どこまで、何ができるかが分かるモデルルーム

モデルルームを見れば、最初にどこまでが用意されており、どこに手を入れられるのかが分かるようになっているモデルルームを見れば、最初にどこまでが用意されており、どこに手を入れられるのかが分かるようになっている

自分好みのインテリアの部屋に住みたいというニーズには根強いモノがあるが、かといってすべて自分でDIYをすると考えると、ちょっとハードルが高いと感じてしまう人も多いのではなかろうか。そのハードルを下げ、関心のある人なら誰でもDIYを楽しめる賃貸住宅が誕生した。練馬区春日町にある築38年の本多マンションだ。

このマンションには2つ、DIYへのハードルを下げる仕組みがある。ひとつはモデルルームだ。すでにある程度完成した部屋を見てもらうことで、最初にどこまでが用意されているのか、DIYできるのはどこか、DIYするとどうなるかをリアルに見てもらおうというのである。

DIY可物件は少しずつ増えてはきているが、DIY可の定義が明確でないため、最初に用意されている状態、その後のDIYできる範囲は物件ごとにそれぞれ異なる。床貼りからがっつりやりたい人と壁だけ好きな色にしたい人、棚を付けたいだけの人では選ぶ物件が違うはずだが、現状の物件広告ではそこは読み取りにくい。そこで目に見える形のモデルルームを作ることで範囲を明確にし、自分がやりたいことに合った物件を選んでもらえるようにしようというわけである。

また、DIY可物件は駅から距離がある、築年数が古いなど、なんらかのハンディがある物件であることが多いが、そのうち、築年数が古い物件の場合には設備が使える状態になっているかは大きな問題。ごく一部だが、そうした部分の交換、整備まで入居者に期待する所有者もいる。もちろん、そこまでやりたいという人なら良いが、そうでない場合には大きな負担になる。設備が更新されているかどうかを確認できるという意味でもモデルルームは良いアイディアである。

全室異なるインテリアテイストを自分好みに仕上げる

2DKを1LDKに改装してある。上がLDK、下が寝室2DKを1LDKに改装してある。上がLDK、下が寝室

モデルルームのデザイン、コーディネートは住宅、店舗などのリノベーションを多く手掛け、代官山のインテリアショップ「Decor interior Tokyo」を運営する夏水組。部屋は2DK、3DKの2タイプがあり、モデルルームは2DK。インテリアテイストはエリソンナチュラル(ハリネズミカラーのベージュ、グレー、ブラウンにアクセントとしてブラック)というものとか。今後作る部屋はそれぞれ異なるインテリアテイストになるそうだ。

さて、DIYの内容だが、同物件の場合、家具、小物類は別として、
・キッチン、洗面台、バスルーム、洗濯機置き場、トイレなどの水回りの設備(トイレットペーパーホルダー、タオルハンガーなども含む)
・玄関、廊下、水回り、リビングの床
・居室以外の照明
・下地としての壁、天井
はあらかじめ、用意されている。

基本的に入居者がDIYして良い部分は
・全室の壁(最初の時点ではベージュなど全体に馴染みのある色のクロスが貼られており、後日DIYで塗装、壁紙貼替可能)
・収納部の戸(襖など)
・キッチン壁面
・和室を洋室に変更する予定の部屋の床
・LDKに入る部分の扉の塗装(パナソニックのクラフトレーベルの塗れるドア。塗っても塗らなくても可)
となっており、初期の入居者に関してはこれらをDIYするためのペンキ、襖紙、輸入壁紙(LDKと寝室の壁一面ずつを想定)、キッチン壁面に貼るタイル、和室を洋室に変更する予定の部屋のクッションフロアなど、約25万円分の商品を建物所有者が提供する予定(以降については未定)。その代わり、仕上がりを担保する意味もあり、入居者は前出のインテリアショップ「Decor interior Tokyo」で商品を選ぶことになっている。

DIY可の範囲から考えると、大工作業を楽しむまでの大掛かりなDIYというより、インテリアにこだわりのある、比較的ライトなDIYをやりたいという人向きの物件のようである。

一緒にやってくれるサポーターが常駐

もうひとつの仕組みはおそらく日本では初の試みである。同じ建物内にDIYをサポートしてくれる人たちがオフィスを構え、相談に乗ったり、DIYを手伝ったり、道具を貸してくれたりするというものだ。実際にサポーターを務めるのはDIYer’s Partyという女性ばかりの団体。これまでにもDIYのノウハウを伝えるなど各種講座を開催するなどの活動をしてきており、初心者には心強い存在になるはず。

「本多マンションでは住むためのベースになる部分は作ってあるので、壁の塗装など手のかかる部分は入居後早い時期に館内にいるDIYサポーターに手伝ってもらって2日間くらいで仕上げていただき、後からやりたい部分はゆっくりと考えていただくことを想定しています。モデルルームを参考に仕上がりをイメージし、サポーターに相談しながら進めていただければ、思い通りの部屋にできるはずです」(企画を担当するハウスメイトパートナーズの伊部尚子氏)。

やったことのある人なら分かると思うが、家事もDIYも一人でやるのは苦行。ところが、何人かでわいわい言いながらやるとなると一気に楽しくなってくる。入居後の、誰も知り合いのいない段階で一人でDIYは厳しいだろうが、お手伝いしてくれる人がいることが分かっているなら気が楽だ。

また、DIYでは意外に道具や前準備が大事だが、そのあたりは初心者には難しい点。ペンキを塗る際などには養生(塗る場所以外にペンキを飛ばさないように保護する作業)が大事だが、非常に地味な作業でつい手を抜きたくなる。だが、そのあたりをきちんと指導してもらえれば、きっと満足いく仕上がりになるはずだ。

一人でやると思うと難しく思えるかもしれないが、助っ人がいて、みんなでわいわいやれるなら楽しい作業になるはず一人でやると思うと難しく思えるかもしれないが、助っ人がいて、みんなでわいわいやれるなら楽しい作業になるはず

内装制限に注意、安全なDIYを

また、DIY可とされている部分以外の相談にも乗ってくれるという。「決められたところ以外は全部ダメとするのではなく、内容次第では可能ということもありえます。事前にサポーターに相談していただき、何が、どこまでできるかを一緒に考えるようにしていただければと思います」。

ただ、一点注意してもらいたいのは「内装制限」だと伊部氏。住宅、特に集合住宅で怖いのは火災。そこで建築基準法や消防法では建物の構造や規模などにより、火を使う場所などには内装に制限を設けている。非常に簡単に言ってしまえば、燃えにくい素材を使うようにということである。

住宅内で火を使う場所といえばキッチン。そこでキッチン周りの壁、天井の素材には燃えにくい準不燃以上の材料を使う必要がある。またコンロ周りの壁は、たとえば東京都ではコンロからの離隔距離によって9ミリ以上の不燃材料とするなど、地域の火災予防条例によってはより厳しい規制がある。火のすぐ近くにある壁は分かるとして、なぜ天井かといえば火は上昇するから。逆に下降することはないので床には制限は設けられていない。また、上昇することを考えると建物構造にもよるが、上階のあるフロアでは制限が厳しく、上階のない最上階では比較的緩いという考え方になっている。

といっても、ホームセンターなどで実際の商品を見てもらえば分かるが、現在売られている材料の多くには表示があるので、それを見る習慣をつけておけば危ない材料を選ぶ心配はない。また、一部の輸入品を除けば現在の建材の多くは準不燃以上の防火性能を備えているため、注意したからと言って使える建材が少なくなる心配はない。住戸内には内装制限がない場所も多いので、そこで使うという手もある。

建材以外で注意したいのはすのこや竹などの燃えやすい素材。「使っても違反にはなりませんが、確実に危険は高くなります。安価で簡単に利用できるため、キッチン回りにこうした素材を使っているDIY事例をよく見かけますが、できるだけ避けていただきたいものです」。

一部、注意する点はあるにはあるが、それに気を付けさえすれば自分好みの部屋が手に入る。ためらっていた人もサポーターがいるならできるはず。チャレンジしてみてはどうだろう。

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<参考>賃貸DIYガイドラインver.1.1 HEAD研究会賃貸DIYワーキンググループ

キッチン回りはDIYする場合でも、日常的な使用の場合でも火には十分注意したいところキッチン回りはDIYする場合でも、日常的な使用の場合でも火には十分注意したいところ

2019年 05月21日 11時00分