インテリアを考えながらの部屋探しが可能に

店頭、左側にリベストの文字があるのが見えるだろうか。今回話を伺った、右から坂田氏、山田氏、森氏店頭、左側にリベストの文字があるのが見えるだろうか。今回話を伺った、右から坂田氏、山田氏、森氏

不動産の業界にはいくつか不思議なことがある。そのひとつが不動産とインテリアという、住む人にとっては同じ空間に関わる仕事が分断されているということ。部屋を探す時点で選んだ部屋に合う家具のサイズや壁、床に合う色が分かっていれば、もっと自分らしい部屋が選べるし、暮らしを楽しめるはずだが、多くの不動産会社はインテリアを知らない。インテリアショップも店によっては部屋全体のアドバイスまではできないことも。

だが、幸いにしてそんな願望を一気に叶えてくれる、インテリアと不動産のどちらもが分かる店舗が吉祥寺に登場した。長年、住宅を始めとする不動産のリノベーション、DIY賃貸(DIYが可能な賃貸という意味)の推進などに関わって来た坂田夏水氏率いる株式会社夏水組がプロデュースした店舗「Decor Interior Tokyo」である。当店は代官山より吉祥寺へ移転し、吉祥寺に地元で話題になる店舗を誘致するなど、まちのイメージアップにも貢献してきた老舗不動産会社、株式会社リベストと協働して再スタートした。これまでにない新たな取組みが3点ある。

ひとつは最近増えているDIY賃貸に住みたいという人の声に応えたDIY型賃貸借紹介モデル店舗としての取組み。店内にはDIY可物件や、同社が造作を手がけた物件の情報が掲載されており、希望すれば不動産会社窓口に繋げてもらえる。すでにショップを通じて「この物件が気になる」といった問合せがあるそうで、このやり方なら、まだまだ少ないDIY賃貸に巡り合う可能性が高まる。また、DIYが初めてという人でもスタッフのアドバイスがあれば安心してチャレンジできるようになるはずだ。

2つ目は物件に手を入れ、モデルルームを造作するという取組み。地域に空室になっている不動産を所有するオーナーに嬉しい取組みだが、これはまた借りる人にも嬉しいこと。プロがコーディネートした、よそにないオンリーワンの部屋が借りられるのである。

吉祥寺でDIY賃貸が探しやすくなる!?

内覧時に公開された1室。前住民が許可を得てDIYした部屋で見た目はかっこいいのだが、床材の表面が荒すぎて素足では歩けないなど気にする人には微妙な点もある。住み心地を考えるとプロのアドバイスは大事かもしれない内覧時に公開された1室。前住民が許可を得てDIYした部屋で見た目はかっこいいのだが、床材の表面が荒すぎて素足では歩けないなど気にする人には微妙な点もある。住み心地を考えるとプロのアドバイスは大事かもしれない

もうひとつは同店、リベストが関わって住宅を賃貸あるいは売買した人に向けてのインテリア相談窓口の開設である。購入した物件のインテリアコーディネートや借りた物件のインテリア、DIYのアドバイスなどが受けられるのである。

これは直接的には買った人、借りた人向けのサービスだが、このサービスは同時に「素人に部屋をいじられて何かあったら困る」と懸念、DIYを可とすることをためらっているオーナーへの説得材料にもなる。経験豊富なスタッフが手伝ってくれるから安心ですよと言えるようになるからだ。

吉祥寺は古くから住宅地として人気のまちだったため、築30年以上という賃貸住宅も多く、中には5階建てでエレベーターのない物件など、今の時代には好まれない物件も多々あるとリベストの山田妙子氏。さらに内装に多額の費用をかけたくないと考えるオーナーもおり、となると空室を埋めるのは難しくなる。だが、それがDIY可となれば関心を持ってもらいやすい。

「経験豊富なスタッフが一緒に考えてくれるから安心と説得できれば、オーナーも応じてくれる可能性が高くなります。それで吉祥寺にはDIY賃貸が多いということになれば、まちに新たな魅力を付加できます。元々吉祥寺にはユザワヤを始め、モノ作りの材料を売る店が多くあり、手作り精神が根づいています。これまでなかった総合的なインテリアのアドバイスができる店と協働していくことで変化が起きるのではと期待しています」

古い昭和のアパートがロマンチックなブルーの部屋に変身

開店に当たっての内覧会では実際に同店が手がけたモデルルームを内覧するツアーが開かれた。聞くとそのうちの2物件は社員の女性が一人(!)でDIYしたのだとか。そのなかでも、訪れた人全員が変貌ぶりに驚いたのが築34年の1K物件。外観からしてレトロな雰囲気があり、率直なところ、室内にもそんなイメージを持つ人が多いであろう物件である。

実際、手を入れる前の写真を見せていただくとごく普通の昭和のアパートである。玄関を入ったところに小さなキッチンがあり、バス・トイレは一体型の3点ユニット。室内の天井はいささか黄ばんでおり、床、壁は汚れてはいないもののごく普通の部屋。収納は内部の合板が古さを感じさせた。

ところが、それが一変した。「床のクッションフロアはフロアタイルに張り替え、壁、天井は塗り直しました。壁を変えるためには上から壁紙を貼る、塗料を塗るという2つの手がありますが、価格的に抑えられるのは塗料の利用。そこでこの部屋では一面の一部にだけアクセントクロスを貼り、あとは塗料で仕上げました。その際、収納内部も塗料、フロアタイルで仕上げ、イメージを一新しました」と改装を担当した森瑞喜氏。

その結果、生まれたのが改装前の部屋をまったくイメージできないほどのロマンチックな雰囲気の部屋。壁は面によって濃淡のある水色に塗り分けられ、一面にはアクセントクロスとして同系色のウィリアム・モリスの壁紙が配された。床は白い寄木細工風フロアタイルになっており、収納はまるで部屋の一部のように見える状態になっている。

左上が改装前の室内、そして改装後が左下と右。大変貌だ左上が改装前の室内、そして改装後が左下と右。大変貌だ

水回りはマスキングテープやフィルムテープでさわやかに

左が改装前、右が改装後。これまた大変貌左が改装前、右が改装後。これまた大変貌

キッチン、バスルームも大変貌である。キッチンは壁面を塗装、キッチンセットにはマスキングテープを貼り、壁面のタイル下部にはタイルステッカーが貼られている。バス・トイレにも同様にフィルムテープだ。

つまり、おおむね、テープなり、ステッカーが貼られているだけなのだが、それで見た目は全く変わっている。これは人間には柄、色の強いところに目が行くという習性があるからだと坂田氏。

「今回、内装を検討するために森と二人で部屋を回り、室内で手垢などの汚れが気になる場所、自分が住むとしたら気になるところをチェック。そこをどう変えるかを検討しました。もちろん、予算があればキッチンを交換するなどの手がもっとも有効ですが、そこまでの予算がないこともあります。となれば、それが目立たないようにすることになります」

たとえばキッチンの壁は築年数が古い分、どうしてもなんとなく汚れている。コンロに近い下部はより目立つ。であればそこに鮮やかな柄のフィルムシートを貼ることで汚れを見えなくし、上部の白さが際立つようにするというのである。キッチンの面材、脇の壁を黒にしたのも人の目がそちらに行くことを狙ったもの。その結果、キッチン上部のタイルの汚れは目立たなくなった。

洗面所、トイレはそもそも柄、色のあるタイプが少なく、一部に手を入れるだけで印象に残りやすくなる。同物件の場合、曲面中心の作りだったため、ラインを強調するようにフィルムテープを貼ったという。改装費は材料費で約20万円。プロが原状回復としてやる場合には100万円はかかる工事だそうで、これをDIYとして入居者がやってくれるのであればオーナーさんには嬉しい話。住む側も自分の好きな部屋にできるのは楽しいはずだ。

1週間あれば初心者女性でも一部屋改装

店舗がある一角も魅力的なので、ぜひ、まち歩きも楽しんでみていただきたい店舗がある一角も魅力的なので、ぜひ、まち歩きも楽しんでみていただきたい

だが、ここまでの工事を一人でできるものだろうか。森氏はこれまで店舗やイベントでの塗装その他の経験はあり、部分的にはやったことがあったそうだが、まるまる一部屋を一人で仕上げるのは初。だが、家具の設置、デコレーションなども含めてまる6日間で完成したという。

「家具を入れなければ2~3日でできるはず。壁と天井の塗装、床の張り替えで各1日という想定で、初心者ならそれぞれ2日みればできます」と森氏。もし、分からないことがあったら店のスタッフに聞くのはもちろん、その場ですぐ知りたい時には「YouTubeで検索すれば、関連動画なども含め、いろいろ出てくるはずで、そこからやり方やコツなど言葉では伝えにくいことが学べます」と坂田氏。スマホを見ながら作業ができる時代なのだ。

ところで、店の紹介ではもうひとつ付け加えたいことがある。「Decor Interior Tokyo」があるのは昭和通りという、地元の買い物客が多い通り。吉祥寺ではぶらぶら買い物がてらの散歩には中道通りが有名だが、それよりも隠れ家的な店が多いのが昭和通り。店舗はこの地で30年以上営業していたという酒屋さんを改装したもので、店舗自体も魅力。さらに向かいにある銭湯、隣にある古民家を使っているのにモダンな米屋さんなど見どころもいろいろある。インテリアの相談はもちろん、周辺の建物を眺めることも含めてぜひ、遊びに行ってみていただきたい。運よく、DIY可の部屋やモデルルームになっている部屋が見学できるタイミングなら、部屋を手がけた人に詳細を説明してもらえるかもしれない。

Decor Interior Tokyo
https://material-interior.com/category/column/decor-tokyo
リベスト
https://www.libest.co.jp/

2020年 09月13日 11時00分