日本では2025年までにキャッシュレス決済比率40%が目標

経済産業省より「キャッシュレス・ビジョン」が公表され、2025年に大阪開催予定の国際博覧会に向けて、キャッシュレス決済比率40%を達成目標としている経済産業省より「キャッシュレス・ビジョン」が公表され、2025年に大阪開催予定の国際博覧会に向けて、キャッシュレス決済比率40%を達成目標としている

日本にもキャッシュレス化の波が押し寄せている。
2018年はメガバンクが相次いでATMや店舗の削減を実施し、また電子マネーのPay Payが新規参入にあたって総額100億円キャンペーンを実施して話題になるなど、キャッシュレス化への動きが一段と表面化した年でもあった。

キャッシュレス化とは、現金を使わない取引とその取引が増加し一般化することも指しているが、以前から給料の口座振り込み、公共料金等の自動振り替え、クレジットカード決済は普及しているし、キャッシュカードへの即時決済機能 (デビットカード機能) を付加して利用したり、インターネットで決済を行うネット専業銀行を利用したりすることで日本国内でのキャッシュレス化は進んでいるとも見える。

経済産業省のデータによれば、2008年当時のキャッシュレス決済は全体の11.9%、約35兆円であったが、2016年には全体の20%に達し、決済金額も約60兆円にまで膨らんでいる。2018年4月には同じく経済産業省より「キャッシュレス・ビジョン」が公表され、2025年に大阪開催予定の国際博覧会に向けて、キャッシュレス決済比率40%を達成目標としている。さらに時期は未定ながら、キャッシュレス決済比率80%を目指して環境整備を進める方針も打ち出されている。

電子マネー単体の普及だけでなく、スマートフォンにもクレジット機能、キャッシュカード機能、電子マネーの搭載などがあり、使い方次第では日常生活で全く現金を使わなくなる可能性も高まっている。スマートフォンの普及が進み、手元で簡単に電子決済できることが、キャッシュレス化と決済機能のシェア争いに拍車をかけているということなのだろう。

日本政府もこうした状況を踏まえて、労働基準法を改正して企業が直接、電子マネーで給料を支払うことを可能にするという構想を掲げている。もし実施されれば特に若年層で電子マネーの口座がメインバンク化する可能性も高まっている。

日本人は現金での取引を重視する傾向が強い

とはいえ、日本人は現金での取引を重視する傾向が強く、現金決済であれば値引きしたり、ポイント還元率を高めたりする店はいまだに多い。カードやスマートフォン決済が便利で機能的で安全だとしても、目の前の現金以上に信用できるものはないという固定観念が強い。キャッシュレス決済に「違和感がある」人としては、長年現金決済に慣れている高齢者が多いといわれている。

現状、中国では既にキャッシュレス決済を10億人が利用しているらしい。例えば街の露店であってもWeChat PayやAli PayなどでQRコードによる決済が可能であるのは常識になっている。日本ではLINE PayやAmazon Pay、楽天Payなどが次々誕生しサービスを開始しているが、仕組みがサービスによってやや異なっていて、その優劣を競いながらシェア争いをしている状況で、キャッシュレス化自体を促進する原動力になっているかは微妙といわざるを得ない。
「カードお断り」ならぬ「現金お断り」の店舗が登場してはいるようだが、本格的な普及にはまだ時間がかかると思われる。

電子マネーはクレジットカードとはキャッシュレス化の意味合いが異なる

これまでキャッシュレス化の代表であったクレジットカードは利用者に信用を供与する証であり、審査を経たカードの信用によって「ツケで買う」仕組みなので、所得や資産があってこそであるという点で、形式的なキャッシュレスといえる。

しかし、これが給与が電子マネーになるとなると、これまでのキャッシュレスとは意味合いが大きく変わる。
電子マネーは決済サービスと共に貯蓄があるものであるため、普及すれば銀行口座がなくても問題なく生活できる人が増えることになる。

直近ではLINEがみずほ銀行と提携してLINE銀行の設立を発表した。LINE Payを中心としたに決済および貯蓄サービスを提供するであろうことは確実で、また個人向けのスコアリングサービス(ユーザー個人の信用評価を可視化するサービス)を提供するLINEスコア、および個人向け無担保ローンサービスのLINEポケットマネーの提供に向け、準備を進めることも明らかにしている。これらのサービスが連携すれば、LINEポケットマネーのローン金利は一律ではなく、ユーザー個人のLINEスコアに応じた利率で融資することも可能になるから、より個人にフィットしたキャッシュレスサービスの提供ができるようになる。

家賃決済でも徐々に進むキャッシュレス

不動産業界においてもキャッシュレス化の波は押し寄せており、特に賃貸物件でその利用がみられる不動産業界においてもキャッシュレス化の波は押し寄せており、特に賃貸物件でその利用がみられる

とはいえ、キャッシュレス化の進行は止められない。
不動産業界においてもキャッシュレス化の波は押し寄せており、特に賃貸物件でその利用がみられる。実は、家賃のクレジットカード決済は、管理会社としては長年導入したいサービスの筆頭であった。
賃借人からすると毎月振り込む手間と振込手数料が省かれれば、より便利でコスト軽減にもなる。クレジットカード決済でポイントが溜まるというのも魅力で、賃借人年齢層の中心である若者の給与所得者の多くが望むサービスであるが主な理由だ。

またクレジットカード決済であれば(賃借人のカードが限度額に到達していない限り)毎月特定の日時に自動で決済され、家賃未払いの防止にも繋がることから、管理会社および大家のメリットも決して小さくない。
ただし、クレジットカードの決済手数料は原則としてサービスを提供する側が負担する仕組みであり、このコスト負担が最大のネックとなってなかなか実現できない経緯があった。

しかし、2014年には大東建託が自社管理物件を対象に家賃のクレジットカード決済を開始し、翌2015年には現LIFULLが運営する不動産ポータルサイトLIFULL HOME’Sでもサイト利用企業を対象にサービスを開始している。
2017年には日本管理センターが三菱UFJニコスおよびジェーシービーと提携し、Visa、MasterCard、JCB、American Express、Dinersなどのクレジットカードで月々の家賃をはじめ入居から退去までの一切の精算をクレジット決済することを可能にしている(一括払いのみ/カード手数料は日本管理センターが負担)。

直近では、いい生活がSMBC GMO PAYMENTとの提携により、住まい関連アプリの「pocketpost」に「pocketpost pay」を追加し、毎月の家賃だけでなく更新料、解約時の清算金などもアプリ上でカード決済可能にすると発表している(現在実証実験中とのことで本格運用時期は未定)。

また、エイブルもPay Payと提携し、店舗ごとに設置したQRコードをアプリで読み取るユーザースキャン方式で電子マネーによる決済を可能にすると発表した(2019年2月1日より開始)。電子マネーで家賃決済ができるようにしたのはエイブルが初となる。

住宅購入決済におけるキャッシュレス化はカード手数料次第?

賃貸管理会社などがカード手数料を負担してまでもクレジットカード決済などの導入に踏み切ったのは、入居者の増加と退去阻止のためのサービスとして、キャッシュレス決済が主流になるとの考えからだ。管理戸数・掲載件数が多い管理会社大手やポータルサイトであれば、カード決済の手数料をスケールメリットによって引き下げられるとの読みもあるようだ。電子マネーはその場で決済する手段なので、家賃決済の利便性がどれだけ担保されるかについては今後注目する必要があるだろう。

一方で、分譲住宅の購入決済にクレジットカードを活用するとなるとハードルは極めて高い。クレジットカードで住宅を購入するには極めて高いクレジットスコアが必要になることが考えられるからだ。
また、ここでもクレジットカードの決済手数料負担が販売側に重くのしかかることになり、例えば5,000万円のマンションをカードで一括購入すれば、販売者がカード会社に支払う手数料(4~5%想定)は200~250万円に達することになる(かつてダイナースクラブとタマホームが協力して試験的にカードで住宅購入可能というキャンペーンを実施したことがあるが極めて例外的で以降は実施されていない)。

ちなみに、現金流通量が対GDP比で僅か1.7%(2016年調査)と世界一キャッシュレス化が進んでいるスウェーデン(日本は19.4%:日銀が金融緩和によって経済成長率を常に超えるマネーサプライを実施してきたことも現金流通のGDP比率が高い要因である)でさえ、住宅購入に際してクレジットカードは使用できない。

そもそもクレジットカードは後払いのため購入した商品が現金化されることがあり(日本では現金化目的でのクレジットカード利用は規約によって禁じられている)、個人の利用限度額も上級カードでない限り50万円程度までに設定されていることもあって、100万円単位の商品の購入には極めて使いにくくできている。

また、住宅購入に際してはほぼ100%銀行振り込みなどの決済手段が使われており、その意味では既にキャッシュレス化されているともいえるため、今後不動産業界でキャッシュレス化が進むとすれば、専ら賃貸分野での活用ということになる。

これまで示したように、キャッシュレス決済は簡易でリスクの少ない支払い方法であり、ポイントの付与などもあって購入する側にとってはインセンティブの高い決済手段だが、販売する側にとってはカード会社に支払う手数料が依然として大きな壁となる。

住宅や自動車など高額商品ほど手数料自体の金額も看過できない水準になるため、不動産業界においては当面賃貸物件の支払いに関してのみキャッシュレス化が徐々に進むものと考えられる。今後はこの手数料をどうやって引き下げられるのかをカード会社と協議し、家賃も住宅ローン返済も支払える仕組みに期待したい。

現金流通量の対GDP比。日本は19.4%で先進国の中では、まだまだ高い現金流通量の対GDP比。日本は19.4%で先進国の中では、まだまだ高い

2019年 02月21日 11時05分