされている要援護者支援の構造などの解説があった

前半は、長岡技術科学大学(新潟県長岡市)工学部の上村靖司教授による基調講演が行われた。上村教授は全国でも屈指の豪雪地帯である、新潟県北魚沼郡川口町(現・長岡市)の出身。現在、雪氷工学を専門とする研究者として活動するかたわら、新潟県中越地震や東日本大震災の被災地の復興支援に関わるなど、防災・減災に意欲的に取り組む。共助除雪でも、全国で支援活動を行なうキーパーソンである。

まず、1926(大正15)年の松岡俊三(山形県選出の衆議院議員)による雪国に対する救済運動(雪害救済運動)に始まって、1956(昭和31)年に雪寒法(積雪寒冷特別地域における道路交通の確保に関する特別措置法)が施行されるまでの国の雪対策の歴史が語られた。次いで、共助除雪が必要とされる要因や、共助除雪を地域活性化につなげている事例の紹介があり、そのひとつとして語られたのが、上村教授が理事をつとめるNPO法人中越防災フロンティア(新潟県長岡市)が取り組む「越後雪かき道場」。除雪ボランティアを養成するための1泊2日の除雪技能講習で、参加者は豪雪地に出向き、地元住民から雪かきの知識と技術を学ぶというプログラムだ。2007年冬にスタートし、2018年2月までに25ヶ所以上で延べ60回あまり開催。スコップやスノーダンプの使い方など基礎を学ぶ初級1246名、屋根からの雪下ろしを実践する中級220名、除雪リーダーを目指す上級109名の修了者を出した。

地域外からボランティアを受け入れることでもたらされる効果とは

「越後雪かき道場」の取り組みは、平成30年「防災功労者内閣総理大臣表彰」を受けた。新潟県内に限らず、長野県、山形県、富山県、兵庫県など開催地が広がっている「越後雪かき道場」の取り組みは、平成30年「防災功労者内閣総理大臣表彰」を受けた。新潟県内に限らず、長野県、山形県、富山県、兵庫県など開催地が広がっている

上村教授ら有志が「越後雪かき道場」に着手した当時、各地で自治体などによる除雪ボランティア受け入れは始まっていたが、「除雪経験者のみ受け入れる」としていたケースがほとんどだった。その壁をなくし、「誰でも受け入れる」としたのが「越後雪かき道場」。豪雪時に来てもらうのではなく、「災害豪雪が起きる前に雪かきの練習に来てもらう」という防災の観点を取り入れていたことも当時としては新しい試みだったという。

「きっかけは『平成18年豪雪(※)』です。その冬、新潟県、秋田県、北海道などで合わせて152人もの人の命が奪われました。大半が高齢者による除雪中の事故で、地域の過疎化、高齢化が進行し、除雪の人材が全然足りていないことを思い知らされました。一方で、新潟県が県内外で募っている除雪ボランティアの登録者は増えていました。しかし、現場で活動したのは約半数にとどまり、ボランティアを活用しきれていなかったのです。この現状をどうにかしたいと思い、生まれたのが『越後雪かき道場』でした。日本の人口の約85%が、非豪雪地帯とされる地域に住む人たちです。ならば、この非豪雪地帯の人に雪かきのスキルを教えて除雪の人材を育ててみたらどうだろう……そんな構想が湧いてきたのです」(上村教授)

立ち上げのとき、地元住民から聞こえてきたのは、「雪かきの経験のない役立たずを連れてきてどうするんだ」と否定的な声ばかりだったのが、いざ始まってみたら「都会の若者でも案外できる」「手伝ってもらって助かった」と、喜びの声に変わったという。道場参加者からも「雪かき体験は楽しかった」との感想が多く寄せられた。地元住民との交流も生まれ、地域に活気がもたらされたが、「越後雪かき道場」の成果はそれにとどまらない。
「地域のボランティア受け入れ能力が向上することの意義が大きいと気づきました。地域の外からボランティアがやってくることで、住民がひとつにまとまって対応を考えるようになったのです。地域ぐるみで雪害の対策や安全な除雪を話し合うようになり、雪の問題に限らず、地域で何か問題が起きたら住民の知恵や経験を結集して解決に向けて力を合わせていける力が備わっていく。そうしたさまざまな効果を実感しています」(上村教授)

「越後雪かき道場」は新潟県内のほか、県外の自治体でも実施され、今では兄弟プログラムも毎年開催されるにいたっている。

(※)平成18年豪雪:2005年12月から2006年2月にかけて発生した記録的な豪雪で、新潟県の山間部の津南町では400cmを超える積雪を記録した。

克雪体制づくりアドバイザー派遣制度が創設された

基調講演に続き、2018年度に国土交通省が創設した「克雪体制づくりアドバイザー派遣制度」の紹介があった。除雪体制づくりに関する専門的な知識や経験をもつ人を選定し、除雪について課題を抱える豪雪地帯の自治体や活動団体に対して派遣し、助言などを行うという制度である。今年度は19名が選出され、フォーラムでは各アドバイザーの紹介とともに、それぞれの主な活動内容が披露された。社会福祉協議会同士の広域連携、観光と結びつけての除雪ボランティア受け入れ、道路の排雪施設(流雪溝)の機能回復を核にしての地域再生、地域の自治会主導の除雪体制づくりなど、どれも興味深い。それぞれの活動内容については、この記事の最後に記載する「国土交通省:資料ダウンロードページ」に詳しい紹介があるので、ぜひご覧いただきたい。

★上左)克雪体制づくりアドバイザー派遣制度の概容について、運営事務局の日本能率協会総合研究所・塩見一三男氏より</BR>紹介があった</BR>★上右)各アドバイザーによる自己紹介では、主な活動内容が披露された。</BR>写真は滝沢市上の山自治会(岩手県)の事務局長、高橋盛佳氏</BR>★下右)各地の共助除雪活動では、女性もキーマンとして活躍している。</BR>写真は、アドバイザーに選出された日向コミュニティ振興会(山形県酒田市)の事務局長、工藤志保氏</BR>★下左)アドバイザーは西日本からも選出されている。</BR>写真はスノーレンジャー(島根県飯南町自治振興会)として活動する澤田定成氏★上左)克雪体制づくりアドバイザー派遣制度の概容について、運営事務局の日本能率協会総合研究所・塩見一三男氏より
紹介があった
★上右)各アドバイザーによる自己紹介では、主な活動内容が披露された。
写真は滝沢市上の山自治会(岩手県)の事務局長、高橋盛佳氏
★下右)各地の共助除雪活動では、女性もキーマンとして活躍している。
写真は、アドバイザーに選出された日向コミュニティ振興会(山形県酒田市)の事務局長、工藤志保氏
★下左)アドバイザーは西日本からも選出されている。
写真はスノーレンジャー(島根県飯南町自治振興会)として活動する澤田定成氏

共助除雪のリーダー育成はどうする? 盛り上がった意見交換会

★上)意見交換会では参加者からの本音の意見が飛び出し、盛り上がった</BR>★下)「雪国の未来を考える懇談会」委員の5名が登壇。写真左から中越防災安全推進機構・地域防災力センター長の諸橋和行氏、東北工業大学名誉教授の沼野夏生氏、北海道開発技術センター・理事の原文宏氏、鳥取大学地域学部教授の筒井一伸氏。そして、このフォーラムの基調講演講師をつとめた上村靖司氏

★上)意見交換会では参加者からの本音の意見が飛び出し、盛り上がった
★下)「雪国の未来を考える懇談会」委員の5名が登壇。写真左から中越防災安全推進機構・地域防災力センター長の諸橋和行氏、東北工業大学名誉教授の沼野夏生氏、北海道開発技術センター・理事の原文宏氏、鳥取大学地域学部教授の筒井一伸氏。そして、このフォーラムの基調講演講師をつとめた上村靖司氏

後半では、豪雪対策に精通する有識者で構成される「雪国の未来を考える懇談会(以下、懇談会)」委員5名を交え、参加者全員で意見交換会が行われた。さまざまな意見が行き交い、活発な話し合いとなった。なかでも熱が入ったのが、「地域の中で共助除雪のリーダーをどう育てていけばいいのか?」という議論。人材育成の苦労や行政との連携を求める声など、参加者から率直な声が聞かれた。

それに対し、懇談会委員からは次のようなアドバイスがあった。

■参考になる事例が、長野県飯山市の「雪堀りとうど塾」。私たちの「越後雪かき道場」でノウハウを学んだ後、長野県社会福祉協議会、飯山市社会福祉協議会の共催で独自に活動している。毎年、異なる集落を会場にしていて、必ず前年の会場のリーダーが参加し、体験談を語るというバトンリレーをしている。これは、持続的なリーダー育成につながるやり方だと思う。(長岡技術科学大学・上村靖司教授)

■災害対策基本法の一部改正(2013年)により、災害時に自ら避難することが困難な避難行動要支援者を対象にした名簿の作成が義務付けられている。災害には大雪も含まれる。そうした防災活動からのアプローチも、共助除雪のリーダー育成の切り口になるのでは?(中越防災安全推進機構・地域防災力センター長の諸橋和行氏)

■問題意識があり、いざとなれば動いてくれる人はいると思う。そんな隠れた人材を発掘するために、継続してワークショップなどを設けることが現実的な方法。また、農業など別の分野で地域振興の活動している人材を、除雪に活かす方法もあるだろう。(鳥取大学地域学部・筒井一伸教授)

意見交換会は終了時刻になっても議論が尽きなかった。

共助除雪を軸に、今後、どんなまちづくりが行われるのだろうか。期待とともに、雪とはあまり縁のない地域に住む人にもまちづくりのヒントとして着目してほしいと感じた。

<参考サイト>
※国土交通省:資料ダウンロードページ
http://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/chisei/kokudoseisaku_chisei_tk_000064.html

※克雪体制づくりアドバイザー派遣制度
http://www.mlit.go.jp/report/press/kokudoseisaku04_hh_000121.html

<参考書籍>
『雪かきで地域が育つ』(コモンズ刊/上村靖司・筒井一伸・沼野夏生・小西信義編著)

2018年 12月15日 11時00分