大災害時は一刻も早く生活空間の確保が必要

2011年3月の東日本大震災、2016年4月の熊本地震など大規模な地震災害が頻発している日本。どこに住んでいても「明日は我が身」と心配している人は多いのではないだろうか。

熊本地震では多くの被災者が避難所ではなく車中泊での生活を続けた。災害時に車中泊をする理由には、避難所ではプライバシーがなくストレスを感じる、小さな子どもやペットがいるために避難所には居づらい、といったことがあげられるようだ。自宅に戻れない状態になったとしても、一刻も早く生活空間の確保が必要ということだろう。

災害などで長期間自宅に戻れない場合の生活空間のひとつに応急仮設住宅がある。これは地震や水害、土砂災害などにより、自宅に住めなくなり、自己資金では新たに住まいを確保できなくなった人へ国や地方自治体が提供する住宅だ。

名前を聞いたことがある人は多いだろうが、くわしい内容を知る人は少ないのではないだろうか。

大規模な地震災害が頻発している日本。どこに住んでいても「明日は我が身」と心配している人は多いのではないだろうか
大規模な地震災害が頻発している日本。どこに住んでいても「明日は我が身」と心配している人は多いのではないだろうか

2種類ある応急仮設住宅

応急仮設住宅は「災害救助法」に基づくもので、対象者は以下のようになっている。
「住家が全壊、全焼又は流出し、居住する住家がない者であって、自らの資力では住宅を得ることができない者」

同住宅は2種類ある。
1.応急建設住宅
被災地近くに建設する仮設住宅。1戸当たり平均29.7m2(9坪)。ただし、家族構成に応じて6坪、12坪の合計3タイプを用意。通例として自治会の会費など個人が負担すべき費用以外は無償で提供される。おおむね50戸に1施設の割合で集会施設の設置が可能。着工時期は災害発生日から20日以内。救助期間は完成日から最長2年3カ月。ただし、「特定非常災害」の指定がある場合は1年を超えない期間ごとに延長可能。

[特徴]
・被災地近くで建設するので今までの生活スタイルやコミュニティーを維持しやすい。
・同じ敷地内に複数設置するので入居者への効率的な生活支援・情報提供が可能。
・一戸当たり数百万円の建設コストがかかる。
・維持、管理のコストがかかる。
・撤去や廃棄物処理のコストや手間がかかる。

2.みなし仮設住宅
大規模な災害が発生した際、地方自治体が民間賃貸物件や公営住宅、空き家などを借り上げて被災者に提供する応急仮設住宅。各自治体が毎月の賃料、共益費、管理費、火災保険等損害保険料などを負担する。ただし上限額があり、東日本大震災で被災した仙台市の場合は約9万円。同住宅は災害救助法の「現物給付の原則」と「現在地救助の原則」を超えた対応で、被災市町村以外でも提供可能。また、東日本大震災では発災以降に被災者自身が契約したものでも応急仮設住宅とみなした。

[特徴]
・既存の住宅を活用するので比較的短期間に住み替えが可能
・建設住宅と比較して居住性のレベルが高い
・立地や間取りの選択肢が広い
・被災地の近くで見つかる可能性が低い(存在しても使用不能の可能性が高い)
・近隣でまとまった戸数を確保できるか不明

応急建設住宅は被災地近くで建設するので今までの生活スタイルやコミュニティーを維持しやすい応急建設住宅は被災地近くで建設するので今までの生活スタイルやコミュニティーを維持しやすい

応急建設住宅の入居者を上回るみなし仮設住宅

東日本大震災では、みなし仮設住宅の入居者が約6万8,000戸で、応急建設住宅の入居者の約5万3,000戸を上回った。また、熊本地震の場合は2016年9月現在で応急建設住宅の建設が約4,300戸に対し、みなし仮設住宅(民間賃貸住宅等)の決定通知済み件数が9,913戸とこちらも後者が上回っている。

みなし仮設住宅の数が応急建設住宅を上回る要因には次のようなことが考えられる。

・応急建設住宅の設置には上下水道などのライフラインの整備が必要だが、これに適した平地の確保が困難。
・既存住宅であるみなし仮設住宅の方が、より快適に暮らせる。
・立地が被災地に限らないので職場や学校などの条件に合う物件を選べる。


みなし仮設住宅は、コスト面でも有利だ。応急建設住宅の建設費は一戸当たり数百万円。さらに数年後には撤去することになるのでその費用もかかる。阪神・淡路大震災の場合は、合計で約850万円かかった。ここに3年間住んだとしたら毎月のコストは約23万円だ。みなし仮設住宅の1戸当たりの上限額を大きく超える。

また、みなし仮設住宅は、現在全国的に問題となっている空き家を有効活用できるという利点もある。

平均倍率は15.8倍。実際にはかなり狭き門

以上のようなことから、いざというときはぜひ活用したいみなし仮設住宅。現在ほとんどの自治体は、宅地建物取引協会等との間で被災者に提供可能な民間賃貸住宅の情報提供などの協定を締結している。しかし、現状ではスムーズに入居できないことが少なからずあるようだ。熊本市が2016年5月に行った市営住宅の250戸に対する抽選では、応募は3,949世帯で、平均倍率は15.8倍に達した。人気の物件はかなり狭き門なのだ。

また、手続きに必要な罹災(りさい)証明書の発行の遅れや自宅の全・半壊認定が受けられなければ家賃が自己負担になるといった課題も見られた。

災害はいつ、どこで起こるかわからない。すべての自治体が被災者の住戸をスムーズに確保できるように各整備が整うことを期待したい。

2016年 11月17日 11時05分