賃貸で困った経験がある人は約3割

前回の記事「賃貸物件へ住み替えた際の敷金礼金の平均と初期費用~住宅市場動向調査を読み解くでは、2015年3月に国土交通省から発表された「平成26年度住宅市場動向調査」より、賃貸物件の初期費用の平均について紹介した。

特に親元を離れ初めての一人暮らし、賃貸物件での生活となると、困ったことがあってもまずは自分でどう対処するかを考えなくてはいけなくなる。今回は、賃貸物件に住み替えた人の困った経験について触れたい。契約の前にどのようなことがあるのかを知ることで、契約前に不動産会社に質問したり、対応策を考えておくことができるかもしれない。

では実際に部屋探しの段階から契約、入居、退去と状況が変わっていくなかで、どれくらい困った経験をしたことがある人がいるのだろうか?
これまで、賃貸住宅に関して困った経験の有無について、「ある」と回答した人は31.0%だった。

なお、消費者庁「平成27年版消費者白書」の消費生活相談件数の多い商品・サービスをみると、20歳代は「デジタルコンテンツ」が19911件と最も多く、次いで「不動産賃借」が6262件だった。この相談件数の最も多い傾向は20歳代だけではなく30歳代、40歳代も同様である。
国土交通省調査によると賃貸物件の世帯主の年齢は30歳未満が33.1%と最も多く、次いで30歳代が29.0%、平均年齢は38.1歳である。このデータをみると、賃貸借契約の多くを占める年代と消費者庁に相談している人の年代が合致していることがわかる。

費者庁「平成27年版消費者白書」の消費生活相談件数の多い商品・サービス費者庁「平成27年版消費者白書」の消費生活相談件数の多い商品・サービス

契約時、入居時、退去時、状況別の困った経験トップ3は?

続いて、困った経験があると回答した人の具体的な内容について見てみよう。
契約時、入居時、退去時の3つの状態に分けると、下記のようになった。
(複数回答可、上位3つ抜粋)

□契約時
「敷金・礼金などの金銭負担」58.3%
「連帯保証人の確保」 33.1%
「印鑑証明などの必要書類の手配」 17.2%

□入居時
「近隣住民の迷惑行為」41.1%
「家主・管理会社の対応」 30.7%
「契約内容の変更」 8.6%

□退去時
「家賃、敷金の清算」 27.6%
「修繕費用の不明朗な請求」 23.3%
「中途解約時の追加金銭の請求」 3.7%

契約時の「敷金・礼金などの金銭負担」については、事前にどれくらいの初期費用がかかるかの把握が重要となる。前回の記事も参考にしっかりと不動産会社に確認してほしい。
「連帯保証人の確保」については、そもそも親や親戚などに連帯保証人が頼めない場合は、費用はかかってしまうが家賃保証会社が利用できる物件や、連帯保証人が不要の物件を選ぶことになる。

入居時の「近隣住民の迷惑行為」は、残念ながら前もって避けることが難しいトラブルの一例だ。そういったトラブルの対処法だが、クレームを直接伝えるとやっかいなことになりかねない。物件のオーナーか管理会社に連絡し、注意をしてもらうように依頼したほうがよい。

退去時の「家賃、敷金の清算」が27.6%、次いで「修繕費用の不明朗な請求」23.3%となったが、こちらはともに退去時の費用負担にかかるトラブルである。入居後の近隣住民や管理会社への不満以外については、契約時も退去時も、お金に関する困った経験が多いことがわかる。

トラブルになりやすい原状回復 入居時のチェックで未然に防ぐ

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(平成23年8月再改定版)では、考え方のポイントとして冒頭に下記の記載がある。

"原状回復は、賃借人が借りた当時の状態に戻すものではないということを明確にし、原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義して、その考え方に沿って基準を策定した。"

前回の記事でもお伝えしたが、従前も賃貸物件に住んでいた人の平均居住期間は6年と、一般的に長く住む人が多い。当然、物件の築年数にもよるが、経年劣化は発生する。このガイドラインは、物件の経年劣化による消耗と、借り主の故意や注意義務違反による復旧については区別がされるべきであるという方針のもとに作成されている。法的拘束力はないが、トラブルに発展しそう、もしくは「この場合はどうなんだろう?」と疑問に思った際には判断の指標ともなる内容になっているので、これから賃貸物件の契約を検討している人や現在賃貸物件に居住している人もぜひ一度目を通しておいたほうがいいだろう。

退去時に敷金の清算について問題が発生した場合、それは退去時のみの問題ではなく、入居時に物件の状態について双方で確認を行っていたかが、後々重要なポイントとなる。入居の際は、物件の間取り図に元々あった損耗箇所や内容などを記載したり、設備ごとのチェックリストに損耗の有無を記載したりするなど、記録して残し、それを不動産会社と認識合わせをしておくことをお勧めする。損耗箇所は写真を撮影して保存しておくと、より分かりやすいだろう。管理会社によってはそういったチェックリストを用意しているケースもあるので、確認をしてほしい。

退去時に嫌な思いをしないためにも、入居時の状況確認はしっかりと、そして入居中は借りた物件を綺麗に維持できるようにし、何かしら物件に破損などを発生させてしまった場合はただちに不動産会社に連絡することを心がけよう。

調査概要

調査実施:国土交通省
調査対象:平成25年4月~平成26年3月に住み替え・建替え・リフォームを行った世帯を対象とし、住宅の種類別に調査
調査方法:注文住宅は、建築物動態統計調査のうち「補正調査」の対象から抽出
その他は調査地点を抽出し、調査員が該当の住宅を探し出し、訪問留め置き調査により実施

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2016年 02月10日 11時06分