建築エージェンシーがプロデュース。屋内ガレージ付きの賃貸物件

町田駅から徒歩約19分、バス通り沿いに独特な四角い建物が3つ並んでいる。“自由に暮らせる空間”をテーマにした屋内ガレージ付きの一戸建て賃貸「STAPLE HOUSEⓇ(ステープルハウス)」だ。株式会社クリーク・アンド・リバー社がプロデュースする賃貸住宅「CREATIVE RESIDENCEⓇ(クリエイティブレジデンス)」の新シリーズとして、2018年の秋に登場した物件である。

クリーク・アンド・リバー社は、もともとクリエイターなどのプロフェッショナル人材に強い会社だ。同社の事業の3つの柱は、「エージェンシー事業」と「プロデュース事業」と「ライセンス事業」。これらを軸にテレビ業界から始まった事業領域は、Web、ゲーム、医療、IT、法曹、会計、研究などへと大きく広がり、2015年には建築のエージェンシー、プロデュース事業も手がけるようになった。

現在、同社では約450社ある設計事務所と提携して企画を進めている。外部から持ち込まれた相談案件の課題解決に、提携企業と共に取り組んでいるのだ。「STAPLE HOUSEⓇ」もその一つだった。

2階を含めて、まるで大きなワンルームのような独特な木の空間だ。リビングから土間、そして大きく開けた通り側が一望できる2階を含めて、まるで大きなワンルームのような独特な木の空間だ。リビングから土間、そして大きく開けた通り側が一望できる

駅から遠い土地でも、価値を上げるには

「STAPLE HOUSEⓇ」は、同社の建築プロデューサーの鈴木謙一氏が、町田市高ヶ坂エリアの地主大家、Sさんから土地活用のアイデアを求められ、提案した企画だったという。

実はそのころ、同社の登録建築家であるKaデザイン代表の山本健太郎氏から提案があったのが、「STAPLE HOUSEⓇ」の原型ともいえる建物だった。
山本氏には、以前同じような条件の土地で人気物件を手がけた実績があった。横浜市のあざみ野につくった、120m2ほど、家賃20.5万円というテラスハウスだ。駅から徒歩20分というロケーションにもかかわらず、竣工以来14年間空室なし。キャンセル待ちが出るほどの人気で、その要因の一つとなったのが、屋内ガレージだった。

この企画は、地域の価値向上にもつながり、賃借人も喜ぶはず、と自信があったという。そこで鈴木氏は、「まち自体の代替わりをうまく進めないと、例えば地域の行事を受け継ぐ人がいなくなるなど、地域がどんどん廃れていってしまう。良質な賃貸住宅を建てれば、若い世代が戻ってくることも期待できます」と訴えたそうだ。

四角い外観が特徴の3棟。真ん中と左端の棟はすぐに入居が決まるほど人気で、右端は内覧会やレンタルスペースとして使用するため賃貸していない四角い外観が特徴の3棟。真ん中と左端の棟はすぐに入居が決まるほど人気で、右端は内覧会やレンタルスペースとして使用するため賃貸していない

可変性の高い構造で、先々の需要の変化に柔軟に対応

では、「STAPLE HOUSEⓇ」はどのような建物なのだろうか。

「STAPLE」とは、ホチキスの針の意味で、その名のとおり、まるでホチキス針のようなコの字形の木製フレームがボックス形状をつくっている。
大きな特徴は、建材として「I型ジョイスト」を使用していることだ。I型ジョイストは、無垢材よりも強度や精度が高く、ロングスパンの構造材として使える。倉庫のように建物を支え、内側に柱などの構造体がない、大空間をつくることが可能だ。部材をむき出しにして使うことでコストを抑えることもでき、自由な間取りに変更もしやすい。

人口減少が進む中、10年先の町田界隈の不動産ニーズがどう変わっていくのか、誰にもわからない。そんな状況で、3階建ての鉄骨造のワンルームマンションを建てるのはリスクが高い。時代のニーズに合わせて対応できる柔軟性の高い構造も、STAPLE HOUSEⓇを提案した理由だったという。

建物は延床面積100m2超でありながら、1LDKの間取りになっていて、2フロアに分かれてはいるが、全体がワンルームのような一体感がある。

ダイニングの上はハンモックになっていて、子どもたちにとっては楽しい遊び場だダイニングの上はハンモックになっていて、子どもたちにとっては楽しい遊び場だ

屋内ガレージ、ハンモック、DIY可の壁…理想の暮らしを叶える住まい

上:DIYで自転車をぶらさげるフレームを壁に設置/下:釘を壁に打ち付けて本棚をつくることも可能だ上:DIYで自転車をぶらさげるフレームを壁に設置/下:釘を壁に打ち付けて本棚をつくることも可能だ

玄関に入るとすぐ横手にある屋内ガレージは、土間スペースとしても活用できる。例えばサーフィンやスノーボードが趣味の人はボードの整備スペースにしてもいいし、子どもの遊び場や、小さなショップとして活用することも可能だ。
現在入居している住人の1人は、ガレージに車を入れず、オモチャ箱のようにして、趣味のグッズやたくさんの自慢のスニーカーを並べているという。今度は本物のバイクを購入して飾るつもりだそうだ。

土間で靴を脱ぎ、リビングへと進むと、高い天井を見上げることができる。10mあるI型ジョイストの梁がむき出しになっており、建物にユニークな印象を与えている。

2階のスペースは、間仕切りや家具、カーテンなどを活用して空間を分け、家族個々の空間とすることも可能だ。吹き抜けになっているうちの一部は、ネットが張られた〝ハンモックスペース〞で、ここに寝転がっての読書時間は最高に気持ちよさそうだ。

1、2階の壁面には、クギやネジで穴を開けても目立たないOSB合板を多く使用。一部DIYが可能なため、住む人の自由度が高いというのも、この建物のウリになっている。

2018年の秋、自動車関連の雑誌に、ガレージのある家としてこの物件が掲載された。ちょうど不動産会社が募集広告を始めたタイミングと重なり、大きな反響があった。3棟全体が完成する前に、2棟の予約が入ったのだ。
「理想のライフスタイルを楽しめる空間の魅力が、ユーザーに伝わったのでしょう」と鈴木氏。土間があり、釘を使用してDIYでき、ハンモックがあり、さらにペットを飼うことも可能。このような物件は、賃貸ではなかなか見つからないだろう。

建物の魅力でレンタルスペースとしての人気も上々

3棟のうち1棟は、内覧会に利用するため、すぐには貸さない方針としていた。ただし、ランニングコストがかかるので、レンタルスペースとして時間貸しを始めた。

町田駅から徒歩19分もかかるので当初は期待していなかったが、時間貸しは、平日を含めほぼ100%の利用率となっているそうだ。想定していたのは近隣のママ会だったが、それ以外にも忘・新年会、送別会、同窓会、卒園する子どもと保護者のパーティ、ゲームの会、YouTuberやドラマの撮影、コスプレの撮影会、会社の研修、会議など、多様なニーズがあった。
参加者に感想を聞くと、非日常感が魅力とのこと。今ではリピーターも多いという。

これまで、賃貸物件に住む人は、建物に暮らしを合わせていたが、これからは、個々のニーズに合わせて自由に暮らせる建物が必要だ、と鈴木氏。「ファミリーだから4LDK、独身だからワンルームなどと決めつけてはいけない」と話す。建物が住人の暮らし方を広げ、そこを気に入って長期に住むきっかけになれば、やがて地域の住民として定着し、まちを盛り上げる一員になっていくだろう。

「STAPLE HOUSEⓇ」は、すでに郊外に土地を持っていて、駅から遠いなど活用に困っている地主大家さんがメインターゲットになる。今後3~4年かけて、合計100棟を目指して増やしていく計画だ。さらにさまざまな土地の形状に合うよう、80m2のひと回り小さいタイプや、テラスハウス型の3棟長屋も検討中とのこと。また、観光地での一棟ホテルとして使用する可能性もあるという。
現在賃貸している2棟には、単身世帯とカップルがそれぞれ入居し、個々の趣味などをエンジョイしているという。通常の賃貸物件ではなかなか実現できない使い方もできることから長期での賃貸になりそうで、大家、入居者双方にとってメリットがある物件だと言えるだろう。

「STAPLE HOUSEⓇ」の今後の展開と、建物が生み出す自由なライフスタイル、そして地域への影響が楽しみだ。

レンタルスペースとしても活用されていて、いろいろなパーティ需要もあるレンタルスペースとしても活用されていて、いろいろなパーティ需要もある

2019年 08月11日 11時00分