地方創生とともに注目される「人材還流」の動き

あなたは、何故その場所で暮らしているのだろうか?その場所は、「住みたい場所だから」「暮らしやすく、生活が豊かだから」で選んだのだろうか?多くの人は、まずは「職」から入り、場所を決め、「住まい」選びをし、生活をスタートさせていると思う。

地方創生、地域活性などのワードとともに「人材還流」が注目されてきている。
まずは、「職」から…と、厚生労働省は「LO活プロジェクト」を発足。人材の東京一極集中を緩和し、地方へ必要な人材を送り込むため、東京に設置されている「移住・交流情報ガーデン」や地方自治体などから地方への移住情報などを収集し、WebサイトやSNS上で提供しはじめた。限定的ではあるが、平成27年7月16日~平成28年3月31日までの期間中に職業相談・職業紹介をする予定だ。地方の「職」を紹介することは、その場所に人の流れをつくる一つの試みとなるだろう。ただ、実際に暮らしを豊かにおくるためには、「職」の情報だけでは足りていないように思う。

そんな中、いちはやく移住希望者の「職・住」のバランスを見つめなおしながら「暮らし」のサポートをする地方での任意団体がある。「京都移住計画」もそのひとつだ。

「京都移住計画」は、京都で暮らしたい人に向けて、サポートとともに移住応援サイトの運営を行っている。サイトの中では求人紹介や住まいの相談も受けるほか、実際の移住者の声も紹介している。京都に移り住みたい人と、移り住んだ人や長く暮らしている人がつながる事で、暮らすことの輪郭をはっきりさせ、移住をもっと現実的に考えてもらおうという取り組みである。

今回は、その京都移住計画のメンバーである岸本千佳さんにお話を伺ってきた。

仕事と住まいと暮らし、この3つが揃うことが大切

もともと京都の宇治市出身の岸本さんは、大学で建築を学んだあと、東京の不動産ベンチャーで企画営業を行っていた。カスタマイズ賃貸やシェアハウスの企画を手掛けるうちに“住まい方はもっと選択肢があっていい”と思うようになったという。

「住まい方の選択肢や自由度を考えるにつれ、暮らし方や働き方も含めて思いをめぐらすことが多くなりました。生活と仕事と住まい…どうやったら豊かに暮らせるようになるのだろう、と考えるにつれ、二拠点居住、そして“移住”という暮らし方の可能性を自然と考えるようになりました。

仕事と住まいと暮らし、この3つがバランスよく揃うことができれば都会でなくても、より豊かに暮らせるかもしれない…そう思っていた時、既に京都移住計画の活動を始めていた代表の田村篤史のことを知りました。田村が職業紹介の経験がある仕事の専門と知り、"住まいの専門の自分とだったら組めるんじゃないか”と思い、すぐにアプローチを取り、共通の知人を介して会って話したのが、私が京都移住計画にジョインしたきっかけです。

京都移住計画のメンバーは、人材関連会社で転職支援や企業の採用支援行っていた経験のある代表の田村。そして、私が不動産、他メンバーの中ではWeb制作をしているなど、各々が自身の仕事をしながら京都移住計画の中で移住サポートを行っています。仕事だけを見ると一見ばらばらなようですが、実はそれぞれの仕事の経験がうまく移住のサポートに役立つことが多いんです。団体…というよりユニットという感じかな、と思っています」と話す。

京都移住計画では、今までにUターン・Iターン含めて約200人の移住に関わりサポートしてきた。

京都移住計画で主に「住む」をサポートする岸本千佳さん京都移住計画で主に「住む」をサポートする岸本千佳さん

京都という土地できちんと暮らすことをイメージする

古くからの街並みが残り、「住む」ことへの憧れも強い京都。観光やグルメスポットなどの情報は豊富にあるが、「住む人目線」での情報は逆に少ないと感じられる古くからの街並みが残り、「住む」ことへの憧れも強い京都。観光やグルメスポットなどの情報は豊富にあるが、「住む人目線」での情報は逆に少ないと感じられる

京都移住計画の想いはどういったものなのだろうか?

「まず、田村も私も京都出身なので少しは土地勘があるのですが、それでもUターンを決心するにあたって、あまりにも情報が少ないことに気づいたんです。京都という土地柄、観光スポットやグルメや街歩きの情報はすごく充実しているのですが、いざ住まい・暮らし・仕事となると、欲しい情報はばらばらで“住む人目線での情報”はほぼ手に入らない。これでは、なかなか難しいな…と。それで、まずはそういった情報を集めて発信することにしました。

住まいと仕事は、移住するにあたって切っても切れない関係です。私たちはサイトで住まいの情報、仕事の情報を発信していますが、それだけではないんです。サイトでは、実際に移住した人の体験談を載せたり、きっかけを載せたりしています。

京都という土地とイメージから、簡単に“移住したい”と思われる方も多くいます。
でも、まちと本人との間に本当に豊かな暮らしをつくっていくには、どの土地でも相応の覚悟と継続性が必要となります。職・住を踏まえたうえで、暮らしを組み立てていくのですが、そこにはまた“どんな人たちと繋がるか”のコミュニティの形成も必要となります。そういった観点からも、京都移住計画では実際にUターンやIターンを経験したメンバーの体験談をサイトに載せたり、実際に移住希望者と移住済みの方の交流の場として、茶論(サロン)という取り組みをしています。私たちは、“仕事を紹介してください”“住まいを探してください”といった相談にも応じるのですが、実体験に基づいたお話や移住希望者と移住者の人の交流をサポートをさせていただくことで、京都という土地できちんと暮らすことをイメージしていただきたいと思っています」という。

移り住んだ人たちの実感が、また次につながる

3.11以降、暮らしや人々とのつながりに対する意識が変化してきている…といわれているが、岸本さんもそう感じているという。

「豊かな暮らし方…というのは、きれいな建物に住むことでも、たくさんのお金を得られる仕事に就くことでもない、ということに皆が気づき始めていると思います。人と人との、人と土地との、良質なコミュニティを伴ってこそ、活きてくるものがたくさんあると感じています。

私自身は、京都移住計画の活動をしながら、不動産関連の仕事もしているのですが、その中でまちづくりの相談や空き家の活用、まちのコミュニティ形成などの相談を受けることも多くなりました。だんだん、“職業は何ですか?”と問われて垣根がなくなっていることに気が付きます」と語ってくれた。

様々なところで“移住”という言葉が飛び交い始めたところで、同じ志をもって地方への移住をサポートしているところを「みんなの移住計画」として、横のつながりも持ち始めたという。

京都移住計画の話を聞いて、移り住むときに必要なのは「職・住」とともに「住む目線、暮らす人目線」の情報であり、実感の伴うサポートであると感じた。

移り住んだ人々が、またその実感を次の移住希望者に伝えていくことで「良い移住」ができ、それがひいては移り住んだまちの活性化や「人材還流」につながるのだと思う。

■取材協力/京都移住計画 http://kyoto-iju.com/

Uターン、Iターンの経験を持つ「京都移住計画」のメンバーたち。</br>それぞれ様々な仕事をしながら、実体験にもとづいたサポートを行っているUターン、Iターンの経験を持つ「京都移住計画」のメンバーたち。
それぞれ様々な仕事をしながら、実体験にもとづいたサポートを行っている

2015年 12月03日 11時05分