1回目、2回目、3回目…修繕の負担はどんどん将来へ先送りに

築14年。自宅マンションの1回目の大規模修繕委員となった筆者が、自身の体験談を元に定期的にお届けしている『大規模修繕レポート』。4回目の今回は、1回目の大規模修繕では“修繕不要”の判断でクリアできたとしても、2回目、3回目の大規模修繕にその課題を先送りすることになりそうな共用設備についてご紹介しよう。

軟水を使用する日本のマンションでは、
経年と共に『配管』がダメージを受けやすい

▲マンション管理士であり一級建築士の岡本佳久さん(株式会社岡本建築事務所代表)。「新築当初は、若い子育て世代が暮らしていたマンションも、経年と共にそこで暮らす人たち同様年を取っていきます。1回目、2回目の大規模修繕で、丁寧かつ確実な補修をおこなうことがマンションの資産性の維持にもつながります」と岡本さん▲マンション管理士であり一級建築士の岡本佳久さん(株式会社岡本建築事務所代表)。「新築当初は、若い子育て世代が暮らしていたマンションも、経年と共にそこで暮らす人たち同様年を取っていきます。1回目、2回目の大規模修繕で、丁寧かつ確実な補修をおこなうことがマンションの資産性の維持にもつながります」と岡本さん

大規模修繕のコンサルティングを多数手がける岡本建築事務所(AAI)の岡本佳久氏によると、1回目の大規模修繕と2回目以降の大規模修繕では、修繕内容や1世帯あたりのコストも大きく変わってくるのだという。

「築10~15年を目安に実施する1回目の大規模修繕の場合は、平均して1世帯あたり100万円程度が見込まれますが、築20~25年目安となる2回目の大規模修繕の費用は、1世帯あたり120万円程度となります。


特に、毎日の生活に大きな影響を及ぼすような修繕のポイントとしては、給水・排水をおこなう『配管』部分ですね。

もともと日本のマンションというのは、ヨーロッパの集合住宅をお手本にして作られてきましたが、ヨーロッパと日本の絶対的な違いは“水質”にあります。カルシウム成分が多く含まれた硬水を生活水として使ってるヨーロッパでは、その成分によって鉄管がコーティングされ、強度が衰えにくいのですが、軟水を使っている日本では配管部分に錆がつきやすく、長年の使用による塩素成分の侵食で穴が開いてしまうこともあります。

最近の物件では、劣化部分が広がらないよう防食性の高いビニルライニング鋼管を採用していますが、それでもやはり劣化は進みます。

配管というのはマンションの大動脈のようなものですから、2回目の大規模修繕では重要な補修ポイントのひとつとなります」(岡本さん談)。

入居当初は便利だったはずの設備が、大規模修繕の厄介者に?!

▲マンションで生活を送る上で、必ず迎えることになる『大規模修繕』。国土交通省では12年サイクルでの大規模修繕を推奨しているが、実際には修繕費用の資金不足等の影響を受け、修繕サイクルが先延ばしとなるケースも多い▲マンションで生活を送る上で、必ず迎えることになる『大規模修繕』。国土交通省では12年サイクルでの大規模修繕を推奨しているが、実際には修繕費用の資金不足等の影響を受け、修繕サイクルが先延ばしとなるケースも多い

また、2回目以降の大規模修繕では、意外な設備が“厄介者”となるケースがあるという。

ひとつめは『エレベーター』。大きさや建物の階数にもよるが、エレベーター1台あたりに必要な補修費用は2000万円にも及ぶのだそうだ。

ふたつめは『集合玄関機』。つまりオートロックの操作盤のこと。この操作盤の補修費用は、住戸数100世帯程度のマンションの場合で1000万円ほどが見込まれる。


「エレベーターも、オートロックも、定期的に点検をおこなっていれば永遠に使い続けられるイメージがありますが、家電製品と同じように経年劣化は進みますから、取替えが必要になります。特に集合玄関機は、まず『室内のモニター画面の映りが悪くなる』、その後『解錠遠隔操作』ができなくなる等の様々な不具合が出た後、ついに使えなくなってしまった…というケースが築20年前後のあたりからちらほらと出始めます。

こうなると、集合玄関機だけでなく、室内のモニターや各住戸の鍵もすべて取り替えとなりますから、莫大な費用がかかるわけです」(岡本さん談)。

入居者の高齢化と共に、必要だったはずの設備が不要になるケースも!

▲現在はまったく不自由なく使える『窓』も、経年とともにサッシュのゆがみが生じて隙間風が発生することも。各住戸のサッシュの取替えは3回目の大規模修繕で実施することが多いという▲現在はまったく不自由なく使える『窓』も、経年とともにサッシュのゆがみが生じて隙間風が発生することも。各住戸のサッシュの取替えは3回目の大規模修繕で実施することが多いという

さらに築年数を経て、3回目(築30~40年目安)の大規模修繕を迎えた場合には、『各住戸のサッシュ(窓枠と窓ガラス)の交換』や『耐震補強工事』に加え、集会室・エントランス等の共用スペースの大規模なリフォームを実施するケースが多くなる。

「集会室やエントランスなどの“見た目にもわかりやすい部分”は、リフォームをおこなってキレイにすることで、入居者の修繕満足度は非常に高くなります。しかし、その分費用が莫大なものになりますから、従来の修繕積立金だけではまかないきれなくなるケースも多く見られます。

一世帯あたり50~100万円ほどの負担金が発生することもありますので、1回目の大規模修繕を終えた後で、修繕積立金の見直しをおこなったほうが良いでしょう」(岡本さん談)。


また、この頃大きな課題となるのが巨大な『立体駐車場』や『機械式駐車場』について。

「入居当時は、子育てやお仕事で欠かせなかったマイカーを、高齢化と共に手放す人が増えるのです。すると、駐車場の空き区画が増えてしまって、管理組合の収入が減少してしまう…。駐車場の月極賃料も管理組合にとっては立派な収入源ですから、それが入ってこなくなると、管理組合の収支バランスが崩れてしまいます。

ちなみに、『立体駐車場』や『機械式駐車場』の寿命は約25年といわれていますが、駐車設備を交換するのに1台あたり約100万円ほどかかります。この負担感は、駐車場を使っている人と、使っていない人の間で大きな格差が発生するので、本来は駐車場の修繕費用は『大規模修繕費用』ではなく、『駐車場利用料』の中に25年目以降の補修費用を考慮した数字を計上し、受益者負担とするのが望ましいですね」(岡本さん談)。

入居当初の物件グレードを持続し、マンションという名の財産を守るためには
ゆとりをもった大規模修繕計画が必要!

このほかにも、維持・管理費用が入居者の負担となるため、植栽豊かな屋上庭園を撤去したり、天然石張りのエントランスが雨風によって侵食されたものの、予算的な都合で天然石での補修ができず、やむを得ず安価な擬石に変更するなど、物件クオリティの『グレードダウン』の事例も挙がっている。

今回、岡本さんからお話をうかがって、入居当初の物件グレードを持続するためには、適正以上にゆとりをもった『大規模修繕計画』を立てることと、その計画に対する住民たちの理解が不可欠なのだとつくづく実感した。


さて、次回【買う時には誰も教えてくれない大規模修繕⑤】では、『大規模修繕』がどのように進められていくのか?そのステップと注意点についてレポートする。

■取材協力/AAI 愛知建物監理協同組合・岡本建築事務所

2014年 06月09日 14時44分