持ち家率は単身男性の約2倍、働く単身女性のマンション購入事情

▲総務省統計局が平成22年に発表した「平成 20 年住宅・土地統計調査」追加集計の統計トピックスより引用したデータ。単身女性の持ち家率は35歳から増えはじめ、ピークは45歳~49歳となっている。※グラフをクリックすると大きな画像を確認できます▲総務省統計局が平成22年に発表した「平成 20 年住宅・土地統計調査」追加集計の統計トピックスより引用したデータ。単身女性の持ち家率は35歳から増えはじめ、ピークは45歳~49歳となっている。※グラフをクリックすると大きな画像を確認できます

総務省統計局が5年ごとに実施する『住宅・土地統計調査』によると、日本の世帯構成で最も多いのは単身世帯。中でも、単身女性は35歳を過ぎると持ち家共同住宅に暮らす人が増えはじめ、持ち家率のピークとなる40代後半では、「自分でマンションを買い、そこでひとり暮らしをしている女性」が単身男性の2倍近くになっている(平成22年発表/追加集計統計トピックスより)。

結婚をする、家を買う…こうした人生の決断の時を躊躇しがちな単身男性に対し、イマドキの働く単身女性たちは男たちの決断を待つことなく、自分自身で人生を切り開いているようだ。

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このように、単身女性のマンション購入が増加傾向にあるなか、東京・恵比寿に『女性にやさしい不動産屋さん』があると聞いて訪れてみた。

単身女性が住まい選びに求めているものは『ワクワクすること』

「恵比寿という土地柄もあると思いますが、弊社の場合は単身女性の来店も多いので、いわゆる“街の不動産屋”らしくない明るい店舗づくりを心がけています」と語るのは、株式会社アイミリーの小川喜寛社長。社長こそ男性だがスタッフの7割は女性で、明るい店内にはウッディなインテリアとカラフルな家具が並んでいる。

「もともと僕自身は前職で不動産コンサルタントの仕事をしていたのですが、不動産業界というのはいまだに昔気質で男社会から抜けきれていないんです。コンサル時代から顧客である不動産会社を見てきて、“どうして不動産業界は男性営業マンだらけなんだろう?本来はもっと女性が活躍できる業界だし、女性目線のサービスや提案を求めているお客様も多いはずなのに…”と不思議に思っていたので、じゃあ自分ではじめようと会社を立ち上げました」(小川社長談)

開業から3年、『女性にやさしい不動産屋さん』をテーマに掲げ、多くの女性顧客と接する中で小川社長はふと気づいたことがあった。それは、“女性たちはマンションを買うときのワクワク感を大切にしている”ということだ。

「女性のお客様は、男性よりも現実主義的な考えでマンション購入を検討する傾向が強いのですが、実際に住まい探しをはじめると理屈よりも“好き”とか“ワクワクする”などの女性特有の感性を大切にする方が多く、中には、“とにかく物件をいっぱい見たい!”という希望をお持ちの方もいらっしゃいます。ただ、“あれもこれも見すぎてしまうと迷って買えない”というのは不動産業界のセオリーです。住まい選びにワクワクしていただくことは良いことなのですが、ただワクワクするだけで決断できないようでは時間の無駄になりかねません。

そのワクワクする夢を実現させるためにはどうしたら良いか?について一緒に考え、目的を明確化すれば、女性のお客様もより前向きに住まい購入の第一歩が踏み出せるのではないか…そこで、弊社の女性スタッフが半年かけて制作したのが、女性向けのカウンセリングブックです」(小川社長談)

▲アイミリーの小川喜寛社長(左)と『ごきげん家探しBOOK』の制作責任者、船島湖菜美さん(右)。<br />「女性のお客様は、とりとめもなくお喋りをしながら住まい探しの希望条件をお話される方が多いので、<br />気楽な雑談の中から情報整理をしてまとめる作業が必要だと感じ、カウンセリングブックを作りました」と船島さん▲アイミリーの小川喜寛社長(左)と『ごきげん家探しBOOK』の制作責任者、船島湖菜美さん(右)。
「女性のお客様は、とりとめもなくお喋りをしながら住まい探しの希望条件をお話される方が多いので、
気楽な雑談の中から情報整理をしてまとめる作業が必要だと感じ、カウンセリングブックを作りました」と船島さん

まずは『家を買う目的』を明確化し、論理的に考えること

▲「女性の方も楽しく読んでいただけるように、色や手触りにも工夫をしました」と船島さん。欄外には購入金額の目安など、“おしつけがましくない”住まい探しのマメ知識も掲載されている。このBOOKは顧客にプレゼントされるが、書き出した内容は顧客の了解を得た上でコピーを取り、病院のカルテのようにスタッフ間ですぐに要望の引継ぎができるよう保管しているという▲「女性の方も楽しく読んでいただけるように、色や手触りにも工夫をしました」と船島さん。欄外には購入金額の目安など、“おしつけがましくない”住まい探しのマメ知識も掲載されている。このBOOKは顧客にプレゼントされるが、書き出した内容は顧客の了解を得た上でコピーを取り、病院のカルテのようにスタッフ間ですぐに要望の引継ぎができるよう保管しているという

『ごきげん家探しBOOK』とタイトルがつけられたカウンセリングブックは全15ページ。パラパラとめくると、『いまの住まいを振り返ろう』『理想の暮らしをイメージしてみよう』『疑問や不安なことを解消しよう』という書き込み形式の3つのワークテーマが掲げられている。

「女性のお客様は、自分の思いを語るのは得意でも、具体的な条件として落とし込むのが苦手という方が結構いらっしゃいます。そこで、思いついたことをどんどんこのBOOKに書き出してもらい、その内容をわたしたちスタッフがカウンセリングする形で、お客様の住まい選びの条件をひとつずつ明確化していくのです。“自分で書いてもらう”というところもポイントで、女性の場合は間取り好きな方が多いですから、イラスト風に間取りを描いていくうちに、お客様ご自身が理想の住まいの条件に気付かれることもあります」(船島さん談)

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実は、筆者は単身女性向けのマンション購入セミナーの講師を担当する機会が度々あるのだが、「理想の住まいの条件を3つ挙げてみてください」と問いかけると、その場で悩みこんで3つ答えられない人が意外に多い。単身女性たちは「もしも、自分が結婚しなかったときは、将来どうやって暮らしていくのか?このまま賃貸マンションの家賃を払い続けるのはもったいないのではないか?」という漠然とした不安感と、「近々結婚が決まり、彼が用意してくれた家で暮らすことになるかもしれないから、まだ家のことは真剣に考えなくても良いかも…」という期待感の両方を抱えているため、ファミリー層よりも住まい購入の目的を明確化しにくい傾向にあるようだ。

「これは単身の方だけでなく、ディンクスやファミリーの方にとっても大切なことなのですが、納得できる住まい探しをするためには、まず『どんな目的のために家を買うのか?その目的を達成するためにはどんな家を買えば良いのか?』ということを論理的に考えなくてはいけません。その肝心な情報整理の段階でつまづいてしまわないように、BOOKの中に書き込んでいく作業を経て、お客様にはワクワクして頂きながらもご自身の目的と向き合って頂きたいと思っています」(小川社長談)

『MAST』『WANT』『+α』の仕分け作業が住まい選びの第一歩

このカウンセリングブックの中で特に印象的だったのは、
『MUST(絶対に外せない最重要条件)』
『WANT(できれば叶えたい重要条件)』
『+α(あったら嬉しいなという程度の条件)』
の3つの振り分け作業についての項目だ。

「女性のお客様の場合は、不動産のプロの視点から見ると『WANT』でも良い内容なのに、思い込みで『MUST』にしてしまって条件のハードルを上げることで、なかなか理想どおりの物件が見つからないというケースが多々あります。

例えば『駅徒歩5分以内』という条件。曲がりくねった暗い裏道を歩く3分と、まっすぐな明るい道路を歩く7分を比較すると、実際には7分の道のりのほうが近くに感じることもありますし、駅から徒歩5分の物件でも、スーパーが帰り道と逆の方向にあったとしたら結局遠回りになるわけですから、帰り道に商業施設がある徒歩7分の物件のほうが快適に暮らせる場合もあります。

こうした女性のお客様の『MUST』と『WANT』を仕分けして、ご本人が納得できるように適正に振り分けるためには、カウンセリング能力に加えて“街のことを熟知している”とか“周囲の物件情報をしっかり把握している”など、営業担当者の高いスキルも必要になりますから、我々スタッフも日々勉強が欠かせません」(小川社長談)

▲明るいインテリアでまとめられたアイミリーの店内では、女子会のような雰囲気で顧客との会話も弾む。<br />子ども連れでも来店できるようキッズスペースやおむつ替えスペースも用意されている▲明るいインテリアでまとめられたアイミリーの店内では、女子会のような雰囲気で顧客との会話も弾む。
子ども連れでも来店できるようキッズスペースやおむつ替えスペースも用意されている

物件選び、不動産会社選びをする前に、担当者との相性も見極める

▲「女性のお客様は“自分では買えない”と思いこんでいる方が多いのですが、健康に働き続けている方なら住まいを買うことは決して夢ではありません。不動産会社というとちょっと入りにくいイメージがあると思いますが、カウンセリングを受けに来るだけでもいいので、まずは住まいへの興味を持ってもらいたいですね」と船島さん▲「女性のお客様は“自分では買えない”と思いこんでいる方が多いのですが、健康に働き続けている方なら住まいを買うことは決して夢ではありません。不動産会社というとちょっと入りにくいイメージがあると思いますが、カウンセリングを受けに来るだけでもいいので、まずは住まいへの興味を持ってもらいたいですね」と船島さん

ちなみに同社では、個人の営業成績を重視するはずの不動産業界には珍しく『ダブルコンサル制』を導入しており、男性スタッフ・女性スタッフ・子育て中の女性スタッフ・単身の女性スタッフなど、それぞれキャラクターの異なる営業スタッフが2名体制でチームを組んでひとりの顧客を担当する。

この『ダブルコンサル制』によって、スタッフそれぞれの得意分野を生かしながら顧客のカウンセリングをおこなうことができるほか、スタッフ同士が「顧客にとって本当に優先すべき『MUST』な条件は何か?」「自分たちの提案が押し付けになっていないか?」などを客観的に議論することで、より丁寧な物件提案が可能となる。また、女性が住まいを選ぶ際には特に、営業担当者との『相性』や『信頼関係』も重要な決め手となるため、2名体制にすることで顧客からの信頼感にもつながりやすいという。

「従来の住まい選びでは、“気になる物件を選んで、その物件を扱っている不動産会社で契約する”というのが一般的な流れでしたが、弊社に来店してくださったお客様には、まず『家を買う目的』をご本人に自覚してもらい、次に『自分と相性の良い不動産会社・担当者』を見極めていただき、『物件を決めるのはそのあとです』とお伝えしています。もちろん、願わくばうちの会社で契約してほしいというのが本音ですが(笑)、“他の会社へ行くときにも、家を買う目的を忘れないようにこのBOOKを持って行ってくださいね。必ず役に立ちますので!”と伝えています」(小川社長談)

こうして小川社長の話を聞いていると、あまりにも寛容すぎる『女性にやさしい不動産屋さん』なのだが、実際には多くの女性顧客がこのカウンセリングに満足し、他の会社へ行ってもまた同社へ戻ってくるというから、顧客にとっても、同社にとっても、ちゃんと“Win-Winな仕組み”になっているようだ。

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昭和の頃は“家は男性が用意するもの”というイメージが強かったが、男女雇用機会均等法の施行から30年を経たいまは“女性だって自分で家を買う時代”になった。ただし、洋服やバッグを衝動買いするのとは違い、『住まい』という名の大きな資産を得るためには、あとあと後悔することがないように『家を買う目的』と見つめ合う作業が必要になる。

自分が『何を目的に家を買いたいか?』の答えに迷っている女性読者の方は、カウンセリングブックの内容を参考にして、自身で答え探しをおこなってみてはいかがだろうか?

■取材協力/株式会社アイミリー
https://www.i-mily.co.jp/

2017年 10月25日 11時01分