どんなに優れたマンションでも劣化は免れない

最近は住宅の長寿命化が社会的に要求されるようになり、建物メンテナンスへの関心も高まっている。マンション躯体の寿命は90年とも100年以上ともいわれるが、それを実現するためには定期的な補修が必要なほか、設備などを一定期間ごとに取替えることも欠かせない。超高級マンションだろうと、どんなに優れた会社が丁寧に造ったマンションだろうと、経年劣化を免れることはできないのだ。

鉄部の塗替えは、雨に濡れる部分が4年ごと、雨に濡れない部分でも6年ごとに実施するのが望ましいとされるが、外壁やコンクリート部分の補修、屋上防水の補修など、大掛かりになりがちな工事はおおむね12年周期が目安とされる。これらの工事をまとめて実施するのが「大規模修繕工事」と呼ばれるものだ。その工事費用はマンションの規模などによって数千万円から数億円にのぼるため、必要となってから集めようとしてもうまくいかない。そこで毎月の管理費と合わせて各区分所有者から修繕積立金を徴収し、将来の出費に備えておくことが重要になる。

エレベーターや機械式駐車場など、20年から30年程度で取替えが必要とされる設備では、その台数や規模が大きいほど莫大な費用がかかるだろう。修繕費用の中で最も大きな割合を占めるのは外壁に関する工事だ。次いで給水設備、屋根防水などとなっている。一方で、最近の新築マンションでは更正工事が不要な給水管・排水管を使用するなど、修繕費用を軽減する取組みも行われている。また、20年、30年と経つうちに設備が陳腐化したり時代のニーズに合わなくなったりする場合もある。そのようなときに新しい共用設備を導入する費用も修繕積立金で賄うことになるため、資金に余裕が生まれるような積立計画が望ましい。

国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」より抜粋国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」より抜粋

修繕積立金が足りない! 4割のマンションは資金不足に

多くのマンションでは25年から30年程度の長期修繕計画に基づいて必要な費用を算出し、毎月、管理費とともに修繕積立金を区分所有者から徴収している。しかし、数十年経つうちに社会情勢が変化し、当初予定した工事費用が膨らむこともあるだろう。新築時にマンション分譲会社が作成した長期修繕計画をそのまま実行するのではなく、一定期間ごとにこれを見直すことも必要だ。一方で、将来的な技術革新などにより、予定した修繕の内容が異なったり費用が低減されたりすることも考えられる。

ところが、国土交通省が5年ごとに実施している「マンション総合調査」(2008年度)によれば、工事費をすべて修繕積立金で用意できたマンションは60.5%にとどまり、他は費用の一部あるいは大半を一時徴収金や金融機関からの借入金に頼っている。借入金は当然ながら返済しなければならず、工事後の管理費や修繕積立金をこれに充てているのが実情だ。結果的に次回の大規模修繕工事費用で、再び不足が生じることになるだろう。工事を機に毎月の管理費や修繕積立金を増額することも多い。しかし、一時徴収金を集めるにせよ、毎月の費用を増額するにせよ、それに反対する区分所有者が存在することは否めず、合意形成は困難な場合が少なくない。修繕積立金が不足する大きな要因は、区分所有者から徴収する月額が少な過ぎることだ。

修繕積立金の目安はいくら? マンションによって異なる適正額

修繕積立金の月額がどれくらいなら適正なのかを判断することは難しい。それぞれのマンションがもつ要因によって大きく異なるからだ。一般的に複雑な形状のマンションや超高層マンション、エレベーターや駐車場などの機械設備、共用部分や屋外部分などが多いマンションは高額になりやすい。その一方で、修繕積立金に充当することのできる専用使用料(駐車場使用料など)があれば、そのぶん区分所有者からの徴収額を減らすこともできる。

それぞれのマンションに応じた長期修繕計画がしっかりと作成され、その計画に基づいて必要な金額を積立てていくことが望ましいのだが、実際には新築時の分譲価格に比例している例も少なくない。購入者層に合わせて修繕積立金の額を設定しているのだろう。分譲当初の月額が著しく低いマンションも散見される。毎月の負担はなるべく少なく抑えたいところだが、修繕積立金に関しては「安いほうが良い」と考えることは禁物だ。

修繕積立金の設定方法には主に2種類がある。まず1つは、長期修繕計画に基づく工事費の想定累計額を、その計画期間の月数で割って均等に積立てる方式で「均等積立方式」という。それに対して当初の積立額を低く抑え、一定期間が経過するごとに値上げしていく方式が「段階増額積立方式」だ。実際には後者によるマンションがほとんどで、購入時にまとまった額の「修繕積立基金」を徴収することも多い。しかし、段階増額積立方式では値上げをめぐって区分所有者間の合意形成ができず、思惑どおりにいかないことも少なくない。中には、修繕時に金融機関から借入れすることを前提に計画が立てられているマンションもある。

国土交通省による「マンション総合調査」(2008年度)によれば、駐車場使用料などからの充当額を含む1戸あたりの修繕積立金の平均は月額で11,877円、充当額を除く平均は月額10,898円となっている。団地型よりも単棟型のほうが安い傾向にあるようだ。一方で、同じく国土交通省が2011年4月に策定した「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」による修繕積立金の目安は次のようになっている。機械式駐車場の修繕費用を除いたうえで、「均等積立方式」に換算した1m2あたりの月額だ。あくまでも平均的な水準であり、これに当てはまらないからといって必ずしも不適切な金額だとはいえないことに注意したい。また、併せて機械式駐車場で必要とされる1台あたりの修繕積立金月額の目安も掲載しておこう。駐車場使用料をこれ以上に設定しないと、あるいは空きが多いと、他の区分所有者の負担が増えかねないことになる。

国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」より国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」より

新築マンションでも安心できない!

前述のとおり国土交通省では「長期修繕計画作成ガイドライン」や「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」を策定して、マンション管理の水準向上に努めている。最近の新築分譲マンションでは、これに沿った長期修繕計画が立てられているだろうが、一部にはそうでないものもあるので十分な注意が必要だ。

「マンション総合調査」(2008年度)の結果を見ると、2005年以降に完成したマンション、つまり調査時点で築4年未満のマンションで修繕積立金制度がないものはさすがにゼロとなっている。しかし、同じく築4年未満で長期修繕計画のないマンションは8.9%にのぼる。このうち長期修繕計画がない理由として「分譲当初からなかった」が13.0%なのに対し、「新しいマンションなので必要ない」が69.6%だ。マンション分譲会社が計画を作らなかったケースだけでなく、入居後に区分所有者同士の意思で廃止したケースもあるのだろう。また、長期修繕計画の計画期間は25年〜30年程度が最も多いものの、築4年未満のマンションでも3.9%は10年以下の計画にとどまっている。

古いマンションよりは割合が低いものの、築4年未満のマンションのうち20.9%は長期修繕計画に基づく修繕積立金の設定がされていないようだ。きちんとした算定根拠もなく、任意で決められているケースも否めない。また、新築マンションでは「段階増額積立方式」のことが多く、当初は修繕積立金が低く抑えられているが、築4年未満のマンションでは月額5,000円未満が最多区分で、7,500円未満までを合わせると61.3%(使用料・専用使用料からの充当額を含む)を占めている。専有面積1m2あたりに換算すれば大半は100円未満といった水準だろう。ただし、「段階増額積立方式」でも予定どおりの増額ができれば問題はないケースが多い。

新築マンションを購入するときには、長期修繕計画の内容をしっかりと確認しておきたい。くれぐれも無計画なマンションに当たらないようにしたいものだ。

中古マンションを購入するときにチェックするべき内容は?

マンションは適切な大規模修繕工事が重要マンションは適切な大規模修繕工事が重要

マンションの修繕積立金で厄介なのは滞納だ。「マンション総合調査」(2008年度)によれば、管理費と修繕積立金を3ヶ月以上滞納している居住者がいるマンションは全体で38.5%、築4年未満のマンションでも18.2%にのぼる。購入してすぐに滞納が始まるケースもあるのだろう。居住者の中に長期滞納者がいると問題が起きやすいが、この場合には滞納に対して管理組合がどのような手段を講じているのかが重要だ。大半は文書などによる催促や、ケースに応じて訴訟、強制執行、競売などの強硬手段をとっているが、「特に措置を行っていない」とするマンションも存在する。空室が多いマンションも滞納率が高くなりがちなので気をつけたい。

中古マンションを購入するときには、仲介会社の宅地建物取引主任者から一定の項目が説明される。修繕積立金に関しては、マンション全体における現在の積立金総額、売主の滞納の有無とその金額などだ。大規模修繕工事の履歴や、決定した工事予定などがあればそれも併せて説明される。しかし、新築マンションを購入するときのように長期修繕計画が細かく説明されることはなく、売主以外の他の居住者の滞納状況などもなかなか説明されない。気になるところがあれば、自ら進んで売主に質問をしたり、仲介会社に調査や確認を依頼したりすることも必要だ。

売主が管理費や修繕積立金を滞納しているとき、それを処理しないままで中古マンションを購入すれば、買主がその支払い義務を引継ぐことになってしまう。たいていは仲介会社が管理組合や管理会社との間に立って、売買代金の中で滞納分を清算するが、事前によく確認しておくことも欠かせない。また、積立金の総額については個々のマンションの条件によって大きく異なるが、おおよその目安として大規模修繕工事の予定時期の前に、1戸あたり少なくとも100万円程度の積立額があることが望ましい。総戸数100戸のマンションなら1億円だ。工事が終わったばかりなら、ほとんど底をついていることもあるだろう。数年後に工事を控えているのなら、それまでの積立額を勘案して判断したい。

2013年 11月20日 10時34分