使い方が違う!ツッパリ嬢が怒るポスターが話題に

インパクト大と話題を呼んだツッパリ嬢のポスター。それぞれに何が間違っているかを鋭く指摘しているインパクト大と話題を呼んだツッパリ嬢のポスター。それぞれに何が間違っているかを鋭く指摘している

元号が令和に変わってすぐのこと。中京、関西のホームセンターを真っ赤な10枚のポスターが占拠した。セーラー服に身を包んだツッパリ嬢が「突っ張り棒の使い方が間違っている!」と怒っているというもので、あっという間に話題になった。モデルは1975年に日本で初めて突っ張り棒を発売した平安伸銅工業株式会社の三代目社長である竹内香予子氏だ。

突っ張り棒は同社の初代社長、竹内氏の祖父がアメリカでお風呂にカーテンを取り付けるために使われていたシャワーカーテンポールをヒントに釘やネジを使うことなく簡単に収納スペースを作り出せるものとして開発し、使い方を提案。収納といえば押入れが主流だった時代に部屋を傷つけずに洋服などを吊るせるようになると人気を呼び、一気に普及した商品である。

それから40年余。売れるからと一時は十数社が同じような商品を作っていた時代もあったそうだが、過当競争で価格が下落。撤退する企業が相次ぎ、現在では突っ張り棒を作っている会社は数えるほどに。そのうちでも主力商品として作り続けているのは同社のみ。現在もトップシェアを誇っている。

その同社に、使っているうちに突っ張り棒、突っ張り棚が落ちてしまったというユーザーの声が寄せられており、あるTV番組が番組制作にあたって調査を行ったところ、実に9割近い人が間違えた使い方をしていることが分かった。ぱっと見て使い方がイメージできる身近な商品であるため、説明を読まずに買い、使い方を確認せずに使っている人が多いのだろう。ツッパリ嬢ポスターはそれに注意を喚起するために作られたものなのである。

9割(!)の人は使い方を間違えている!?

では、どこに間違いがあるのか。まず、購入時。同じ重さを載せられる商品が複数あったとしたら、そのうちでもっとも安いものをという選び方をする人が多いと思うが、実はそれだけでは足りない。もうひとつ、使いたい場所の幅と商品が使える幅の兼ね合いを見る必要がある。

「商品に記載されている数値は耐荷重といい、最小限伸ばさずに突っ張って使った場合に載せられる重さです。実際には伸ばして使うわけですが、伸ばせば伸ばすほど耐荷重は落ちます。同じ10キロを載せられる70~100cmで使える商品と100~150cmで使える商品を幅100cmの場所で使うとしたら、より安心して使えるのは後者ということになります」

商品にはその説明が書かれているものの、ホームセンターでは同種の商品が複数あって違いが分かりにくい。そのため、つい目立つ数字から選んでしまいがちだが、安全に使うためにはもう少し注意したほうが良いわけだ。

付け方にも間違いがある。突っ張り棒にはパイプを回して取りつけるバネ式、長さ固定ねじで止め付けるジャッキ式の2種類があるが、取り付け方はそれぞれ違う。バネ式は取り付ける場所の幅よりもパイプを長めに出しておいて押し込むようにして付けるのが正しいそうだが、多くの人は最初は短くしておき、取り付け位置で伸ばしているのではなかろうか。だが、この付け方だと内部のバネの力を十分に発揮させられない。結果、落ちやすくなることもある。

ジャッキ式の場合は逆に短めな状態にしておき、設置する場所でパイプを伸ばし、長さ固定ねじを締めて長さを固定、さらにグリップを回して取りつけるのだが、長さ固定ねじの締め方が甘いことが多いのだとか。「ジャッキ式はパイプに穴が開くまでねじ込まなければいけないのですが、パイプに当たった時点で良しと思ってしまうケースがあるようです」

左上から時計回りに。耐荷重と伸びる範囲は商品ごとに記載されていて、写真はジャッキタイプ。平安伸銅工業の社内。随所に同社製品が使われているのがお分かりいただけるだろうか。突っ張り棒とは異なる、内部が見えないラブリコのパッケージ。突っ張り棒の使い方が分かる竹内氏の著書左上から時計回りに。耐荷重と伸びる範囲は商品ごとに記載されていて、写真はジャッキタイプ。平安伸銅工業の社内。随所に同社製品が使われているのがお分かりいただけるだろうか。突っ張り棒とは異なる、内部が見えないラブリコのパッケージ。突っ張り棒の使い方が分かる竹内氏の著書

手軽にDIYできるパーツが登場、人気に

竹内氏のご自宅で。壁際のテレビ、窓際のグリーンなどが飾られているのがラブリコ。グリーンは「DRAW A LINE」を使っても飾られている竹内氏のご自宅で。壁際のテレビ、窓際のグリーンなどが飾られているのがラブリコ。グリーンは「DRAW A LINE」を使っても飾られている

それ以外にも、下地材が入っていない壁や棚や家具など固定されていないものの間で突っ張らせるのには無理がある、水平でなければ十分に力を発揮できないなどいくつか注意点があり、聞いていて分かったのは取材している私自身も間違えている9割だったということ。とほほである。だが、上手に突っ張り棒を使えれば単に収納スペースを増やす以上のこともできる。

たとえば2016年7月に発売された「LABRICO」(以下、ラブリコ)は天井と床に木材を突っ張らせる商品なのだが、壁に棚を作るだけではなく、間仕切りになったり、柱になったり、はたまたキャットタワーになったりもする。壁に穴を開けるなど部屋を傷つけることなくDIYができるのだ。突っ張り棒が押入れの中や洗濯機置き場など人目につかないところで使われることの多い実用的な商品であるのに対し、ラブリコはインテリアとして違和感のない色、デザイン。しかも、好きなサイズで作れ、突っ張り棒と同様に簡単に移動もできる。使う木材はどこのホームセンターでも手に入る規格木材で、通販で買うこともできる。

「中古マンションを購入、リノベーションをして暮らし始めた頃、この隙間に家具を置いて活用したいと思ってもなかなか、ちょうどいいサイズがない。ラブリコはその経験から発想した商品です。家具やモノに合わせて暮らすのではなく、自分の暮らしに合わせて自分でサイズを決めて作る。そのほうが暮らしやすいはずです」

竹内氏の実体験から生まれた商品は多くの人の共感を呼んだ。長らくホームセンターに置くものとして商品を作ってきた社内からはこれまでにない色、デザイン、パッケージに不安の声もあったそうだが、ユーザーからの問合せがあっという間に不安を吹き飛ばした。

その後もユーザーからの声に応え、屋外でも使えるアイアンタイプ、壁に細いピンを差すことで壁に棚や長押上のスペースが作れるタイプなどラブリコの商品ラインナップは徐々に増加。さまざまな形で使われるようになっている。

見せる収納にも使える突っ張り棒も

ラブリコ発売の翌年には見せる突っ張り棒として「DRAW A LINE」という商品も誕生した。これはクリエイティブユニットTENTとのコラボレーションで生まれたブランドで、便利グッズとして捉えられてきた突っ張り棒を暮らしを豊かにする一本の線として再定義したもの。黒、白を基調にシンプルでスタイリッシュ、必要なものだけをミニマルに収納するためのもので、カッコよく収納する舞台となる品である。そのため、家庭だけでなく、オフィスやブティック、美容院などデザイン性を重視するような場でも多く使われている。

進化し続ける突っ張り棒だが、冒頭で挙げたように間違えた使い方をする人も多く、竹内氏はつっぱり棒博士と名乗って正しい使い方を伝える活動もしている。テレビや雑誌その他のメディアに登場、全国でセミナーを開いているのである。また、ツッパリ嬢は期間限定の予定で登場したポスターだが、想像以上の反応、評判に当初予定の店舗以外でも掲載されるなど、現在も広まりつつある。

そこで、度々登場しているのが150本もの突っ張り棒を使いこなしている竹内氏のご自宅、別名「つっぱり棒ハウス」。私もお邪魔させていただいたのだが、家中の至るところに突っ張り棒が使われており、その発想の自由さには驚くばかり。いくつか、ご紹介しよう。

まずはオーソドックスな突っ張り棒。普通なら1本で使うところを2本使う、他の品と組み合わせて使う、横にして使うなどのテクニックがあり、そうすることでより便利に収納できるようになる。

たとえば、窓辺に使って洗濯物を干すのは誰でもやるだろうが、竹内氏は2本を使い、手前側を突っ張り棒専用のカーテンリングでカーテンにしている。こうすれば来客時、手前のカーテンを引くだけで洗濯物を隠せるわけだ。あるいは突っ張り棒にピンチを吊るしてそれでチューブの調味料をぶら下げてしまう、突っ張り棒にワイヤーネットを取りつけ、そこにモノを掛けて使う、引き出しの中でモノを分けるために使うなど。真似してみたくなる使い方ばかりだ。

左上から時計回りで、2本の突っ張り棒を洗濯物とそれを目隠しするカーテンのために使っている例。突っ張り棒からピンチを吊るし、それで調味料のチューブを吊るす使い方は冷蔵庫の中で使うという自体で新鮮!キッチンペーパーは引き出しの中に入れることにより油飛び、埃かぶりを防ぐという。シンク下には突っ張り棒にワイヤーネットを結束バンドで固定、そこにボックスやスプレー容器をひっかけて利用左上から時計回りで、2本の突っ張り棒を洗濯物とそれを目隠しするカーテンのために使っている例。突っ張り棒からピンチを吊るし、それで調味料のチューブを吊るす使い方は冷蔵庫の中で使うという自体で新鮮!キッチンペーパーは引き出しの中に入れることにより油飛び、埃かぶりを防ぐという。シンク下には突っ張り棒にワイヤーネットを結束バンドで固定、そこにボックスやスプレー容器をひっかけて利用

テレビや掃除機を掛けて収納、雰囲気あるコーナー作りも

ラブリコ、「DRAW A LINE」も随所に使われている。もっとも目立つラブリコは壁に液晶テレビを掛けるために使われている。少し壁から離して設置し、コードを柱の裏に回して目立たないようにしているという。これだけの重さのものが掛けられることにびっくりだ。

掛ける収納ではラブリコで作った2本の柱の上に板を貼り、そこに掃除道具をまとめるというアイディアも。コードレスの充電式クリーナーは意外に置き場所に困るが、これならすっきり見える。見えるところにまとめて収納されていれば、さっと使え、片付けも楽だ。

「DRAW A LINE」には照明を取り付けられるのだが、これを上手に使うことで雰囲気のある空間が作れる。竹内宅では玄関に2本を突っ張らせ、そこに棚をセット、小物を飾った上で、そこにスポットライトを当てていた。突っ張り棒は鉄製なのでマグネットが使えるのだ。カードや写真を飾る、仕事場でならメモを留めておくなどに重宝しそうである。ちなみに玄関の写真の右手にある、袋を吊るしている長押的なスペースはラブリコだ。

「DRAW A LINE」の照明はキッチンで手元を明るくしたい、リビングで読書時だけ照明を使いたいというような場合にも使える。同時に小さなテーブル、トレイをセットしておけば使っているスパイスや読みかけの本などを仮置きできる。

見せていただいたいずれの使い方もなるほどと頷くものだったが、残念ながらすべてを紹介するにはスペースが足りない。同社ホームページや書籍などに多様な使い方、アイディアが掲載されているので、関心のある方はぜひ、そちらをチェック。真似して見てほしい。

左側2点がラブリコの利用法。棚にしたり、ワイヤーネットをセットしたり、ねじを打つのは柱なので壁は傷つかず、使い方は自在。右2点は「DRAW A LINE」。グリーンを絡みつかせるなどの手も左側2点がラブリコの利用法。棚にしたり、ワイヤーネットをセットしたり、ねじを打つのは柱なので壁は傷つかず、使い方は自在。右2点は「DRAW A LINE」。グリーンを絡みつかせるなどの手も

2019年 11月04日 11時00分