広い共用部分と園芸で入居者同士の交流を促進

厚生労働省のデータによれば、2025年には、75代以上の高齢者が日本人口の25%になり、2045年には30%以上になると言われる。いわゆる2025年問題、2045年問題だ。
高齢化問題がクローズアップされる中、どのような最期を迎えるかも、大きな課題となっており、サービス付き高齢者向け住宅や老人ホームも増えている。今回、兵庫県西宮市に国内最大級のサービス付き高齢者住宅「エレガーノ西宮」が誕生するという。運営を行う、スミリンケアライフ株式会社 エレガーノ西宮開設準備室 入居相談担当で、介護福祉士でもある田中亮輔氏に話を聞かせていただいた。

エレガーノ西宮は、健康で自分の足で出歩ける人から、介護が必要な高齢者まで入居可能。2棟の一般居室棟と、介護居室や共用スペースを備えた中央棟の3つの建物から成る。
共用部分は専有部分とほぼ同じ面積をとっている。入居者の交流を深めるため、ふれあいの場を充実させているのだ。共用のメインダイニングではコンサートが開かれることもあるが、居室の近くにあり、食事支援を受けたり、機械浴の風呂に入浴できたりするアシストルームの窓からもその様子が見え、見守りが必要な入居者も、イベントを観覧し、雰囲気を味わえるようになっている。

また、野菜の収穫もできる庭園を取り入れているのも特徴だろう。
「認知症療法の一つに園芸療法があります。土の匂いや触感、花の色、虫の声、そして出来た作物の味と、五感を刺激しますし、作物を自分で育てて食べる一連した楽しみにより、明日の希望につながっていくのです。ガーデニングの仲間もできて、横のつながりも広がるのではないかとも期待しています」と、田中氏は教えてくれた。

エレガーノ西宮の外観(イメージ)。左右が一般居室、中央が介護居室と共用スペースのある建物となっているエレガーノ西宮の外観(イメージ)。左右が一般居室、中央が介護居室と共用スペースのある建物となっている

健康年齢を延伸するためには、楽しむことが大切

「ご高齢になりご自身の足で出歩けなくなると、友人との交流がはかりにくくなりますし、配偶者や友人が亡くなった喪失感で、心身の状況が変化することもあります。健康年齢を少しでも延伸するためには、エンジョイできる場が必要ではないでしょうか」と田中氏。入居者の心身の状況やライフスタイルに合わせて日々の生活をエンジョイしてもらうため、エレガーノ西宮では園芸やウォーキング、卓球、囲碁、麻雀、フラワーアレンジメントなど、入居者が参加できる「シニアカレッジプログラム」が豊富に用意されている。
一般的な老人ホームなどのサークル活動では入居者がリーダーを務める場合が多く、リーダーの体調不良で会の存続が難しくなることもあるという。エレガーノ西宮では、入居者の希望も取り入れながらプログラムを作り、ホームがアレンジした専門講師を招く。入居者は運営に関わりながら、無料で参加できる。
「何か新しいことを始めるには、エネルギーが必要です。ご高齢の方にとってはなおさらでしょう。そこで、参加しやすい初級のプログラムから用意し、専門の講師に学びながらエンジョイできるよう、スタッフや場所、機器などの環境を提供しようと考えています」
積極的にこうした活動に参加してもらうことは、外へ出て人と交流することを促進する。健康寿命の延伸にもつながるという考えなのだ。

西宮という場所を選んだ理由も、「人との交流」「外へ出る」そして「エンジョイする」ということがポイントとなっている。西宮は大阪や奈良など近隣からの交通の便がよく、子どもや孫が遊びに来るにも便利な場所だ。さらに、近くには便利な大型ショッピング施設、山・川や海辺といったきれいな景色もあり、近隣へ出かけるのも楽しんでもらえると考えているそうだ。

居室の工夫と、医療・介護体制

居室には、1人用と2人用がある。40m2と45m2では、台所やトイレはコンパクトにして、住空間は広くしている。管理栄養士が健康面を配慮した食事サービスもあるが、自炊も可能だ。
最も多い居室は61m2で、個室が2部屋あるので、寝室を別にすることもできる。生活環境が変わった場合には住み替えも可能で、夫婦のどちらかが介護棟に移った場合は、介護の部屋と一般の部屋に分かれて居住することもできる。

住友林業グループが培ってきた住まいや住環境に関するノウハウを活かし、居室にも随所に暮らしやすい工夫が施されている。
トイレや風呂をはじめ、各部屋にナースコールを設置。トイレ前の天井には「ケアライフセンサー」があり、12時間以上誰も横切らないときは、安否確認してもらえる。玄関にはベンチが設けられ、靴の脱ぎ履きの際に座れるので、転倒を防ぐことができる。断熱性は高いが重い複層ガラスを使ったバルコニーサッシには、てこの原理で軽々動かせるよう、レバーがつけられている。壁のコーナーにアールをつけ、把手も丸みのものを選んでいるのは、ぶつかった場合でも衝撃を和らげる工夫だ。また、あまりしゃがまなくて済むよう、コンセントは床上33.5cmと高めに設置。廊下や洗面室、トイレは、シルバーカー(歩行器)の旋回ができるよう、広めのスペースをとっている。水道水とは別に、バナジウム入りの飲料水が出る蛇口も設けられ、健康維持に一役買ってくれそうだ。
また、これまで広い家に住んでいた人など、高齢者は所有物が多い傾向にあり、入居者が思い出の品を手放さずに済むよう、収納を重視しているのも特徴となっている。

万一、病気になったときは、常駐の看護師が状況把握する。安定期からは夜間2人体制になる予定なので、緊急時の病院への付き添いも可能となる。急病人は同一建物内に設置されたクリニックで、ドクターが初期対応。救急車での搬送が必要ならば、提携病院等と連携し、スピーディな対応ができる。
介護は24時間のホームの支援だけでなく、介護保険対応のマンツーマンでの支援も受けられる。入居者本人の要望を組み込んだ自由度の高いプランが実現できるそうだ。

各部屋にはナースコールが設置されている(左上)インターホンには分かりやすく緊急時用のボタンが。<br>また、ちょっとした相談をしたいとき用に「相談」ボタンも(右上)収納は数が多いだけではなく、<br>奥行きもしっかり取ってある(左下)外観は京阪神モダニズムを踏襲し、外壁には多治見で焼いたタイルを使用(右下)各部屋にはナースコールが設置されている(左上)インターホンには分かりやすく緊急時用のボタンが。
また、ちょっとした相談をしたいとき用に「相談」ボタンも(右上)収納は数が多いだけではなく、
奥行きもしっかり取ってある(左下)外観は京阪神モダニズムを踏襲し、外壁には多治見で焼いたタイルを使用(右下)

高齢者になる前に心の準備を

高齢化が進む日本では、今後多くの人が介護を受けることになるだろう。もしものことを考えるのは恐怖でもあるが、備えをしないわけにはいかない。どのような備えをすべきか、田中氏に教えてもらおう。
「楽しい想像ではないかもしれませんが、自分はどういった介護を受けたいのか、ぼんやりとでも考えておくとよいと思います。自宅で受けたいのか、それともホームで受けたいのか、延命治療はどうするか、痛みコントロールは希望するかなど、家族や周囲にそれとなく伝えておけば、何かあったときに希望の介護を受けやすくなります。また、サービス付き高齢者向け住宅や老人ホームで最期を迎えたい方は、余裕をもって選べるよう、元気なときから情報を集めておくのがよいでしょう。でもまずは今の人生を幸せに過ごすことを考えてください。たくさんの交流を持ちながら、毎日を楽しんでいただきたいと思います」

また、サービス付き高齢者向け住宅を選ぶ際の、チェックポイントも教えていただいた。
「チェックポイントは大きく分けて6つあります。生活を楽しむ仕掛けが多数あるか、快適・安心・安全な住まいか、充実したスタッフ体制か、イキイキと元気に暮らせる設備や工夫があるか、医療が必要になったとき連携体制は充実しているか、介護が必要になったとき体制・サポートが整っているか、です。予算もありますから、すべてのサービスにおいて満足できる住宅を選ぶのは難しいかもしれませんが、このポイントは譲歩できるとか、譲れないとか、検討の参考にしていただけたらと思います」

誰でも必ず老いるものだ。アドバイスを参考にしながら、どこでどのような老後を迎えたいか、考えてみてはいかがだろうか。

2019年 01月09日 11時05分