COP21の目標達成のためにも住宅の省エネ化は急務

COP21という言葉をご存じだろうか。COPとは気候変動枠組条約締約国会議(Conference of Parties)の略で、地球温暖化対策に取り組んでいく国際会議だ。COP21は2015年にパリで開催された21回目の会議で、それぞれの国が温室効果ガスの削減目標を自主的に設定した。日本の目標は2030年までに2013年比で26%削減だ。

この目標を達成させるのは、そう簡単ではないはずだ。日本のエネルギー消費量を「産業」「民生」「運輸」の各部門に分けたうち、特に住宅を含む民生部門が足を引っ張るという見方もある。資源エネルギー庁の「平成24年度エネルギー需給実績」を見ると、1990年から2012年の間に産業部門は、エネルギー消費量を12.6%削減しているものの、運輸部門はプラス3.1%、住宅部門はプラス23.7%と他の部門と比べて大幅にエネルギー消費量を増やしている。住宅は、便利な家電製品などが増えて快適な生活を提供しているが、省エネには貢献していなかったのだ。

COP21の目標達成のためにも住宅の省エネ化は急務となっている。そこで政府が打ち出した施策の一つが「ZEH(ゼッチ)」の普及促進だ。ZEHとは何か、そしてその普及のために何が必要かなどを解説しよう。

(出典)平成24年度(2012年度)におけるエネルギー需給実績(確報)<BR />部門別最終エネルギー消費の推移(2012年度確報)(出典)平成24年度(2012年度)におけるエネルギー需給実績(確報)
部門別最終エネルギー消費の推移(2012年度確報)

年間の一次エネルギー消費量の正味ゼロを目指すZEH

ZEHとは、Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略である。資源エネルギー庁では、ZEHの定義として「外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅」としている。また、定量的な定義としては、以下の要件を満たすこととしている。

1.躯体の高断熱基準(エネルギーを極⼒必要としない住宅)
全国を8地域に分け、那覇市等一部を除く7地域で躯体の外皮平均熱貫流率(UA値)基準が設けられている。この数値は省エネ基準(平成25年年基準)を上回る基準であり、UA値が小さいほど熱が逃げにくく、断熱性能が高いことを表わしている。

・1地域(旭川市等):0.4[0.46]
・2地域(札幌市等):0.4[0.46]
・3地域(盛岡市等):0.5[0.56]
・4地域(仙台市等):0.6[0.75]
・5地域(つくば市等):0.6[0.87]
・6地域(東京23区等):0.6[0.87]
・7地域(鹿児島市等):0.6[0.87]
 ※[]内は、UA値の省エネ基準

2.設備の高効率化(エネルギーを上⼿に使う住宅)
躯体の高断熱化と併せて、空調・換気・照明・給湯といった設備の高効率化によって、再生可能エネルギーを除いた基準一次エネルギー消費量省を20%以上の一次エネルギー消費量を削減させる。

3.創エネ設備(エネルギーを創る住宅)
「⾼断熱基準」「設備の効率化」で20%以上省エネを満たした上で、太陽光発電等の導入によってエネルギーを創ることにより、正味でゼロ・エネルギーを⽬指す。

4.エネルギー消費量の収支
再生可能エネルギーを加えて、基準一次エネルギー消費量から100%以上の一次エネルギー消費量削減する。なお、正味で75%省エネを達成した基準を「Nearly ZEH」としている。

ZEHは躯体の高断熱化・設備の高効率化、創エネ設備の3つを組み合わせて、年間の一次エネルギー消費量の正味ゼロを目指す住宅(出典:資源エネルギー省『ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)に関する情報公開について』)ZEHは躯体の高断熱化・設備の高効率化、創エネ設備の3つを組み合わせて、年間の一次エネルギー消費量の正味ゼロを目指す住宅(出典:資源エネルギー省『ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)に関する情報公開について』)

イニシャルコストの高さが最大のネック

政府は住宅の省エネ化を推進するため「2020年までにハウスメーカー等の建築する注文戸建住宅の過半数でZEHを実現すること」を目標としている。
地球温暖化の防止に役立ち、光熱費を抑えることができるZEH。すぐにでも普及しそうだが、そこには決して低くはない次のようなハードルもある。

■ZEHの認知
認定低炭素住宅やスマートウェルネス住宅など類似制度がが多く存在することから、これらの制度との違いや関係性を明確にするなど、一般消費者にとってわかりやすい情報提供の工夫が必要である。また、ZEHのメリットとして、光熱費を削減するだけでなく、高断熱化による快適性の向上や災害時のエネルギー確保の備えといったこともある。このようなことも一般にはあまり知られていない。

■イニシャルコストが高く、回収までに時間がかかる
ZEHの住宅を新たに建てたり、既存住宅をZEHにするには、高断熱化や設備の高効率化、そして太陽光発電などの創エネ設備の導入などが必要だ。それらには百万円単位のイニシャルコストがかかることになる。このコストがZEH普及の最大のネックだろう。

2020年までのZEH普及に向けたロードマップ(出典:平成27年12⽉ ZEH普及に向けて〜これからの施策展開〜)2020年までのZEH普及に向けたロードマップ(出典:平成27年12⽉ ZEH普及に向けて〜これからの施策展開〜)

定額75万円の2017年度補助金制度

ZEHビルダーマーク。このマークはZEHビルダーのみが使用可能(出典:資源エネルギー省『ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)に関する情報公開について』)ZEHビルダーマーク。このマークはZEHビルダーのみが使用可能(出典:資源エネルギー省『ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)に関する情報公開について』)

政府はこのようなZEH普及に対する課題を理解しており、すでに対策に乗り出している。その一つがネット・ゼロ・エネルギー・ハウス支援事業における補助金制度だ。
一戸あたりの補助金額は定額75万円(2017年度の場合)。前述した1・2地域でUA値0.25以下のNearly ZEHも対象となる。また、補助対象として採択されるZEHに蓄電システムを導入する場合には、補助金額を1kWh当たり4万円が加算される(上限:補助対象経費の1/3または40万円のいずれか低い金額)。

補助の対象となる住宅としては、申請者が常時居住する住宅であることや専用住宅であることが条件となっており、交付の要件としては、次のような要件がある。
・前述のZEHの定義を満たしていること
・SII(一般社団法人 環境共創イニシアチブ)に登録されたZEHビルダーが設計、建築または販売を行う住宅であること
・要件を満たすエネルギー計測装置を導入すること

その他の詳細な要件については、SIIのサイトで確認してほしい。
https://sii.or.jp/zeh29/first.html

2018年度には「ZEHビルダー評価制度」も

上記要件の「ZEHビルダー」を知らない人も多いだろう。これは自社が受注する住宅のうちZEHが占める割合を2020年度までに50%以上とすることを宣言・公表したハウスメーカー、工務店、建築設計事務所などだ。政府はZEHビルダーを公募・登録し、SIIのホームページで公表している。
2017年3月17日現在のZEHビルダーは5,636件だ。同ホームページでは年度ごとの各社の目標数字も確認できるので、それぞれの会社の「やる気」も分かる。ただし、やる気だけでは絵に描いた餅になるので、実際の達成率も個別に確認したいところだ。

その確認方法が来年度にも確立されそうだ。政府は、登録されたZEHビルダーの情報を元にZEH普及に向けた施策も検討している。その一つが「ZEHビルダー評価制度」。これは実際のZEH建築戸数やZEH普及に対する活動などを評価するものだ。目標の達成率やその公表なども評価の対象となる予定。2018年度の運用開始を目指している。
このような評価制度が開始されれば、多くの消費者とって「ZEHビルダーか否か」が住宅会社を選ぶ際の一つの条件になるのではないだろうか。
地球環境にやさしく、光熱費の削減も考えられるZEH。少しでも早く普及していくことを期待したい。

2017年 05月18日 11時05分