新駅名に“我が地元”の地名を!予定地周辺で住民活動が活発に!
“JR山手線30番目の駅”として、2020年頃までの開業を目指し『品川』~『田町』駅の間に設置が予定されている新駅。その駅名について、地元住民を中心に、様々な『新駅名“推し”論争』が起こっていることはすでに【HOME'S PRESS】内で紹介した通りだ。
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前回のレポート『山手線新駅名は何になる?!【1】』では、新駅名に『高輪』を推している高輪・三田・白金の線路西側エリア一帯の住民の署名活動について、『高輪泉岳寺前商店会』会長・石川進さんにお話をうかがったが、今回は線路東側に位置する芝浦・港南エリアの住民の代表者に、“新駅名への想い”について取材した。
新駅名論争については、一歩引いたスタンスで
客観的に受け止めている『芝浦』住民

「へぇ、人気投票では『芝浦』が3位なんですか。でも、私個人的には、新駅ができるあたりは『芝浦』ではないと思いますけどねぇ(笑)」と語るのは、芝浦三・四丁目町会長を務める岩藤文彦さん(75)。芝浦で暮らし、働き続けて70年、この街の変遷を長く見守り続けてきた人物だ。
「新駅の駅名について、『高輪』の署名活動が盛り上がっているという話は聞いていますよ。でも、我々『芝浦』の地元住民は、特に活動はおこなっていません。芝浦はどちらかというと『田町』駅に属しているイメージがありますからね。
もともと『田町』駅というのは、山手線の駅の中でも“一番開発が遅れた駅”と言われていたんです。15年ほど前からぼちぼち開発が始まり、最近ようやく街として成熟しかけてきたところ。なので、新駅は“隣の街の話”という感じで、新駅のために『芝浦』という名前を売り出すことには、我々地元住民はあまり関心が無いというのが正直なところです。
もちろん、新しい駅名が『芝浦』になってくれたら、長年親しんできた地元の地名が全国的にも有名になるので嬉しいとは思います。ただ、駅周辺や芝浦地区の開発が急激に進んで人の流れが変わることで、昔ながらの地域のつながりが薄れてしまったり、地元のお祭りやイベントがスムーズにできなくなってしまうのではないかという不安はありますね」(岩藤さん談)。
今回お話をうかがった岩藤さんの他にも、地元商店街の店主の方たちにヒヤリングをおこなったが、「新駅に『芝浦』を推したい」という意見は、意外にもまったく聞かれなかった。
どうやら、駅名人気投票では、「都内に『芝浦』という駅名が他に無いため認識しやすい」「SHIBAURAという発音が外国人に聞き取りやすく発声しやすい」など、地元外部の第三者的な見解から『芝浦』を推す票が集まったように見受けられる。
高輪・芝浦・港南…地域が一丸となって、
今後の街づくりにつなげられるような『新駅名』を期待

「新駅ができると聞いて、私自身は最初に『泉岳寺』という駅名を思い浮かべました」。品川駅港南口町会長の谷田睦二さん(57)は、生まれも育ちも高輪、現在の自宅は品川、職場は港南であることから、縁の深い土地への新駅誕生に期待を寄せている一人だ。
「これは町会長としてではなく、あくまでも個人的な意見ですが、五輪の開催に合わせて新駅が誕生するのなら、外国人観光客の誘致も視野に入れて『江戸情緒』を感じるような駅名が良いと思ったんです。
ただ、赤穂浪士の墓で知られる『泉岳寺』という駅名をつけるのは、泉岳寺側の意向で大変難しいと聞いていましたので、それなら、都営浅草線『泉岳寺』駅のそばにある『高輪大木戸跡』にちなんで、『江戸大木戸』駅という案はどうかと議論をしていたんですよ(笑)」(谷田さん談)。
『高輪大木戸跡』というのは、東海道から江戸府内へ入る際の『南の入口』とされていた木戸の跡地で、現在も江戸時代当時のままの巨大な石垣の一部が残されている。
「地元の地名をそのまま駅名にするのも良いとは思いますが、新しい駅名にロマンがあると“今後の街づくりのコンセプト”にもつながりやすくなりますよね?
新しい駅が誕生すると、その周辺の再開発に古くからの地元住民が取り残されてしまうケースも多いと聞きますから、今回は“新駅を中心にして、地元住民がこれからどんな街づくりをおこなっていくべきなのか”を行政と一緒に考えられるような、そんな夢のある『駅名』に決まると良いなぁと、個人的には考えています」(谷田さん談)。
「できれば、高輪も、芝浦も、港南も、ご近所同士が仲良く、ケンカなくまとまってほしい」と語る谷田さんだが、最近になって、新たに“港南を新駅名にしよう”という活動が地元有志らによってスタートしたことを知り、「地元の皆さんが活動を始めたのなら、町会としても協力したい」と考えるようになったそうだ。
新駅名に“勝ち・負け”はない!
地元愛を育むことこそが活動の狙い、と語る『港南』住民

“『港南』推し”の活動をスタートさせたのは、地元のジュニアサッカークラブ『港南FC』のコーチを務めている宮崎一栄さん(53)だ。
宮崎さん自身は港南小学校・港南中学校の卒業生という“生粋の港南っ子”。2006年、地元貢献のために未就学児童~小学校6年生を対象としたサッカークラブ『港南FC』を立ち上げ、現在は約170名の子どもたちが在籍しているという。
「私が子どもの頃の『港南』は、はてしなく空地が広がり、食肉市場から逃げ出した牛や豚が街なかを走り回っているようなところでした。しかし、いまや『港南』は高層マンションが林立し、多くのファミリーが暮らす人口増加地域になっています。『港南FC』の練習場所でもある港南小学校は、来年度には生徒数が1,000名を超えると言われていて、都内で5番目に生徒数が多いマンモス校になりました。
いま『港南』の街を歩いていると、子どもたちの姿が多く、活気があって街全体がイキイキとしています。そんな様子を見ていると、“この子たちにとっての故郷は、ここ『港南』なんだなぁ”と、改めて感じます。港南で生まれ育った子どもたちが、『港南』という故郷を将来に渡って誇りに思えるように…そんな願いから、“新駅名に我が街『港南』を推そう”という活動をスタートさせたんです」(宮崎さん談)。
宮崎さんは『港南FC』や地元スポーツクラブに在籍する子どもたちの保護者、PTAの有志らと共に新駅名についての活動をスタート。今後は署名運動を含め、『港南』駅誕生に向けて各方面へのPRをおこなっていく予定だという。
「本当のところは、『港南』という新駅名にこだわっているわけではありません。子どもたちや保護者の皆さんが団結してひとつの目標に向かうことによって、地域の結束力や地元愛がより深まってくれたら…それが私の一番の想いです」と宮崎さん。「港南を“故郷として誇りが持てる街”に育てたい」と、熱く語る姿が印象に残った。
2020年に向けて、高まる新駅開業機運
駅前大規模開発、地域活性、商店街再生、人口増加、都市機能と風景の近代化など、様々な功と罪をもたらすであろう新駅の誕生。山手線の30番目の新駅名が決まるのは、通例では開業の1~2年前、2018年頃になりそうだという。新駅周辺の地元では、新駅名の決定に向けて様々な思惑とともに多彩な住民活動が広がっているが、こうした地元住民の活動も新駅の誕生を華々しく盛り立ててくれるのかもしれない。
さて、あなたなら、『何駅推し』に一票を投じるだろうか?
2015年 01月20日 11時07分