入居者同士が学び、成長するソーシャルレジデンス

リモートワークを採用する会社が増え、フリーランスというスタイルも業種を問わず増えている。こういった人たちが仕事をする場所として、最近増えてきたのがコワーキングスペースやシェアオフィスだ。

Wi-Fi環境など仕事上必要なインフラが整っていて、それらを共有することで事務所や店舗を構えるより経費削減にもなり、利用者同士の交流によって情報交換やコラボが生まれる可能性もある。そんなメリットから需要が高まっているわけだが、最近ではコワーキングスペースを住居内に設けるシェアハウスというのが増えている。

2018年7月に完成した「SR Academia(ソーシャルレジデンス アカデミア)横浜」もそのひとつ。さらに、ただ職住一体というだけでなく、入居者同士が学び、成長する機会を相互に提供する場として注目されているという。

イタリアの画家ラファエロ作、世代や年齢を超えた学者たちが会した「アテナイの学堂」をモチーフに作られた「SR Academia 横浜」のリビング兼ラウンジスペース。知識を共有し学ぶ「アカデミア」シリーズを象徴するエリアだイタリアの画家ラファエロ作、世代や年齢を超えた学者たちが会した「アテナイの学堂」をモチーフに作られた「SR Academia 横浜」のリビング兼ラウンジスペース。知識を共有し学ぶ「アカデミア」シリーズを象徴するエリアだ

“学び合う”ことに焦点を当てた「アカデミア」シリーズ第1号「SR Academia 横浜」

「ソーシャルレジデンス」とは、株式会社オークハウスが展開するシェアハウスの形態。
使われなくなった社員寮など比較的規模の大きな物件をシェアハウスにしているため、適度な交流とプライバシーが両立できると、若い世代や外国人に人気が高まっているという。

さらにその中で“学び合う”ことに焦点を当てた「アカデミア」シリーズの第1号として登場したのが「SR Academia 横浜」だ。“学び合う”シェアハウスとは、どういうものなのか。同社営業本部本部長・営業推進部部長の海老原大介さんに伺った。

まず特徴として挙げられたのが「ソーシャルアプリ」の存在。「ソーシャルアプリ」とは、簡単に言うと入居者間で提供しあうサービスのこと。

「例えば、ファイナンシャルプランナーの方がマネーセミナーを行ったり、セミナーの講師をしている人がプレゼンの方法を教えたり、アメリカ人が英会話レッスンを、ヨガ講師がヨガをレクチャーするといったことが行われています。自分が提供するアプリで収入を得ている人もいます。
レジデンスは人材の宝庫。ただ住むだけではなく、交流しながらそれぞれが成長していく場として作られたのがソーシャルレジデンスアカデミアです」

アプリ開催の告知はレジデンス内に掲示され、興味がある人がアクセスするスタイルだ。入居者が無料で使える24時間利用可能なWi-Fi完備のオフィススペース、セミナールームといったコワーキングスペースを利用すれば施設の使用料はかからずに済むというメリットもある。84部屋、100人近くが住むレジデンス。入居者同士のコラボや新しい仕事の創出といったことも期待されている。

コワーキングスペースとして使えるスタディルーム(写真左上)。シアタールーム(写真左下/筆者撮影)はセミナーやプレゼンの練習に使われることも。アプリの中には、ヨガ、ピアノ、サックスなどのレッスンから、タイ式マッサージ、ネイルなどの施術のほか、ポーカーを教えてもらえるなんていうものまであるコワーキングスペースとして使えるスタディルーム(写真左上)。シアタールーム(写真左下/筆者撮影)はセミナーやプレゼンの練習に使われることも。アプリの中には、ヨガ、ピアノ、サックスなどのレッスンから、タイ式マッサージ、ネイルなどの施術のほか、ポーカーを教えてもらえるなんていうものまである

音楽フェス、フットサル大会などアクティビティの提供も

コート付き「ソーシャルレジデンス東小金井」で開催されたバスケットとフットサル大会の様子コート付き「ソーシャルレジデンス東小金井」で開催されたバスケットとフットサル大会の様子

ハード面だけでみても十分魅力的ではあるが、「ソーシャルレジデンス」に共通する魅力は「多様なコミュニケーションの場が用意されていること」だと海老原さんは言う。

入居者発信のパーティは、大なり小なりどこのシェアハウスでも行われているだろうが、「ソーシャルレジデンス」の場合、オークハウスが提供するサービスとして全レジデンスを巻き込んだ大規模なイベントも開催されている。それが「ソーシャルアクティビティ」と呼ばれるものだ。

例えば「ソーシャルレジデンス蒲田」では「蒲フェス」という音楽祭が年に一度開催される。入居者を含め150人ほどが参加する一大イベントで、毎年かなりの盛り上がりを見せるそう。
またレジデンス内にコートを持つ「ソーシャルレジデンス東小金井」では、約20のレジデンスが集まって対抗フットサル大会が開催される。青梅でのサマーキャンプには、わざわざ2時間くらいかけて成田から参加した人もいたという。

「大型レジデンスで何かイベントをやろうと思うと、入居者さんだけでは大変な面もあります。イベントの開催をサービスとして体系化することで、入居者さんの満足度もあがりますし、イベント後はみなさんがSNSで拡散してくれるので、レジデンスの評判もあがるという嬉しい効果もあります。
レジデンスに住む期間は平均すると6、7ヶ月と比較的短い方が多いです。日本での滞在期間が決まっている外国人などは、こうした催しに参加して思い出を作ったり交流を深めたいという方が多いので喜ばれています」(海老原さん)

敷金礼金、保証人なし。外国人や若者の立場にたった賃貸システム

【写真上】中央のベレー帽の女性がハンさん。「外国からきた孤独とか寂しさ、不安はここに来てまったく感じなくなりました」と話す。写真は冬にみんなで餅つきパーティを行ったときのもの<br>【写真下】退去する人とのお別れパーティや夏の流しそうめん大会の様子など、思い出の写真がロビーに飾られている【写真上】中央のベレー帽の女性がハンさん。「外国からきた孤独とか寂しさ、不安はここに来てまったく感じなくなりました」と話す。写真は冬にみんなで餅つきパーティを行ったときのもの
【写真下】退去する人とのお別れパーティや夏の流しそうめん大会の様子など、思い出の写真がロビーに飾られている

「SR Academia(ソーシャルレジデンス アカデミア)横浜」全84室あるシングルルームは、完成以来満室という人気ぶり(取材時2019年8月時点)。
最寄り駅まで徒歩10分以上かかり、アクセス良好とは言い難い立地ではあるが、それでも満室になっている理由は、先に紹介した「ソーシャルアプリ」や「ソーシャルアクティビティ」といった充実したサービスのほかに、敷金礼金なし連帯保証人も必要ないという、入居者側の立場にたった賃貸システムにもあるだろう。

学生時代からこの物件に住み、大学卒業後オークハウスに就職した営業推進部のハン・ジエイさんは、留学生として日本にやってきた時のことを振り返る。
「外国人が日本で住まいを見つけるのはとても難しいです。初めて日本に来たのに保証人になってくれる人なんていないですから。私もここに来るまでに3、4軒断られて困っていました。オークハウスの物件は、個人の信用だけで貸してくれるので、留学生やビジネスで日本に来る外国人にはとても人気があります」

ハンさんは現在「SR Academia横浜」に住んでいる入居者のひとり。その生活について聞いてみた。

「先日もケーキを作ろうと思いたって、最初はひとりで準備してやってたんですけど、リビングを通りかかった子に一緒にやらない?って声をかけて数人でケーキを作りました。
あとは、隣の部屋の人がトレーナーをしているので、ジムに一緒に行ってトレーニング方法を教えてもらいながら運動しています。なかなか一人じゃ続けるのは難しいですけど、誰かに教えてもらえると続けられるし、こうしたコミュニケーションがあることがシェアハウスの魅力ですね」

と話してくれた。
「個人の信用で借りられて短期間でもOK、入居者同士で情報交換もできるというこの空間が外国人や若者の受け皿的な存在になっていると思います」と海老原さんも話す。

「ただ住むだけではなく、入居者同士が学び、成長する機会を提供できる場」へ

シェアハウスがまだ知られていなかった20年ほど前、1998年に創業したオークハウスは、それぞれの時代のニーズにあわせたシェアハウスの賃貸サービスを提供してきた。

「スマートフォンの普及から働き方も急速に変化してきました。時代のスピードに合わせて住まいもフレキシブルに対応していく必要があると感じています」と海老原さん。
農園、アウトドアなど趣味に特化したものや、シングルマザー向け、保育園付き、など個性の強いシェアハウスが続々と登場。シェアハウスはより多様化している。

「ただ住むだけではなく、入居者同士が学び、成長する機会を提供できる場であるべき」として作られたソーシャルレジデンスアカデミアシリーズ。今回紹介した横浜に続き、第2号「ソーシャルレジデンスアカデミア 大阪尼崎」が2019年9月に完成した。
“学び合う”シェアハウスからどんなものが生まれるのか、どんな展開を見せるのか、楽しみだ。

【取材協力・写真提供】
https://www.oakhouse.jp

2019年9月に完成したばかりの「アカデミア」シリーズ第2号「ソーシャルレジデンスアカデミア大阪尼崎」 <br>①シアタールーム②約12m2の居室③ライブラリー④ラウンジ2019年9月に完成したばかりの「アカデミア」シリーズ第2号「ソーシャルレジデンスアカデミア大阪尼崎」
①シアタールーム②約12m2の居室③ライブラリー④ラウンジ

2019年 11月17日 11時00分