芝田1丁目で始まった大規模再開発
大阪・梅田は、JRと阪急、阪神、Osaka Metroが乗り入れる西日本最大のターミナルだ。百貨店や商業施設、オフィスビルが密集し、関西の経済と消費を支えてきた中心地でもある。
その梅田で今、大規模な再開発が動き出している。舞台は阪急大阪梅田駅近くの「芝田1丁目」エリアだ。
2025年1月、60年以上にわたって親しまれてきた大阪新阪急ホテルが歴史に幕を下ろし、同年12月中旬から解体工事がスタート。ホテル跡地に加え、阪急ターミナルビルの建替えや阪急三番街の全面改修までを一体で進めるのが「芝田1丁目計画」だ。
完成目標は2035年頃という長期プロジェクト。10年後の梅田は、住む街としてどう変わるのか。現時点で見えてきた全体像を見ていこう。
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「梅田ビジョン」の中心となる芝田1丁目計画
「芝田1丁目計画」の中身に入る前に、その背景にある「梅田ビジョン」について少し触れておきたい。これは阪急阪神ホールディングスが2022年に発表したもので、梅田を「世界と関西をつなぐ国際的交流拠点」へと進化させていくための長期的な指針となっている。
この梅田ビジョンのもとで進む大型プロジェクトはいくつかある。2022年に名称が変わった大阪梅田ツインタワーズ・サウス、2024年から段階的にまちびらきが進むグラングリーン大阪などがその代表例だ。そして、これらと並ぶ重要プロジェクトとして位置づけられているのが「芝田1丁目計画」である。
計画地は、阪急大阪梅田駅近くの芝田1丁目エリア。具体的には、3つの施設を一体的に作り替える大規模な計画だ。
1つ目は、2025年1月に営業を終えた旧大阪新阪急ホテルの跡地活用。2つ目は、阪急電車の駅と直結している阪急ターミナルビルの建替え。そして3つ目が、1969年に開業した商業施設「阪急三番街」の全面改修である。
スケジュールは2030年頃の着工、2035年頃の完成を目標としている。今から約10年かけて取り組む長期プロジェクトであり、関西の都市開発の中でも特に注目すべき動きと言えるだろう。
動き出した旧大阪新阪急ホテルの解体工事と駅リニューアル
「芝田1丁目計画」は完成が2035年頃という長期計画ではあるが、現地ではすでに整備が始まっている。
まず動き出したのが、旧大阪新阪急ホテルの解体だ。2025年12月中旬に着手され、解体完了は2028年秋頃を予定している。
旧大阪新阪急ホテルの跡地に何が建つかは、現時点では公式に発表されていない。ただし阪急阪神ホールディングスは、跡地と駅ビルを一体で開発して、高層ビルを新設する方向で検討を進めていることを明らかにしている。
並行して、2026年1月からは阪急大阪梅田駅のリニューアル工事もスタートしている。
最初に着手されたのは、列車の停止位置をホーム奥方向に約14m移動させる工事。神戸線ホームは2026年1月に着工、宝塚線ホームは同年春、京都線ホームは同年秋に順次実施される予定で、これによって3階改札口や駅構内のレイアウトを見直す余地が生まれることになる。
阪急大阪梅田駅のリニューアルでは、大きく3つのテーマが掲げられている。
1つ目は「すべてのお客様に居心地の良さを」というコンセプトで、多機能トイレや授乳室、混雑や音に敏感な人が気持ちを落ち着けられる「カームダウンスペース」などの設備拡充が計画されている。
2つ目は「つながる駅、広がるまち」。駅と周辺エリアの動線を整え、回遊しやすい街への進化を狙う。
3つ目は「ここにしかない風景」。阪急電車の象徴であるマルーンカラーの車体が並ぶ阪急らしい風景を残しつつ、新しい魅力を加えていくという考え方だ。
他の工事としては、茶屋町口改札のエレベーター設置が2026年春から始まり、バリアフリー化が一段と進む。さらに2031年頃からは、全ホームへ可動式ホーム柵を設置する工事も順次着手される予定だ。
そしてもう一つ、芝田1丁目計画で変わるのが阪急三番街だ。
阪急三番街は、1969年に阪急大阪梅田駅の高架下と地下に開業した大規模商業施設である。地下フロアを流れる「川が流れる地下街」のコンセプトはオープン当時から話題を呼び、半世紀以上にわたって梅田の待ち合わせスポットとして親しまれてきた。
現在も飲食店やファッション、雑貨など200以上の店舗が集まる人気施設だが、芝田1丁目計画ではこの三番街も含めて全面的に改修される。具体的な内容はこれから発表されていくとみられており、注目しておきたいポイントの1つだ。
芝田1丁目計画と同時に進むプロジェクト
梅田エリアでは、芝田1丁目計画と同時に別のプロジェクトも進んでいる。
なかでも大きな話題を呼んでいるのが、2031年春に開業予定の「なにわ筋線」だ。大阪駅と中之島、難波を地下で結ぶ新路線で、これが完成すれば、梅田エリアから関西国際空港へのアクセスがスムーズになる。新大阪駅とのアクセスも改善され、新幹線から関空への乗り継ぎが便利になるだろう。
JR大阪駅の北側で進む大規模再開発「グラングリーン大阪」内に整備されている「うめきた公園ノースパーク」の動きにも注目したい。グラングリーン大阪は、オフィスやホテル、商業施設、そして大きな公園が一体となった複合開発で、2024年9月から段階的にまちびらきが進んでいる。
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その公園部分の北側エリアにあたる「うめきた公園ノースパーク」では、2027年春の全体開園に先立って、森や水景を備えた約0.9ヘクタールの「うめきたの森」エリアが2026年11月20日に先行オープンする。約3mの落差がある滝なども設けられ、駅前に大きな森が現れることになる。
なにわ筋線の開業、うめきた公園の全面オープン、そして芝田1丁目計画の完成。これらが2030年代に重なって、梅田は「歩いて楽しいまち」へと姿を変えていく。水と緑、そして街を歩いて楽しめる回遊性が、新しい梅田のキーワードになりそうだ。
■関連記事:画一的な都市開発から脱却した「グラングリーン大阪」の事例│シリーズ「センシュアス・シティのつくりかた」第1回
公示地価で見る梅田エリアの今
国土交通省が公表した2026年公示地価のデータを見ると、梅田エリアがある大阪市北区の地価が大きく上昇していることがわかる。
大阪市北区の商業地の上昇率は前年比+14.0%と二桁の上昇率となった。 住宅地でも上昇は明らかで、大阪市全体の住宅地は2026年に前年比+6.5%、北区は9.2%の上昇率を記録している。
価格を押し上げている理由は、大きく3つあると考えられる。1つ目は芝田1丁目計画をはじめとする再開発への期待。2つ目はインバウンド需要の回復。3つ目は、2031年春に開業予定のなにわ筋線への期待だ。これらが重なり、当面は地価の上昇傾向が続く可能性が高い。
土地の値段が上がれば、マンションの価格も高止まりしやすくなる。つまり、梅田エリアで住宅購入を検討している人にとっては、ハードルが上がる時期が続くのは避けられないだろう。
住むならどこ?梅田と隣接エリアを比較
梅田エリアの魅力は、JR、私鉄、地下鉄が集まる交通利便性にある。グランフロント大阪やルクア、グラングリーン大阪などの大型施設も身近にあり、暮らしの楽しみも多い。
一方で、梅田エリアは分譲価格・家賃水準が大阪市内でもトップクラスで、住宅供給そのものが少なく、生活感のある商店街やスーパーなどの商業施設は限られている。
そこで住まいの選択肢に上がるのが、梅田に隣接するエリアだ。梅田から東に徒歩約10分の場所にある中崎町は、古い長屋や町家を活かしたカフェや雑貨店が並び、独特の落ち着いた空気が魅力。徒歩で梅田に通える距離感ながら、街の空気感はがらりと変わる。
中崎町からさらに東に進んだ先にある天満エリアには「天神橋筋商店街」という日本一長いとされる商店街があり、日用品などが比較的安価に手に入り、生活コストを抑えやすいのが特徴だ。JR天満駅や地下鉄天神橋筋六丁目駅から梅田まで電車で数分という近さも魅力の1つである。
梅田のすぐ西隣に位置する福島エリアは、JR福島駅から大阪駅まで電車で1駅。徒歩や自転車でも十分通えるエリアである。近年は大規模マンション開発が進みファミリー層の人口が増えており、グルメ激戦区として個性的な飲食店も多い。
便利さを最優先に梅田に住むのか、それとも梅田の隣に住むのか。芝田1丁目計画が動き出した今、自分のライフスタイルに合った選び方が大切になってくるだろう。
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変化する梅田とどう向き合うか
芝田1丁目計画の完成は2035年頃とまだ先だが、それまで梅田は段階的に進化していく。2027年春にうめきた公園が全面オープンし、2031年春にはなにわ筋線が開業、阪急大阪梅田駅のリニューアルも段階的に進む。
梅田エリアで住まいを選ぶなら、今の梅田だけでなく、これから変わっていく梅田の姿も頭に入れておくべきだ。街がこれからどう変わるのかを理解したうえで、自分のライフステージや予算に合った選択をしたい。












