39歳のハノーファー市長も感染 生活を守るための経済対策も続々

ドイツ人は、ファッションや食にはこだわらないが、「住むところ」、「家庭」、「バカンス」の3つをとても大切にしている。ドイツでは今、その大切な3つのキーワードが、新型コロナウイルスにより脅かされている。一変した「平和な日常」。そんな中でも、大切なものを少しでも取り戻そうとする動きも出ている。ドイツの最新事情を報告する。(2020年4月15日執筆)

人口約8,300万人のドイツ。4月15日現在で13万2,210人が感染し、3,495人が亡くなっている(感染者の統計はこちらら https://interaktiv.morgenpost.de/corona-virus-karte-infektionen-deutschland-weltweit/)。
イギリスではボリス・ジョンソン首相が感染したが、私の住む北ドイツのハノーファー(人口約53万人)のベリト・オナイ市長も3月25日にコロナウイルスの感染が判明。幸い症状が軽かったため自宅勤務を続けて4月7日に完治、職場に復帰した。昨年初当選を果たしたオナイ市長は、大都市で初めて誕生した緑の党の市長で、39歳の若さ。トルコ移民のルーツを持つなどこれまでにないタイプの市長であり、市民も回復に安堵している。

こういった中、ドイツでは新型コロナウイルスによる経済政策を打ち出し、市民生活を守る措置を講じている。例えば、会社員には「短縮勤務」制度が適用され、仕事が減った分について、子どもがいる人には手取り給与の67%、いない人には60%が補填される。2008年の金融危機の時にも多くの企業が利用したが、今回も大小さまざまな企業が3月1日からさかのぼって申請している。企業向けに3ヶ月分の運転資金を提供する措置もあり、返済義務はないが、それでも収入減で必要経費を払うのが厳しい企業も少なくない。

新型コロナウイルスの影響で学校が休みの中、子どもたちが人々の幸せを願って描いた石(ハノーファー) © Riho Taguchi新型コロナウイルスの影響で学校が休みの中、子どもたちが人々の幸せを願って描いた石(ハノーファー) © Riho Taguchi

3ヶ月の家賃滞納は認めるものの、2年以内に利子付きでの支払いを義務化

住居関連を見てみると、ドイツでは通常、一般住居で3ヶ月家賃を滞納すると、家主は賃貸借契約を解消できる。しかし今回の非常事態では「4月1日から6月30日までの3ヶ月間は家賃を滞納しても退去させることができない」ことを定めた。ただし、家賃は免除されたわけではなく、2年以内に利子とともに支払うことになっている。住宅ローンについては、4月から6月までの3ヶ月は返済がなくてもよいが、この措置が適用されるのは3月15日までに結んでいた住宅ローンに限られている。3月末の時点ですでに住宅ローンの返済猶予を10万人が申し込んでいて、今も増え続けている。

一方、事業所は通常は1ヶ月家賃を滞納すれば賃貸借契約を解消できるが、こちらも「4月1日から6月30日までの3ヶ月間支払われなくても賃貸借契約は解消できない」とし、この間の家賃は一般住居同様に2年以内に利子付きで支払わなければならない。支払いに余裕ができることもあって、救われる事業者も少なくないと言われている。

「家」にこだわるドイツ人の不満を爆発させた「ホームセンターの閉鎖」

博物館、娯楽施設、学校が閉鎖されている。幼稚園や学童保育、図書館、役所の出張所も閉まっており、裁判所では裁判が滞っている。ホームオフィスが推奨され、労働時間を減らしている企業も多い。レストランやカフェは営業できず、持ち帰りのみが許されている。スーパーやパン屋は開いているが、1.5メートル以上の間隔を取ることが義務付けられ、店の前に長い列ができていることも。いわゆる「接触制限措置」と呼ばれるもので、守られない場合は罰則もある。このように日常生活でもさまざまな制約が出ているドイツだが、その制約はドイツ人の「家」へのこだわりにも影響を与えている。

3月半ばの食料品店など一部を除く店舗の閉店。通達があったのは夜で、翌日から一斉閉店という急なものだった。ホームセンターや園芸店も同様で、資材はもちろん観葉植物や花、復活祭のためのデコレーションなど季節のものを販売できなくなってしまったのだ。店舗にとって大きな痛手だが、市民にとってもつらい状況となっている。「せっかく仕事が減って時間ができたから家の修理や庭仕事をしよう」と思っても、必要な土や花、工具を買うことができない。家にこだわるドイツ人は、簡単な修理や壁塗り、バスルームのタイル貼りなどは自分でするのが一般的で、週末にこつこつと日曜大工に励む人が多い。ところが材料が手に入らない。閉店について多くの不満が寄せられ、最近になって州によってはホームセンターと小さな花屋は開店してもよいと条例を変更したところが出てきた。しかし一度に店舗に入れる人数を制限しているため、ホームセンターの前には長蛇の列ができている。

ホームセンターの前で入場を待つ人々(ハノーファー) © Riho Taguchiホームセンターの前で入場を待つ人々(ハノーファー) © Riho Taguchi

行動制限から1ヶ月 都市部では「クラインガルテン」が憩いの場に

ドイツの都市部では、「クラインガルテン」を持っている人が多い。クラインガルテンとは、いわゆる市民農園のようなものだが、畑というより、自然の中でゆっくり過ごすためのくつろぎの空間となっている。都市でアパート生活をする人が近場に借りて、野菜を作ったり、花を育てたりしている。たいていは自転車で10分程度のところに持っている人が多いので、気軽に出かけることができる。そこに住むことはできないが、料理や食事、昼寝のための小屋を持つことはできる。敷地も広く、バーベキューをしたり、子どもたちはボール遊びもできる。新型コロナウイルスの影響で学校が休みとなり、週末だけでなく平日の昼間から家族でのんびり過ごす人の姿が見られるようになった。

ドイツは復活祭のため4月11日から14日は4連休だった。3月22日の新型コロナウイルスによる行動制限から1ヶ月も経つと人々も慣れ、それぞれにペースを見つけ生活している。散歩やジョギング、サイクリングは許されており、スーパーは開いているので生活に不便はない。もともと家が快適なら、家にいる時間が長くてもあまり苦にならないだろう。家を掃除したり、不要なものを処分したり、長い間しようと思ってできなかったことをしたという人も多い。新型コロナウイルスは、これまでになかった非日常をもたらし、不思議な時間となっている。

のどかなクラインガルテン (ハノーファー)   © Riho Taguchiのどかなクラインガルテン (ハノーファー)   © Riho Taguchi

2020年 04月20日 11時05分