原点は入居者の喜ぶ表情がみたいという思い

就職シェアハウスクルーソーの前に立つ、株式会社キャリアアップ代表取締役の野口政隆氏就職シェアハウスクルーソーの前に立つ、株式会社キャリアアップ代表取締役の野口政隆氏

就職活動は学友がライバルになる場合さえあり、元来孤独なものだ。しかし一人では得られる情報が限られており、どんな会社があるかリサーチするのも難しい。
一方、中小企業は優秀な人材を得るのに苦心している。ナビ媒体を使って募集をかけても製造業は敬遠されることが多く、応募自体が少ないようだ。

そんな状況を変えようと活動しているのが、株式会社キャリアアップの運営する就活シェアハウス・クルーソー。住人の就活生は「クルー」と呼ばれ、ともに就活という荒波をわたる船員にたとえられている。クルーたちはクルーソーで共同生活をするだけではなく、さまざまなイベントに取り組みながら成長し、就職が決まれば旅立っていく。2016年3月に開業したばかりだが、すでに成果も出ているそうなので、代表取締役の野口政隆氏に話をうかがった。
「株式会社キャリアアップの母体である株式会社ディーマンのクライアントはビルオーナーで、空き家を改装して集客し、オーナーの収益アップを得意としてきました。しかし、入居者との接点がなく、入居者の喜ぶ表情をみたいという思いがありました。そこで、入居者が喜ぶ建物を自社で作り、運営管理もしようと考えましたが、単に賃貸マンションを作ってもおもしろくない。ターゲットを絞るために社会問題に目を向けると、就職ミスマッチと空き家問題に気づいたのです」
では具体的に、どんな活動をしているのだろうか。

就活生と中小企業のWIN×WINの関係に

大阪市西淀川区にあるクルーソーの部屋数は5部屋。7~8畳のドミトリー形式で3人1部屋だ。台所やトイレも共同。2階に30人入れるミーティングルームがあり、さまざまなイベントが開催できる。風呂の浴槽には5~6人入れ、男女が入れ替わりで入っている。風呂では普段相談できないことも話せ、一気に人間関係が近づくという。

しかし就活シェアハウスクルーソーは、就活生だけに向けたものではない。中小企業を中心とした約110社が会員企業となり、就活生たちとのマッチングを実現している。
「中小企業は新卒の応募が少ないので中途採用が中心ですが、即戦力の社員が入ると、社内でそれまでがんばってきた子がくさってしまうことも多々あります。若い後輩ができることにより、既存社員のパフォーマンスもあがりますから、中小企業にも新卒採用を目指してほしいと考えています」
と、野口氏。
マッチングの方法は多種多様だ。特にユニークなのが、近畿圏の大学98校をはじめ、全国156校のキャリアセンターや就職課などで配布されている、フリーペーパー『Gakmotto』の発行だろう。内容は元気の良い企業の経営者や、そこで働く若者の紹介のほか、頑張っている大学生へのインタビューなど、就活生にとっては興味の惹かれるものばかり。企画や取材先企業へのアポイントメント、取材、執筆などはすべて、クルーや株式会社キャリアアップで働くインターン生が行っている。
中小企業にとっては意欲ある就活生とふれ合う機会になるうえ、株式会社キャリアアップにとっては会員企業を増やすチャンスになる。そして就活生は元気のある企業を見つけることができる、と、一石三鳥なのだ。

このほか、消費者においしく安全な食品を提供するべく農家を応援する食品卸会社と提携し、毎週日曜日の朝7時から10時に朝市を出店しているのだが、接客はもちろん、店頭の展開やポップなどもみな、クルーやインターン生が考えている。

会員企業も参加するバーベキューなどのイベントも、主導は就活生たち。現在クルーは男性3人女性2人、インターン生は2人だが、シーズンには10人程度が参加し、それぞれにイベントの企画をたて、活動したそうだ。

クルーと株式会社キャリアアップのインターン生が企画から取材までを担うフリーペーパー『Gakmotto』クルーと株式会社キャリアアップのインターン生が企画から取材までを担うフリーペーパー『Gakmotto』

人に喜ばれることをモチベーションに

クルーソーには、不思議と意識の高い就活生が集まるという。社交性や積極性がなければ、共同生活は難しいので、ネガティブ志向の人は興味を持たないのかもしれない。
クルーたちは、週に一度はミーティングを行い、理想の働き方などをディスカッションするほか、毎週水曜日には、朝8時から近隣清掃も行っている。

「仕事は人に喜ばれてなんぼ。でも、なにをしたらいいかわからない就活生がほとんどです。掃除は誰にでも、今すぐできる。吸い殻を拾っていれば、必ず誰かが喜びますし、集まったゴミをみればはっきり成果がわかりますから、クルーたちも眠い目をこすりながら、毎週でてきてくれます」
と、野口氏は笑う。

新卒採用を目指すクルーばかりではない。卒業してすぐ働かず、一年間じっくり就活しているクルーもいる。

「日本には足並みをそろえなくてはいけないような風潮がありますが、そんな必要はありません。家にいると、家族の目が気になる人はクルーソーにきてください。生活費はインターンで稼げます。一年で理想の就職先が見つからなければ、もう一年就職活動をしてもいいんです。焦らず、理想とする将来に進んでほしいと考えています」
就職だけでなく、新たな事業を起こしてもらうことも視野に入れている。クルーソーの活動で経営者たちとの人脈を広げ、将来的に起業をしてほしいと考えているそうだ。

2階のミーティングルームでは鍋パーティなども開催されている2階のミーティングルームでは鍋パーティなども開催されている

企業、求職者双方が、自らの魅力を再発見するきっかけに

部屋はドミトリー形式で3人1部屋部屋はドミトリー形式で3人1部屋

今後は、塚本エリアでシェアハウスを10棟ほどまで増やす予定。カテゴリー別のシェハウスにできないかと考えている。
「中途採用を目指す人ばかりのシェアハウスや、起業家志望を集めたシェアハウスなども模索しています。しかし、建物を増やすにはスポンサーが必要です。たとえばスポンサーが建物ごとプロデュースして、求職者の家賃を無料にし、その代わりクルーは必ずスポンサー企業にインターンにいくというアイデアも温めています。また、地方の若者たちを応援したいですね。地方は会社が少ないのですが、単身で大阪に飛び込んでくるのも難しい。だからこそ受け皿となりたいのです」
と、野口氏の計画はアグレッシブだ。

就職ミスマッチの問題は注目されており、今後、魅力的な企業と実力をそなえた求職者の出会いのチャンスを創出するため、さまざまな取り組みが行われるだろう。しかしそれは逆に言えば、魅力的な企業に就職したければ、実力を持たねばならないということ。逆もまたしかりなのだ。
クルーソーの活動は企業・求職者双方が自らの魅力を再発見し、伸ばすきっかけにつながるかもしれない。

就活シェアハウス・クルーソー
http://crewso.co.jp/

2016年 12月22日 11時05分