すでに電力の6割は自由化されている!?

電力の完全自由化で、太陽光発電の売電も自由に!?電力の完全自由化で、太陽光発電の売電も自由に!?

電力の発電や小売について、完全自由化へ向けた動きが具体化していることはご存知だろうか。すでに国内の電力のうちおよそ6割は自由化されているのだが、これまでは工場やビルなど大口需要家や一定規模以上の建物などが対象だったため、企業の担当者などでなければあまり意識をすることもなかっただろう。

現在、準備が進められているのは残りの4割を占める一般家庭を視野に入れた自由化だ。電力が完全自由化されることによって、誰でも発電をして売ることができ、そしてどの事業者から電力を買うのかも自由になるのだ。

いったん発電した電力を貯めておくことはできないため、時間や季節によって刻々と変わる電力使用量をリアルタイムに把握し、発電量を調整することが求められる。そのため、従来は一定範囲の「閉鎖された区域」を受け持つ電力会社ごとに事業を行わざるを得なかった。しかし、近年のIT技術の発達などにより、広域での調整や発電の分散が可能になったことも自由化を後押ししている。

大口需要家などで先行した電力自由化だが、その対象となっているのが電力量ベースで63%とはいえ、実際に新電力(特定規模電気事業者、PPS=Power Product Supplier)へ切り替えられたのはそのうち4.5%(2013年度上期、発電量ベース)に過ぎない。実態としては既存電力会社による独占状態が続いているといえるだろう。PPSは既存電力会社の送電線や配電線を借用するのだが、その対価として電力会社に支払う「託送料金」の高さがネックとなっているようだ。

そのため電力の完全自由化にあたっては、送配電事業を既存の電力会社から分離し、どの事業者も公平に参入できる仕組みを目指している。

電力自由化のこれまでの経緯、今後の予定はどうなっている?

東京電力福島第1原子力発電所の事故とその後の電力不足を受けて、電力自由化の論議にも注目が集まった。そのため、原発事故が自由化への契機になったと感じている人がいるかもしれないが、実際には意外と古いものだ。

他国の自由化を追うように日本で電力の部分自由化が始まったのは1995年、いまからおよそ20年前である。大型ビル群など特定の区域内を対象とした電力小売が特定電気事業者に認められ、さらに既存電力会社へ電力を卸す「発電事業者」の参入も始まった。そして2000年に2,000kW以上の大口需要家(大規模工場など)を対象として新電力(PPS)による小売が認められ、その後、2004年に500kW以上、2005年に50KW以上と自由化の対象が引き下げられて今日に至っている。

しかし、50kW未満の「低圧」電力については、地域別の電力会社10社にしか小売が認められていなかったため、一戸建て住宅は自由化の対象外だった。これを含めた「完全自由化」を目指して、2014年2月に電気事業法改正案が閣議決定され、現在開かれている通常国会へ提出された。国会会期終了の6月22日までに改正案が成立する見通しだ。

2016年4月をめどに家庭向けを含めた電力小売事業への参入が全面的に自由化され、約7.5兆円の市場が開放される予定である。また、それに先だち2013年11月の法改正で「広域的運営推進機関」の設置も決定された。「広域的運営推進機関」とは、これまでの電力会社に代わって平時から全国規模での電力需給調整にあたる組織であり、2015年の業務開始を目指して現在、設立準備組合が立ち上げられている。

ただし、電力会社の発電部門と送電部門を分離する「発送電分離」は、少し遅れて2018年から2020年に実施される予定だ。この「発送電分離」と「電気料金の規制撤廃」を盛り込んだ改正案は、2015年の通常国会へ提出される予定となっている。送配電を発電や小売と切り離すことで、すべての事業者が同じ条件で電力を供給できるようになるため、本当の意味での完全自由化はこの時点から始まるともいえるだろう。

しかし、電力の完全自由化をにらんだ動きは早くも活発になっている。新電力(PPS)登録企業は2013年3月に約80社だったが、2014年4月1日時点では192社と1年間で2倍以上に増えた。通信事業者や商社、大手企業などの参入表明も相次いでいるほか、今後さらなる増加も見込まれている。

電力自由化で供給に不安はないのか、その仕組みは?

完全自由化によって、消費者はどの新電力(PPS)からでも電力の供給を受けることができる。しかし、購入した電力が宅配便で送られてきたり、専用の配電線が引き込まれたりするわけではない。契約を新電力(PPS)に切り替えても、電力そのものは従来どおり地域の電力会社から安定供給され、代わりに新電力(PPS)は顧客が使った分の電力を送電線ネットワークに供出する仕組みだ。つまり、毎月の電気料金を請求してくる相手(およびその料金体系)だけが変わると考えれば良いだろう。

「広域的運営推進機関」による需給調整があるため、新電力(PPS)だからといって停電が起きたり供給が不安定になったりすることはない。また、完全自由化されることによって猛暑や厳寒期に電力不足となるリスクが高まるわけでもないのだ。

マンションの「一括受電」はすでに広がっている

2005年に「50kW以上」の電力小売が自由化されたことなどを契機に、マンションにおける「一括受電」はすでに導入実績が20万戸を超えるなど広がりをみせている。ある程度の規模や受電施設の整備が必要となるものの、マンションでは高圧契約による電力の「まとめ買い」で、電気料金を削減することができる。

もちろん個々の条件によって異なるが、共用部分(エントランス、館内照明、エレベーター、機械式駐車場など)で平均20〜40%、専有部分で最大10%程度の削減が可能なようである。大規模マンションほどその効果は大きく、削減される費用だけで年間に数百万円から1千万円を超えるようなケースも聞かれる。大きな問題になりがちな修繕積立金不足への対応策として、電力供給契約の見直しがされる場合もあるだろう。

新築マンションでは、2010年に三菱地所レジデンスが導入を開始したほか、現在は大手を中心に10数社が積極的に一括受電サービス導入しているようだ。なお、完全自由化された後は一括受電でなく、戸別に契約先を変えることも可能だが、なるべくまとまって契約をしたほうが電気料金を安くできる余地も大きい。

電力の完全自由化によって電気料金はどうなる?

「まとめ買い」の効果が大きいマンションでは、電気料金の削減も多く見込まれるだろう。それに対して完全自由化後の一戸建て住宅においてはどうか気になるところだが、電力自由化が先行した欧米でも「自由化によって電気料金が下がった」という事例はあまりみられないようだ。「概ね化石燃料価格が上昇傾向になった2000年代半ば以降、燃料費を上回る電気料金の上昇が生じている」(「諸外国における電力自由化等による電気料金への影響調査」一般財団法人日本エネルギー経済研究所:2013年3月)、「電気料金の低下というメリットが需要家にもたらされていない」(「欧州の電力小売全面自由化と競争の実態」電力中央研究所:2013年5月)などといった問題点もある。

その原因として、「自由化によってマーケティング費用などが増加している可能性」や「利潤を求める株主への対応」なども指摘されているようだ。とくに「電気料金の規制撤廃」が実施された後は、価格競争で下げることも、逆に経営環境に応じて上げることも自由である。燃料費が高騰すれば、それがすぐに反映されて電気料金が急に高くなる可能性もあるのだ。また、大規模マンションへの導入が優先される一方で、一戸建て住宅向けの電気料金が高止まりすることも懸念されている。

とはいえ、現在の日本における家庭用電力料金は依然として諸外国よりもだいぶ高く、値下げの余地も十分にあるといえるだろう。電気料金だけでなく、その他の付加価値も選択の要素となる。通信事業者や流通業の参入も見込まれているが、たとえばソフトバンクでは携帯電話やスマートフォンとのセット割引が計画されているほか、太陽光発電による環境配慮のアピールもあるだろう。KDDI関連企業でも、CATVやインターネット回線とのセット販売が検討されているようだ。パナソニックでは家庭の太陽光発電システムで余った電力を、固定価格買取制度よりも高い単価で買い取る計画だという報道もされている。もし小売流通業の大手が加われば、買い物のポイントに還元するようなサービスが生まれるかもしれない。

また、電気使用の効率化も今後の社会において大きな課題だ。HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)と組み合わせて使われるスマートメーターによって、電力の管理がしやすくなり省エネにもつながる。新電力(PPS)による遠隔監視サービスなども、これからクローズアップされていくことだろう。

2014年 05月12日 10時57分